偽彼氏はひどい奴。 - [2]

[2] 私の偽彼氏はひどい奴だな。
    絶対彼氏にしてやるもんか。


 「座って。」

 …松谷さんにそう言われた私は、青い回転イスに腰を下ろす。

 ――はろお。
 藍良です。
 私は高そうな車に乗せられ、この編集部にやって来ました。

 ここの編集部はすごくキレイで、机もイスも全部大切に扱われている。
 松谷さんの座っているイスは、背もたれの高い社長イスみたいな感じ。
 …でも、編集長だからって普通こんな豪華なイスに座んないよね。

 「最初から説明します。よく聞いて。」

 イスから立ち上がって、松谷さんはそう言った。

 私は持っていたバックを膝の上に乗せて、耳をすまして聞く。

 「僕の名前は松谷渚佐。23歳。松谷社の少女マンガ雑誌、『らぶり〜』の編集長です。」

 「…それはさっき聞きました。(でも年は初めて知った)」

 「そして…――私の父は松谷社の社長です。」

 社長…。

 あっ、そうか!
 お父さんが社長だから、編集長でもこんなに豪華なんだ。
 謎が解けたわ。

 「まあ、父のことは関係ないのですがね。あと、これが一番大事なことなんですが…。――僕、病気で余命4ヶ月なんです。」

 よっ…4ヶ月?

 そしたら、今は2月下旬だから…――3、4、5…6月には死んじゃうってこと!?

 「…なので『らぶり〜』の6月号は、最高の一冊にしたいのです。」

 松谷さんはまたイスに座り、長い足を組む。

 「君は質が良い。だから君の作品を取り入れたいと思ったんです。」

 「あっ…あたしのマンガを…!?」

 「はい。――でも締め切りまではたっぷりとある。それまでにもっと実力を上げようと思った。」

 うんうんとうなずきながら、私は真剣に松谷さんの話を聞く。

 「…今から、家に帰って荷物をまとめてきてください。洋服、日用品、マンガ用具などをね。」

 は…?
 どーしてそーなるのよ?

 「早く行って。外で運転手が待ってますから。」

 松谷さんは“笑顔”でそう言って、私を編集室から追い出した。

 ――私はデビューできると聞いてここに来たんですが…。
 どうしてこんなことに?
 荷物をまとめるって?

 意味分かんないんですけど――――――!!!!!!


●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●


 「村石、歯ブラシちゃんと持ってきた?」

 …は?
 歯ブラシ?

 しかもいきなり普通の言葉になってるし。(さっきまで敬語だったのに)

 …あっ、説明なしで進めてすみません。

 今私は、何か変なマンションに連れて来られて、その中の一室にいます。
 そして、目の前には松谷さんがいる。

 「持ってきましたけど。(これが何か?)」

 「それなら良い。今日から僕の家で暮らすんだから。(歯ブラシは必須でしょ)」

 …。

 「あのお…。も一回言ってもらっても良いですか?」

 「…それなら良い。今日から僕の家で暮らすんだから。――こう言いましたよ僕は。」


 …うぉぉぉ――――――!!!!!!


 「…うるさい。そんなに驚くことじゃないだろ。」

 松谷さんはそう言うけど、普通に驚くことだと思う。

 「だから荷物をまとめて来いと言ったんだ。――ほら、お前の部屋も用意したから。早く荷物置いてこい。」

 部屋まで用意してあんの!?

 ――松谷さんは私の洋服を掴んで、用意した私の部屋に引きずり込む。
 そして、松谷さんの足下に置いてあった私の荷物を、ポンと部屋の中に放り投げた。

 「今後ともよろしくね♪」

 松谷さんはそう告げると、私の部屋のドアをバタンと閉めた。

 「うぞ…どーしてくれんのよ…。」

 私は固まったまま、ペタンと床に座り込んだ。

 「はーあ…。」

 床に寝っ転がって、私はため息をついた。

 だって、こんな急なの初めてなんだもん。

 …でも、意外とこの部屋整ってるな〜。

 赤いソファに透明のガラステーブル。
 リンゴの時計にオレンジ色の証明。
 寝るベッドは…まだない。
 一体あたしゃどこで寝たら良いんだ?
 それくらい考えとけよな。

 …てか、この部屋昔からあったのか?
 もしや元カノとか…。
 あり得る!
 松谷さんかっこいいしな。

 ――まあがんばるしかないか。
 松谷さんもうちょっとで死んじゃうし。(簡単に言うなよ)

 よーし。
 次のマンガはラブモノにしよー!


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 「――分かった?」

 松谷さんは、(キレイな)トイレのドアを閉めながらそう言った。

 「一応。」

 私は、腕を組んでそう言った。

 あっ、今はね、松谷さんの家の中の案内をしてもらってるの。
 広すぎて迷っちゃうよーなあり得ない家の中。
 お風呂とかトイレとか、超キレイだよ。

 「――あと…1つ言っておかないといけないことがある。」

 …何だろ?
 部屋の案内はもう終わったハズじゃ?

 「掟がある。」

 …は?
 掟?

 「まず1つ目。相手に恋愛感情を持たない。2つ目。家の中では、許可なしに自分の部屋を出てはいけない。3つ目。原稿中は、マンガに関係ない言葉を口に出さない。4つ目…――これはもし好きになったときの話だけど、お互い、あるいは他人とのキス禁止。5つ目。相手以外とも恋愛禁止。」

 指で数を表しながら、分かりやすく説明する松谷さん。

 …だけど、それが必要ないときも多数あることを知ってる?松谷さん。
 編集長のわりには頭の悪い奴なのね。

 「あたしがあんたに恋愛感情を持つわけがないでしょ!」

 私は、手元にあったチャムピョを投げつけてそう叫んだ。
 …そして、私達二人の長い言い合いが始まる。

 「あるかもしれませんよ。」
 「キスとかあり得ない!」
 「好きになったらするかも。」
 「あたしの住む家なんだから、部屋を出入りするのは自由でしょ!」
 「寝ぼけて盗み食いするかも。」
 「…っ。」

 私は、言い返せる言葉がなくなってしまった。

 「そして…――この掟を破ったら、このブサイクパンダを捨てる。」

 うそっ…。
 チャムピョを!?

 「あっ。あと、俺の偽彼女になってくれ。」

 …。

 松谷(呼び捨てしてやらあ)は、どうしてこんな嘘つけるのだろうか。
 宇宙人じゃないのか?

 「おい宇宙人、そんな嘘もう通じねーぞ。あれもこれも嘘だろ?」

 これからは、こいつのことを『宇宙人』と呼んでやろう。

 私はそのとき、固くそう誓った。

 「全くの真実です。――あとさ村石、偽彼女になってほしい理由聞きたくない?」

 宇宙人がそう問いかけてくる。

 …すると、私の返事を待たずに宇宙人はしゃべり出す。(日本語の通じる宇宙人がこの世にいたんだ)

 「俺を目当てに出版社乗り込んでくる奴がたまにいるから。…彼女がいれば問題ないでしょ?」

 やっぱモテんのか。

 ――でもねみんな。
 こんな人好きになると自分の人生めちゃくちゃになるよ。
 だから付き合わないほうが良いと思う。

「…つーことは、俺はあんたの偽彼氏ということか。」

 …。

 なんか勝手に決まっちゃってるし!

 てか今思うとさ、私の偽彼氏ってひどい奴だなぁ。
 こんな奴、一生彼氏にしてやるもんか。

 ――そんなことを考えていると、宇宙人はソファにドカッと座っていた。

 「村石、今から次の作品のプロットとネームの作業をする。コーヒーとマンガ用具を持って書斎に来い。コーヒーは自分の分と俺の分を。」

 …っ。どっんだけ人使いの荒い奴なんだ。

 ホントに人間じゃないな。
 さっき言った通り、やっぱこの人は宇宙人だ。

 「…分かりましたよ!宇宙人はどーぞゆっくり休んでてくださいな。」

 私はツンとした感じでそう言って、キッチンに向かった。


 「バカにはついていけないな。」


 ため息をついてそう言う宇宙人のつぶやき声は、私の耳には届かなかった。

 もし届いていたら、私の頭は大爆発だけどね。(笑)


●●○○●●○○●●○○●●続く●●○○●●○○●●○○●●

後書き

読んでくれてありがと〜ございましたっ。
第3話もがんばりますので、よろしくお願いしマスっっっ!!!

この小説について

タイトル [2]
初版 2008年11月9日
改訂 2008年11月23日
小説ID 2810
閲覧数 1312
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ショコラの写真
ぬし
作家名 ★ショコラ
作家ID 425
投稿数 9
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活動度 2125
初めまして!ショコラです(^o^)/
私は全く良い小説を書けない未熟者ですが、よろしくお願いします。
ちなみに、恋愛小説とケータイ小説が好きです。

コメント (5)

★さんたろー コメントのみ 2008年11月10日 20時08分47秒
はじめまして。私の立てたトピックに書き込んでもらえたので、お礼を兼ねて書き込みにきました!

辛口なアドバイスOKということですが、まごひげさんを悩ませちゃった辛口(苦笑)はちょっときつすぎるかと思うので、「中辛(笑)」でコメントしますね。

まず、1話ですが、終盤まではすんなりと頭に入ってきたし、展開もいいなぁと思いました。ただ、「ここから妄想です」と自分からネタをばらさずに、後で妄想とわかるようにした方が、読者は楽しめると思いますよ。あと、「全校生徒3名」はちょっと無理がありすぎるかも。

で、あえて「終盤まで」と書いたのは、そこから2話までの展開があまりにも急すぎて、ついていけないのです。別の作品で同じようなコメントをされた方がいましたが、「マンガ的な展開」だと思いました。マンガは絵で情景がフォローされますが、小説は文字だけで読者へ伝えないといけないのです。長野から東京に引っ越してくる場面も、友人や家族の反応も含めてもっと書きこんだ方が、読者が作品に入りやすいと思います。

あ、中辛を越えてきたかも...(笑)
それでは、次回、楽しみにしてます!
★ショコラ コメントのみ 2008年11月11日 17時27分04秒
[さんたろー様]

コメント、ありがとうございましたっ。

…はい。確かに。
全校生徒三人はダメだったようですね。
直しておきます。

あと、展開が早いとゆーのは、本当かもしれませんね(汗)
マンガ大好きなんで、そんな感じに書いてしまうのです(>_<)…
さんたろー様の言う通りですっ。

…では、いろいろとありがとうございました♪
修正しておきますね。
でも、1話(の終盤まで)が良かったという感想がとても嬉しかったので、力が出ました。
ありがとうございますm(_ _)m

ぜひ次も、遊びに来てくださいね☆

さんたろー様の小説にも遊びに行きますっ!
★真幸珠 コメントのみ 2008年11月11日 19時53分12秒
ショコラさまへ
偽彼氏読ませていただきました。
とても良いものだと思います^^
それぞれに個性が出ていて読みやすいです。
そうゆう技術をぜひ私にも教えてくださいな(笑)

でわでわ、また更新待ってますね^O^
★ショコラ コメントのみ 2008年11月13日 16時30分48秒
[真幸珠様]

コメント、ありがとうございました!!!

良いモノだと言ってくださって、とても嬉しいですm(_ _)m
真幸珠様の作品の更新もお待ちしております。
ぜひ次も、遊びに来てくださいね♪♪
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