りれしょ物語 - 行動あるのみ

「一緒に帰ってあげてもいい」という小雪を待つ事数分。小雪はすぐにやってきた。
 俺は妙に緊張していた。いつも馬鹿みたいにふざけ合っていたはずの小雪が、不思議と違う感じがしているのだ。
 男は恋愛について真剣に考えない、とか女友達の関係にこだわる、とか世の女子は言うが、決してそうじゃない。女子とそういう憎らしくも羨ましい関係になれると思ってすらいないからだ。自分が誰かの事を好きになるとか、女子のように鮮明に考えられないだけなのだ。
「行こう、剛?」
「ん、ああ……」
 小雪と俺は並んで歩き始めた。一歩、一歩と進むたびに自分の表情が硬くなっていくのが分かる。
 考えてみれば、村崎と本村さんはどうなっただろう。それに雛利と九条先輩も。これからどうするんだろう。こんな時に限って、自分の事から現実逃避するのが俺の本能だ。だが、気になっているのも事実。そんな雰囲気ではないのは分かっているが、俺は小雪に聞いてみた。


「なあ、小雪」
「……何?」
「もし……もしだぞ、村崎が本村さんに告白したらどうする? それに、雛利のこと好きな人いるって言ったら、どう思う?」
「何、その質問」
 小雪は訳の分からない様子で俺に問い返した。
「もし、だって言っただろ」
「あんたが『もし』って言った時って殆ど本当のことなのよ。本当なんでしょ? 雛利さんのこと好きな人いるのも、村崎が本村さんに告白するかもしれないのも」
 やべ、見透かされている。仕方なく、俺は小雪に全て話した。小雪は、納得した様子でうんうんとうなずいていた。
「なるほどね。だからあんた、青汁十杯くらい飲んだみたいな顔してたんだ」
「どんな顔だ」
 あ、と俺も納得した。不本意だが、青汁を飲んだような顔だったらしいから、小雪は俺の事を心配してくれたみたいだった。俺は少し顔が熱く感じた。自分で収集のつかない気持ちを、小雪だけは分かってくれている、そんな感じがしたからだ。
「ふーん……村崎は放っておいても告白するだろうし……ねえ、剛。今からくっつけちゃおうよ。九条先輩と雛利さん」
「は!? お前、話聞いてたか? あの二人は……」
「でもさあ、あたし、思うんだ。モヤモヤしてても意味なんか無いって。人はさ、行動した後悔より、行動しなかった後悔の方が深く残るんだって。分かるような気がするな。だって行動したら、何らかの結果が得られるじゃない? でも、行動しなかったら何の結果さえも無いんだよ。それって寂しいじゃない。……とにかく、行動あるのみ!」
「おい、小雪!」
 俺の静止も聞かず、小雪は走りながら携帯で二人を呼び出す。俺が全て話したからこうなったものの……小雪の行動力には驚かされたものだ。だが、先ほどの小雪の言葉は、俺自身にも当てはまるような気がした。自分の気持ちを考えず、行動など全くしていない。
 俺は、走っていく小雪を見つめた。夕日に照らされた彼女は綺麗だった。ただ、綺麗なのではなく、俺よりもずっと、輝いている。俺は無意識にずっと、小雪を見つめていたのかもしれない。いつも一緒に居て、近すぎて、意識なんか出来ていなかった。でも、いつでも明るく笑っている小雪が、いつの間にか少し違う存在になっていた。戸惑っていたけれど、俺は小雪を見ていた。
 ずっと見てきた小雪。だからこそ、関係が崩れるのが怖かった。進んで元に戻れなくなるのが怖かった。でも、もう決めた。俺も行動しなければいけない。深く深呼吸して、俺は小雪を追いかけた。




 俺が小雪に追いつく頃には、小雪は公園のそばにある木の陰にいた。
「公園に九条先輩と雛利さん、呼び出したの。絶好の告白チャンスよ」
 九条先輩と雛利はそれぞれとても驚いているようだった。それでも、九条先輩は笑って雛利に話しかけた。
「よう、雛利。どうした、こんな所で?」
「……須藤さんに、呼び出されて。く、九条先輩は……?」
「俺もだ。だけど、肝心の須藤がいないみたいだけどな」
 ははは、と九条先輩は笑う。だが、雛利は相変わらず黙ったままだ。何を話していいのか分からない、といった顔だ。
「…………」
「…………」
 二人の沈黙はさらに深まる。俺と小雪の沈黙も、自然と深まる。
 すると、九条先輩が口を開いた。
「なあ、雛利。ここの公園、俺が小さい頃よくサッカーの自主トレに来ていた場所だったんだ。お前、前俺に聞いたよな。『どうしてそんなに頑張るんですか』って。俺が連城のポジション、奪った時に」
 連城、という名には聞き覚えがあった。雛利があこがれてサッカー部に追っかけていった先輩だったはずだ。
 雛利は黙ったまま九条先輩の話に聞き入っている。
「別に連城が俺より劣っていたなんて思ってない。ただ、俺は俺なりの努力をしてきたつもりだ。それを非難されるつもりは無いし、それが評価されたのは嬉しい。でも、俺が頑張るのは今までやってきた努力を無駄にしたくなかったからだ」
「……分かっています。でも……!」
「知ってるよ。お前が連城のことずっと思ってきたこと。だから、謝っておこうと思って」
「違います! 私は……確かに、連城先輩を追ってサッカー部に入りました。でも、全然近づけなくて……そんなときに、あの……九条先輩の、告白を聞いてしまって! それで、妙に意識したのは確かです。でも、何かいつも頑張ってる先輩を見ていたら、先輩のことを……す、好きになりました!」
「!」
 先輩は流石に驚いた様子だった。俺と小雪もかなり驚いた。俺には乱暴に言っていたが、やはり、色々と考えていたようだった。
「そっか……聞いてたのか。……はは、やっぱり恥ずかしいもんだな」
「……」
 全てを吐き出したつもりなのか、雛利はずっと俯いていた。九条先輩はまた笑って言った。
「俺も好きだよ、雛利のこと」

 小雪が隣できゃー、と小さく嬉しい悲鳴をあげているのが分かった。俺も、ほっと胸を撫で下ろした。小雪は待ってましたと言わんばかりに二人にメールを打ち始めた。二人に同時に送信したみたいなので、九条先輩と雛利、二人の携帯が同時に鳴る。
「『用事が出来たのでまた今度お会いしましょう!』って、何だ、これ……」
 雛利は呆れる。しかし、九条先輩の方を見てまた硬直し始めた。そんな雛利を解きほぐす様に、九条先輩は雛利に笑いかけた。
「今から、自主トレしようと思うんだ。雛利、ランニングついてきてくれよ」
「は、はいっ!」
 そう言って二人は公園から出て行った。小雪は凄いものを見た、と言うように晴れ晴れとした表情だった。
 そんな小雪を、俺はまた見つめていた。それだけでは駄目なのだと自覚しながら。もう少しだけ、待っていてくれよ小雪。整理のつかないぐちゃぐちゃな気持ちだけど、ちゃんと、伝えるから。
 俺は小雪の背を見ながら静かに考えていた。


後書き

結局くっつけました。私、失恋系とかムリなんですよ。何だか書いている自分まで悲しくなるというか;;

えーと次は……誰なんでしょう? 分からず突っ走って書いてしまいました。まあ、決まり次第ここにまた書きます。

この小説について

タイトル 行動あるのみ
初版 2008年11月14日
改訂 2008年11月14日
小説ID 2816
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ひとり雨の写真
作家名 ★ひとり雨
作家ID 223
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コメント (1)

★日直 2008年11月15日 18時25分41秒
こんにちは。
いっきに大進展しましたね〜。
これで雛利と九条先輩はカップルですか。剛の悩みの種が一つ消えましたね。
小雪の行動力といったらすごいですね〜。雛利には九条先輩とは別に本命が居ると聞かされたのに、雛利と九条先輩をくっつけようと考え、それに向けて行動するなんて(笑)
その行動力が自分の恋愛にも活かせれば、もうハッピーエンドはすぐそこです。


ほんの今気付いたんですけど、りれしょ1は既に半年を迎えてましたね。
この調子で一周年いけると嬉しいですね。きっとその頃には、書き手として僕らも何か掴めているかもしれません。
これからもみんなで頑張りましょうね。
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