鬼姫 - -髪-

ライン

「私の指定は・・・・
 じゃぁ・・・・456P、かしらね」

「・・・・わ、私は・・・・・
 ・・・・・677・・・・・・・」

続く、
鬼姫対一文字怜の
ページめくり対決。
7連勝した鬼姫有利かと思いきや、
一文字怜には
全て見透かされていた。
完璧に、
流れは逆流。
全てが無に帰った。
流れは、完全に一文字怜。
弁慶の絶望的表情が、
それを物語っていた。

「(やめろ・・・・
 やめてくれぇっ・・・・・・!!
 現在12回戦で、
 7勝7敗っ!!
 ダメだっ・・・・・!!
 逆転、逆転しちまった・・・・!!
 完璧に負け込んでる・・・・!
 想定外の
 3連敗っ・・・・!
 でも、ただの3連敗なら良い・・・
 ただの3連敗なら・・・!)」

絶望。
あまりにも、奈落の状況。
後ろで見ている弁慶ですら、
もうほとんど
涙目状態。
泣きたい。
泣きたいほどの、落ち込みよう。
雰囲気的にも、鬼姫は勝てない。
どう見ても、
一文字怜の一人舞台。
神の、
圧倒的なる力の前に、鬼姫砕ける。
そして、12回戦。
結果は・・・・。

「・・・私は・・・・
 544P・・・・・・・」

「・・・ウフフッ。
 ゴメンね、鬼姫ちゃん。
 私、
 677・・・
 またピッタシ引き当てちゃった。
 不思議ね」

「(ッ!!!
 ま、また・・・
 またピッタシだっ!!
 そう、ただの3連敗なら良いっ・・・!!
 けど違う!
 その3連敗、
 いや今の4連敗も含めて、
 全てピッタシ当てっ・・・・・!!
 ・・・神だ・・・
 一文字怜、間違いなく・・・
 ・・・神に愛されし女っ・・・!!)」

圧倒的なる力。
今までの4連敗全てが、
一文字怜の
ピッタシの引当てにより敗北。
これが、
一文字怜の本気。
神の力。
人間では届かない神域。
その前に、
鬼姫すら敵わない。
ボロ負け、
見るも無残なボロ負けを続けるだけ。

「(く、くそったれがぁ・・・・!!
 今ので、
 7勝9敗っ・・・・!!
 負けちまう・・・
 後一回負けたら・・・
 もう終わり・・・・
 ・・・鬼姫の、死っ・・・!!!
 逃れられぬ、死だっ・・・・!!)」

「・・・あら?
 もしかして、次私が勝っちゃったら、
 終わっちゃうのかしら。
 あらあら。
 どうしましょうね、鬼姫ちゃん?」

「・・・・・ク、ククッ・・・・
 ・・・どうもない・・・・。
 ・・・・続ける・・・・・・・
 ・・・・・勝負は続行・・・・
 ・・・どちらかが死ぬまで、終わらない・・・・」

「ッ!!!
 お、鬼姫ぇ・・・・
 鬼姫ぇえ・・・・・・・!!」

それはもう、
遠吠え。
まだ勝負は確定していないというのに、
まるで、
鬼姫が負けたような雰囲気。
どう見ても、
ここからの逆転はありあえない。
決定、
すでに決定しているのだ。
鬼姫は、敗北した。
弁慶すらも感じた、その雰囲気を。
弁慶は顔をクシャクシャにして、
鬼姫のもとへ近づく。

「鬼姫、鬼姫ぇえ・・・・・!!
 もうやめて、
 やめてくれぇえ・・・・!!
 今ならまだ間に合うっ!!
 今ならっ!!
 ・・・・謝ろう・・・・・
 謝ろう、鬼姫っ!!」

「・・・・・・・」

「今から謝れば、
 一文字怜だって許してくれるっ!!
 大丈夫、
 大丈夫さっ!!
 俺も一緒になって謝るっ!」

「・・・・・・」

「た、確かに、
 もしかしたら代償に指や足が、
 切断されるかもしれねぇ!
 ・・・でも、良いじゃねぇか・・・。
 命が無くなるよりは良い!!
 断然マシだ!!
 ・・・・だから頼むっ!!
 謝ろう、
 一文字怜に謝って、
 勝負を止めにしてもらおう・・・!」

「・・・・何で・・・・・?」

「・・・・っく・・・・。
 い、言いたかねぇ・・・
 言いたかねぇけど・・・・・・!!
 どう見ても、
 一文字怜の方が格上だっ!!
 実力差がありすぎる!!
 ・・・オマエじゃ、勝てない・・・・!
 ・・・・鬼姫の、負けだよ・・・!」

弁慶も言いたくはなった。
あの鬼姫に。
今まで無敗の鬼姫に。
どうみても勝ち目が無いことを。
それは、
鬼姫本人が一番分かっている
ことかもしれないのだが、
やはり、
第3者の誰かが言わなければならない。
だからこそ、
弁慶は辛くも、厳しく、
鬼姫に言った。
すると・・・・。

「・・・・終わってない・・・・・。
 ・・・・・勝負は、終わってない・・・・」

「終わってるっ!!!
 もう終わってるんだよ、鬼姫っ!!
 やせ我慢するな!
 ・・・あっち側が4連勝!
 しかも、全部がピタリ当てっ・・・!
 化け物っ・・・!!
 こんな化け物に、
 今さらどうやって勝つってんだ!?」

「・・・・・・」

「・・・無理だったんだ・・・・
 本当に、神だ・・・・・。
 ・・・俺も、油断してた・・・。
 鬼姫なら、もしかしたら勝てるって・・・・。
 でも、強すぎる・・・・。
 あまりにも、一文字怜は強すぎた・・・!
 最強だ・・・・!」

「・・・・・ククッ・・・・」

全てが終わった。
何もかも。
神の実力の前に、
結局、
鬼姫すら赤子同然だった。
やはり、立ち向かう敵を間違えた。
弁慶は寂しそうな顔をして、
一文字怜に
詫びを入れようとする。
だがその時、
鬼姫、微笑。
あの微笑が、戻ってきた。
憎らしいほどの余裕をかます、
不気味な微笑が。

「・・・・謝る・・・・・?
 ・・・・・逆・・・・・・・。
 ・・・謝るのあっち・・・・・・。
 ・・・・指を差し出されるのはこっち・・・・・」

「っ!!???
 な、何言ってんだよ、鬼姫っ!!
 今さら強がっても・・・!」

「・・・・・ククッ・・・・・・
 ・・・神、か・・・・・。
 ・・・・・いよいよ・・・・
 ・・・捻り潰す時がきた・・・・・・」

「え、えぇ・・・・?」

何とここにきて、
鬼姫はまだ、勝つ気でいる。
7勝9敗。
あと一回でも負けてしまえば、
鬼姫の敗北。
死だ。
そんな絶望的な状況で、
鬼姫は余裕の笑みをこぼす。
そして、
ゆっくりと、
目の前に対峙している
一文字怜を見つめる。

「・・・どうする、鬼姫ちゃん?
 ギブアップしたいの?」

「・・・・・ククッ・・・・・
 殺す・・・・・・。
 ・・・・次の戦で・・・・
 何もかもを終わらす・・・・・」

「・・・・やっぱり、鬼姫ちゃんなのね。
 最初から、最後まで・・・。
 ・・・・・良いわ、それなら私は迎え討つまで。
 第13回戦、始めましょうか」

意地。
鬼姫の限りなき意地。
それがまだ、
鬼姫をわずかに支えている。
そう、
弁慶は思っていた。
ただのクセの悪い意地。
もう勝ち目はない。
誰もがそう思う
13回戦。

「・・・・まず私の指定は・・・
 455Pにしようかしらね」

「・・・・ククッ・・・・・
 ・・・・・私の指定ページ・・・・」

「(ダメだっ!!!
 流れがクソ過ぎるっ・・・・!
 絶対、
 絶対奴はこの勝負もピッタリ当ててくる!!
 もう止まらねぇ!!
 止まらぬ戦機っ・・・・!
 挑むこっちは、マメ鉄砲かよぉ・・・!)」

「・・・・私の指定ページは・・・・
 544・・・・」

「ッ!!!
 (え?・・・・
 544って・・・・・。
 確か・・・・・。
 あ、あぁあああああ・・・・!!???)」

弁慶、鬼姫の指定ページの意味に
少し考え、
ようやく気づく。
しかし一文字怜は別格。
瞬時にそのページの意味に気づき、
静寂な笑みを浮かべる。
544Pが意味するものとは。
弁慶は、
慌てた様子で
鬼姫のもとへと駆け寄る。

「何考えてんだ、鬼姫っ!!!
 544って・・・
 それは、
 前の勝負で
 オマエがめくったページじゃねぇか!!」

「・・・・・・・うん・・・・・」

「う、うんって・・・・!
 (完璧に、イカれちまってる・・・・!!
 もう勝負すらまともに見れてねぇ!!
 ・・・ダメだ・・・!
 狂ってる・・・!!
 鬼姫はもう、
 正常な考えすらできてねぇ・・・!)」

「・・・ウフフッ。
 それもまた、作戦なのかもしれないわ、弁慶君。
 ここは受けてみましょう。
 ・・・・まぁ、
 次なんて無いと思うけどね」

「ひっ!!!!
 (・・・終わる・・・・!!
 終わっちまうっ・・・!!
 頼むっ、
 お願いします、神様っ・・・!!
 鬼姫を・・・・
 鬼姫を助けて下さいっ・・・・・!)」

もう、神に祈りだすという
怪奇行動をしだす弁慶。
それほど、窮地。
鬼姫の、
自分が負けたページを指定するという
暴挙が、
さらにその敗北色を加速させる。
あきらめた。
味方の弁慶もあきらめていた。
心の中では、
一ミリの勝利の可能性すら信じていなかった。
そんな中、第13回戦、
始まる。

「(・・・ウフフッ。
 悪いわね、鬼姫ちゃん。
 ・・・これですべてが終わる・・・。
 私はただ神に導かれるまま、
 同じようにページをめくる・・・。
 ・・・・それで勝てる。
 私の勘ですら、
 それはすでに勝利のルート・・・。
 ・・・残念だわ、鬼姫ちゃん)」

「・・・・・ククッ・・・・・」

「(・・・・どうする・・・?
 このままじゃ、
 鬼姫が死んじまうっ・・・・!!
 どうする、どうする・・・!?
 どうすりゃ、死を回避できる・・・・!?)」

場は異常な雰囲気。
勝利を確信している一文字怜。
すでに鬼姫の敗北後の
ことを考えている弁慶。
そして、
まだ勝利の可能性をあきらめきれない鬼姫。
なんとも奇怪な光景。
そして、一文字怜がページを
めくろうとする。
神に導かれるまま、
絶対なる勝利の意思のまま・・・。
だが、しかし・・・。

「(・・・・え・・・・・?
 何、コレ・・・・・・・・・・)」

一文字怜の手が、止まった。
それは、
本当に偶然のことだった。
一瞬、
ほんの一瞬の出来事だった。
いつも本のページすら目をあてず、
神の力を頼りにし、
ページをめくっていた一文字怜だが、
見てしまった。
チラッと、本の所を。
それを見た瞬間、動きが止まる。
魔法をかけられたかのように。
果たして、
一文字怜が動きを止めた原因とは・・・。

「(・・・・か、髪・・・・?
 長い髪が、
 本に挟まってる・・・?
 ・・・・あ・・・・・
 ま、まさかっ・・・・・・!!!)」

この時、一文字怜は雷光に打たれるが如く、
閃いた。
それは、必然なる勝利への導き。
まさに、
神のお導きかもしれない。
そう、
本に髪が挟まっていたのだ。
長い髪が。
自分の髪ではない。
それはつまり・・・。

「(・・・私が前見た時、
 髪は挟まって無かった・・・・。
 つまり、
 前の勝負で髪は挟まったことになる・・・。
 ・・・誰の髪・・・・?
 ・・・・当然、鬼姫ちゃんの・・・)」

「(ど、どうしたんだ?
 一文字怜の動きが止まった・・・?)」

「(・・・じゃぁ、何で髪は挟まったの?
 簡単じゃない。
 ページをめくった時。
 ・・・鬼姫ちゃんがページをめくった時、
 つまり、
 前の勝負で544Pを開いた時だけっ!
 故に、
 髪が挟まっているページは、
 544Pっ!!!
 ・・・失態よ、鬼姫ちゃん・・・!)」

まさかの、偶然。
これが、神の力なのか。
鬼姫が前の勝負に544Pを
開いた時、
たまたま髪を落としてしまい、
挟まってしまっていたのだ。
それを気づかないまま、
本を交換。
故に、確実。
髪が挟まっているページは544P以外
あり得ない。
思わぬ奇跡。
それに、ほくそ笑む一文字怜。

「(ウフフッ・・・。
 まさか、こんな終わり方だなんてね・・・。
 自分の失態で負ける。
 鬼姫ちゃん、これが人間なのよ・・・)」

「・・・・・ククッ・・・」

「(ッ!!!
 ・・・な、何を言ってるのよ、私は!
 相手は鬼姫ちゃんじゃない!
 そんなミス、まずありえないわ。
 ・・・・つまり、これは罠・・・・?
 け、けど・・・・・
 他のページを
 いじってる動作をしていなかったハズ・・・)」

真実と虚像とが、
互いに交差する一文字怜の脳裏。
気がつけば、
手は止まり、
余裕だった今までの笑みは消えている。
ハッと、
一文字怜はあることに気付く。
そして、
ゆっくり、ゆっくりと、
鬼姫の方を見る。

「(!?・・・・
 な、何をやっているの、私は・・・?
 混乱、させられてる・・・?
 ・・・・ヤ、ヤラれた・・・・・。
 鬼姫ちゃんに、してやられた・・・・!
 ・・・この女・・・・
 やってくれた・・・・!)」

「・・・・ククッ・・・・・」

後書き

ついにラスト2話前。

あぁ・・・長かったのぉ。

果たして鬼姫や弁慶はこの出会いの中で、
どれほど成長したのだろう?

・・・・・して、るか?(笑


次回、決着へ・・・

この小説について

タイトル -髪-
初版 2008年11月21日
改訂 2008年11月21日
小説ID 2828
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