偽彼氏はひどい奴。 - [6]

[6] 人はそれぞれの“心”があるの。
    相手の心を、渚佐はちゃんと知ってあげて。



 「乗せて。ちょっと行きたいところがあるの。」

 私は、車に乗っている渚佐に向かってそう言った。

 …今は休日の朝。
 そろそろもう3月の下旬なのよね。
 ふと思ったら、もう1ヶ月もたってる。
 渚佐の寿命も、あと3ヶ月ね。

 「別に良いけど。――乗るんなら早く乗って。今急いでるんだから。」

 …何か落ち着いた始まりね。
 いつもと違う渚佐のような…。

 「…ねえ渚佐。何かあったの?」

 車がスピードを上げて発車する。

 ――“スピードを出す”っていうところにも、なんか引っかかるような…。

 「今日はお見合いなの。親父が俺を早く結婚させたいらしくて。」

 おっ…お見合い!?
 こいつがお見合いなんてしたら…。


 「渚佐さん、何か特技はありますか?」
 「…別に。僕は仕事にしか熱中しないんで。」
 「――あら、じゃあお仕事は何を?」
 「雑誌の編集長。」
 「お父様は?」
 「出版社の社長。」
 「まあまあ…。それはすごいですわねぇ。そんなお仕事してらしたら、さぞお金持ちなのでしょうね〜。」
 「そりゃ、食べるお金くらいありますよ。…あなたはとても貧乏のようですが。」
 「はっ…。なぜ分かるのですか!?」
 「その服といい、その顔といい、あまりにも貧乏でしょ。」
 「なっ…ひどいですわ!」
 「俺の性格はキツいんで。どんなことでも言いますよ。」
 「…こんな人イヤですわっ!あなたと結婚する方は、きっと同じような性格でしょうねっ。」
 「別に良いですけど。考えが似てる人なら逆に楽ですし。――あなたみたいな人よりは全然良いです。」
 「フンっ…――。」
 「さよなら。また会いましょうね。――会うことはないと思いますが。」
 「うるさいわね!」

 その女は、渚佐に水をぶっかける。
 ふふっ…。最高!


 「…聞いてんのか藍良。」

 …はっ!
 すっかりあっちの世界に行ってしまって…。

 「とにかく、今日は急いでるんだ。お前は早めに車降りて。」

 「…今ここで降りろって言うの?」

 イヤミのように言う渚佐の言葉に、私は少しカチンときた。

 「もう少し行ったら。遅れたら親父に怒られるから。」
 「ひどい!」
 「我慢しろ。…もしかして藍良、俺と見合い相手を結婚させたくないの?」

 ドキッ…。

 別にそんなこと思ってもいないのに、私の心臓は動き出す。

 「いっ…意味分かんない!いつ私がそんなこと言った!?」

 どーしよ…。胸がドキドキして…。

 「嫉妬ってヤツ?」
 「嫉妬なんかしてない…!」
 「――大丈夫。俺はお前なんか興味ないから。」
 「分かってるわよ!…もうここで降りてやる!」

 私は嫌になって、シートベルトを外した。

 「…じゃーな。」

 渚佐は親切(?)に車を止めてくれた。

 「…。」

 私は、無言で車から出た。

 「…渚佐、一つ言っておきたいことがある。」

 窓から車をのぞいて、私は渚佐にそう言った。

 「――お見合い相手には、自分の気持ちをちゃんと言いな。嫌いだったら嫌い。好きだったら好き。――そうしなきゃ、あんたも相手もずっと不安定のままだから。」

 「…。」

 「人はそれぞれの“心”があるの。相手の心を、渚佐はちゃんと知ってあげて。」

 私はそう言って、窓から離れた。

 「…いつからそんな良いことが言えるようになったのか。」

 渚佐は私の方を向かずにそう言って、車を発車させた。

 「…全く。世話のやける奴だな。」

 私は1人、そうつぶやいた…――。


●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●


 「美葵ちゃぁん。藍良ちゃんって今どこにいるのかなぁ。」

 早乙女は美葵にそう聞いた。

 「知ってるけど、あんたには教えないわ。何かやらかしそうだもの。」

 美葵は、腕を組んでそう言った。

 …ここは、美葵と藍良が通う学校の教室。
 2人は、残って補習をしているのだ。

 教室にある机やイスが、夕日によって真っ赤に染められている。

 「…でも、この前のプレゼントは渡しておいたから。食べてくれてるか心配だけどね。」

 「本当にぃ!?」

 早乙女は、目をキラキラと光らせた。

 「私が嘘つくわけないでしょ。藤北美葵は、この世界で一番優しい女の子なんだから。」

 窓の外を見て、美葵は言う。

 …だが、本当は渡していないのだ。
 渡そうとしたが、藍良は受け取ってくれなかったのである。

 「だけど…。」

 「?」

 「あんたと藍良がくっつくことはないと思うわ。」

 「…何でぇ?」

 「藍良には偽彼氏ができたんだから。」

 ――この言葉に、早乙女は驚いてしまった。

 …そして、床にバッターンと倒れる。

 「あんたの夢は終わったわね。」

 美葵は笑顔を見せて、上から早乙女をのぞいた。


●●○○●●○○●●○○●●続く●●○○●●○○●●○○●●

後書き

一応最後まで連載するつもりです…。
10話まであるので、どうぞよろしくお願いします!!!
連載をやめることがないように、がんばって書きたいと思います。

この小説について

タイトル [6]
初版 2008年11月23日
改訂 2008年11月25日
小説ID 2831
閲覧数 1312
合計★ 5
ショコラの写真
ぬし
作家名 ★ショコラ
作家ID 425
投稿数 9
★の数 57
活動度 2125
初めまして!ショコラです(^o^)/
私は全く良い小説を書けない未熟者ですが、よろしくお願いします。
ちなみに、恋愛小説とケータイ小説が好きです。

コメント (2)

★ 2008年11月25日 17時09分57秒
またまた遊びに来ましたw

藍良の気持ちが動いてるのが何処となく伝わってきますねw

やっぱり表現が良いのでこちらにも伝わって来るんでしょうねw

本当に憧れていますw

最後がどうなるのか楽しみな面もありますし、終了したら悲しい面もありますし…。

とにかく、次回作を楽しみにしております(ニコ
★ショコラ コメントのみ 2008年11月25日 17時14分39秒
[愁様]

いっっっつもコメントありがとうございます!!!
表現が良いとか…そんな…。
愁様の方が全然お上手ですよっ。
ありがとうございますm(_ _)m
ぜひ次も、遊びに来てくださいね☆☆
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