偽彼氏はひどい奴。 - [7]

[7] これは…『好き』?
    でもそれはいけないことで…。



 「…こんにちは。」

 “藍良よりも”美しいその女は、僕に向かってそう言った。

 「どうも。」

 僕は、こんな言葉を返す。

 …ここは、あるホテルのロビー。
 僕の前には、藍良の好きなチョコレートと、僕の好きな紅茶が並んでいる。

 「お名前は?」

 僕はそう問いかける。

 「木下沙都子(きのしたさとこ)です。」

 沙都子さん…か。
 藍良とは全く違う名前だな。

 ――そういえば…なぜだ?
 さっきから思っていたが、なぜか藍良のことばかり考えてしまう。
 好きでもなんでもないのに、頭から全く離れない。

 「あなたは?」

 沙都子さんが、僕に問いかけてくる。

 「松谷渚佐です。」

 少し紅茶を飲んでから、僕はそう言う。

 「渚佐さん…ですか。ステキな名前ですね。」

 …そんなこと言われたの初めてだ。
 自分の名前を褒められるなんて。

 「ありがとうございます。…お歳は?」

 「…私は20歳です。この前誕生日で。」

 「そうなんですか。僕は23です。」

 年下と言っても、たったの三歳か。
 藍良とは10歳近く違うけどな。

 …僕には沙都子さんの方が向いてるのだろうか?

 「では、少し外をお散歩しましょうか。」

 僕はそう言って、イスから立ち上がった。


●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●


 …ふう。
 久しぶりに画材屋さん来たなぁ。
 この“匂い”が良い♪

 「どーしよっかな〜。」

 ペンを見ながら、私はそんなことをつぶやく。

 …渚佐、今頃どうしてるかな。
 相手とうまく行ってるとか?
 お見合いっていったら、たいていがお嬢様だし…。
 渚佐にぴったりの子が見つかるかもしれないわね。

 …そういえば…なんでかな?
 なんか渚佐のことで頭がいっぱい。

 自分では好きじゃないって言い聞かせてるけど、嫉妬…みたいな。そんな気持ち。

 ――複雑…だなぁ。

 「もしかして君…藍良?」

 …あれ?
 この声…――。

 「大和っ!?」

 「…そうだけど。」

 なんでこんなところに大和がいるの?

 「大和、井上葉月って知ってる?」

 葉月さんの言葉が本当かどうか、私は聞いてみることにした。

 「うん…彼女だけ…ど…――うわぁっ!」

 …大和が、目を丸くして叫ぶ。

 ――どうしたんだろう?

 「どうしたの?顔に何か付いてる?」
 「いや…。彼女いるのバレちゃったから…。」
 「そんなことか。…大丈夫。今はちゃんとやってるから。」
 「――じゃ。また今度お茶でもしようぜ。じゃあな。」

 大和はそう言って、エスカレーターの方に向かっていった。

 …良かった。
 大和もちゃんとやってるんだな。
 葉月さんともうまく行ってるみたいだし。

 …でも、私は一体誰と…――?

 好きな人って言ったら…。


 「――これもしかして…君が描いたの?」
 「君は質が良い。」
 「藍良は床で寝て。」
 「全く。世話のやける奴だな。」

 …ヤバい。
 私渚佐のことばっかり想像しちゃってる。

 私は渚佐なんか好きじゃない!

 もし好きだとしても、これはいけないことで…。

 このままだと、チャムピョが捨てられちゃう!

 …よしっ。今決めたっ。

 ――絶対に、渚佐なんか好きにならない。
 チャムピョを守ってやるんだっ!


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 「…どうしたの?大和くん。」

 葉月は、エスカレーターに乗りながらそう聞いた。

 「いや…。藍良がかわいくなってた気がして…。」

 顔を赤くしながら、大和はそう言った。

 「冗談言わないでっ!私以外の人を好きにならないでよっ。」

 大きな声を出して、葉月は思いっきり叫んだ。

 「良いじゃないか。浮気ってのも楽しいぞ?」
 「どこがっ?」
 「スリルがある。特に君には。」
 「――ふーん。じゃあ藍良ちゃんは?」
 「あいつはただ怒るだけ。つまんねーよ。」
 「私は?」
 「言ったじゃんか。葉月ちゃんが一番だ。」

 二人は、しばらく言い合いをしていた。

 …藍良と渚佐のようだ。
 どちらのカップル(?)も、性格が似ているのだろうか?

 「全部葉月ちゃんが一番。」

 そう言って大和は…――葉月にキスをした。

 「…やっ…やめてよっ!みんなが見てるじゃないっ!」

 周りを見回して、葉月は言った。

 …周りでは、関係ないのに顔を赤くしている人達がたくさんいた。

 「関係ない。」

 葉月の目をじっと見て、大和は力強く言う。

 「――葉月ちゃん、俺と結婚してくれないか?」

 大和はそう言って、ポケットから指輪を取り出した。

 「なっ…なによいきなり。」

 そっぽを向いて、葉月はそう言う。

 …エスカレーターの速さが、葉月と心臓と同じように、更に速くなる。

 「…あんたが良いなら。私はどっちでも良いわよ。」

 強そうに言っているように見えるが、心の中は嬉しい葉月。

 思わず笑顔になった。

 「よろしくな、“葉月”!」

 「――結婚するからって、気軽に呼び捨てしないでっ!」

 葉月はそう言うと、スタスタとエスカレーターを降りてしまった。

 「ひどいなぁもう。少しは優しくしてくれたっていいじゃないか。」

 口を尖らせて、大和はそう言った…――。


●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●○○●●


 「はぁ…。」

 私はため息をついた。

 …だって、なんかみんなすごいんだもん。

 葉月さんと大和はなんか良い感じみたいだし、早乙女と美葵も仲が良いみたいだし…。
 私の人生どうなるのよ。
 一生独身で終わっちゃうの?

 …ん?

 なんか遠くから、パタパタと店の中を走る音がする。

 ――こんなデパートの中を走る人なんて、一体どんな人なんだろう?

 「…いらっ!…藍良っ!」

 …は?

 私の名前?

 「俺だよ俺!渚佐!」

 はっ!?
 なんでここに渚佐が…。

 お見合い中だと思うんですけど…。

 ――しかも、ダラダラとすごい汗かいてる。

 大急ぎで来たのかな…?

 「藍良、最後に一つお願いがある。」

 渚佐が、急にキリッとした表情になってしゃべり出す。

 「藍良のマンガは載せなくて良い。とにかく完成させてくれ。」
 「…なんで?」
 「俺の命はもう少ないんだっ。」

 …そりゃ分かってるけどさ…。
 何いきなり焦ってるのよ。

 「余命4ヶ月と言ったが、あれは間違いだった。あと1ヶ月で死ぬ…――というのが真実だったんだ。――だから、今生きてるのも奇跡ってこと。」

 渚佐が…もうすぐで死ぬ…?

 「うそっ…あと3ヶ月は生きられるって…。」

 「無理なんだよ。」

 そんな…。
 マンガはまだ未完成だし、そんなに大きな出来事も起こってないし…。(もっとたくさん遊びたかった)
 このまま渚佐はあっちの世界に行っちゃうの…?

 「くっ…。」

 渚佐が、いきなり胸を押さえ始めた。

 「なぎ…さ…?」

 もうすぐ死んじゃうのかな?
 今まで過ごした時間が無くなってしまうのかな?

 どうしよう…。

 ――私、渚佐のことが好き。

 やっと今気づいたよ。

 口の悪い奴だし、変な行動力あるし、ひどい奴だけど…――。

 …でも渚佐は、いつでもそばにいてくれた。
 私の実力を認めてくれた。優しくしてくれたときもあった。

 …だから私は、絶対に渚佐を守る。

 チャムピョを捨てたって良い。
 私が消えても良い。

 とにかく、渚佐の命は無駄にしない。

 まだたくさんの人生が残っているのだから…――。


●●○○●●○○●●○○●●続く●●○○●●○○●●○○●●

後書き

疲れました…。
本当に完結できるかな…。
…読んでくれた方、ありがとうございます。

※ここまで読んでおもしろくないと思った方は、ぜひ退散ください。きっと後悔しますよ!!!(しないかもしれませんが)

この小説について

タイトル [7]
初版 2008年11月25日
改訂 2008年12月2日
小説ID 2835
閲覧数 1513
合計★ 8
ショコラの写真
ぬし
作家名 ★ショコラ
作家ID 425
投稿数 9
★の数 57
活動度 2125
初めまして!ショコラです(^o^)/
私は全く良い小説を書けない未熟者ですが、よろしくお願いします。
ちなみに、恋愛小説とケータイ小説が好きです。

コメント (5)

★ 2008年11月25日 20時06分16秒
ショコラ様、早速また読みに来ました。

藍良…やっぱり渚佐の事が好きだったんですね…。

何か切なかったです…。

余命が少ないという所に泣けてきます…。

なので、次回作がとても楽しみですw
★ショコラ コメントのみ 2008年11月25日 20時12分46秒
[愁様]

またまたコメントありがとうございました!!!
そうですよ〜。切ないですよ〜。
渚佐も大丈夫かどうか…。
ぜひ次も遊びに来てくださいね(^_^)v
次回、渚佐が大丈夫かどうか分かりますから。
★東雲 ヤクモ 2008年11月30日 21時14分09秒
どうしましょう!!!!
って感じです。渚佐どうなんですか!?

あと3話なんて展開がめまぐるしくて、藍良ちゃんもどうなるんでしょう?
結ばれて欲しいんですが、私は。

でも、どんでん返しな展開を期待します。
ハッピーエンドが見たいので。
次回も楽しみにしてます。
★ショコラ コメントのみ 2008年12月1日 21時30分24秒
[東雲 ヤクモ様]

コメント、ありがとうございました!!!
うんうん。ハッピーエンドですよ。
でも、どういう感じに終わらせるかを考え中で…。
また、遊びに来てくださいね♪
(ヤクモさんの作品にも遊びに行きます☆)
葉月 コメントのみ 2010年12月16日 22時06分58秒
たまたま見つけました^^

なんか似てる。

うちは葉月って名前で、
元彼が大和だった><;
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