鬼姫 - -奇跡-

ライン

第13回戦。
光無しと思えた鬼姫。
だが、
事件が起きる。
今まで神掛かり的な強運で
ピタリ当てで難なく勝ってきた
一文字怜の手が止まった。
そう、
見てしまった。
髪の毛を。
運などに頼らずとも
勝ててしまう根拠を見つけてしまった。
だが、
これが真実かブラフかは不明。

「(どっち・・・?
 これは、真実か、嘘か・・・?
 私がこれを罠だと思い、
 このページ開かないようにと、
 髪を挟んでおいたのか。
 また、
 私がバカみたいに
 鬼姫ちゃんの失態を突いて
 このページを開くと仕掛けたのか・・・)」

考える。
一文字怜は、蛇足に考えを募らせる。
果たして、
鬼姫の意思とは。
2分の1の確率。
だが、どうしても
頭の中では考えてしまう。
この鬼姫が仕掛けた罠に。
そう、
神に愛されし女だからではない、
人間だから。

「(踊らされてる・・・
 私は今、
 完全に鬼姫ちゃんに踊らされてる・・・!
 髪の毛さえ見なければ、
 私は普通に勝っていた・・・!
 神の力で。
 だけど、今はもうダメっ・・・!
 どうしても、
 考えちゃう・・・・。
 ・・・真実か、ブラフか・・・?)」

「(な、何かよく分からないけど、
 一文字怜が止まってる!!
 考えてる、
 考えてるんだっ!
 流れはどう見ても一文字怜だった!
 けど、
 鬼姫が何かをしたんだ!
 ・・・やっぱり、最後まで悪どい野郎だぜっ!)」

「・・・ククッ・・・・」

流れはまた、
一文字怜のもとを離れ、
鬼姫へと寄っていく。
それは一文字怜も承知のこと。
だが、
どうしても変えられない。
考えてしまう。
思考してしまう。
無駄に、意味もなく。
相手が、鬼姫だからこそ余計に。

「(・・・っく・・・・。
 だったら・・・
 だったらこんな髪、無ければ良いのよっ!
 見なかったことにすれば、
 全てが元通り!
 こんな髪っ・・・・!)」

すると、
一文字怜がここで行動に出る。
本に挟まっていた
髪を抜き取ってしまったのだ。
そう、
これは正しい判断。
悩むよりは、
何も考えずの最初に戻った方が良い。
さすがは一文字怜。
だが、一文字怜の頭の中は違った。
数秒後、
ある闇が、一文字怜の脳を支配する。

「(・・・・ぬ、抜いちゃったけど・・・。
 もしかしたら、
 あれは本当に544Pだった・・・?
 もし、
 本当に544Pに挟んであったのなら、
 私はとんでも無いことを・・・。
 ・・・もし、本当だったら・・・・
 本当だったら・・・・・・・・・・・)」

「・・・・・ククッ・・・・
 どうしたの、神様・・・・・?」

「?」

「・・・・信んじて見れば?
 神って奴を・・・・。
 ・・・・他人が作った、他人の言葉の、他人の存在・・・
 神って奴をさ・・・・」

「ッ!!」

不安。
一文字怜の体を、
不安という怪物が襲いかかる。
恐れた。
一文字怜は恐れていたのだ。
これでもし、
自分の判断が間違っていたら、
この先きっと、
自分は流れを掴めない、負けると。
それどころか、
拠り所の神にすら見捨てられると。
それがもっとも恐ろしかった。
そんな一文字怜を、
鋭い眼差しに見つ鬼姫。

「・・・・・ククッ・・・・
 勝てない・・・・・」

「?・・・
 何か言った?
 鬼姫ちゃん・・・・」

「・・・・アンタは勝てない・・・・・。
 アンタには重大な欠点がある・・・・・・」

「ッ!!
 ・・・け、欠点・・・・?
 この私に、
 一文字怜に、
 欠点があるって言うの・・・?」

何と、
いきなり鬼姫が
一文字怜には欠点があると
言いだしたではないか。
一文字怜は
少し驚いた表情で、
鬼姫の所をにらむように
見つめる。

「・・・・確かにアンタは、強運・・・。
 常人を遙かに凌ぐ、凄まじき強運・・・・・。
 ・・・・・だけど・・・・
 結局は、人間・・・。
 ・・・アンタは人間・・・・。
 そこが、最大の欠点・・・・・・」

「そ、そんなことっ・・・!!」

「・・・本当は、アンタが一番恐れてる・・・・。
 ・・・その神の力に・・・・。
 ・・・・・見放されるのを、恐れてる・・・・。
 ・・・だから、勝てない・・・・。
 ・・・・・アンタは神じゃない、人間だから・・・・」

「っく!!
 そ、それは・・・・
 それは勝ってから言うセリフよ、鬼姫ちゃん!
 これで決着をつける!
 ・・・何もかも・・・・!
 私にめくるページは・・・・
 ・・・・・ここっ!!」

挑発。
鬼姫の、最後の挑発。
それが、
一文字怜の核心をついていた。
動揺、
隠せない動揺が一文字怜の体を貫ける。
そして、
必死になって本のページを
めくろうとする。
全てが、
これで全てが終わる。
二人が本のページをめくり終える。
そして、ついに来る。
13回戦、結果。
果たして・・・・・。

「(く、来るっ・・・・!!
 13回戦、結果っ・・・・・!!
 さっきまで流れは一文字怜だった。
 けど、
 今はどうだよ・・・?
 まるで違うっ!!
 一文字怜は逆に焦ってるっ!!
 ・・・どうなる・・・!?
 どうなっちまうんだよ・・・!?)」

「・・・・・これで、終わるわね、鬼姫ちゃん」

「・・・・うん・・・・」

「・・・・・たぶん、これで終わっちゃうわ。
 この勝負も、
 私か鬼姫ちゃんの命も・・・。
 ・・・・ウフフッ・・・」

「・・・・・ククッ・・・・」

「・・・・そう、恐れていた。
 私は神の力を恐れていた。
 ・・・だからこそ、その力が尽きる前に、
 アナタと戦いたかった・・・。
 ・・・・だから、勝つ・・・・。
 何としてでも、勝つっ・・・・・・!!
 今のアナタを、
 最高の私の状態で、勝ってみせる・・・・!!
 私のめくったページ・・・・!!」

鬼姫、
そして一文字怜も感じていた。
勝負は、
ここで決着する。
何があろうと、
もう14回戦は無い。
全て終わる。
それを確認しあい、
そして、
お互いの最後の力をぶつけあい、
今、
開示される。
最後の大勝負。
13回戦の結果が。
まずは一文字怜の結果。

「(頼むっ・・・・・!!
 ここで一文字怜がピッタシだったら、
 もうダメっ・・・・!!
 一歩通行の敗北っ・・・・・!
 頼む、
 頼むぅっ・・・・・!!
 ・・・・・奇跡よっ・・・・・!)」

「・・・・・ウ、ウフフッ・・・・・」

「・・・・・・早く言ってよ・・・」

「・・・・・怖いわね、鬼姫ちゃん・・・」

「・・・・・・」

「・・・・アナタは、本当に怖い・・・・。
 ・・・・・たった髪の毛一本で・・・
 これだけ人の心を壊せるんだから・・・・。
 ・・・・・私のページは・・・・」

息ができぬほどの、沈黙。
これが
高校生の勝負とは思えない。
まさに、
核戦争並みの緊迫感。
気を緩めば、
一気に蒸発。
体中が、全て溶け出す。
その口火を、
一文字怜の言葉が発す。
そして、
その結果とは・・・。

「・・・・・・私のページ・・・・  
 ・・・・・・・545P・・・・・」

「ッ!!!!!!
 (は・・・・・はずした・・・・!?
 確か、
 544Pだから、
 1Pの誤差っ!!
 ミスった、
 あの一文字怜が、ここにきてミスったんだ!!
 よし、よし、よし、よしっ・・・・!!
 OKっ!!
 最高の展開っ・・・・!!)」

「・・・・ククッ・・・・・
 ・・・・・当然の結果・・・・・・」

「・・・何かしら、鬼姫ちゃん・・・」

「・・・・アンタは疑った心を持ったまま・・・
 運にまかせページをめくった・・・・。
 ・・・当然、ページをめくる手に勝機は無い・・・。
 ・・・・必然・・・・
 ・・・・・アンタがミスを犯すのは必然・・・・」

何と、ここにきて一文字怜が
痛恨のミス。
今までピッタシを当ててきた
一文字怜が、
まさかの1Pの誤差を生じる。
これで、
とりあえず無条件の敗北は逃れた鬼姫。
あとは、鬼姫。
全ては、鬼姫の手の中。
鬼姫のページで、何もかもが決まる。

「(さぁ、後は鬼姫っ・・・・!!
 オマエが、すべてだ・・・!
 何もかも、オマエの結果しだいだ・・・・!
 ・・・・いけ、いっちまえ・・・・!!
 ・・・・・神を、ブッ倒しちまえっ・・・・!!)」

「・・・・・・・・ククッ・・・・
 風、か・・・・」

「・・・?・・・
 何か言った、鬼姫ちゃん」

「・・・・アンタが前に言った・・・・。
 勝負が終われば、皆燃えカス・・・・。
 ・・・・・風に吹かれて消える・・・・」

「・・・・えぇ、言ったわね」

「・・・・・・違う・・・・・。
 風に吹かれても、燃えカスは宙を舞い・・・
 ・・・そして、再び元の場所へ戻る・・・。
 ・・・・・そう、挑む・・・
 挑み続ける・・・・戦いの場へ・・・・ 
 ・・・燃えカスになってでも・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・けどアンタは挑むことを忘れた、
 ・・・・・・すでに燃えカス以下・・・・。
 ・・・負けるしかない・・・・
 ・・・・・アンタにはもう、敗北しか残って無い・・・・。
 ・・・負けて・・・・
 ・・・・・戦いの場へ戻ってきな・・・・
 ・・・・・・私のページは・・・・」

鬼姫の言葉。
それは、以前に聞いた
一文字怜の言葉を自分なりに
解釈したことだった。
勝負が終われば、
勝者と敗者しか残らない。
だが、
我々が人であり続ける限り、
勝負への欲求を満たされない。
この女、
一文字怜を除いて。
戦うことを恐れた、彼女を除いて。
そして、ついに運命は来る。
鬼姫のめくったページ。
その全ては・・・・。

「・・・・・ククッ・・・・・
 悪いね、神様・・・・・
 ・・・・・455P・・・・・
 ・・・・ピッタシだ・・・・」

「ッ!!!!!!
 あ、ぁ・・・・?・・・・・・
 へぇ・・・?
 か・・・・勝った・・・・・?
 ピッタシ・・・・・?
 ・・・・鬼姫は7勝だから、ピッタシで3勝・・・
 ・・・・じゅ、10勝っ・・・・!
 ・・・あ、あぁああ・・・・
 あぁああああああああ・・・・・!!」

「・・・・あらあら・・・」

「か、勝ったぁあああああああーーーーーっ!!!
 鬼姫がぁあ・・・
 お、鬼姫がぁああ・・・・!
 一文字怜に、
 神に愛されし女に勝ったんだぁああああーーーーっ!!!」

終結。
ここに、鬼姫対一文字怜の
対決は終結を迎えた。
最後に鬼姫が
めくり当てたページは
455P。
奇跡のピタリ当て。
神すらも凌駕した瞬間。
何もかもが、
一文字怜を上回った瞬間。
その時、
完全なる
鬼姫の勝利が確定したのであった。
弁慶は喜びたいのか、
泣きたいのか、
分らずに、ただ踊るように教室を駆ける。
鬼姫はただ、安堵した表情で
目をつむる。

「やった、やった、やったぁあっ!!
 やったぜ鬼姫っ!!
 オマエ、勝っちまったんだぜ!?
 あの一文字怜に、
 勝ったんだぜ!?
 ・・・・オマエは・・・・
 本当に・・・・・最高の女だぜ・・・・!」

「・・・・・ふーん・・・・」

「ふ、ふーんってなぁ・・・。
 相変わらずだな、オマエは。
 ・・・へへっ!!
 でもそれがオマエらしいや!
 これで全てが終わったんだ!!
 早く・・・・」

「・・・・・待って・・・・・」

「?」

喜びに浸る弁慶。
そんな中、鬼姫はいつもの
表情に戻る。
やはり鬼姫にとっては
神に勝つことすら当然のことだったのだろうか。
だがしかし、
それは突然、
突然のことであった。
負けたハズの一文字怜が、
何かを言い始める。
敗北者が何を言っても
戯言。
それはよく承知しているハズなのだが・・・。

「・・・・喜ぶのは、まだちょっと早いんじゃないかな?」

「え、えぇ・・・?
 一文字怜っ・・・・!!
 何言ってんだよ!!
 もう終わった!
 こっから、何が変わるってんだ!
 まさか、
 ヤクザの武力で勝負を無効になんて・・・・!」

「・・・・違うわよ、弁慶君。
 ・・・・・まだ、私に勝ちの可能性はある・・・」

「あ、あぁあ・・・・?
 ふざけんなっ!!!
 そんなの、あるワケないだろっ!!
 バカも休み休み言ってくれよ!」

「・・・・・・私が今めくっている545P・・・。
 だけど・・・・・。
 ・・・・次のページも、545Pだったら・・・?」

「え・・・・・えぇ・・・・?」

「ッ!!」

この時、
困惑して何も言えない弁慶とは
対照的に、
鬼姫は、今までに無いほど
恐怖を感じていた。
そう、あくまでも
彼女は神に愛されし女。
鬼姫は、それを思い出していた。
今までの、
彼女の奇跡的な勝負の数々を。
そして、急激に恐れた。
その言葉に。
だが、弁慶は相変わらず、
それをただの見栄だと思い、
一文字怜を攻め続ける。

「そ、そんなことあるかよ!!!
 そんな奇跡、
 あってたまるかっ!!
 ・・・じゃ、じゃぁ何だよ・・・・。
 印刷ミスって言うのかぁ・・・・!?
 その545Pは、
 印刷ミスで、
 本当は544Pだって言うのかぁ・・・・!?」

「・・・・・ウフフッ・・・・。
 まぁ、そういうことね。
 ・・・・簡単なこと・・・。
 次のページを見れば、
 すべてが分かる・・・・・。
 ・・・そうよね、鬼姫ちゃん・・・?」

「ッ!!!!・・・・・
 ・・・・・う、うぅ・・・・・・」

「え、えぇえ・・・?
 どうしたんだよ、鬼姫・・・・?
 何、焦ってんだよ・・・・。
 ・・・そ、そんなワケ無ぇだろ?
 印刷ミスなんて、
 それこそ何兆分の1の確率だぜぇ・・・?
 ビビることは無ぇだろ?
 ・・・こんなの、あるワケ無ぇだろっ!!!」

「・・・・・どうかな・・・・・。
 ・・・ウフフッ。
 さぁ、めくってみましょうか・・・」

あり得ない。
そんな奇跡、あり得るわけがない。
もし当たっていたら、
本当に神。
神が奇跡を与えたとしか
言いようがない。
だが、事実。
鬼姫は震えていた。
このバカげた状況に、
誰よりも震えていた。
今にも泣きそうな表情で。
ゆっくりと、
一文字怜のページを覗く弁慶。
果たして、
その結果は・・・・・・。

「・・・・・・・ウフフッ・・・・・。
 ・・・ゴメンね、鬼姫ちゃん・・・・・」

「あ・・・・あぁあ・・・・・!
 (そ・・・・・そんな・・・・・
 そんなバカなっ・・・・・・・・・・!!)」

「ウフフッ・・・・・次のページも・・・
 545P・・・・・」

「う・・・嘘、だ・・・・
 ・・・・・・嘘だぁあ・・・・・・!!」

「・・・・・つまり、印刷ミス・・・・。
 私がめくったのは・・・・
 ・・・・本来544P・・・・
 故に、
 ・・・・11勝10敗・・・・。
 ・・・・・・私の勝ちね」

衝撃の風が、
弁慶と鬼姫の体をふきぬける。
あまりのことに、
何も言葉が出なかった。
ただ、
目の当たりにしたのだ。
そう、
「神」の力を。
圧倒的なる奇跡を。
勝負は逆転。
勝者は、一文字怜。
敗北者は、鬼姫。
負けた、完璧に敗北してしまった。
今もまだ、
鬼姫は身動きすらとれなかった・・・。

後書き


一文字怜の印刷ミス。
もしかしたらこれは、
このような展開を予想した怜の罠だったかも
しれない・・・。


次回、最終話「虹色」

この小説について

タイトル -奇跡-
初版 2008年11月28日
改訂 2008年11月28日
小説ID 2837
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