りれしょ物語 - 約束

 雛利と九条先輩がうまくいったのをずっと公園の片隅で見ていた俺と小雪。
小雪の方はうまくいったことが本当に本当に嬉しかったのだろう、ずっと隣でニコニコとした満面の笑みで2人が居た場所を見つめていた。




―そんな小雪を愛しく思えた。




「もう2人も居ないことだし、そろそろ私達も帰ろうか?」
「へ?あっ……うん、そうだな」




ふいに声を掛けられてしまったもんだから、焦ってしまった。
心臓の音がドクン……。ドクン……。 大きな音が鳴り響くのを小雪に聞こえてしまうのではないのかと不安になってしまった。



「ん……? どうしたの、早く帰ろう」
「ちょっと待てよ」



どうやら小雪には心臓の音は聞こえていないらしく、安心した。
俺達は帰路に戻り、ただ黙って寄り添いながら歩いていた。
空はもう落ちかけていた。


「はぁ…良かったねあの2人。 やっぱり私が居て正解だった」
「今回はたまたま成功したけれど、本当に危険な賭けだったよな」
「まぁね…でも好きなら『好き』って相手に言わなきゃ伝わらないよ」
「そ、そうだな」



2人はこのあとただ黙って歩いた。
しかし沈黙を破るのはいつも小雪だ。


「ねぇ、ところでもう少しで試験だけれども剛は大丈夫なの? ちゃんと勉強してるの?」
「俺に試験の話題で大丈夫だったことなんてあるか? 勉強してると思うか?」
「ない」
「即答だな……。まぁ本当に今回はヤバイかもしれないな。 今日は勉強する気はあったんだけれど雛利達のこと見てたら勉強なんかする気が失せちまったよ」
「そうよね……って、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! アンタ、赤点取ったら留年かもしれないんでしょ?」
「……ぅん」




言葉が出なかった。
自分自身が一番理解していたはずなのに勉強を後々に雛利達のせいにして回していることに恥ずかしくなってしまった。
落ち込んでいる俺の顔を見た小雪は呆れていた。




「ふぅ……もうそんな顔をしないの。 まだ時間があるんだから、わ、私もべ……」
「べ? なんだよ?」
「べ、勉強を教えてあげるんだから!」
「……本当か?」
「ぅん」




小雪の顔は真っ赤に染まっていて、まるで夕刻の太陽みたいだった。
俺のことを心配してくれている人がいてくれたと同時にそれが小雪で良かったと嬉しさが込み上げた。




「じゃ、じゃあ今度の日曜日にお前の家で教えてくれよ」
「へ……ぅん」
「俺の家だと人様を呼べるほど綺麗じゃないからな」
「分かった! 私の部屋も綺麗にしとく」
「だから剛も綺麗にしなさいよ。 今度は私が剛の家に行くんだから」
「ぁ、ああ!」




小雪はまた嬉しそうな笑顔を向けてくれて、本当に可愛いなぁと思ってしまった。
こんな気持ちになるのは初めてだと感じ、自分も自然と笑顔になっているのが分かった。




「じゃあ、また学校でね」
「あぁ……ホントにいいのか?」
「大丈夫だよ、もうすぐそこなんだからさ。 剛も早く帰って勉強しなきゃいけないでしょ」
「まぁ…そうだけど……」



小雪の家と俺の家の中間辺りで別れた。 家まで送ると言ったのだが、それを小雪は拒んだ。 手を振りながら去って行く小雪がこのまま居なくなってしまうのではないかという不安が急に込み上げてきた。 そんな気持ちを振り払いながら家の途中にあるコンビニに向かった。




「いらっしゃいませ」




帰る前にコンビニに寄って週刊誌を立ち読みをしていたときに遠くのほうから救急車のサイレンが鳴りながら近づいたきた。




『ピーポーピーポ……ピーポーピーポ―……』
「救急車が通ります車の方は恥のほうへと止まりください」




救急車は猛スピードでコンビニの前を通り、すぐさま姿を消した。
しかし俺は姿を消した救急車をずっと目でなぜか追っていた。
週刊誌を勢いよくバタンと閉じて、家に帰った。




「ただいま。って言っても誰も居ないか」」
『ピロリロリン…ピロリロリン…ピロリロリン…ピロリロリン』




家に着いたとたんに携帯着信音が鳴った。
さっきの不安がなぜか頭を過ぎり、静かな家の中が余計に不安にさせた。
携帯を取り出すと着信者は「村崎」と出ていた。
恐る恐る電話に出る俺。




「もしもし……どうした?」





この電話が俺の運命を変えることも知らずに……

後書き

今回は展開をあまり伸ばさずにストーリーを進めましたが、最後の方はぜひうまく使ってもらいたいな思います。
剛がこれからどうなっていくのかも気になりますし、村崎もどうなるかが楽しみです。

次はひとり雨さんになりますが、頑張ってください。

この小説について

タイトル 約束
初版 2008年12月13日
改訂 2008年12月13日
小説ID 2875
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ぬし
作家名 ★達央
作家ID 183
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