怖い話シリーズ - 二十歳目前にて

 巷には二十歳まで幽霊を見なければ、
そのような類のものを生涯見ることはないという都市伝説的なものがある……
   


明後日は僕の二十回目の誕生である。

そのことをサークルの飲み会で先輩方に話すと、
突然その都市伝説のことを話し出し、本当かどうか試そうと言い出した……

いきなり何を言い出すんだこの人は……多少なり祝ってくれるのではないかと思っていたのだが、
まさかこういう展開になるとは思いもしなかった。

「いやいや、やめてくださいよ……
忘年会シーズンに肝試しって、大人しくお酒でも飲んでた方がいいじゃないですか」

「だって、お前酒一滴も飲まないじゃんか。皆酔っ払ってお前だけ正常はつまらなすぎだろう。
それに夏にサークルのメンバーで肝試したときに、
(僕は霊感マイナス値なんで平気です)とか言ってひとりでコース回っていったじゃないか。
肝試しを考案した俺達としては、けっこうムカッときたからな。
そのリベンジ?も兼ねてやろうって言ってるんだよ」

先輩のひとりが赤くなった顔を近づけ、二カッと笑いそう言った。

確かに僕は霊感というものはまったく持っていない。
第一、うちの家系全員が霊感やそういう類のものがない、また信じてもいない。
だから必然的に僕も信じていない、だから肝試しなども普通にひとりで行える。

しかし、だからって今行かなくてもいいだろうと思う。
今日はバイトも休みを取って、飲み会を楽しもうと考えていたのに……

先輩方から変なやる気オーラが出ているのを感じ取り、仕方なくその話に乗ることにした……




 車で約一時間、そこはさっきまで僕らがいた街の中心部とは程遠い……
静かというよりは無音と暗闇の世界が広がっていた。

先輩方は先に車から降り、既に持っていた懐中電灯をつけ、暗闇の中で僕を手招きした。
車から降りた僕は急いで先輩方の跡についていく。ふと何気なく時計を見ると、すでに0時を回っていた……

渡された懐中電灯であたりを見渡す。……何もない、ただ雪に埋もれた林といくつかの民家があるだけで、
他は何もない、なんとも寂しい場所である。

先輩方は急に立ち止まった……そして懐中電灯を前に突き出す……


 「着いたぞ、本日の肝試しはここでやろうじゃないか……」


そこは……何てことのない、ただの道だった。

地元の散歩道といった感じのちいさな道で、雪で真白になっている。

「……何か微妙な感じですね。……ホントにここですか?」

「ああ、ここだよ……ここを一人で歩いてきてほしい。
だいたい500メートルくらいの道だし一本道だから迷うことはないだろう。
俺たちは反対側で待っているから、5分後スタートにしようぜ。
逃げるなよ、逃げたら大学中に言いふらすからな」

「逃げませんよ……このくらいなら、全然平気だと思います」

「お、余裕だねぇ……後で後悔してもしらないからな……じゃあまた」

先輩方は不気味な笑みを残し、そそくさと僕一人を置いて車で去っていった。

まったく、早く終わらせて帰ろう……ああ、誕生日だというべきじゃなかった……




 5分後になった……僕は懐中電灯を握りしめ、暗い道を進んでいく……

枯れ果てた木々が並び、先が暗闇で何も見えない……たしかに不気味といえば不気味である。

しかも地面は雪で真白で、誰もこの道を利用していないのが容易に分かる。
そしてこの暗い道と合わさると、異様にこの道が不気味に感じてしまう。

しかし、ここから何かが出ると言われれば疑わしいものだ……

だいたいさっきからあたりを見渡しながら進んでいるのだが、まったく何もない……
ただ白黒の道が続いているだけである。

きっとこの先に何かあるに違いない……そう思い、足を早め先を進んでいった。

……十分くらい経っただろうか、光が見える……赤と白の光が道の先で輝いている。

それは、先輩達の車だった……すでに僕はこの道の反対側に着いてしまったようだ。

呆けている僕を、先輩方が満面の笑みで迎えてくれる……何か申し訳ない気分になってきた。

「どうだ?怖かっただろう……!?何か出てきたりした?」

先輩のひとりが僕を急かす、……言いにくいが、仕方ない……

「いえ、残念ながら何も……ただ道があるだけで、何もありませんでしたよ」

僕はそう言いながら苦笑いを浮かべた……先輩たちのがっくりした表情が心痛い。

「……本当に、何もなかったのか……?ちゃんと懐中電灯であたりを見渡したか?」

「はい、何にもありませんでしたよ……しっかり見渡しましたし、でも何もなかったです」

「そうか……ここ結構有名な心霊スポットだったんだぜ?
夜ひとりで歩くと、肩を触られるとか突然腕をつかまれるとかさ……
なんだぁ、ほんと残念だよ。せっかくお前の泣き顔を拝めると思ったのにさぁ」

「まぁ、今日はたまたまそういうのがなかったんですよ。やっぱり僕には霊感というものは無いようですね。さぁ、もう帰りましょうよ。もう遅いですし……」

そう聞くと、先輩方はぶつぶつと文句を言いながらしぶしぶ車に戻っていった。
……やれやれ、やっと終わりだ。先輩方には気の毒だけど……これでゆっくりと眠れる。

僕は安心したのか、車へと向かう際にバランスを崩し、滑って転んでしまった。
雪道はこれだから困る……尻もちをついてしまったじゃないか。
……あれ?左手に持っていた懐中電灯が見当たらない。

どうやら転んだ拍子に懐中電灯を落としてしまったらしい。
自分で言うのもなんだが、かなりのどん臭さだ……

「おいおい、大丈夫か?まったく、滑りやすいんだから注意しろよ……」

先輩は手を出し、倒れていた僕を立たせてくれた。

「すいません、どうやら懐中電灯を落としたみたいで……電源切っておくんじゃなかったな」

「ああ、それならあの道の入り口のところだわ。ほれ、後ろ見てみろって」

振り向くと、後ろが淡く光っていた……。どうやら落ちた際に、電源が入ったのだろう……

「それにしても、今日は散々だったなお前も。幽霊も出ないし、ただ時間を無駄にしただけだったな」

先輩が頭を掻き、溜息をついてそう言った。
どうやら、この先輩はあまり肝試しには乗り気ではなかったらしい。

「しょうがないですよ、他のみなさんはやる気マンマンでしたし。
でも、どうやらこれで一生幽霊を見ずに二十歳の誕生日を迎えられそうです。
そもそも、そういう都市伝説的なものは、頭から信じていませんけどね」

先輩もそうだなっと苦笑いを浮かべた。それにつられて僕も笑ってしまう……

僕はそこにある落とした懐中電灯を拾おうと、入り口へと向かった。
懐中電灯は真白な地面を、鮮明に照らしている……



「何だかんだ地元の人も、この道を利用しているみたいだな。
                  
                       見ろよ、そこらじゅう足跡だらけだわ……」


僕は息を呑んだ……でも、先輩の言葉に驚いたわけではない。もっと衝撃的なものがあったからだ……

入口の前で、先輩の目線は足元に向けられていたが、僕の目線は、前方に向けられていた。



……そうか理解した、僕は気づいてないだけだったのか……まったく、泣けてくるよ……

                        
           ああ、まったく羨ましい……足跡だらけ、か……先輩はそう言った……
                  
               以前の僕ならそう思い、ただ不気味に感じただけだっただろう。


今、僕が見えているのは足跡だけではなく、その持ち主も同時に見えていた……

それらは中年のサラリーマン風だったり、小学生くらいの女子、
腰の曲がった老婆といった幅広い年齢層で構成されていた。

しかしどうしたことだろう、皆こっちを見て焦っている……
それだけではない、何か手を合わせて謝っているような素振りを見せている者までいた。

おまけに……僕に向かって20代くらいの男が何か言っているのが分かった。

最初は何を言っているのか、かすれていて聞きづらかったが、次第にはっきり聞こえるようになってきた。


     「ごめん、せっかく二十歳になるとこだったのに申し訳ないことしたわ……ホントごめん、
君の言葉でみんな気づいたのよ。その時に皆慌てて隠れたんだけど……間に合わなかったみたいで」     


……どうやらこの都市伝説は実話だったようだ。
そもそも、それを自分自身で実証するとは……思わず笑ってしまう。

明後日が誕生日だというのに、何とも惜しいことをしたと……
悔やんでもすでに手遅れであったことは、言うまでもなかった……








後書き

いきおいで書いたのですが、何とか書き終えました。
もしこの作品を読んで、気軽に評価をしていただければいいなぁと思います。怖い話を書くと、夜が少し怖く感じますが……けっぱります。

この小説について

タイトル 二十歳目前にて
初版 2008年12月26日
改訂 2008年12月26日
小説ID 2905
閲覧数 1243
合計★ 10
みかんの写真
ぬし
作家名 ★みかん
作家ID 445
投稿数 12
★の数 167
活動度 3999
みかんです、みかんと言ったら、みかんなんです。

コメント (5)

武士つゆ 2008年12月27日 17時31分41秒
所々気になる所はあるものの、全体的に読みやすい文体で良かったです。
マイナス面では、もう少し、話を膨らませて欲しいと思いました。せっかく導入が巧いのに、勿体ない感じがします。
とはいえ、初めてでこれなら十分凄い事だと思いますので、これからもまったりと作品を書き続けて下さい。
みかん コメントのみ 2008年12月27日 18時58分58秒
武士つゆさん、コメントありがとうございます。
これからも頑張って書いていきたいと思います。
武士つゆさんのコメントを頭に入れ、よりより作品になるよう
努力をしながら、ゆったりまったりと書いていきたいです。
もしよろしければ、また評価をお願いしますね。
★水原ぶよよ 2008年12月31日 2時30分57秒
ホラーというジャンルとして読むには、主人公たちの怖いと感じる描写が不十分かと思います。
しかしながら、全体的に読みやすかったです。
「ごめん、せっかく二十歳になるとこだったのに申し訳ないことしたわ……ホントごめん、
君の言葉でみんな気づいたのよ。その時に皆慌てて隠れたんだけど……間に合わなかったみたいで」
優しい幽霊さんたちに愛着さえ感じてしまいました。
また幽霊を見てしまった主人公も幽霊を見た割にはクールなあたり、読み手に怖いと感じさせるものがあまりに少なすぎると思いますが、非常に楽しめました。
今後に期待しております。
★みかん コメントのみ 2008年12月31日 17時02分49秒
水原ぶよよさん、コメントありがとうございます。

今後もホラー系の作品を中心に書いていきたいと思います。

また主人公の描写を上手くかけるように心掛け、呼んだ人が
眠れなくなるぐらいの作品をかけるように努力します。

しかし、ホラーというには
いささか軽い話もいくつか書く場合がありますので、

もしよろしければ、それらの作品も気軽に評価やコメントをお願いします。

黒猫 2013年8月23日 15時52分12秒
はじめまして黒猫です^^
まず感想を・・・(^^)
全体的にすっきりまとまってて.とても読みやすかったです
幽霊さんがいい人すぎてちょっと萌えました笑これからも頑張ってください!
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