res are

『今日も――僕の薄汚い欲望が、君の綺麗な体を穢していく
 
 あの日、あの場所で、僕は君を見つけ、そして、拾った
 多分、あの出会いは運命でもなければ、奇跡でもなくて

 君を連れ帰る間、
 どうしてあんな所で一人うずくまっていたのか、僕は訊かなかった
 誰かに捨てられたのかもしれないし、自分から飛び出して行ったのかもしれない
 だから、僕は何も訊かなかった

 そうして始まった君との共同生活は、酷く歪なものだったと思う
 君はいつだって無口で無表情で、無感動だったから
 だから僕も君に対しては、いつだって無言で無愛想で、傍若無人に振舞った
 好きなときに君の体を押さえ付け、無理やり君の体を穢した
 君は拒みもしなかったから、無理やりというわけでもなかったかもしれないけど
 いや、それは僕の都合のいい願望だな

 でも、
 ただ一つ、君は僕にこう言った
 最後まで捨てないで下さい、と
 
 僕は君の白くて柔らかい体を押さえ付けて、穢す
 君は泣きもしなければ、拒みもせず、僕の為すがままだ
 抵抗しない君を僕は、穢す
 君はただ穢されていく

 あんなに一緒だったのに、僕たちはろくに会話さえしたことがなかった
 君が無口だったせいもあるし
 僕も君と話そうとは思わなかったから

 そういえば、一度だけ、そう、たった一度だけ会話らしきものをした気がする
 
――自分の意思もなく、ただされるがままに穢されていく。君は、そんな自分に嫌気が刺さないのかい?
――貴方はわたしが不幸だと思いますか?
――さて、ね。僕には幸福の定義なんてものが分からないから、その質問には答えることが出来ないな。でも、僕に言わせれば、少なくとも君が幸福であるとは思えない
――なるほど。幸福でないことが不幸であるというのなら、まさしくわたしは不幸でしょう。ですが、わたしには不幸でないことが、また、幸福であるとは思えません
――矛盾したことを言うね。パラドックス、いや、鉛筆と消しゴムだ
――どういう意味でしょう?
――鉛筆がないなら、消しゴムなんて必要ないだろう。矛がなければ、盾で身を守ったって仕方がない。不幸がないなら、幸福になったって意味がない。戦争と平和だってそうさ
――リアリストに見えて、意外とロマンチストなんですね
――ふん、からかわれるのは趣味じゃないんだけどね

 あんなに君と話したのは、後にも先にもあの一回こっきりだったかな
 
 僕と君の関係はそれからも変わらなかった
 僕は君を穢し続けたし
 君は僕に穢され続けた
 僕は、君の今にも折れそうな華奢な体を押さえ付けて
 君は、僕にその柔らかな体を押さえ付けられて
 ただ穢し続け、穢され続けた

 そうして、
 君のあんなに白くて美しかった肌は、黒く穢されて
 君のなめらかで柔らかだった肌は、歪に変形して
 酷使された君の体は、初めて出会ったときの三分の一にまで擦り減ってしまった

 それでも、君は言うのだ
 最後まで捨てないで下さい、と』――某文房具会社の紹介文より抜粋

後書き

どうも、初めましての方もそうでない方も鷹崎篤美です。
今回は、ひどく歪な純愛コメディ−です。
互いに重すぎる愛を持ちながら、今一つ素直になり切れない二人。
いや、ねぇ。
こういうのもありかなーと。自分の書いたものに責任を持ちましょうってな話ですがね。
しかし、あの落ちは三十分での限界かと。
まったくもってこの体たらくには、自己嫌悪さえ生温いですが。
途中の会話文はいらないかなーとも思ったのですが、ああいう会話が好きなもので、ここでも平にご容赦を。
それではー

――最近、平にご容赦を、で切り抜けようとしている自分がいる。

この小説について

タイトル res are
初版 2009年1月4日
改訂 2009年1月4日
小説ID 2931
閲覧数 924
合計★ 4
鷹崎篤実の写真
ぬし
作家名 ★鷹崎篤実
作家ID 202
投稿数 6
★の数 13
活動度 8906

コメント (2)

★冷奴 2009年1月4日 23時12分54秒
こんにちは、先日コメントをいただいた冷奴と申すものです。
篤実さんの作品、いくつか読んでみましたが、今回のこの小説(詩ですかね?)は篤実さんの作り上げられる独特の重暗い雰囲気が出ているように思えました。私ではそういった雰囲気が活字でなかなかに表せないので、素直に斬新さを感じます。
特に、文中の会話では前後の文章で表しにくい『君』と『僕』の具体的な関係がわかりやすく纏まっている所はぜひ見習いたい所でありました。
しかも最後の一文でご丁寧にオチまでつけて。
まずそんな紹介文を考えた文房具会社さんはPTAに訴えられそうですよね。
理由はきっと、「文房具のクセになんか卑猥だ。」素敵です。
それでは、稚拙な感想文ですが、何かの足しになれば幸いかと思います。
長々とすみませんでした。
★ナナクサ コメントのみ 2009年1月6日 15時01分26秒
初めまして。ナナクサと申します。
小説読ませていただきました。
言い回し方がとても良くて、だいすきです。
最後まで捨てないで下さいと云い続ける"君"がとてもキレイで素敵だなと思いました。
とても勉強になりました。
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