「続・道の駅」

あかり
「道の駅」--そこには見た事もない野菜らしき物や、果物らしき物等を売っている、小さな古い木造の駅だ。

もちろん電車は来る。食べ物もあれば、少ないけれど傘等という日用品があり、ここには結構人が出入りする。

もはや普通のスーパーと変わりない。でも、地図には載っていない不思議な駅だ。

そして、私は店番をしている。ここに来てもう4年になり、従業員は私と駅長のみだ。駅長は今年で満71歳の老紳士で、

いつもステッキを横にくるくると回しながら唄を歌って、陽気にあと少しで来る電車を待っている。

去年の盆に、珍しい客が私の前に姿を見せた。「ユイ」といって、盆にだけ現れる霊だ。悪霊ではない。

ユイは私の死んだ息子瓜二つだった。行き場の無いユイを私は盆の間だけ家に引き取った。

そして、ユイは盆が終わるその日に帰って行った。私はユイの無邪気な顔を今でも忘れない・・・。


「ユイ!」

そして今年の盆、ユイは電車に乗って帰ってきた。ユイは無邪気な顔を浮かべてこう言った。

「野菜カレー!食べに来たよ!」

私達は互いに、ニッと笑顔を浮かべた。「ニンジン入れないでね」とユイ。「天国で克服してないの?」と私。

色んな話をしながら家路に着いた。その日の夕食はニンジン多目の野菜カレー2人前だった。


「道の駅」でユイは文房具を買った。去年と同じ文房具だ。私は何故かそれが気にかかった。

それをジッ・・・と見つめるユイに「それに何か思い入れでもあるの?」と尋ねると、「・・・」ユイの表情が変わった。

去年買った同じ文房具ではいけないのか・・・。私は小さなユイの頭を撫でながら「さ、もう寝よう!明日はどっか行こう!」

「ホント!?」途端にユイの無邪気な顔に戻った。やはり子供は単純だ・・・。


「どっか行こうって言うから遊園地か海遊館かと思ったのに・・・」と残念がるユイ。やはり子供は単純だ・・・。

「はっはっはっ!こんな田舎にンなもんあるわけないでしょっ公園で我慢しなさーい」

そこは森に囲まれた公園で、「砂場」「シーソー」「ブランコ」「鉄棒」「ベンチ」がある。他に人はいなかった。

ユイは1人ですべての遊具を満足げに楽しんでいた・・・かに思えた。

途中でユイの顔が真っ赤になった。前方から女の子が歩いてくる。ユイより少し年上に見える・・・なるほど・・・。

「ねえ!ちょっと子のこと遊んでくれる?」と私は女の子を呼び止めた。彼女は大きな澄んだ瞳でユイを見た。

「ちょ、何言ってんだよ!メーワクだろ!」ユイは耳まで赤くしながら涙目で抗議した。そのとき・・・。

「いくつ?」女の子がユイに声をかけた。ユイは石のように固まり、「きっ享年6さいっ・・・」ごつん。ユイは私の鉄拳をくらった・・・。


もうすぐ日が沈む。女の子は帰って行った。ユイは今日初めて出来たガールフレンドの事を話すのに夢中だった。

私がベンチで見聞きしてたとも知らずに・・・。ユイにとって遊園地や海遊館なんかよりも公園だ。やはり子供というものは・・・。

けれど、私には少し気にかかることがあった。ユイがいつも持って離さないおもちゃの万年筆・・・。


その晩「よっし明日は川へ・・・ユイ?」

ユイの様子がおかしい。おもちゃの万年筆を見ながら泣いている。「どしたの?ユイ・・・」

「この・・・おもちゃ、お母さんにあげるはずだった・・・」ユイのお母さんへの誕生日プレゼントだったらしい。

私と知り合う前から、毎年「道の駅」に来ては買っていたと言う。今晩は、私達は一緒の布団で寝た。


そして、迎えた最後の盆の日。「電車が脱線しましてね・・・」駅長はユイの家族の事について話した。

「え?」駅長が続けた。「この駅へ着く直前でした・・・。犠牲者も多く、彼はその時家族と共に電車に乗っていたんでしょう。」

おそらくユイは家族もろとも・・・。私は何も知らなかった・・・ユイの事を。去年の盆から、息子のように思っていたのに。


電車が来た。別れが辛い。私は無理やり笑顔を作ったが、ユイはそれを見抜いていた。

ユイは満面の笑顔で「そんな顔しないで。はい、コレ」---おもちゃの万年筆だった。あんなに大切にしていたのに。「・・・私に?」

「うん!だってもう必要ないから・・・」ユイは私の背後に立つ女の子を見た。公園で遊んだ女の子だ。私はまったく気が付かなかった。

ユイは言った「ね、お母さん」と。女の子もにっこりと微笑み電車に乗った。まさかあの女の子がユイのお母さんだったなんて・・・。

そしてドアが閉まり、ユイとユイの本当の母は天国へと帰って行った。私はおもちゃの万年筆を、きゅっと握り締めた。

来年・・・また会おうね。ユイ。


「道の駅」--そこには見た事もない野菜らしき物や、果物らしき物等を売っている、小さな古い木造の駅だ。

もちろん電車は来る。食べ物もあれば、少ないけれど傘等という日用品があり、ここには結構人が出入りする。

もはや普通のスーパーと変わりない。でも、地図には載っていない不思議な駅だ。

そして、私は店番をしている。ここに来てもう4年になり、従業員は私と駅長のみだ。駅長は今年で満71歳の老紳士で、

いつもステッキを横にくるくると回しながら唄を歌って、陽気にあと少しで来る電車を待っている。

この小説について

タイトル 「続・道の駅」
初版 2009年1月19日
改訂 2009年1月19日
小説ID 2960
閲覧数 676
合計★ 6
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コメント (3)

★エーテル 2009年1月20日 0時47分12秒
ファンタジーとして雰囲気がいいと思いました。
老人と 子供 といった組み合わせは表現するに当たって大変難しい執筆作業となると察しがつきます。

霊界とか黄泉の国とつながった現実としての伏線に駅を持ち出すのは斬新とはいえないのですがなんとも感じのいい作風になっていて大変好きな作風だと思いました。
★みかん 2009年1月20日 10時57分01秒
面白い作品でした。

こういう作風は私も好きですね。

とても読みやすいので、
もう少し長くても全然大丈夫だと思います。

次の作品も楽しみにしてますね。
あかり コメントのみ 2009年1月20日 11時56分10秒
「続・道の駅」を読んでいただけてとても嬉しいです。

私は田舎の駅の優しい雰囲気が好きで、

そこには何か物語の始まりがあるように思えるんです。

何かが始まり何かが終わっていく・・・。

その媒体が、私にとっては駅なんです。

前作の「道の駅」は[ファンタジー?][シリアス]系に分類しています。

多少読みにくいですが、優しい物語です。

読んでいただけると嬉しいです。ありがとうございました。
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