僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

酒は良い。
嫌な事全てを忘れさせてくれる。
出来れば全て忘れたい。

あの忌々しい



俺のレプリカの存在も。






僕と寝ぼすけ男







「やっぱ無理! あーんな酒臭い空間もう駄目。吐いちゃう」
よくあんな場所にいられるなぁ、とサヤはため息をついた。
男ばっかりだし、絡まれるし。
おまけに未成年であるサヤは弄りの対象で、コウタも助けるどころか一緒に笑っている始末だ。
(あとでぶっとばしてやるんだから)
大股で太陽のすっかり沈んでしまった町を歩いた。



鉱山には紫のもやがかかっていて、薄気味悪い。
サヤは少し怖くなり、足を動かすスピードを速めた。



「やぁ、君」



ゾン! と背筋に悪寒が走った。
サヤは振り返った。





コウタがいた。







サヤは目を見開いて、剣の柄に手をかけた。
「コウタじゃないでしょ……。 誰だお前は!」




男は喉の奥でくつくつと笑い、





「どうしてわかったのかなぁ、クソガキ」





金色の瞳をぎらつかせながら、男はサヤを舐めるように眺めた。
助けはこないだろう。
サヤは舌打ちをして、剣を抜いた。

月光を浴びて蒼に輝く剣。
装飾がなされた金の鍔。

その名は、聖剣エミリア。

「ふん。一人前に聖剣を飼いならしやがって」
男は笑ったまま、手を出さない。

「来ないのなら、僕からいくぞ」

サヤは激昂して男に突っ込んだ。
切っ先を男の心臓に向けて、一気に踏み込む。






「無理だな、お前は俺には勝てない」







サヤには何が起こったのかわからなかった。


ドガッ!! と男の背中から闇の塊のようなものが噴き出した。
サヤの体は地面に縫い付けられ、男の体からは尋常ではない恐怖と憎悪、そして殺気が噴き出している。


「怖いか? くくくく、はははははははははははははははははーーーーーーーーーーーー!!!」


暗闇の町に狂笑が響く。
ドッドッドッドッド!! と心臓が絶え間なく血液を送り出す音が、リアルに聞こえた。

(怖い。    こわい。





怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!)



胃の中が焼きつくように痛く、口の中が逆流した胃液のせいで酸っぱく感じる。
心臓はキリキリと痛み、酸欠のような錯覚に陥る。
死んでしまいたい、とサヤは思った。



「たまんないねぇ、弱者を見下すってのはァ」
指を芋虫のように疼かせながら、過呼吸になっているサヤの頭を蹴り飛ばした。


「サヤ=エミリア。 来いよ」
「……?」


男は鼻で笑い、整った顔を歪ませた。


「俺はレイド。 レイド=レジェンディアだ。  お前の仲間のコウタの複写者(レプリカ)で、劣化品だ」

サヤは朦朧とした意識の中で、それを聞いて、
「れ……ど……?」

それを聞いて満足したのであろうレイドは、頷いて、

「ああ、これがお前が一生呼び続けることになる名前の一つだ」


青い前髪を掴み、ボロ布のようになったサヤの顔を上げさせる。
血に塗れた瞳は、なお光を内包していた。

しかしその瞳は今、苦痛故に涙がうっすらと滲んでいる。








「そうビクビクすんな。最初はツライかもしれねぇが、直に慣れる。

           これからは俺の下僕として役に立て」


















レイドがサヤを担いで町から去ろうとしたとき、











黒い閃光がレイドの頬を掠めた。























黒味がかった蒼く寝癖の激しい髪。

やる気が全く見られない金色の瞳。
今は鋭く細められ、目の前に立つ敵を睨みつけている。

手には赤い剣を握っている。



・・・・・・・
レイドが持つ剣と同じ、








聖剣レジェンディア。








黒い男は口を開いた。






「もっしもーし」


「人の連れにナニしてくれちゃってるんですか、お前」



ふざけた口調だ、とレイドは思った。
上唇を舐め、レイドは笑う。




「ふん、やっと本命が現れたか」






「質問に答えろ」


レイドは笑って、サヤの体を持つ手を揺らした。


「答える気はないな。 どうせお前は死ぬのだから」





「……お前とは昔から話が合わないな、レイド。 なら手短にいうぞ」
黒い男は大きく息を吸い込み、












「        サヤを        返しやがれ!!          」
















:           :          :



「レイドッ!昼ごはんだぞ」
コウタは出来立てのクリームシチューの皿を持って、家の奥にある小さな階段を下っていった。
「レイド」
もう一人の家族、レイド。


しかし、彼の存在はコウタと両親しか知らない。



「俺はにんじんは嫌いだ」
「好き嫌いしちゃいけないんだからな」
コウタとレイドは瓜二つだった。

なぜなら、
レイドはコウタの


代わりなのだから。



コウタの血と人間の肉体を作る元素とを混ぜて作られた人造人間。それがレイドだった。

この生活が当たり前であったレイドには、
なぜ自分が地下に閉じ込められているのか、疑問を持ったことはなかったのだ。





そんな中、悲劇は起きた。













続く

後書き

まず、最初にお詫びを。
たくさんの方々が読みに来てくださっているのに、新しく話を書くことができず、申し訳御座いません。
生活に大きな変化がおこり、お話を書ける状況ではございませんでした。
言い訳だと言われればそれまでですが。
前から読んでいてくださった方も、初めてお目にかかる方も、楽しんで読んでくれればと思います。

一年近くもの間ご迷惑をお掛けいたしました。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2009年2月23日
改訂 2009年2月23日
小説ID 3016
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霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 83
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

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