僕と寝ぼすけ男 - 僕と寝ぼすけ男

上が騒がしい。
幻聴ではないだろう、悲鳴が聞こえる。
上では何が起こっているの?
どうして、コウタは来てくれないの?










僕と寝ぼすけ男









不思議だった。





きっちり同じ時間にご飯を持ってきてくれるはずのコウタが来ない。

今日はコウタの誕生日。

しかし、どんな日でもコウタはご飯をもってきてくれる。



地下に時計はないが、長年頼ってきた体内時計は正確だとレイドは思っている。
薄汚れた手足を投げ出し、コウタが来るのを待っていた。




「コウタ、なんでお前が選ばれたんだ!俺の方が神にふさわしいのに!」




上から声がする。
見たこともない、コウタのお兄さんの声だと思う。

「コウタ・・・・・・、喧嘩しているのか・・・?」


暫くして、聞きなれた声が途切れ途切れに聞こえてきた。
レイドは耳をすまし、声を聞き取ろうと鎖で繋がれた体を精一杯ドアに近づける。

「ゆるさない」

酷く冷めた声に、レイドは背筋が凍った。
ゾクゾクゾクと体を包み込む寒気。

そして、どんどんこちらへ近づいてくる足音。
ぺタ、ぺタ。


ピチャ、ピチャ。

足音が止まったとき、ドアの隙間から赤い液体が流れ出してくる。

冷たいコンクリートを伝う、血。
見ることもなかった家族の血。

レイドは怖かった。
扉の向こうにいるのは、ここの存在を知っているのは、コウタだけなのに。
酷く、恐怖した。

「ひ         ぁ」






ドアが微かにギィ、と開いた。








「レイド」











見た瞬間、レイドの呼吸は止まった。

血を分けたコウタの蒼く綺麗だった髪は赤黒くくすんで、返り血のようなものでカピカピになっていて、
自分と同じ金色の瞳は酷く淀んで見えた。

彼が着ていた上等な洋服は真っ赤に染まっている。
それなのに、コウタには傷一つなかった。



レイドは乱れた呼吸を整えながら、
「それ・・・・・・どうしたんだよ」
コウタは答えなかった。
「とう、さまと、かあさま、は?」
コウタは答えなかった。

「しんだ、のか?」


コウタは言葉を発さなかった。
だが、一回だけ、首を縦に降った。


コウタは血に塗れた剣でレイドと部屋を繋いでいる鎖を叩ききった。


親が死んだ。
自分を作ってくれた親が死んだ。

しかしレイドには悲しみと同時に違う感情が膨らんでいた。



それは−−−−−−−−−−−−−−−−−・・・殺意。



神という人知を超えた力を持っていながら、その肉親を守れなかったことへの、
激しい怒り。






「・・・・・・コウタ、神様なんだろ」
「・・・ああ」
レイドはコウタの胸倉を掴み、


「お前はなんで守らなかったんだよ!!」
「・・・・・・!」

コウタは唇を噛んだまま、何も言わない。
レイドの言うこともわからなくもないからだ。

自分が神様であるという事実は誰よりも自分がわかっていて、それ故に罵倒されることも知っている。
だからこそ、コウタは何も言わない。

言い訳をしていては、もう駄目なのだから。



しかしそんな態度が、レイドの怒りを増幅させる。
「・・・・・・もういい」
レイドはコウタから手を離し、硬いベッドの下にもぐりこんだ。
「・・・?」
暫くコウタはレイドを見つめていたが、レイドがベッドの下から取り出したものを見て目を見開いた。



「聖剣・・・・・・レジェンディア・・・・・・?」


赤く輝く両刃剣。
柄には豪華な装飾が施された、一族に伝わる闇翼神龍から授かりし宝剣。






「父様が俺の為に用意してくれていた聖剣のレプリカだ」
「・・・・・・」
剣をコウタの喉元に突きつけ、レイドは言った。


「いつかこの劣化品がお前を刻み殺しに来るだろう。

そのときは、お前が持って生まれた神の素質は俺が貰う」



「俺はその力で幸せだった昨日までの暮らしを手に入れる!」












それから、レイドとコウタは交わることなく道を歩むことになる。
コウタは軍の忠犬に。


レイドは神を殺す強さを求めに。



:                     :                        :





「で? 俺を殺す為にサヤが必要だって? くだらねぇ」
「こいつは“選ばれし魔神族”。魔法を扱える者の中でもごく少数の人間が扱える選ばれし魔術形式、クロノス式魔術を扱う魔神族だ。
それだけでも利用価値は高い。 こいつの力をモノにすれば俺は神としてこの世界に君臨できる!」







「くだらねぇっつってんだろーが!! 」






ビリビリ、と皮膚が引きつられるような殺気。

レイドは眉を潜めた。









「テメェが神になるために人を食い物にしていいってか? 何にも変わっちゃいねぇな、レイド!!」












「それがサヤを利用する理由にはならない。 悪いが、怪我させてでも返してもらうぜ」

















続く

後書き

連日投稿。
テストが終わって一安心。

うーん、シリアス。

この小説について

タイトル 僕と寝ぼすけ男
初版 2009年2月24日
改訂 2009年2月24日
小説ID 3017
閲覧数 715
合計★ 0
霜柱 光の写真
ぬし
作家名 ★霜柱 光
作家ID 97
投稿数 45
★の数 87
活動度 5973
まったりファンタジー。
最近幽霊部員と化してましたが生きてます。

コメント (0)

名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。