光と闇と剣と - 第2話

 夜が明け、辺りが明るくなってきた。しかし、季節は夏なので時間はまだ5時前である。
 「首領。中国山地に『闇の巻』があるとの情報が諜報部から入りました。いつ作戦を決行致しましょうか?」
 薄暗い室内で、不気味に光るパソコンの画面を見ながら眼鏡をかけた男が言う。
 「・・・1週間後だ。その作戦と同時に、『光の巻』の探索を続けさせろ。」
 それほど低くもない、声変わりしきっていないような声が響く。
 「了解しました。しかし『五輪書』に、あのような暗号が隠されているとは驚きでしたね。」
 「・・・あぁ。もうすぐ僕は、剣の世界の頂点に立てる。」

 社会の裏で、何かが動こうとしている。




 朝8時半。結城の部屋に、目覚まし時計が鳴り響く。しかし、結城は全く起きる様子はない。
 しばらくすると、目覚まし時計は止まった。時間が経つと、止まる機能が付いているらしい。
 外からは小鳥のさえずりや、家の前を車が通る音が聞こえてくる。

 しかし、結城は全く起きる様子はない・・・。




 桜坂図書館。
 3年ほど前に建立され、地下2階、地上5階からなる、とんでもなく大きな図書館である。小説から児童書、週刊誌から漫画、アイドル写真集まで置いてある。
 そんな図書館の前に、黎夏と友則と当真は集まっていた。約束の時間は10時だが、すでに10時半になっていた。
 「・・・結城遅いねー。」
 「アイツ、自分から時間決めたくせに・・・。」
 「まぁまぁ、先に中入っとこうよ。」
 という黎夏の一言でぶつぶつ言っている2人も、しぶしぶ自動ドアをくぐった。
 

 その頃結城は、
 「やっべぇ!もう約束の時間過ぎてるし!ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 と、意味のわからないことを叫びながら、適当に朝食を済まして家を飛び出した。
 (くそっ!俺、めちゃんこダサいじゃんか!)
 結城は住宅街を激走する。すると、ふと図書館への近道を思い出した。
 (あそこを使えば・・・!)
 そう考えた結城は急に進路を変え、竹藪の道をひたすら走り続ける。
 しかし結城は、急に立ち止まる。竹藪から、物音が聞こえたからである。
 「・・・なんだ?」
 不審に思った結城は、竹藪の中へと足を進める。
 今日の天気は満点の快晴だったが、生い茂った竹の葉が日傘の役割をし、足元が暗い。なのでゆっくりと進んでいく。
 だんだんとその物音が近づいてくる。結城は腰に掛けてある剣に手を添える。
 (いたっ!奴らか!)
 3人ほどの男が竹藪のほこらを取り囲んでいた。その男たちは、ほこらの扉をむりやりに開けようとしていた。
 物音とは、剣を用いて開かない扉を切り刻もうとする音だった。
 しかし、火花が飛び散っているだけで、全く刃が立っていない。
 結城は隠れて見ていたが、なんとなく悪いことをしようとしてることは分かる。
 とりあえず、出て行ってみることにした。
 「すいませ〜ん。一体何をされているんですか?」
 その言葉を聞いた男たちは、背中をびくぅ!と震わせ、こちらをジロリと睨みつけてきた。
 「あらら、なんかまずい展開だな・・・。」
 その瞬間、一気に剣を抜いて、3人が結城に襲いかかって来た。それと同時に結城も剣を抜き、3人との距離を一気に詰める。
 3人が剣を振り上げるという同じ動きをするのを見た結城は、その隙を突いて1人ずつ、流れるように腹に剣をぶち込む。しかし刃を当てずに、全てその逆の方を当てるみねうちで仕留めてしまった。
 男たちは、小さなうめき声をあげ、その場に力なく倒れこんだ。
 結城は、ものの3秒で勝負を決した。
 「ふぅー。アンタ達、久野川先生ぐらい強い大人ならよかったのにな。つまらない決闘だぜ。」
 と言い、ほこらに近づいて中を覗いてみると、
 「ん?なんじゃこりゃ。」
 中には、なんとも怪しく、埃をかぶった巻物が置かれていた。結城は、ほこらの扉をあけようとした。
 すると、バチィ!と、何かに手をはじかれてしまった。
 最初は、なんだぁ!?結界か!!? と、言った結城だったが、落ち着いて考えてみると、あの男たちも剣を弾かれていたのを思い出した。
 「なるへそ・・・。んじゃま、気合で行くか。」
 と意気込み、1度大きく深呼吸してからほこらの扉に手を触れる。大きな音が、辺り一面に響く。
 「・・・くっ、っくそ!」
 顔を歪めながら、扉の取っ手を掴むと、無理やり引っ張った。それでも扉は全く開く様子はない。
 「・・・ぅおおおおおおおおおおお!!!」
 結城はもっと強く引っ張る。それに呼応するように、結界の反応も一段と強まる。
 「・・・負けてたまるかぁぁぁぁぁ!!!」
 結城は取っ手を引ききった。扉が勢いよく開き、もろい木製の扉は外れて、バラバラになってしまった。
 はぁ、はぁ、と、結城は荒い呼吸を整えようとしながら、膝に手をつく。そして外れた扉の奥を見つめる。薄汚い巻物が、神秘的にたたずんでいる。
 滝のように流れる汗を短い袖で拭きながら、ボロボロになってしまったほこらに近づく。結城は巻物を前に、足が動かなくなった。その巻物が独特の雰囲気を醸し出し、ただ息をのむことしかできなかった。
 あと1歩を踏み出すのに、どれだけ時間がかかっただろう。1歩踏み出すのに、こんなに勇気がいることなんて考えたことがなかった。
 そして結城は、ゆっくりと、巻物に手を伸ばす。それを手に掴むと、そこに書かれた字に目がいった。
 「・・・『五輪書・光の巻』??」
 おかしい、そんなはずはない。と、結城は思った。なぜなら『五輪書』は、火・風・水・地・空の巻しか存在が確認されていないからだ。よって、光の巻などという巻物がもし本物だとすれば、また日本の社会を変えることになるだろう。
 結城は急いで巻物を紐解いた。そこには、とんでもないことが記されていた。





 「・・・遅すぎっ!!!」
 静かだった館内に、黎夏の怒声が響き渡る。
 「ははっ。黎夏ちゃん落ち着いてよー。確かにもう12時前だけどさぁ。」
 と、隣に座っていた当真が黎夏の服の裾を引っ張りながらなだめる。
 すると、
 「うっせーなぁ、どこのどいつだぁ!!」
 と、黎夏が叫んだよりも、さらに大きな声が返ってきた。
 「ったく、鳴海より空気読めない奴がいるみたいだな。」
 友則は笑いながら言ったが、3人が座っている机に近づいてくる人物を見て驚愕した。
 「・・・く、久野川先生!?」
 と、友則が言うと、2人も一斉にそちらを向く。
 「・・・おい、テメェら。ここはどこだぁ。」
 とても笑顔で語りかけてくる。
 「そりゃ、本を読むところですねー♪」
 「あぁ。つまり、健やかに眠っている人もいるってことだよな?なぁ、鳴海。」
 黎夏か背筋を伸ばして、
 「こ、これは全部結城が悪いんですぅ!」
 黎夏は内心、図書館で普通寝るかぁ?とは思いつつもなんとか答えた。
 「何?蓼科が?ちょっと話を聞いてやろう。」
 黎夏は、包み隠さず全てを話した。その話が進むたびに、先生の頭の血管が浮き出てきているのに気づいたのは、当真だけではなかっただろう。
 「うんうん。かわいそうに。よし、先生に任せとけ。今度お前らに会ったら、蓼科の首持ってきてやるから。」
 「・・・あ、ありがとうございます。」
 3人は、異口同音に答える。
 「じゃあ、先生が特別に勉強を教えてやろう。ほら、プリント出せ。」


 げっ。


 3人が最も恐れていた事態が、今始まった。

 

後書き

また久野川先生がとんでもないですね。笑

次回は『光の巻』と相対する、新しい巻物について書きたいと思います。
 コメント、ダメ出しでもよろしいので、書いていただければうれしいです。
 
 ではまた。

この小説について

タイトル 第2話
初版 2009年3月3日
改訂 2009年3月6日
小説ID 3033
閲覧数 1091
合計★ 4
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
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活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (2)

PJ2 2009年3月4日 19時19分21秒
五輪書・光の巻。これを見つけてしまったがために、主人公を含む周りの人たちが大変な目にあう。
今回の作品から察するに、こんな感じでしょうか?
先生らしいですね、生徒にいきなりプリント攻撃とは。断ると殺されそうですね。
とりあえず主人公が無事でありますように。
続編、待っています。
せんべい コメントのみ 2009年3月4日 23時13分18秒
コメントありがとうございます。

PJ2さんの読みも惜しいんですが、そんな簡単にこの先は展開しませんよ。笑
ややこしくしすぎて、自分が自滅してしまいそうなんですが・・・。

また、コメントよろしくおねがいします。
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