光と闇と剣と - 第4話

 「・・・うーん、あー寝む。・・・あっ、今何時だ!?」
 と、焦って布団のそばの目覚まし時計を手に取る。時計の針は、9時半を指している。
 「ずいぶん早起きしたな・・・。」
 結城は、2階の自分の部屋から1階のリビングへと向かった。リビングでは、結城の母がテレビを見ていた。
 「あら、結城。ずいぶん今日は寝たわね。お昼ごはん何食べる?まぁ結城にとっては朝ごはんだけどね。」
 と、笑いながら母が言ってくる言葉を聞いた結城は、顔をしかめた。
 (結城にとっては朝ごはん?)
 テレビから、明日も見てくれるかな?、という音を聞いた結城は時計を見てみる。

 時計は確かに12時59分を指していた。

 (え!?目覚まし時計って止まってたの?)
 結城の顔から血の気が引いていく。 
 また騒がしい一日の始まりである。




 「お邪魔しまーす。」
 「まぁ当真君。いらっしゃい。さっき女の子も一人来てたけど、みんなでお勉強かしら?」
 「はい。友則は、ほっといたら最後まで宿題貯めちゃうんで。」
 「まぁありがとう。後でお菓子持って行くわね。」
 「おかまいなくー。」
 と言って、階段を上って友則の部屋へと向かった。
 「よォ当真、5分遅刻だな。鳴海なんか1時ちょうどに来たンだぜ。」
 「だって友則の家、坂の上にあって疲れるんだもん。」
 当真は床の上に腰を下ろした。
 友則の部屋は、その少し乱暴な性格からは想像できないほど清潔感にあふれていた。友則の好きな剣豪である、内山忠昭という人物のポスターが貼ってある。
 「・・・で、結城はまだなの?」
 黎夏はボソッと言った。
 ・・・またか。そんなため息が、部屋中を満たす。
 「でも!またいい知らせを持ってくるかもしれないよ?」
 と、フォローを入れるが、2人からなんとなく脱力感が伝わってきた気がした。
 部屋に重い沈黙が下りる。




 結城は、さいころを転がしているトーク番組を見ながら塩ラーメンを食べていた。
 「さすがに友則の家に久野川先生はいないよな・・・。」
 この前の遅刻で、久野川先生に寿命を削られた結城は、机に肘をつきながら最悪のパターンを思い出していた。
 そんな時、新聞の広告が、ふと目に入った。結城は麺を口に含んだままその広告を手に取った。
 「裏剣道殺陣大会?」
 それは、全国から集まった剣豪の団体戦の大会だった。その広告の隅に、優勝賞品が書かれていた。
 「優勝賞品は・・・!」
 結城は、急いで塩ラーメンをすすり、友則の家に出かける準備をした。片手に広告を握りしめて。



 「はーい。お菓子持って来たわよ〜。」
 友則の母は、お盆の上にポテチとオレンジジュースとコップを乗せてきた。
 「ありがとうございまーす。」
 黎夏と当真は礼を言う。
 「じゃあごゆっくりー♪」
 と、友則の母は扉を閉めて階段を下って行った。
 「さっき昼飯食べたばっかなのにな・・・。」
 なんだか一つ一つが虚しく感じられる。
 そんな時、インターホンが鳴る音がした。
 友則は部屋の窓を開けて、誰が来たのかを確認する。そこには、結城が膝に手をついて立っていた。友則は結城に向って呼びかける。
 「おーい!」
 結城は、その声のした方に顔を向けた。
 「おぉ、友則!またもやすまーん!!」
 「うるせェ!早く入ってこい!!」
 そう言い終えると、乱暴に窓を閉めた。
 「やっと結城が来たんだね♪」
 「あいつ、悪いとおもってンのかァ?」
 しばらくすると、急いで階段を駆け上がる音が聞こえてきた。そして、結城は扉を開けた。
 「ごめん!」
 部屋に入ってすぐに、床に額をこすりつけた。そんな結城を見て、友則は言う。
 「あのー、ごめんで済んだら警察いらないってよく言いますよね?」
 「・・・お前、どこか久野川先生の雰囲気があるぞ?」
 そんな会話に、黎夏が割り込む。
 「あーもう!さっさとレポートまとめようよ!」
 2人は黎夏の方を向く。そして結城は、あの広告のことを思い出した。
 「そうだ、これ見てよ。」
 と、部屋の真ん中に用意されていた小さな机にしわくちゃになった広告を広げて置く。3人は、その広告に顔を寄せる。
 「裏剣道殺陣大会?」
 「あぁ、俺の提案なんだけど、この大会に出ないか?」
 3人はびっくりしたような顔をした。
 「・・・『五輪書』と関係ないことしてる暇なんてないンじねェか?」
 それを聞いた結城は薄く笑う。
 「ふっふっふ・・・。この俺が突然意味の分からん大会に出ようなんて言うわけ無かろう!」
 結城だから言うんだよな。と薄々思いながらも、構わず続ける。
 「この大会の優勝賞品は・・・。『五輪書・闇の巻』なのだ!どうだ!出る気になったか!」
 確かにそう明記してあるのだが、3人の表情は曇っている。
 「・・・あれ?なんでそんな顔してるの?もちろん出るよね?」
 「結城は、これが怪しいと思わないの?結城は怪しい男を倒して『光の巻』を手に入れた。じゃあ誰かに監視されててもおかしくない訳だよ?」
 「僕も今日新聞見たけど、そんな広告なんてなかったよー。」
 「結城は結局、バカってことだな。」
 部屋の中が笑いに包まれるが、結城はうつむいている。
 やばい、怒らせたか!?と、一瞬ヒヤッとしたが、結城は急に甲高く笑いだした。今度はおかしくなったか!?と、一瞬ドキッとしたが、すぐに喋り出した。
 「俺がバカ?お前らバカか!たとえこれが罠だとしても、これを乗り切れなくてこれからの人生、乗り切れるわけないだろうが。売られたケンカは買う!売ったケンカには勝つ!それができなかったら、死ぬだけさ。」
 3人は口をポカンと開けて聞いていたが、当真が笑顔で言った。
 「うん、僕は結城のそーゆうとこ大好きだな♪僕、その大会に出てみたくなったよ。ここでもし死んだって、死ぬのが早くなっただけだよね。」
 「おー、当真!お前、よく分かってんじゃねぇか。最悪、この大会2人で出ような。」
 「うん♪」
 と、固く握手をしていると、黎夏が強く言った。
 「何で死ぬこと考えてるのよ!どうせ出るって決めたなら、誰ひとり死なず優勝するのが目標でしょうが!」
 「・・・さすが幼馴染み。俺の考えよく分かってるじゃねぇか。」
 「当たり前でしょ。嫌でも傍にいるんだから。」
 と、笑いながら黎夏は言う。
 そこで3人は、一斉に視線を1人に向ける。
 「・・・なんだよ。この空気じゃ俺も参加しなくちゃいけねェじゃねェか。」
 「しなくちゃじゃなくて、参加するのよ。」
 と、黎夏が友則を睨みつけると、はい・・・。という小さな返事が聞こえてきた。体の大きさに似合わず、気はかなり小さいようだ。
 「よし!これで出場決定だな。じゃあ早速エントリーしないと・・・。」
 結城はポケットから携帯電話を取り出して電話を掛けようとすると、当真が止めた。
 「結城、ちょっと待って。この大会は1チーム5人までだから、もう一人入れたほうが有利じゃない?4人対5人じゃ、間違いなく分が悪いよ。」
 「それもそうだな・・・。誰か強い友達いないのか?」
 「友達じゃないけど、明らかに強い人なら知ってるよ。」
 誰?と、黎夏たちも気になっている顔をしている。
 「久野川先生だよ。困った時には電話掛けてって言ってたじゃない♪」
 結城と友則の表情が強ばる。この2人は、常に先生に怒られているため、とても苦手にしている。一方で、黎夏と当真は先生のことが大好きなのである。
 「ちょっと待て、当真!お前、先生がいたらうかうか変なことできねェじゃねェかよ!」
 「そんなことするアンタが悪いんでしょ!」
 と、黎夏がすかさず喝を入れる。
 「まぁ、先生は強いから頼りになるよな・・・。別に認めてもいいけど、怖いじゃん(泣)」
 「結城!お前は俺を見捨てるのか?俺は絶対いやだぞ!」
 友則が叫ぶと、隣で話し声が聞こえる。友則は、そちらを振り向く。
 「はい♪じゃあ29日の10時に現地集合で、はい。じゃあさようならー。・・・先生OKだってさ♪」
 当真はそう言いながら、携帯電話をパチンと閉める。
 友則の顔から血の気が引く。ついでに、さっき久野川先生の参加を認めていた結城も涙目になっている。
 「当真くん。順調に進んでるね。」
 「うん。僕、楽しみだなぁー。」




 「首領。例の中学生のチームが、大会へのエントリーを済ませたようです。ちなみに名前は、蓼科結城、鳴海黎夏、今西友則、蜂須賀当真、久野川育海と判明しました。」
 「・・・罠だというのに、まんまと引っ掛かりやがって。」
 「首領も大会に参加されますか?」
 「いや、そのつもりはない。ただ、奴らが決勝で我らのチームと対戦するとなると、参戦するつもりだ。」
 「では、トーナメントの位置は、反対のゾーンに配置しておきます。」
 「・・・好きにしろ。」
 首領と呼ばれる男は、薄く笑ってつぶやいた。
 「俺の手で殺してやる・・・。」

 たくさんの思惑を乗せた戦いが、今始まる。

後書き

どうでしょうか?

まだアクションに突入しなかったですね。汗
次回こそは。

コメントよろしくお願いします。


久野川先生が味方だったら・・・。

この小説について

タイトル 第4話
初版 2009年3月11日
改訂 2009年3月11日
小説ID 3042
閲覧数 959
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せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
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活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (3)

PJ2 2009年3月12日 12時15分37秒
先生が味方なら、敵なんか話にならない気がしますね。
それはさておいて、読ませていただきました。
続編が楽しみな終わり方でした。良いと思います。
♪が多かった気がしましたが、そこは読み手の好き嫌いなのでべつにかまわないのですが・・・・・・
とりあえず続きが気になるので、楽しみに待ってます。
★せんべい コメントのみ 2009年3月18日 10時41分03秒
コメントありがとうございます。

♪がないと当真がしゃべってない感がなんとなくありまして・・・。


どんな読み手のニーズに応えられる『光と闇と剣と』を目指していきたいと思います。
★流魂 レム 2009年7月17日 13時05分52秒
ちょっとだけ突っ込みを入れさせて頂きますネ〜。

先生が大会に出て欲しいと頼まれた時に、即答で快諾していますが、“裏剣道殺陣大会”なんですよね??
で、あれば、スポーツなんかではなく、相手にしろ自分にしろ、死傷者が出る可能性が高いというのは直ぐに気が付く筈です。
そんな大会に出る事を、子供の安全を守る立場にある教師が承諾するでしょうか??
少なくとも、先生の方から親に連絡を必ずする筈ですね。

また、幾ら剣の帯刀が許可されたとはいえ、人斬りが何の罪も無くなる……というのは日本ではちょっと考えられません。

例えば江戸時代……身分が違う武士が町人や百姓から無礼を受けたとき、切り殺しても良いとされた“切捨御免”という制度があったのは確かですが、この場合でさえ、切り捨てた武士の方にもかなり厳格な審査が行われていました。
切捨御免が適用されない、と役所から判断されれば、最悪、武士側に切腹が言い渡された程です。

……なので、幾ら殺人が増えたこの世界とは言えど、この大会に快い返事を直ぐにする……と、いうのはどうしても簡単には納得できないのですヨ。(汗)
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