光と闇と剣と - 第6話

 ついに、『KYRT2』の1回戦が始まった。
 「さぁみなさん、お待ちかね本日の最終試合。『武蔵剣道倶楽部』対『KYRT2』の試合です!両チーム入場!」
 観客席の隙間の通路を通って、結城たちは武道台へと向かう。周りの声援は、結城たちを応援する感じのものでなく、全て相手チームの声援である。
 武道台の傍に椅子が設置してあり、そこに5人は座る。
 「なんだよ、そんなに俺ら悪者かよ・・・。」
 「だって、相手は加盟人数も実力も、日本一の剣道のクラブチームだからねー。何といっても第2シードだもん。」
 当真は苦笑いしながら結城に言う。
 「・・・で、1番は誰が出るンだ?」
 友則は問いかける。結城は先生に目線を向ける。
 「・・・よし、まず1勝取ってきてやるよ。」
 そう言うと、腰に据えてある剣を強く握り、武道台の上へと上がっていく。
 「先生がんばって!」
 久野川先生は、前を向いたまま小さくうなずいた。
 (かっこいっ。)
 4人は、異口同音につぶやいた。
 「先鋒、『塩沼湖(しおぬまうしお)』対『久野川育海』試合開始!」
 審判がそうコールしたとき、隣接している相手のベンチが急に騒がしくなった。
 「久野川育海だと?なぜそんな剣豪が相手に・・・。」
 結城には、その一文がはっきりと聞き取れた。
 このことを、隣に座っている黎夏に言おうとした時、剣と剣がぶつかり合う音が響いた。この大歓声の中でも、鮮明に聞こえる。
 塩沼と先生は、しばらく剣を交えたままで動かない。相手の動きを待っているようだ。
 (この女、・・・強い!太刀筋、剣の扱い、なによりオーラが剣豪と同じ色をしている!)
 塩沼は先生の剣を押して、2、3メートル距離をとる。
 「・・・へぇ、アンタ男のくせに逃げるのかい。これじゃあ私の・・・勝ちだねぇ!!」
 その言葉と同時に、先生は塩沼へと突き進む。しかし、その行動を見た塩沼はニヤリと笑って、先生と同じように突進する。
 「これで・・・終わりだぁ!」
 一度決めた戦術を遂行しているときに、相手が予想外の動きをすると、そうは簡単に対策を打つことはできない。というのが、塩沼の経験上の作戦だった。

 が、

 「・・・なっ!」
 先生が、塩沼の目の前で消えた。その瞬間に、先生は塩沼の背後に回り込んでいた。
 そして。
 「ズッ!」
 先生の剣は、塩沼の脇腹を貫通していた。
 「あっ・・・あアっ・・・強い・・・。」
 そう言い終えると、塩沼はその場に倒れこんだ。すぐに担架を持った人たちが駆けつけ、塩沼を運んで行った。
 「先鋒、勝者、久野川育海!」
 勝利が宣告されたのは、試合開始からわずか17秒だった。
 その瞬間、場内が一気に静まり返った。お祭り騒ぎでいるのは、『KYRT2』のメンバーだけである。
 「先生、さすがぜすね!びっくりしました!」
 「『武蔵剣道倶楽部』の先鋒を一方的に仕留めるなんて尊敬するかも!」
 当真と黎夏は、先生に尊敬のまなざしを送っているが、結城と友則は、
 (あんなのといつもケンカしてたのか・・・。)
 と、自分で自分を褒めていた。
 いつの間にか、場内の歓声は復活していたがその内容が、気にするなー後はガキだー、とか、意味わからんチーム名に負けるなー、だとか、『KYRT2』のことを罵倒するような内容だった。
 「さあ、先生の後に続くのは今西だな!」
 突然先生からご指名を友則は、やめてくださいと言わんばかりに先生を見つめている。
 そんな友則を見た先生は大きくため息をついて言った。
 「大丈夫だ、今西。先生は1週間、伊達にお前を特訓してきたつもりはないぞ。さぁ。自信を持って行ってこい!」
 と、肩を叩いて武道台に送り出した。
 (大丈夫だ・・・。俺はあれだけ特訓を受けたんだ。)
 友則は、その特訓を思い出して一歩ずつ進んでいく。





 「よし、全員揃ったな。じゃあ、今日23日から当日の29日まで1週間、先生の家で特訓を行うぞー。」
 マジで!?という顔を、4人全員がする。
 「保護者の方へは、事前に連絡して許可を頂いてるんで心配するな。じゃあさっさと話を進めるが、この1週間で1人ずつ『奥義』を身につけてもらいたい。」
 いつもならギャーギャー騒ぐ結城も、今日は先生の表情が見たこともなく真剣だったので、ここは空気を読んで話を聞いていた。
 「先生、『奥義』ってなんですか?」
 先生は大きくうなずいて言った。
 「鳴海、よくぞ聞いてくれた。しかし、それは先生の家にお前らを迎えてからゆっくり話そう。」
 そう言うと、先生はすぐそばに停めてあったスポーツカーに向って歩き出した。
 「ちょ、俺ら何も持ってねェんスけど・・・。」
 「何もいらないよ。特訓は先生の家に泊りこみだ。」
 もっと早くそれ言えよ・・・。と思いながらも、これから始まる特訓にひそかに胸を躍らせていた。
 4人を乗せた車は、街中を抜け、だんだんと森の奥へと進んでいく。
 山道を30分ほど進むと、大きくて立派なお屋敷が見えてきた。
 そのお屋敷の門の隣に車を停めると、
 「着いたぞ、ここだ。さっさと降りてくれ。」
 降り立った地面はアスファルトではなく、固い土だった。門に立札がしてあるのを、当真が見つけた。
 「久野川流総本家・・・?」
 先生は門を開け、4人が中に入るように促す。
 「おじゃましまーす・・・。」
 門の中は、立派な日本庭園だった。まるでタイムスリップしたような感覚だった。
 庭を進む間4人は、ずっときょろきょろしっぱなしだった。
 そして、最終的に招かれたのは、6畳の畳部屋だった。掛け軸が掛けてあり、高そうな壺が置いてある。都会育ちの4人にとっては、もう何もかもが新鮮すぎて、感動が言葉にならない。しかし、その部屋の片隅に机が置いてあり、プリントや教科書が積んである。どうやらこの部屋は先生の部屋のようだ。
 先生は、ここに4人を正座させた。
 「なんで先生の家ってこんなにでかいんだ!?ありえないでしょ!」
 先生は、黙って全員の目を見つめていた。だから結城は、黙って先生の目を見ることにした。
 「先生の家はな・・・、剣道の一派の総本家なんだ。まぁ簡単にいえば、剣道のやり方を新たに発明したって感じだ。」
 「それで門に『久野川流』って書いてあったのか・・・。」
 「そうだ。久野川流の他の流派との違いは・・・短期決戦に特化している。威力のある技を確実に決めて相手を倒すというものだ。その威力のある技こそが、『奥義』なんだ。お前らには、『奥義』を確実にマスターして、久野川流を極めてもらいたい。」
 「たった1週間でですか!?そんなの無理です!」
 黎夏は妥当な意見を言う。しかし先生は、
 「黙れ。」
 と、鬼のような目を黎夏に向ける。黎夏の体が一気に強ばる。
 「別にやらないんならいいんだが、今度の大会で確実に殺される。もちろん出場辞退することも可能だが、それでいいはずないよな?先生は、お前らを助けるために特訓するんだ。この趣旨が理解出来ない奴は、先生が家まで丁寧に送ってやる。」
 それを聞いて、結城はついに口を開いた。
 「俺はやらねぇなんて言ってねぇよ。っていうか、こんなことに巻き込んじまったのは俺の責任だ。俺が『光の書』なんて見つけたのが全ての始まりだ。だから俺は逃げたらダメなんだよ・・・。」
 「蓼科・・・。」
 その結城の熱い思いに心を動かされた3人もやる気を見せた。
 「俺もやります。結城にばっか、良い格好させてられねェっスよ。」
 「僕もがんばるー。強くなって損はないもんねー♪」
 「確かに、最初から無理なんて言ってたら、できることもできなくなるもんね!」
 「・・・先生。みんなやる気持ってるからさ、その久野川流を教えてくれよ。」
 先生は数秒黙り込んだあと、口を開いた。
 「よし、良いだろう・・・。ただ特訓と言っても、言うほど辛くないから安心してくれ。」
 その言葉を聞いて、4人の表情は少し緩んだ。
 「そんなに大変なメニューはないってことか・・・。」
 「いや、他の流派に比べて楽なだけで、辛いことに変わりないがな。まぁ、早速初めて行くか。」
 そう言うと、先生はふすまを開けて、部屋を出て行った。4人はその後について行く。
 しばらく進むと、先ほどとはまた違った感じの庭が見えてきたが様子が明らかにおかしい。
 その庭の中央には、とてつもなく大きな岩がたたずんでいた。それも、あちこちに刀傷がついた。結城は聞く。
 「これ、何?」
 「この岩から5メートル離れて、この岩に刀傷をつけてみろ。それができれば、もう特訓は終了だ。」

 そんなこと、果たして出来るのだろうか。
 

後書き

自分で書いてて
「先生がだんだん神に近付いてきたな・・・。」
って思うようになりました。

結城達の特訓は一体どうなるのか・・・!!

コメントよろしくお願いします。願



・・・結城は、『空気を読む』ということを覚えた。

この小説について

タイトル 第6話
初版 2009年3月20日
改訂 2009年5月25日
小説ID 3052
閲覧数 901
合計★ 7
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 62
★の数 607
活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (4)

★冷奴 2009年3月20日 9時07分51秒
先日作品のコメントを頂いたので、
その勇気に敬意と感謝を示しましてこちらからもコメントさせていただきます。

まず、凄く丁寧に書かれているな、というのが印象的でした。
見たときに誤字が無く、世界観も掴みやすいというのが特徴的ですね。
また、『この人はとてもカッコいいんだ!』という心意気が伝わってくるのも良かったです。

次に、じっくりと読んでいると改行の少なさが気になりました。
「行間」というよりもせんべいさんの場合は「文字の間」です。
投稿ページからはすこし調節しにくいのですが、文章が二行にわたってしまう場合は、どこかで改行すれば格段に読みやすさが増しますよ。
特に、自動改行された時に2行目は2〜3文字という半端文なら尚更です。
この場合のポイントは句点や読点でつけるといいです。
要するに、「、」や「。」の後ですね。よりベターなのは「。」ですが。

続編を楽しみにしておりますので、これからもじっくりと頑張ってください。
★せんべい コメントのみ 2009年3月20日 11時37分04秒
冷奴さん、コメントありがとうございます。

改めて読んでみると、
「ここは改行だなぁ〜」
って感じるのが多々ありました。
とりあえず、次の回からは「自動改行」に注意して、書いていきたいと思います。


アドバイス、心の奥底から感謝いたします。謝
PJ2 2009年3月21日 17時19分58秒
読ませていただきました。
先生強い! せんべいさん自身が神に思えてもおかしくないくらいですね。
自動改行は私も悩まされます。どこで区切られるかは、確認でしか分かりませんし。
良かったです。空気が読めるようになって。
特訓も、どうなるか楽しみですので、続編を待ってます。

せんべい コメントのみ 2009年3月21日 19時32分42秒
PJ2さん。コメントありがとうございます。

なんかほんとに、ギャグ小説になってきてしまって、どうしようかあせっております。
これからも、こんなのでよければどうぞ読んでください。


さぁ、どうゆう話にすればいいのかな・・・。
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。