光と闇と剣と - 第7話

 「あの大きな岩に、5メートル手前から刀傷をつけるなんて無理だろ!」
 結城は激しく反論する。
 他の3人も、もっともだという表情をしている。
 「まぁ、無理って思うわな・・・。じゃあとりあえず見本見せてやるから、それで信じろよ。」
 と言って、先生は腰の刀を静かに抜き、静かに深呼吸し始めた。
 結城たちも、息をつい呑んでしまう。辺りは、セミの鳴き声が響き渡っている。
 「・・・見えた!」
 先生はそう言うと、信じられない早さで剣を振るった。ゴォ!という凄まじい轟音がセミの鳴き声をかき消す。
 するとどうだろう。岩の中央にらせん状の穴がぽっかりと開いてしまった。
 先生は、この猛暑のせいで額に滲んだ汗を腕で拭き取る。
 「だろ?まぁこの技に名前とかはついてないし、勝手に決めていいよ。それに、奥義はまだまだいくつもあるし、
 1つでいいからマスターしてちょーだいな。ほら、これ参考にして、各自修行に励んでください!じゃあねー。」
 先生は、持参していたショルダーバッグから、『久野川流奥義之書』と書かれた本を取り出し、
 1人1冊ずつ手渡ししてからまた元の部屋の方向に戻って行った。
 「・・・どうするよ?あんなやり方なんて全く教わってないし、どうやって修業すればいいんだ?」
 「とりあえず、この本読んでみるといいかも。」
 当真は、パラパラと中身を確認する。
 「・・・これ、全部先生の手書きじゃない?ほらこの筆跡、先生の黒板の字と似てるかも。」
 それを聞いた3人は、自分の本を見てみる。
 「ほんとだな。どうりでコピー用紙の質素な本だと思った。」
 「先生、私たちのために・・・。」
 「ポイントまでちゃんと書いてあるじゃねェかよ。」
 その時、黎夏が気づいた。
 「でも、みんな中身ちがうよね?」
 そういえば、表紙の右上に小さく『蓼科用』と、各個人の名前が書かれている。
 「実は先生、恥ずかしいからどっかいったんじゃないか?」
 結城は苦笑いしながら続ける。
 「とりあえず、もう夕方だしさっさと特訓始めようぜ。」
 おう!という声が庭に響くと4人はバラバラに散って行きながら本に目を通していた。




 (そう。あの特訓があったから俺にはこの自信があるんだ。)
 友則は、武道台の上に立った。
 「・・・ほう、良い目をしているな、少年よ。この戦い、楽しみだ。」
 「・・・勝つつもりですから。」
 「次鋒、『盛本勝(もりもとまさる)』対『今西友則』・・・試合開始!」
 先に動いたのは、盛本だった。その距離は5メートルだったが、一気に詰めてくる。
 それに驚いた友則はとっさに剣を横にし、防御の体制をとる。
 「守っているだけでは・・・勝てん!」
 盛本の一振りは友則の頬をかすめ、血しぶきが舞う。
 「・・・くっ!」
 友則は、とりあえず剣を振り回し、無理やり距離をとらせようとする。
 
 が、

 「何度も言わせるな。守っているだけで・・・勝利はつかめない!!」
 すっ、と友則の剣の動きが止まった。盛本が、剣を持っていない手で簡単に受け止めてしまった。
 「なに!?」
 「残念だったな。」
 盛本の剣は友則の脇腹を切り裂く。友則は、その場に力なく倒れこむ。
 「・・・と、友則ー!!!」
 結城が叫ぶ。しかしその声は、会場の歓声で簡単にかき消されてしまう。
 「勝者、『盛本』・・・!」
 審判の勝利宣告が止まった。それもそのはず、友則が自力で立ち上がったのだ。
 辺りは一面血の海で、出血多量で死んでもおかしくない気がする。
 「・・・お、俺はこの試合、自分の剣道をしちゃいねェ。ただ、一方的に斬られただけだ。
あんだけ特訓で頑張ったっつーのに、その成果のかけらすら出ちゃいねェ。それを出すには・・・自分を信じるしかねェんだよォー!!!」
 友則は叫んだ。それは、盛本に言ったのではなく、自分自身に言い聞かせたのだった。
 その時、友則は何かの声を聞いた。歓声の中でも、鮮明に。
 (おもしろい。我が力をお主に貸してやろう。もっと剣を優しく扱うのだ。・・・そして、自分を信じるのだ。)
 誰の声かはわからなかった。しかし、何か不思議な雰囲気に包まれ、妙に説得力があった。
 (誰かしらねェけど、俺に勝ち目は『奥義』しかない。あの言葉で勝率が上がるンなら・・・。)
 
 
 「・・・今西の勝ちだな。」
 先生はつぶやいた。
 「え、なんで?」
 「あいつは、今自分の精神を味方につけたからだ。」
 「・・・どーゆーこと?」
 「・・・しょうゆーことなんて言わないからな。」
 先生は真剣なまなざしで友則の試合を見ながらさらっと流した。結城は、心なしかつまらなそうな顔をした。


 友則は盛本に向って剣を振るう。
 ブォッ!という轟音と共に、暴風が盛本を襲う。盛本は、なんとか踏ん張ったが、そこに隙ができてしまった。
 (今だ!飛び込め!)
 しかし、盛本はすぐに体勢を立て直し友則を迎え撃つ。
 「はっはっはっ!残念だが・・・っ!」
 盛本は一瞬勝利を確信した。だが、目の前の光景に戸惑うしかなかった。
 友則の剣の構えは、明らかにおかしかった。
 しかし、それだけではない。まるで、友則が止まっているかのように見えたのだ。
 「な・・・。」
 友則は、盛本の首に渾身のみねうちを叩き込む。
 その衝撃で、盛本の体は10メートル以上吹き飛ばされ、武道台の外へ弾き飛ばされた。
 盛本は白目をむいて気絶している。それを見た審判は、
 「勝者、『今西友則』!!」
 と宣告した。
 会場からは、またも大ブーイングが飛び交う。
 一方、勝利宣告を受けた瞬間、友則はその場に膝をついた。
 戦いが少々長引いたせいで、傷口からの出血が多くなってしまったようだ。
 その様子を見た結城たちが友則のもとへ駆け寄る。
 「大丈夫か!?友則!」
 友則は、息を荒くしながら言った。
 「・・・あぁ、ちょっとめまいがしただけだ。」
 「それにしても友則、よく勝ったよ♪」
 「うん、今西君かっこよかったよ!」
 「・・・ありがとう。じゃあな。」
 友則は、駆けつけてきた救護班によって担架に乗せられ運ばれて行った。





 結城たちは、再び用意された椅子に腰かける。
 「しかし、友則強かったよなー。」
 「学校じゃ、ただ乱暴に剣を振り回してるだけだったもんね。
 あれが特訓の成果なんだよ、きっと。」
 「・・・いや、先生はあんな技教えた覚えはない。」
 へ?という顔をして3人は先生に視線を向ける。
 「最後の決め技、あれって『奥義』じゃないんですか?」
 「いや、それじゃない。
 あの技は目線と同じ高さで剣が迫ってくるから、目が錯覚を起こし止まって見えるっていう奥義なんだが・・・。
 問題は剣をふって風を起こす技だ。あんなの、今西の技量じゃ到底出来る技じゃない。」
 結城はややこしそうな顔をしている。
 「まぁ勝ったから細かいことは気にしないで、次の試合だ!じゃあ、次は俺が・・・」
 と、結城はやる気満々に立ち上がろうとすると、
 「僕の出番だね、行ってきまーす♪」
 と、当真がすぐに口をはさんで武道台へ飛び出していった。
 「あ、アイツ・・・。俺の出番が・・・。」
 黎夏は結城をなんとかなだめようとする。
 そんなことを放っておいて、先生はいぶかしげな表情を浮かべる。
 結城をなだめていた黎夏だったが、それに気づいて聞いた。
 「先生。どうしたんですか?」
 「・・・いや、蜂須賀って2本も剣持ってたっけ?
 それに、片方の剣って『妖刀・朧月』じゃ・・・。一体何のために・・・。」
 結城は当真をじっと睨んでいたが、先生の言葉に反応した。
 「そーいえば、当真の剣って『朧月』だな。
 なんでも、あまりの妖気に光の屈折率を変えてしまう変則的な剣だとか。」
 「へぇ。蓼科、よく知ってるな。こう言う変な豆知識は知ってるんだな。」
 先生は、驚いた顔をしている。
 (いや、『光の屈折率』とか意味わかんないけど・・・。)
 と、結城は密かに思ったが、
 先生の好感度をわざわざ下げる必要はないと判断した結城は、黙っていることにした。


 「中堅、『中岡鋼(なかおかこう)』対『蜂須賀当真』。試合開始!」





 友則は、担架ではこばれながら考えていた。
 (あの声、誰だったンだろうな・・・。)
 落ち着いて考えてみると、あの状況ではっきり聞こえる声は、
 観客の声援で少々は濁るため、存在しないだろう。
 (我が力を貸す・・・?自分を信じる・・・?・・・!!)
 それで、友則はひらめいた。
 そう、信じられないが、きっとあの人が力を与えてくれたのだろう。
 友則は手で目を覆い隠す。

 (そんなことって、あっていいのかよ・・・。)

後書き

更新遅れてしまいました・・・。

どうだったでしょーか。
まぁコメントしようがないとは思いますが、感想や改善点などを書いていただけたら幸いです。


ではまた。

この小説について

タイトル 第7話
初版 2009年3月25日
改訂 2009年3月26日
小説ID 3061
閲覧数 847
合計★ 4
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 62
★の数 607
活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (1)

PJ2 2009年3月26日 19時46分36秒
読ませていただきました。
きりきりした雰囲気の中で、しょうゆことは書かなかった方が良かったのではと思ったのですが・・・・・・個人の問題なのでかまいませんけど。

しかし、五m先の岩にどうやって傷を? と疑問でしたが、なるほど、かまいたちに近いもので穴を開けますか。

この後も気になります。続編を待ってます。
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