光と闇と剣と - 第8話

 「中堅『中岡鋼』対『蜂須賀当真』・・・試合開始!」

 審判は試合開始を宣告したが、2人に全く動きがない。その場に立ち止まっているだけだ。当真に至っては剣すら抜いていない。
 「・・・2人共、カウンターを得意とするみたいだな。」
 「蜂須賀君も学校の授業とはぜんぜん違う戦法ってことですか。」
 「あぁ。もともとあいつは動体視力がずば抜けている。先生がそう指導したのさ。」
 「・・・さすがですね。でもなんで剣を抜かないんですか?」
 「・・・あいつなりの戦法なんだるう。」
 試合開始から1分が経過した。今だに両者の動きはない。観客席がどよめき始めた。
 (っもう、なんで攻めてこないのさ。じゃないと作戦通りいかないのに・・・。)
 当真は『朧月』でないほうの剣を抜いた。そして、相手に徐々に歩み寄っていく。
 (ほら、これなら動かなくちゃいけないんじゃない?)
 その距離、わずか2メートルまで迫ってきた。しかし、中岡は一歩も動かない。
 さすがにここまで来て動かないのはおかしい。とりあえず当真は斬りかかってみる。

 すると、

 当真の剣は空を切った。
 全体重をかけて斬りかかった当真は派手にこけてしまう。
 「ひっかかったな!」
 中岡は隙だらけの当真に向って剣を振りおろそうと剣を構える。
 そこで当真は、朧月を抜く。
 すると当真の体がその場から消えてしまった。
 「なっ・・・!」
 中岡は振りおろそうとした剣を止める。
 当真は中岡からかなり離れたところに姿を現した。
 「・・・なるほど。お前も俺と同じタイプの技を駆使して戦うみたいだな。」
 その言葉に、当真は目を細める。
 「そうか、おじさんも光の屈折率を変えて戦うんだね。」
 「お、おじさん!?ま、まぁその通りだ。だが、俺の場合は蜃気楼を操るんだよ。
 蜃気楼ってのはな、空気の温度差で出来るんだぜ。この2本の剣。どっちも妖刀でな。
 1本は炎の剣。もう1本は氷の剣なんだ。これで周りの空気の温度を変えるんだ。・・・よく覚えとけ!!」
 中岡は当真に向って突っ込む。当真も同じように動く。
 当真と中岡の剣が交錯しようとするが。
 「え!?」
 剣は交わらなかった。今の当真の視界に、中岡の姿はない。
 「・・・後ろだ!!」
 当真は一瞬で反応して前を向いたまま剣を水平にして頭の上に掲げる。
 今度はギィン!という音が鳴り響く。
 なんとか中岡の一撃を凌いだ当真は、振り向き様に体勢を立て直している中岡の足元に剣を振るう。
 「ちぃっ!」
 ジャンプして避けようとしたが、足首辺りに剣先がかする。
 再び両者に距離が生まれた。
 「坊主。お前なかなか強いじゃねえか。でもなぁ、俺が負けたらチームも負けなんだよ。
 だからそろそろ決めさせてもらうぜ。お前の弱点はただ一つだ。・・・まだ子供だから、光の屈折率の計算がまだ正確じゃねぇ。
 十年遅かったら、俺は負けてたかもな・・・。」
 そう言い終えると、中岡は姿を消した。
 当真は辺りを見回す。しかし、中岡の姿はどこにもない。
 (完全に消えちゃったかも・・・。)
 当真がそう考えると、どこからか中岡の声が聞こえてきた。
 「俺はこの武道台にちゃんといるぜ。ただ、お前の位置からは見えないように計算されているがな・・・。」
 「・・・すごい。僕の作戦を完全に超えてる。・・・どーしよ。」
 当真は辺りに細心の注意を払いながら、一発逆転の方法を練っていた。

 が、

 当真の背中に激痛が走る。
 「いっ!!」
 当真はその場に片膝をついて激痛に耐える。
 (くそ・・・。後ろから斬られた。ダメだ、全くあの人の居場所が分からない・・・。)
 背中の傷は、幸いにもそれほど深くはなかったが、この状況じゃ何度も同じ部分を斬られるだろうが、次は急所を狙ってくるかもしれない。
 (なにか目印があればわかりやすいのに・・・。)
 それで当真はひらめいた。
 (そうか!血だ!さっき足首に傷をつけたはずだ!血の光の屈折までは計算に入っていないはずだ!)
 当真は体を動かさず、目だけを動かしその小さな希望を探す。そして見つけた。
 (あれだ!)
 当真は大きく深呼吸した。集中し、耳で風の音を聞き、目で風の流れを見極める。
 「・・・そこだ!」
 空気と空気の流れの境目。そこを当真は剣で叩き斬る。
 ブォ!と、螺旋状の風が、中岡を襲う。
 「・・・っぐあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 今まで見えなかった中岡の姿が、一瞬にして明らかとなる。
 床に大きな音と共に倒れた中岡は、腹を真っ赤に染めている。
 その様子を見た審判が宣告する。
 「勝者、『蜂須賀当真』!!」
 場内が凍りつく。なぜなら、優勝候補のはずの「武蔵剣道倶楽部」が、たかが中学生に1人も勝てず敗退するなど、誰も予想していなかったからである。
 「よって、3対0で、『KYRT2』が2回戦に進みます!」
 そんな審判の宣告を誰も聞かず、観客はぞろぞろと帰り始めた。不満げな顔をしながら。
 それもそうだろう。大衆が期待していたのは、「武蔵剣道倶楽部」の爽快な勝利。
 負けるところをわざわざ見に来たわけではないだろう。






 そんな様子を見た結城が武道台に登り、審判から無理やりマイクを奪い取る。そして、大声で言った。
 「おいお前ら!観客だったら勝者を讃え、敗者を讃えるってのが最低限のマナーだろうが!
 それができねぇなら、・・・2度と見になんかくるなぁぁぁぁ!」
 あまりの声の大きさに、スピーカーから金属音が鳴り響く。
 観客は、耳を押さえながら、「偉そうに言ってんな、ガキが!」とか、「誰がお前らの試合見にくるか!」というヤジを飛ばす。
 結城はそれだけ言うと、マイクを審判に押し付け、当真のもとへ向かう。
 「大丈夫か?よく勝ってくれたな。」
 「うん、特訓の成果が出たよ。でさ、早くここ出ようよ。居心地悪くてさ。」
 そうだな。と言い、武道台を下りる。
 「蜂須賀、お前やらしい剣道するなぁ。」
 「ほんと、見てて頭こんがらがるよ。」
 「えへへ、ぼくもいっぱい勉強してできるようになったんだ、光の屈折率。」
 「それにしても、最後の『奥義』は完璧だったな。あの技は久野川流の基本の技だからな。やっぱり蜂須賀は基本に忠実な奴だ。」
 そんな会話をしているところに、1人の男が入ってきた。
 「・・・やはりあなたは久野川流の方でしたか。」
 「・・・あぁ、先ほどのチームの代表さんですか。そうですけど、何か?」
 「いや・・・。あなたのような大剣豪とこんなところでお目にかかれるとは・・・。」
 「・・・なんのことでしょう?私にはさっぱり。
 確かに私は久野川流の剣術使いですが、そんな名前を知られるほどの腕の持ち主じゃありませんよ。では失礼します。」
 ほら、行くぞ。と、3人に声をかけると、先生は足早に出口に歩いて行った。
 さっきの会話を聞いていた結城たちは不審そうな顔をしている。
 「・・・先生って、やっぱり凄いのか?」
 「・・・さぁ。」






 「首領。『武蔵剣道倶楽部』が初戦で敗退いたしました。」
 「知っている。俺もここから見ていたのを知らないのか。」
 「・・・申し訳ありません。」
 黒羽は出口に向っていく結城たちを見つめている。
 (なかなか楽しそうな奴じゃないか。クズ中学生が。)

後書き

今回はアクションっぽかったんではないでしょうか。
光の屈折率やら、なんかそれっぽいじゃないですか。

図鑑に載ってたもんで、使ってみました。

コメントよろしくお願いします。










・・・先生、いったい何者?

この小説について

タイトル 第8話
初版 2009年4月2日
改訂 2009年4月2日
小説ID 3077
閲覧数 1079
合計★ 4
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
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活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (2)

PJ2 2009年4月2日 20時37分31秒
何者? 先生だけでなく、メンバー全員が何者?
当真は妖刀持ってて、しかも二つ。
そして先生の教えたものの応用を簡単にやってのける結城は何者? 
それはおいといて、読ませていただきました。
おめでとう! チーム勝利。
次回作も楽しみにしています。
では、また。
せんべい コメントのみ 2009年4月2日 21時04分05秒
PJ2さん、コメントありがとうございます。
もうPJ2さんは、『光と闇と剣と』の常連さんですね。本当に感謝しています。


一応、結城達は中学生なんで、そんなには強くなかった。
・・・しかし、どうして大人を倒せるまでに成長したのか。

それは、この物語の伏線なんでよろしくです。
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