光と闇と剣と - 第9話

 結城たちは、宿舎へと帰って来た。
 「はぁ、疲れた。やっぱりこういう時のみたらし団子は最高だなー・・・。」
 部屋に入った途端、先生があぐらをかいて、目をつぶって、肘を立ててみたらし団子を食べていた。
 「・・・先生、蜂須賀君は救護室で傷の手当をしてます。」
 「んー。今西も今は落ち着いてベッドで寝てるそうだ。だからもうすぐ帰ってくるんじゃないかなー。」
 頬をふくらませ、少し聞き取りづらい声で先生は言った。
 その時、玄関からドアを開ける音が聞こえてきた。結城たちはそちらを向く。
 入ってきたのは、友則と当真だった。
 「おっす。心配かけちまって悪かったな。」
 「友則!いやー、生きてたのか!」
 「勝手に殺すな!!」
 「・・・蜂須賀君も、背中の傷大丈夫なの?」
 「うん、5針縫っただけだって。でもちょっと痛かったかも・・・。」
 突然先生は、すっくと立ち上がった。
 「全員そろって何よりだ。さあ、今日の1回戦。見事『KYRT2』は勝利を収めた。はい拍手!!」
 ぱちぱち、と弱い拍手が鳴り響く。
 「まぁそんなことはどうでもいい。・・・お前ら、今何時だ?」
 そう言われ、壁掛け時計を一斉に見る。
 「6時30分だけど・・・。」
 「つまりだ!!・・・晩飯の時間だー!!!」
 先生は、その言葉が終わらないうちに玄関を飛び出していった。
 「ああー!!!」
 4人はその後をすぐに走って追いかける。
 この宿舎の料理が、素晴らしいことは昨日1日ここに泊ったから誰もが知っていた。
 赤いじゅうたんが敷かれた廊下を全力疾走で駆け抜け、映画に出てきそうな螺旋階段を転びながらも下り、
 ベルサイユ宮殿を思わせるロビーを突っ走り、ハリーポッターさながらの広さを誇る食堂へやってきた。
 しかし先生は、すでに皿に好きな料理を盛っていた。
 速っ!!と、誰もが思ったが、すでにたくさんの人が皿を持ち、バイキングの辺りに集まっている。


 そう、すでに戦争は始まっているのだ。ーーー食という名の戦争が。





 「あー食った食った。もう腹いっぱいだ。」
 5人は、食堂の長机の上で料理を食べた。
 「サーロインステーキがタダなんて、ホント信じられないかも・・・。」
 「インドのカレーって、やっぱり本場って感じがしたぜ・・・。」
 「トルコ料理って、なんか不思議な感じがするね。」
 それぞれが感想を口にし、ナプキンで口を拭いていた。
 そんな時、先生の隣に1人の男が近づき、話しかけてきた。
 「・・・高いところからで失礼ですが、あなたはかの有名な剣豪の久野川育海先生でございますか?」
 その男を友則がちらっと見ると、急に立ち上がった。
 「・・・う、内山忠昭さん・・?」
 「そうだが、今は君に用はない。用があるのはこの、久野川先生だ。」
 久野川先生?と、4人は思った。生徒でもないのに、先生と呼ぶ意味が分からなかった。
 第一、内山は明らかに先生より年上に見える。
 「・・・人違いじゃないですか?私はそんなに剣道に長けてはおりません。」
 「いえ、私は先ほどの試合を見ておりました。あの剣術は間違いなく『殺人剣・久野川流』の奥義、『背斬(はいざん)』でした。」
 「・・・ちっ。こんなに早くバレるなんて。用はそれだけですか?」
 「いいえ・・・。私に、『久野川流』の奥義を伝授して頂きたいのです。」
 
 「・・・ダメだ。あなたには教えられない。『久野川流』を甘く見るな。ほらお前たち。飯食ったなら帰るぞ。・・・失礼します。」
 先生は、また1人で去って行った。
 内山は、その背中をただ見ているだけだった。そして振り向き、結城たちに一言言った。
 「・・・久野川流は、人を殺すための流派なんだよ。」
 そういって、少し残念そうに肩を落として去って行った。
 「・・・とりあえず、部屋に戻ったほうがいいかも。」
 「そうだな。」
 結城たちは食堂を出て部屋へと向かう。行きは走っていたため、案外早く着いたが、意外と部屋までは距離がある。
 「もう2人目だぞ?先生が誰かに間違えられるの。」
 「そうなってくると、それは人違いじゃないんじゃないのかな?」
 「っていうか、『久野川流』って人を殺す流派なのか?内山さんが言ってたなら正しいんだとは思うンだけどな。」
 4人はいろいろ意見を言いながら、部屋に辿り着いた。
 「先生いるー?」
 結城はそう言いながら、玄関のドアを開ける。
 先生は、畳の上に正座をして座っていた。
 「・・・どうしたの、先生?」
 神妙な面持ちで、先生は答えた。
 「・・・先生の隠し事も、どうやら今日が潮時だ。お前たちに全てを明かそう。お前らもそこに座れ。」
 先生の前に、4人は座る。先生はどこか緊張しているような表情をしている。
 「まず、『久野川流』のことから話そう。『久野川流』の創始者は・・・先生なんだ。」
 その言葉に、4人の表情が一気に強ばる。
 「・・・先生そんなに若いのに?」
 「蓼科。お前たまにはいいこと言うんだな。確かに先生はまだ若い。」
 おいおい。と、友則のみが少し思った。
 「28歳で独自の流派を築くにはそれ相応の実力が伴わないといけない。」
 「先生十分強いんだから、作れたんじゃないんですか?」
 「じゃあ鳴海、逆に聞こう。先生はもともとこんなに強かったのか?」
 「・・・がんばって練習したんじゃないんですか?」
 「考えろ。今の剣社会が始まったのは丁度20年前。そのとき先生はまだ8歳だ。『久野川流』を創始したのが12年前。・・・たった16歳で、そこまでの実力は付けられない。」
 先生は、机の上にあったみたらし団子を一口頬張る。
 「・・・突然話は変わるが、お前ら憑依って信じるか?亡霊の憑依だよ。」
 結城たちは顔を見合わせる。第一に、この世界に亡霊というものが存在するのだろうか。よくテレビでやっている心霊番組を、胡散臭くてたまらない。
 「・・・いないんじゃねェか?少なくとも、俺は見たことないし。」
 友則はいかにもめんどくさそうに答える。
 「先生も今西と同じ意見だ。でもな、いたんだよ。実際に。そして、今・・・私の体にも亡霊が憑依している。」
 その言葉は、さすがに耳を疑ってしまう。
 「意味わかんないし。先生は先生じゃんか。特に変なとことかもないし・・・信じられないよ。」
 結城は頭を抱える。そんな夢みたいな話を突然されたところで簡単に了解できるはずはない。
 「まぁ聞いてくれ。・・・これは江戸時代の話だ。江戸時代には、たくさんの剣豪がいた。
 お前らがよく知る、宮本武蔵もそのうちの1人だ。でも、武蔵と同等か、それ以上の剣の腕を持った剣豪もたくさんいた。
 名前を挙げればキリがないが、とにかくそういう時代だった。
 だがそんな剣豪たちの中にも、哀れな死に方をした者たちがいた。その者たちが、先生に憑依しているんだ。」
 「それが先生の強さとどう関係してるっていうんだよ。」
 結城が間髪入れずに言う。
 「最後まで聞け。憑依ってのは、人格や肉体を亡霊が乗っ取るんじゃない。
 亡霊が、自分の果たすことができなかった信念を、憑依者に果たしてもらおうとすることだ。
 まぁ結論からすると、たまたま先生にそれが16歳の時に憑いてしまったって話だな。」
 室内に重い沈黙が下りる。ショックなんかは全くない。ただ、先生の言っていることが信じられなかった。
 そんな時、黎夏が沈黙を破った。
 「先生は、亡霊が憑依して突然強くなったんですか?」
 「・・・そうだな。先生はホントに弱かった。もうびっくりするぐらいにな。今となっては笑い話だが。」
 その言葉を聞いた黎夏は青ざめる。
 「まさか・・・『久野川流』の真相って・・・。」
 黎夏は急におびえだした。なぜ突然黎夏がそんな風になってしまったのか、3人には全く分からない。





 「さぁ、そろそろ種明かしだ。」
 先生の口元が、心なしか不気味にゆがんだ気がした。






 黒羽は、宿舎の近くにある丘で、夜空を見上げていた。
 「『久野川流』・・・か。」
 すると、丘の向こうから誰かが走ってきた。近づいてくる人物は、伊勢川だった。
 「しゅりょ〜う!!忘れ物ですよー!!」
 「・・・今はプライベートの時間だ。首領と呼ぶのは止めろ。」
 「す、すいません。黒羽様・・・。」
 「それで、忘れ物とはなんだ?」
 そうだ、という顔をして、ポケットから取り出したのは、
 「はい、黒羽様。双眼鏡をお忘れですよ。星空観察に双眼鏡は必需品です。」
 伊勢川は笑顔で双眼鏡を手渡す。
 「・・・全く。お前は本当におせっかい女だな。」
 そう言いながらも、微笑んで双眼鏡を受け取る。黒羽は再び夜空を見上げる。
 この辺りに明かりはなく、本当にきれいな天の川を見ることができる。
 「・・・なぁ伊勢川。人間だって星の数ほどいるのに、どうして俺たちは出会ったんだろうな。」
 それを聞いて、伊勢川は驚いた表情を見せた。
 「・・・運命って、やつじゃないでしょーかね。」
 「女は皆、それを言うな・・・。俺は運命なんて物を信じない。」
 「運命が味方しないのなら、私と黒羽様は一生結ばれないのでしょうか・・・。」
 「何?」
 黒羽は、目線を下ろして伊勢川の方を向く。
 「私、恥ずかしかたけど、わざと露出の高い服を着てみたり、足を開いてうちわであおいだり、黒羽様に胸を当ててみたりしたのですが、全く反応がなくて・・・。恥ずかしいのに・・・。」
 「お、お前、そんなことしてたのか!?」
 「だって、黒羽様は思春期だし!・・・私もそうだけど。」
 「なんでお前に手を出さなきゃいけないんだ!!」
 「だって黒羽様のことが大好きだから!!」
 辺りが一気に静まりかえる。伊勢川は目を閉じて顔を紅潮させ、黒羽は驚いてなんとも間抜けな顔になっている。
 「・・・黒羽さま。私って、そんなに魅力がございませんか?
 だから手を出してくださらないのですか?私は黒羽様と、どんな形でもいいから結ばれたいのです・・・。」
 黒羽は、しばらく黙りこむと宿舎の方へゆっくりと歩き出しながら言った。


 「お前のことが大事だから手を出さねぇんだよ。」


 乙女の瞳から、一筋の涙がこぼれる。

後書き

どうでしたでしょうか?至らぬ部分もありましたでしょうが、コメントよろしくお願いします。


今回から、登場人物を紹介しようかい!!はい、つまらん!!
まだやってなかったので、やりたいと思います。



蓼科結城 たでしなゆうき     鳴海黎夏 なるみれいか
男 14歳           女 14歳

空気を読むことが苦手で     頭がよく、明るい性格。
とりあえず馬鹿。        相手の弱点を的確に突く
剣の強さに対しては       戦術が得意分野。
とても貪欲である。       女の子だから恋もしてます。

使用剣名            使用剣名
真剣「咆哮」          真剣「剣舞」



今西友則 いまにしとものり    蜂須賀当真 はちすかとうま   
14歳 男           14歳 男

乱暴な性格だが、几帳面で、   マイペースで超天然。
人情に厚い。          しかし、冷静沈着に行動し、
自分の意見に自信がなく、    周囲の信頼度は高い。
人の言いなりになろことも    みかんが大好物。
しばしば

使用剣名            使用剣名
真剣「phenix」         妖刀「朧月」



また次回もやりますんで。

では。

この小説について

タイトル 第9話
初版 2009年4月4日
改訂 2009年4月4日
小説ID 3083
閲覧数 1056
合計★ 12
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 62
★の数 626
活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (6)

PJ2 2009年4月4日 13時14分10秒
読ませていただきました。
そういえば、星を見るのは双眼鏡じゃなくて望遠鏡じゃありませんか?
そこに意図があるなら良いんですけど、普通逆じゃないかなと思いながら最後まで読ませていただきました。
しかし、久野川先生の強さが取り付いた霊の仕業だったとは、おもいもよりませんでした。
なんとも興味深さの深まる作品でした。
では、続編を楽しみにしています。
★みかん 2009年4月4日 20時49分14秒
はじめてコメントさせていただきます。

全部読ましていただきましたが、霊が出るのは中々予想外でした。

面白い作品ですが、私としてはメインキャラの修行の努力を、深く書いてくれれば良いと思いました。

その分、そのキャラクターに感情移入しやすいからです。

今後とも楽しみに待っていますね。

それでは、失礼しました。
せんべい コメントのみ 2009年4月4日 21時43分49秒
PJ2さん、コメントありがとうございました。

望遠鏡か!そんな単語、思いつきませんでした。


この小説、その時の思いつきで書いてるもんですから
いきなり亡霊とか出しちゃうと後々めんどくさくなるような。
伏線張りすぎたという感じでしょうか。


続編、楽しみにしていてください。
せんべい コメントのみ 2009年4月4日 21時48分40秒
みかんさん。初めてのコメント誠に感謝いたします。

全て読んでいただいての星3つはなかなか好評価だな、
というのが率直な気持ちでした。


なるほど、感情移入ですか・・・。

これはなかなか難しい壁ですね。

そういったキャラを作るには
もっと躍動させていったらよいのでしょうか?

僕には全くわかりかねます。


手探りで頑張って行きますので、またアドバイスや感想をお待ちしていますね。
ほっしー 2009年4月11日 14時42分17秒
この物語に初めてコメントを書きます、ほっしーです。
はじめから全部読むと本当に面白いストーリーになっていると思いました。
せんべいさんのキャラに対する思いやストーリーを練っている様子が自然と浮かんできました。
これからもがんばって「光と闇と剣と」を書いていってください。

では。

★せんべい コメントのみ 2009年4月12日 10時43分33秒
ほっしーさん、
初めてのコメント感謝いたします。

初めてなのに星を5つももらっていいんでしょうか?
嬉しいのですが、複雑な心境です。

次回もどうぞ読んでいってください。
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。