光と闇と剣と - 第11話

 ピピピピピピッ。
 目覚まし時計の電子音が部屋に鳴り響く。
 「あー・・・。もう8時か・・・。」
 一番最初に起きたのは先生だった。座ったまま、大きく伸びをして辺りを見回す。
 「・・・あれ?蓼科は・・・?」
 結城が部屋にいない。
 結城が寝ていた布団を見ると、丁寧にたたんであった。
 その時、残りの3人も起き始めた。
 「あ、先生、おはようございます。」
 3人は、口をそろえて言った。
 「うん、おはよう。そういえば、蓼科を見なかったか?今起きたら、部屋にいなかったんだけど・・・。」
 「結城が?・・・ほんとだ。丁寧に布団までたたんで。明日は雪が降るかも。」
 今は夏なのに雪が降るわけもないが、結城の性格上布団をたたむなんてことは、ありえなかった。
 「もう食堂に行ったんじゃないですか?」
 「・・・そうかもしれないな。」
 とりあえず、寝間着から服に着替えて食堂に向かうことにした。






 黒羽は、武道館近くの丘を散歩していた。
 「・・・伊勢川はついてきていないみたいだな。」
 あたりを見回してみると、人影は見当たらなかったため、黒羽は安堵の息を漏らした。
 「あいつ、うるさいんだよな・・・。」
 普段、人前では言わないような愚痴をこぼしている。
 しばらく進むと、前方に小さな人影が見えてきた。
 「な・・・!なに!?まさか、伊勢川が先回りして・・・。」
 そう思って引き返そうとしたが、その人影の様子がおかしいのに気づいた。
 「なんだ?剣を振り回しているのか?」
 黒羽は、引き返すのを止め、近づいてみることにした。
 近づくにつれ、その人影は男であることがわかった。
 (この男、『炎刃』の特訓をしている・・・!!)
 黒羽は、その男の目の前まで近づいた。
 「お前、蓼科結城か・・・!」
 結城はきょとんとした顔をする。
 「へ?お前確かスクリーンで喋ってた・・・黒羽だったっけ?なんでこんなところにいるんだ!?」
 「・・・そんなことはどうでもいい。なぜお前はこんな所で『炎刃』の特訓をしているんだ。」
 その言葉を聞いて、結城は驚いた。
 「な、なんでその技の名前を・・・!」
 「しかたない・・・。私が手本を見せてやろう・・・。」
 そう言うと、黒羽はゆっくりと剣を抜いて深呼吸し始めた。
 「お、お前が『炎刃』をするのか?」
 「黙ってろ。全神経を刀を持っている手のひらに集め、それを剣に伝えるんだ。」
 黒羽の剣が、徐々に赤くなっていく。
 「限界まで伝えたら、剣を振るう。」
 音もなく天空に向って剣は振るわれた。すると、とてつもない轟音と共に、炎の刃が発射された。
 その炎の刃は、空を飛んでいた鳥に直撃した。
 すると、炎の刃と共に、鳥が跡形もなく消え去った。
 結城はただ黒羽を見つめて唖然としている。
 「どうだ。凡人には、到底出来ぬ技だろう。」
 結城は下を向いて黙り込んでしまった。
 「お前、確か久野川と一緒のチームだったな。『久野川流』の秘密、あいつから聞いたか?」
 「・・・な、なんでそれを。」
 「まぁ深い訳があるのだが、そこは気にするな。こんな所で特訓など、さしずめ『久野川流』の真実を知ってヤケが回ったんだろう。」
 結城は奥歯を強くかみしめる。
 「ははっ、図星か!しかし、お前に憑依している亡霊、大当たりみたいだな。」
 「なに?」
 「塚原卜伝(つかはらぼくでん)だ。俺にはわかる。」
 そう言うと、黒羽は身を翻して去っていこうとした。
 「・・・なんでそんなことがわかるんだ!」
 結城の言葉に立ち止まり、言った。
 「俺も『久野川流』を操るからだ。」
 「・・・なんだって!?」
 「聞いた通りだ。私にも亡霊が憑依している。『宮本武蔵』という最強の亡霊がなぁ!!」
 その言葉を聞き、結城は言葉が出ない。なんと言い返して良いかわからなかった。
 「いいか蓼科結城。よく聞け。」
 黒羽は振り向いて結城の目を見ながら言った。

 「強くなるために誰かの力を借りることは恥ずかしいことじゃない。それがたとえ亡霊でもな。」

 黒羽は、それだけ言うとこんどこそ去って行った。
 結城はしばらくその場に立ち尽くしていた。
 「誰かの力を借りる。か・・・。そんなこと、考えたことも無かったな。」
 結城は、ゆっくりと宿舎に向って歩き出した。






 「結局蓼科はいなかったな・・・。」
 一人先生は部屋に帰ってテレビを見ていた。
 すると、玄関からドアが開く音がした。
 「・・・先生、ただいま。」
 先生が振り向くと、そこに立っていたのは結城だった。
 「た、蓼科!お前朝からどこいってたんだ!!」
 「一人で特訓してました。」
 「そんな朝早くからか?」
 「・・・うん。」
 先生は不審に思った。どう考えても、結城に元気がなさ過ぎる。
 「蓼科、なんかあったのか?」
 結城は壁にもたれかかって座り、剣を布で拭いて手入れをし始めた。
 「なにもなかったけど?」
 「お前、まさか昨日のこと引きずって特訓なんかに・・・。」
 結城は答えない。ただ一心に剣を拭く。
 先生はテレビをまた見始めた。
 「・・・なぁ蓼科。お前が何でそんなに自分の強さにこだわるかは分からない。
 自分で強くなろうと頑張る姿はとても尊いものだ。だから蓼科もそれを続ければきっと強くなれる。でもなぁ、これだけは覚えておけ。」
 結城は作業を続けながらも先生の話に耳を傾ける。

 「強くなるために誰かの力を借りることは恥ずかしいことじゃない。それがたとえ亡霊でもな。」

 結城は、思わず手を止めた。

後書き

今日は1日休みということで、速攻で続編をかきました。
そのせいで、寮の先輩たちに
「こいつ、パソコンばっかいじってるぞ・・・。オタクか!?」
という印象を与えたこと間違いなし!



剣豪紹介ー塚原卜伝(つかはらぼくでん)
戦国時代の剣豪、兵法家である。天真正伝香取神道流の流れを引く武術(剣術)流派、新当流(鹿島新当流)の開祖である。

またまたすごい人。

宮本武蔵は知ってるよね?
宮本 武蔵(みやもと むさし、天正12年(1584年)? - 正保2年5月19日(1645年6月13日))は、江戸時代初期の剣豪。兵法者であり、また書画でも優れた作品を残している。


これまたすごい人。


この続編は、いつになることやら・・・。

この小説について

タイトル 第11話
初版 2009年4月12日
改訂 2009年4月12日
小説ID 3102
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作家名 ★せんべい
作家ID 397
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卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (6)

PJ2 2009年4月13日 1時00分22秒
読ませていただきました。
パソコンいじる=オタク、それは考えすぎですよ。
背景が可愛い女の子にさえなっていなければ、別にどうとも思われないんじゃないですか?
それはおいといて
先生と黒羽が同じような事を言ったのは、なにか関係がありそうですし、結城の身の回りの変化も面白いです。
塚原卜伝さんですか、勉強になりますね。
やはり続きが気になります。
あぁ、私もこんなふうに書けたら良いのですが。
続編を楽しみにしています。
★みかん 2009年4月13日 19時14分30秒
今回も楽しく読ませていただきました。

一人で特訓ですか……良いですね、カッコいいです。

奥儀がかなり強いですね、今後の展開が気になります。

次回もよろしくお願いします。

では、失礼しました。
★せんべい コメントのみ 2009年4月13日 22時36分18秒
PJ2さん、コメントありがとうございました。

塚原卜伝さん、
自分の流派を開くというのは、どれほどの実力の持ち主だったのでしょうか・・・。

今が平和な平成でよかったです。


こんな風にかけたら、なんて、
そんなことを言われるような作品じゃあありませんよ。
まだまだ甘ちゃんです。笑

しかし、少しでもPJ2さんの参考になるようなら、嬉しいです。


次回もよろしくお願いします。
★せんべい コメントのみ 2009年4月13日 22時38分48秒
みかんさん、コメントありがとうございます。


みかんさんは、一からこの物語を読んでいただいたのでしょうか?
奥義という単語がコメントに書かれていたのでびっくりしました。

ちゃんと読んでくださる人がいるというのは、嬉しいもんですね。


次回もよろしくお願いします。
まさやん 2009年4月27日 13時49分33秒
かっちゃん!
いや、ここではせんべいさんか(笑)

言われた通りきてみました。


1話からちゃんと読んでみると
すごいよくできたストーリーだね
びっくりしちゃったよ

5年ぐらい会ってないけど元気?
俺は元気だよ―。


また来るね♪
★せんべい コメントのみ 2009年5月18日 22時45分58秒
コメント遅れた・・・。

ほんとに来たの?
まさか、まさか・・・。予想guyです。


ま、神奈川でもがんばれよー。
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