光と闇と剣と - 第12話

 「・・・え?」
 結城はつぐんでいた口を思わず開いてしまった。まさか先生と黒羽が、同じ言葉を発するとは思えない。
 「蓼科・・・。わかったか?今強くなろうと焦る必要はない。ただ、亡霊に力を貸してもらうだけじゃないか。
 それが我慢できないような器じゃ、これからお前は絶対に強くなれない。」
 先生は、情報番組をテレビで見ながら淡々と言った。
 結城もその言葉を奥歯でぐっと噛み締める。
 「・・・先生。」
 「・・・なんだ?」
 「先生と黒羽は知り合いなの?」
 テレビを見ていた先生が、その言葉に敏感に反応して素早くこちらを向く。
 「お、お前・・・。どうしてそれを・・・。」
 結城はため息をついた。
 「やっぱり。だって先生のさっきの言葉、黒羽にも言われたんだ。さっき特訓している時に。」
 先生は思わず頭を抱える。
 「くそったれ・・・。いらんこと言いやがってあの若造・・・。」
 「一体どういう関係なの?」
 「・・・まぁ簡単に言えば、先生に昔から亡霊が憑依していたように、あいつもそうだったんだ。ただ、それで知り合っただけの縁だよ。」
 「そうなんだ・・・。」
 結城は、それだけ聞くと玄関へと向かった。
 「おい、どこに行く。」
 「心配しないで。ちょっと他のチームの偵察に行ってくるだけだから。」
 その直後、ドアが閉まる音がした。
 「黒羽か・・・。あいつ、またなんかやらかそうとしてるのか?」
 先生は、顔をしかめながらも再びテレビに見入った。






 武道館は、今までよりも格段に上の熱気に包まれていた。
 「ただいまより、『DISCARD』対『ジョイフェロー』の試合を始めます!」
 武道館が歓声でさらに盛り上がる。
 そんな中、当真と黎夏は中段席に座って観戦していた。
 「どんな試合が始まるんだろね、黎夏ちゃん。」
 「たぶんすごいんだろなぁ。だってこの大会の発案者のチームだもん、弱かったら話にならないよ。」
 そんな会話をしていると、黎夏の隣に若い男が立ち止まった。
 「・・・お隣、よろしいですか?」
 ニコッとその男は優しそうな笑顔を浮かべる。
 「あぁ、はい。いいですよ。今荷物どけますね。」
 黎夏は隣に置いてあったリュックを足元に降ろし、1人分のスペースを作る。
 「ありがとう。」
 男はゆっくりと腰かけ、すぐに黎夏に話しかけてきた。
 「君達も『DISCARD』の試合を見に来たんですか?私はそうなんですけどね。なんたって優勝候補ですから。」
 「え?あなたもこの大会に参加してるんですか?」
 「月待颯詩です。颯詩って呼んでください。・・・参加してますよ。私だって、隠された『五輪書』を読んで強くなりたいですからね。今回の賞品は『闇の巻』・・・。つまり参加チームの誰かは『光の書』を持っているってことですよね?」
 それを聞いて、2人は背中をびくつかせた。確かに、あのパンフレットには『闇の書』の存在事実は書かれていた。しかし、この男が結城たち以外誰も見ていない『光の書』の存在を知らないはずだ。
 颯詩の口元が、少し歪んだ気がした。
 「あれ?その反応、あなたたちがまるで『光の書』を持っているみたいな反応ですね。」
 颯詩は2人の目をじっと見る。
 笑っているはずの目なのだが、どこか殺気に溢れ、恐怖すら感じるほどの不思議な視線。
 黎夏の顔から、一瞬にして血の気が引く。
 「・・・颯詩さん、あなた一体何者ですか?」
 当真が聞いた。
 「私ですか?ただの剣士の端くれですよ。第一、あなたたちのようなどう見ても私より2、3歳しか年の違わない人が、『光の書』を持っているわけありませんから、さっきのはただの冗談ですよ。」
 と、颯詩は簡単に笑い飛ばした。
 「そうですよね。はははは・・・。」
 当真もそれにつられて笑い出す。黎夏も明らかな作り笑いを浮かべた。
 (違う。颯詩さんは確実に私たちのことを怪しんでいる。あの冷たい視線・・・。この人、絶対ただものじゃない・・・。)
 「あ、始まるみたいですね。ほら、『DISCARD』の先鋒が出てきましたよ。」
 颯詩はそう言って武道台を指さす。そこには、紫式部などの平安時代の女性が着ていた十二単を身にまとっている女性が立っていた。そんな、明らかに戦闘態勢でない容姿だが、しっかりと白く輝く剣が右手に握られていた。
 「なにあれ・・・。不気味・・・。」
 「あれは大宮千年(おおみやちとせ)。昨年の全国大会で3位に入っている実力者ですよ。いや、まさかこれほどの剣豪が先鋒に出てくるとは、恐ろしいチームの層の厚さですね。」
 「全国3位・・・。」
 2人は絶句した。あの化け物に勝たなければ優勝は絶対にない。弱小中学生の自分たちが、『久野川流』をマスターしたぐらいで、本当に太刀打ちすることができるのか心配になってきた。
 「・・・2人とも顔が強ばってますよ。ほら、あなたたちがいろんなことを考えているうちに先鋒の試合が終わりましたよ。」
 「えっ、もう!?」
 武道台を見ると、男が一人、血の海の中に倒れている場面だった。
 「腹を一突き。その動作だけで勝敗が決まってしまいましたよ。やれやれ、連中の本当の実力はどれほどなんでしょうね。」
 「あれでまだ力を残しているなんて・・・。」


 結局、試合は『DISCARD』の圧勝で幕を閉じた。



 「ただいまー。」
 「おー、お帰り。偵察ご苦労だったな。どうだった?やっぱり強かったか?『DISCARD』。」
 「強いってもんじゃなかったかも・・・。戦意喪失しちゃうかと思った。」
 当真は部屋の隅に畳んである布団に倒れこんだ。
 「だって、ものの3秒ぐらいで相手を仕留めちゃうんだもん。蜂須賀君の気持ちもわかるよ。」
 黎夏も苦笑いした。
 「そうか・・・。そういえば蓼科は?」
 「え?結城は今日一度も見てませんけど?」
 「なに!?」
 先生は、部屋を見回した。すると、結城のかばんが見当たらない。と言うか、ない。


 「・・・あの、バカ〜〜〜!!」

後書き

・・・なんか申し訳ない。
インターハイ予選が長引いてしまったので。
とりあえず、個人で滋賀県2位で出場決定したということは報告しておきましょうか。

テスト週間という絶好のアタックチャンスが巡ってきたので、一気に書き上げました。
量も少なく、至らぬ点もあるかと思いますが、コメント等よろしくお願いします。

この小説について

タイトル 第12話
初版 2009年5月18日
改訂 2009年5月18日
小説ID 3151
閲覧数 1122
合計★ 8
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 62
★の数 592
活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (4)

★みかん 2009年5月18日 22時26分32秒
読ませていただきました。

主人公、気になりますね。

はたして今後どうなってくるのか、とても楽しみです。

キャラを際立たせるの描写、参考になります。

結城君は一体どこへ行ったのでしょうか?

では、次回作も楽しみにしていただきます。
★せんべい コメントのみ 2009年5月18日 22時41分55秒
みかんさん、コメントありがとうございます。

結城は一体どこへ行ったんでしょうか?
それは僕にもわかりません。(をいをい)

また結城をどこかに飛ばしてしまった事を、本当に後悔しています。
この、をこをこをこをこをこをこをこ!!!
(「をこ」は、古文で「バカ」の意味。)

ちゃんと考えて書かないといけないですね。


そんなにキャラの描写が参考になるでしょうか?
自分では何気なく書いているつもりなのですが、無意識のうちにそういう癖が出てきているんでしょうかね。

こんな作品でも、参考になればなによりです。


では、また次回。
PJ2 2009年5月19日 2時01分13秒
読ませていただきました。

やっぱり凄いですね。駄目だ、泣けてきた。自分の無能さが憎い。
なにがともあれ、大会おめでというございます。
まあ、こちら剣道部は奈良市の大会で団体一回戦負けでしたけどね。平城が相手ですし。ま、関係ありませんが。

物語の方、よかったです。
結城が出て行ったとなると、試合は? と、次回気になります。
あの十二単の化け物も気になります。

次作、待ってます。
せんべい コメントのみ 2009年5月19日 9時09分26秒
携帯からですいません。

へ―、奈良県に住んでおられるのですか。
僕は今滋賀で寮生活ですが、
京都だったんですよ。

ま、余談ですが。


結城、どうしましょうか…。
授業中にでも
考えるとしますか。


コメントありがとうございました
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。