私と彼の飛べた空 - 舞う翼風に載りて

PJ2
 すこし右に、もうちょっと左。頭を狙う。私は、覚悟を決めた。
 引き金を、引く。銃声が響いた後、狙った兵士に当たった。
「う・・・・・・」
 おもわずスコープから目を離した。強烈な吐き気と悪寒が私を襲う。

「大丈夫か?」
「げほっげほ・・・・・・なんとか」
 目の前がくらくらする。
「敵は気づいてないな。よくやった。次は」

 レバーを引いてから次の目標を探そうとしたが、一度あんな物を見てしまうと、撃つ勇気は無くなる。我慢できなくは無いが、きつい。
「いた、建物の窓から見えている」
 もう一度スコープに目をあて、言われた方へ向ける。やはりいた。

「待て」
 突然おじちゃんの制止に、戸惑いながらスコープから目を離す。
「勘付かれた。一度引くぞ」
 その言葉の直後、銃声が響き、周りで銃弾がはねる。

「走れ!」
 全速力でバイクまで走ろうとしたが、足に弾がかすって前のめりに転んだ。
「あぅ!」
 もちろん雨のように飛来する銃弾は止んでいない。これでは私たち二人とも危ない。だから
「おじちゃん! 行って!!」
なんて、言ってしまったんだと思う。

「いいから!」
 うつ伏せの状態で、痛みで意識がもうろうとするなか叫んだ。その後、バイクの走り去る音が聞こえて、私は意識を失った。

 
 次に目が覚めた時、私は真っ白い天井を見た。一瞬天国かと思ったが、人の話し声が聞こえて現実だという事に気づき、少しがっかりする自分がいる。
「起きた?」
 声のする方へ向くと、二十歳くらいの白衣を着た女の人がいた。

「ここは・・・・・・」
 ふと呟き、上半身をベットから起こしたとたん、拳銃の銃口と目が合った。
「ゴメンね、あなた、スナイパーライフルなんて物騒な物抱えて倒れてたから。しかも日本製の。ここじゃあのスナイパーライフルは扱ってないの」

「・・・・・・・・」
「私の同僚を血塗れにしてくれたのは、あなた?」
「そうだったら、どうするの?」
 ためしに聞いてみた。なんの意味も無い質問だけど。

「そうねぇ、あなたをここで撃つ。と、言いたいところだけど、正直あの同僚どうでもよかったのよ。消えてくれてせいせいしたから、別にかまわないわ」
 そう言って銃を下ろした。この人は人間じゃ無いのかもしれないと思ったが、状況によって人は変わるのだろうか?

「その、ありがとう」
「ん?」
「手当てしてくれて」
「かまわないわよ、あなたの銃の腕を見込んで、隊長どのが直々に助けるようにって。聞いたわよ、初発砲で真ん中当てたんだって?」

 何のことかと思ったが、おじちゃんと出かける前に確かに一発、的へ発射している。でも、あれを見ていたのはおじちゃんと小隊長だけ・・・・・・
「その、隊長は、誰なんですか?」
「矢田隊長よ」

 何がなんだかわからなくなった。唖然とする私に、さらに追い討ちをかけるように、見覚えのある男の人が部屋に入ってきた。おじちゃんだった。
「起きたか。すまんな、騙して。言っただろう? 娘が軍の誤射で死んだって。そして君が撃ったやつはスパイでね、よくやってくれた」
「・・・・・・・」

 弔い。それだけが頭の中にうかび、他に何も考えられなくなった。
「おじちゃんも、私と同じ・・・・・・」
「ああ。もう二年になる。お前そっくりの、愛おしい娘だ」
 そう言いながら、私の頬に優しくふれた。思わず後ずさると、ふっと引いていく

「私は、おじちゃん、いえ、あなたの娘じゃない」
「俺を親と重ねてたのは誰だ? だからって、何も変わらないって言うんだろう? それがわかってるから、お前にあんな事を言ったんだ」
 あんな事、それはおそらく、私がこの人の胸の中で泣いている時に言った言葉だと思う。

「・・・・・・あなたは、何がしたいの? ううん、何をさせるつもりなの? 私に」
「ただ、居てくれればいい。俺のそばに」

「・・・・・・・・」
 それでも、私は良かったのかもしれない。この人と親子のように暮らす事ができるかもしれない。でも私は、
「考えさせて」
とだけ言って、ベットのシーツに潜り込んだ。

 その後、二回ドアの閉まる音がした。
「私、どうしたいんだろう?」
 シーツから顔を出して、閉まったドアにふと、呟く。

 自分でもこれからどうしたいかわからなかった。たぶん自分の心は、よりどころとしておじちゃんを求めている。    
 でも、あの人がここにいるということは、自分の親を殺した連中と仲間という事を意味している。

 何も答えが出ないまま、左腕と弾のかすった右足が痛いままだったけど、それに睡魔が勝って私は眠りについた。

 次に起きた時、私は爆音で目が覚めた。しかも断続的な。
「うわぁ、何この音?」
「F−37の発進音よ。あの機体は垂直離陸できるから、今日づけで七キロ離れた味方の基地へ移動なの」
 声の持ち主はあの白衣の女の人だった。この人の言うやつは、あの無造作に置かれていた戦闘機の事だと思う。けど、どこへ行くんだろう?

「どこへ行くのかって顔してるわね? 秘密よ」
 じゃあ言うなよとつっこみたかったが、それより先に腹の虫がなった。
「おなか減ったでしょ? これでも食べときなさい」
 そう言って、ぽんと渡されたサンドイッチをほおばりながら、私はふと疑問を抱いた。

「あなたは、誰なんですか?」
「私? そうね、あなたの見張り役ってところかしら。名前は二科 真美、年齢はナイショ」
 ふーん、とあいまいに反応したが、本当にそれぐらいしか思わなかった。

「じゃあ、今度はあなたの事を教えてもらえる?」
「矢田さんから聞いてるんじゃないんですか?」
 そう言うと、むっとした顔をされた。わかりましたよと言う代わりに、ため息をついてから
「私はフィルナルス・ロウといいます。出身はバチカンで、趣味は・・・・・・特にありません」
とだけ言って、一口分残っていたサンドイッチを食べきった。

 あいかわらず左腕は痛むが、右足の方は別に気にならないぐらいになっていた。
「痛まないでしょ? それ、この前成功した傷の痛みを和らげる特効薬なの」
 そう言う彼女の目は、満天の星空のように輝いていた。
「好きなんですね、そういうの」

「わかる? なんかこう、それに没頭している時の自分の良さって言うか・・・・・・」
 冗談抜いて、この人はいつか私を実験台にしそうだ。
「実験台・・・・・・」
「だいじょーぶ、あなたにはたぶん手を出さないから」
 たぶんって、おい。

「じゃあ、私は仕事に戻るわねー」
 そう言って出て行く彼女を見送り、暇になった私はふと、思いつく。探検という名の脱出時の下見を。

後書き

できましたよ。一応納期を一日前倒ししました。
また、一週間ほど

この小説について

タイトル 舞う翼風に載りて
初版 2009年5月24日
改訂 2009年5月24日
小説ID 3161
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コメント (6)

★せんべい 2009年5月25日 11時12分27秒
読ませていただきました。

なんとも複雑な心境でしょうね。親を殺した張本人と一緒に生活するのは。
フィルナさんはどういった決断をするのか、気になります。


んで、珍しくつっこませていただくと、
物語の最初の射殺シーン。

なんか物足りないというか、
緊張感に欠けるというか、
前回から引きずってきている部分なので
もうちょっとだらだら書いてもよかったかなぁって、思いました。

今回でいえば、次回は「探検」をもっと丁寧に、しつこくとまでもいかなくても。
たぶん、PJ2さんもそうなさるおつもりでしょうが・・・。


では、失礼しました。
PJ2 コメントのみ 2009年5月25日 18時53分08秒
みかんさん、ありがとうございます。
とりあえず、ごめんなさい! 自分自身どうにかならないかと思っていたところを、もろに的中です。
悩んだんですけど、他にどうにもうかばなくて・・・・・・本当にすいません!
探検に関しては自分も細かく書こうかと思っていましたが、さらにわかりやすく、細かに書こうと思います。
久しぶりにつっこまれて、なんだかスッキリしました。風とダンス以来ですかね?
では、コメント、ありがとうございました。
★せんべい コメントのみ 2009年5月25日 21時26分50秒
みかんさんじゃなくて、せんべいなんですけどね。笑
★みかん 2009年5月25日 21時48分10秒
こんにちは、今回も読ませていただきました。

射殺のシーンの描写は確かに少し物足りなかったと感じました。

こういう場合、初めて人を殺すシーンかなり強烈ですよね。

極限まで集中を要する、そういった描写が良いと思います。

私も未だにそういった描写は苦手ですが……

次回作、楽しみに待っていますね。

では、失礼しました。
PJ2 コメントのみ 2009年5月25日 22時02分32秒
せんべいさん、すいません!!
本当にすいません!
どうかしてます、自分。今後無いよーに気をつけます!
PJ2 コメントのみ 2009年5月25日 22時12分04秒
そしてみかんさん、ありがとうございます。
だぁーと言わんばかりに失態続きの私ですが、ホント何やってんでしょ、自分・・・・・・
ご指摘のとおり、自分でもかなり後悔しています。本当に、何も出てこなかったんです。
お二人の書き方が似ていて、しかも自分のあ、みかんさんだという先入観が強く、ハンネを見ずに言ってしまいました。
ああ、もう恥ずかしいです。

コメント、ありがとうございました
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