私の世界 - 私の世界―始まりの木

雅貴
「和歌奈って、可愛いよね〜」                      
「和歌奈って、面白いよね〜」                        
「高橋って、クールだよね〜」                        
「和歌奈ちゃん気が利く〜」                       
「和歌奈っち優しいよね〜」                     
「高橋さん、頭良い〜」                   
「和歌奈のこと尊敬する〜」                         
「和歌奈先輩って、おっとりしてる〜」                         
                                  
                                  
私に対しての褒め言葉――お世辞・・・・・・。                           
嘘、全部嘘。みんな、本当の私を知らない。             
あ、でも、一人だけ・・・・・・。                   
                              
「高橋って、超意地悪いよな。自分が一番って思ってる感じ?まじうざい」
                                         
これは、・・・・・・。                            
                                   
                            
「あ、高橋。悪いんだけどさ・・・・・・」           
帰り、私は担任――佐々木に呼ばれた。                       
「何でしょう?」                          
「いっや〜、あのねぇ、坂田分かるだろ?」            
「はい。うちのクラスの出席番号15番の坂田洋二ですね」                 
「良く覚えてるなぁ」                      
佐々木は、はははっと誤魔化すように笑った。               
覚えているのは当たり前だ、ここではそういうキャラなんだから・・・・・・。          
「用件は何でしょう?」                             
「あ・・・あぁ・・・」                               
急に佐々木の顔が曇った。                            
「や、これを坂田に渡して欲しいんだ・・・けど・・・」          
進路の調査書だった。                              
「先生が、」                              
渡せば良いじゃないですか。
ここで止めておいた。反発しちゃだめだ・・・。
「分かりました。坂田君に渡しておきます」                   
佐々木の顔が明るくなった。
「悪いねぇ」                              
全然悪そうな顔をしていない。                         
「坂田、教室に居ると思うから」                             
私は静かに職員室を出た。                          
坂田、洋二。私のクラスの問題児・・・と、思われてる人。私の本当の人格を知ったら、私が一番の問題児だけどね。                              
                                     
                                          
案の定、坂田は教室に居た。階段を上っている間に気づいた。教室から、ガラスの割れるすごい音が階段まで響いてきたから。                      
西日を反射させてキラキラ光るガラスの破片を教室中にぶちまけて、肩で息をしていた。
「坂田・・・・・・く・・・ん・・・」                        
私はガラスの破片をなるべく踏まないように注意しながら、教室に入っていった。それでも、ぴしっ、ぴしっ、と破片が悲鳴を上げる。                     
坂田は何も言わない。静かに私のほうに視線をくれ、睨んでるだけだ。
「進路、希望調査、書」                          
ふと、顔を上げた。目の下に赤い筋が入っていた。血・・・・・・。             
「さ、かたく、ん、ち、血」                         
指差した私の指が震えている。無様だ。私はあわてて手を下ろす。            
「血」                                    
初めて坂田が口を開いた。無意識に身構えてしまう。                 
「血が怖いか?委員長?」                             
前髪の先に血がついて、かすかに固まっている。                 
「怖っ」                                
声が震える。                                
「怖くなんか、無いわっ」                             
「ふ〜〜ん」                                   
坂田は面白そうに口元を緩めた。                         
怖くなんか無い。だって私、喧嘩なんてしょっちゅうだったし。ただ、切って血を流すとかじゃない。半端ない喧嘩だった。              
坂田は、まだにやにや笑っている。                 
「何よっ」                            
あんたが私に向かって来たって一発でやられるわ。そう言ってやりたかった。
だが、足が・・・・・・すくむ。びびっているのかもしれない、この状況に。      
「調査書、出してね」                       
自分の机の方に駆けていく。かばんを引っつかんで、早くこの教室から出ちゃいたかった。
「委員長が書いてよ」                              
「私が書いたって、意味ない」                          
「ふ〜〜ん」                                          
何なんだ?こいつ・・・・・・。                                    
                                       
くしゃ                                  
                                  
え?                                       
「な、何やって、」                             
坂田が、調査書を丸め、大きく振りかぶって――――             
「や、辞めなさ・・・」                                
私は、坂田の腕にしがみついた。                       
「をぁ、辞めろよ。高橋。気っ色悪ぃなっ」                    
坂田が腕を振る。呆気なく私は床に叩きつけられる。                 
腕に痛みが走る。ガラス――                           
坂田に飛び掛りそうになった。               
だけど―――                              
                                    
ここでは良い子じゃなきゃいけない                   
                             
「辞めて・・・」                          
私はひざを抱え込んで泣いた・・・・・・・・・ふりをした。                  
坂田は動じることもなく、窓から調査書を落として、静かに教室から出て行った。    
                              
むかつく。あいつ、いつか取っちめてやる。                     
                                   
                                 
                                   
                                  
「ふぇ?にぎぇりゃりぇたって?」                        
私はおとなしく職員室に戻って、佐々木に報告しに行った。             
「あの、先生、スパゲッティーを口に運びながら喋るのやめていただけますか?」   
職員室でスパゲッティーとか・・・。どんな学校の職員室だよ。            
「をぉお。すまんすまん」                            
スパゲッティーが口の隅からはみ出して踊っている。すまなさそうじゃない。     
「全く・・・。あいつはどういうつもりなんだぁ?高橋??」          
「あの、いえ。私に聞かれましても・・・・・・」                   
分かるわけねぇじゃんかっ。                          
「そ〜だよなぁ〜。がははははははははははははは」             
下品に笑う佐々木。                             
「・・・・・・・・・先生!」                      
職員室内が静かになる。ヤバっ。ちょっと大声出しすぎちまった。         
「私、早く家に帰って勉強をしたいのですが?」             
佐々木はプラスチックのスプーンでスパゲッティーを絡め取って口に運んだ。   
「そうだにゃ、しゅまにゃかっちゃ。じゃ、まちゃあしちゃ」          
もう何を言っているのか分からない。黙って背を向け、職員室をあとにした。   
                                      
                                      
時計の針はもう、午後の6時をさしている。こんな時間まで生徒を残す教師も教師だなっ。私は誰も居ないだろうと油断して、昇降口めざしずかずかと廊下を歩いた。    
                                      
甘かった。                                
                                    
「どったの、いいんちょ?パンツ見してずかずか歩いちゃって」         
坂田だった。                                
「ぱ、ぱんつなんてみせてあるいてないっ」                 
坂田はゆっくり――本当にゆっくり私に近づいてきた。             
「な、何?」                            
私は思わず後ろに下がる。                        
でも、すぐ壁に背中をぶつけた。行き止まりだ。                
「なんであんたまだ学校に居るの?さっさと帰りなさいっ」            
「いいんちょ?なんか嫌なことでもあるんでしょ?俺に言っちゃいなよ。ねぇ?」 
「お前に話してやるような話じゃねぇ」                    
思わず口から出てきてしまった言葉。今までの努力が水の泡・・・・・・。      
「ふぅ〜ん。いいんちょ、そういうキャラだったんだ。俺、知らなかったなあ?もしかして、俺らよりも悪?」                            
「・・・・・・・・・・・・」                             
「もう、隠さなくて良いんだよ?いいんちょ〜?何?おびえてんの?かあ〜わいっ。いいんちょ」                                   
ゆっくりと、本当にゆっくりと、私の胸元に手を伸ばす。             
「触んなよ」                                  
これにはさすがに坂田もびっくりしたようだ。しかしそれも一瞬で、瞬きしたあとにはもう無敵に笑っていた。                              
「じゃ、これでどう?おとなしくこのままいいんちょ〜が俺んちまでついてきたら、このことは一切話さない。だけど、どうしても俺んちに来ないっていうなら・・・・・・」   
「本当に、ついて行くだけで良いわけ?」                    
そんなわけないだろうけどさ。                         
「いいんちょ、バカ?」                            
「このエロ野郎」                               
「はんっ。俺様をどなた様だと思ってるんだ」                  
くそっ。                                       
こんな奴についていかなきゃいけないなんて。                   
これから、こいつに人生振り回されるんだろな。                  
                                    
でも、悪い気はしない。                          
胸が、高鳴っているのを隠し切れなかった。               

後書き

続き。ずっとあとになると思いますが、よろしくです。

この小説について

タイトル 私の世界―始まりの木
初版 2009年5月24日
改訂 2009年5月24日
小説ID 3164
閲覧数 637
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コメント (4)

★音桜 コメントのみ 2009年5月24日 18時38分00秒
えーと、なかなか面白かったです。はい。
後はそうですね、続きで、委員長の本性と、坂田くんの悪ぶりを書いてくれれば、モアベター。です。がんばってください。
PJ2 2009年5月24日 18時57分00秒
えーと、読ませていただきました。
まず、登場人物をはじめとする、周りの環境がまったくわかりません。わかった事は委員長が主人公というぐらいでした。
そして、この主人公の性格が見えません。私は〜な性格で〜のように、性格を読者に読み解かせるにしても、それを付けてもあまりに情報がありません。
そして一番混沌としているのは、坂田です。ここまで悪行野郎なら、具体的な噂の一つや二つ、主人公の耳に入っていてもおかしくないのでは?  
そして佐々木、この人ももう少し情報が欲しかったです。クラスメイトからどう思われているかなど。

総合して、話は面白そうだと思います。しかし、読者に伝える事が少ないです。

とりあえず、こんなんでつまづいていたら、小説家として腐りますよ。自分も腐りかけた人間だから、こんな事を言ってるんです。
それと、文章としては最初の文を除いて上手く書けてるんですから。
頑張ってみてください。では
弓射り 2009年5月25日 9時31分27秒
入れすぎるとうざいですが、比喩を入れたらもっと良くなるんじゃないかな、と思いました。

>>西日を反射させてキラキラ光るガラスの破片を教室中にぶちまけて、肩で息をしていた。
この文はとても好きです。表現が光る作品は読んでいて気持ち良いです。ストーリーとは別の楽しみ方ができるので。

>PJ2さん
人のやる気を喚起する気があるなら、もっと上手なコメントをしたほうが良いと思います。
PJ2 コメントのみ 2009年5月25日 18時57分15秒
弓射りさん、すいません。
ただ、思った事と指摘部分を述べただけなんですけど、ちょっと書きすぎたみたいです。失礼しました。
気分を悪くされたなら、ごめんなさい。
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