光と闇と剣と - 第14話

 「ただいまより、2回戦、『KYRT2』対」『火影(ほかげ)』の試合を始めます!!!」
 審判がそうコールすると、場内からは、『KYRT2』を応援するような声援が、少ないながらも飛んできた。
 どうやら、1回戦の様子を見て、観客の心を180°変えてしまったようだ。


 「・・・先生。ついに来ちゃいましたよ。この時が・・・。」
 「・・・あの・・・バカ野郎・・・。」
 先生は拳を強く強く握りしめた。
 それもそのはず、結城が試合会場はおろか、今日の朝から姿すら見かけていない。
 すると、1人の男が先生の傍へ歩み寄ってきた。
 「すいません、『火影』の代表の者なんですけれども・・・。お宅のメンバー、1人足りないようなんですけど、棄権でもされるんでしょうか?」
 この男、やたらとニヤついている。確かに、メンバーが1人でも足りなければ、『火影』が有利に試合を進めることができるだろう。
 「あぁ、大丈夫です。ちょっとうちのバカは迷子にでもなってるんじゃないですかね。なんにせよ、そのうち帰ってくるんで、あまり気になさらずに。あいつは大将の位置に据えておきますので。」
 「・・・そうですか。しかし、そんなたかが中学生しかいないチームにうちが負ける理由がありませんけどね。」
 男は、小さく舌打ちをしたつもりだろうが、先生の耳にはしっかりと届いていた。
 「あの男・・・。斬り刻んでやろうか・・・。」
 (あーもう、なんかグダグダだなぁ。)
 黎夏は世界の全てを嘆くように、思った。





 「あー、かゆっ。」
 結城は体中をぼりぼりかきながら、草原の上であぐらをかいていた。
 「やっぱり夏に外で寝るのは大失敗だったな・・・。ちゃんと部屋に帰るべきだった・・・。」
 と、あまり後悔していない様子の表情でなお、体をかく。
 「・・・なーんか忘れてる気がするんだよな・・・。まっいいや、『炎刃』の特訓でもするか。」
 結城は立ち上がって剣を抜く。
 「確か黒羽はこうやってたよな・・・。」
 結城は黒羽の言葉を思い出す。
 「全神経を手のひらに集中させ、剣に伝える・・・。」
 目を閉じると、何かが手のひらに集まってくるような感覚を覚えた。
 (きたっ!)
 剣を振るおうとした、その時。
 「・・・熱っ!!!」
 とっさに剣を放り投げる。剣先が柔らかい土に刺さって直立した。
 結城の手のひらは、火傷を負ってしまった。
 「・・・なんでだ?何がダメなんだ?俺には、無理なのか?」
 結城は、また空を見上げた。雲ひとつない青空とはこのことを言うのだろう。
 そんな結城に、誰かが語りかけてきた。
 (フハハハハ!!小僧、ずいぶん自暴自棄だな。そろそろ自決するんじゃないの?)
 「だ、誰だ!」
 慌てて辺りを見回すが、人影すら見当たらない。
 (探しても無駄だ。なにしろ、俺は小僧自身なんだからな。)
 「はぁ?何を訳のわからないことを・・・。」
 
 (・・・俺は、塚原卜伝[つかはらぼくでん]だ。)

 結城は思わず耳を疑った。
 「なにおう!?塚原卜伝が、今の時代にいるか!どこに隠れてるんだよ!」
 (まぁまずは落ち着け。第一、この広い草原のどこに隠れる場所があるんだ。)
 確かにそうだ。木だって見当たらないし、ずっと向こうに武道館と宿舎があるだけだ。
 それに、音を耳で聞いている感覚ではなく、なんだか体の中で響くようだった。
 (小僧、光栄に思え。この大剣豪・塚原卜伝様が小僧ごときに憑依してやってるんだからな。)
 結城はもう一度辺りを見回す。やはり、誰もいない。
 「先生の言っていたことは、本当だったのか・・・。」
 (何をごちゃごちゃ言っている。小僧、今日は試合とやらじゃないのか?)
 それを聞いて、結城は飛び上がる。
 「・・・そ、そうでした!!!!」
 (ったく・・・。俺がお前らの話を盗み聞きしてなけりゃあ小僧、終わってたんだぞ。)
 「あ、ありがとうございますぅ!!っていうか盗み聞きされちゃまずいことまで聞いてませんよね・・・。」
 誰もいない草原で、少年が大声で独り言を叫びながら土下座をしている。もし人がいたなら、とんでもなくこっけいな姿だろう。
 (しかし。しかしだ、よく聞け小僧。)
 え?っといった様子で、ただ頭を下げる動きを繰り返していた結城はぴたっと静止する。
 (小僧をこのまま試合とやらに行かせるわけはいかない。このままだと、小僧は確実に斬り殺されて終いだろう。)
 「は、はい・・・。」
 (それでだ。この俺が・・・特別に稽古をつけてやろう。)
 「え、いいんですか!?」
 (・・・まぁ子供を教えるのは生前から好きな方だったんでな。)
 やったー。と、スキップして喜びを表現している結城っだったが、あることに気がついた。
 「あれ?でもどうやって教えてくれるんですか?」
 (・・・残念ながら小僧と剣を交えて稽古するのは不可能だからな。適当に俺が指導していってやる。)
 「じゃあ、『炎刃』の指導、お願いできますか?」
 (今稽古してた技か。あれぐらいの低級『炎術剣』も自らの力と出来ていないとなると、これからが辛いだろうな。)
 「『炎術剣』?」
 (細かいことは気にするな。・・・さぁ、やるぞ!!)
 「はいっ!!」






 「先鋒、『蜂須賀当真』対『毒島元気(ぶすじまげんき)』、・・・試合開始!」

 「なんだ。あの美人の先生かと思ったら、ちょこまか消える子供かよ。」
 毒島は剣を肩にかけて言った。
 それを聞いて当真も反論するように言った。
 「なんだ。さっきのニヤニヤして気持ち悪いおじちゃんかあ。」
 毒島のこめかみに、太い血管が浮かんだ。
 「もう一回言ってみやがれぇぇぇ!!!」
 ものすごいスピードで当真に突進する。しかし、当真は顔色一つ変えず、そして。
 「『鎌鼬』・・・。」
 空気が一気に当真の剣先へと集まって行く。空気の流れが目に見えてしまうほど、その場の空気の濃度がかわってきている。
 「それがどうしたぁ!!」
 毒島は当真の行動など無視してただ突き進む。
 「かまいたちの原理って知ってる?・・・空気が真空になった場所にできるんだよ。」
 当真は、血が凍るように冷酷に笑った。

 その時。

 スパァ!という心地よいぐらいの音の後に、毒島の右足が宙を舞った。
 「え?」
 毒島は何が起こったのか全く分からず、右足を無くしたことでバランスを崩し、その場に倒れた。
 しばらくしてから、自分の右足が無くなっていることに気づいた様子で、ひどい断末魔を上げた。
 「・・・うちを侮辱した罰だよ。首を切ってやろうかと思ったけど、右足1本で済むぐらいなら安いもんでしょ。」
 担架で運ばれながらも、見苦しいほどに、ただ叫んでいた。
 「勝者、『蜂須賀当真』!!」
 場内が歓声に沸く。観客から、俺はこういう試合を見に来たんだぁ!という声が飛んでくる。
 





「先生、ぼく勝ったよー♪」
 メンバー全員顔面蒼白だった。
 「・・・いや、勝ってくれたくれたのはとってもすごいことなんだけどさ・・・、ねぇ・・・。」
 メンバーは顔を見合わせた。
 「ほらっ!もしかしたら結城の出番なくして勝てるかもしれませんよ!」
 「そうだな!よし、次は俺だな!当真に続くぜ!」
 「うんっ。友則、僕みたいに試合すれば絶対勝てるよ!」

 えっ

 先生は、当真に耳打ちをした。
 (あのなぁ、蜂須賀・・・。キャラクターを守るのはやっぱり大事だと思うよ?)
 それを聞いて、当真は納得した表情で、
 「なるほど!それでみんな様子がおかしかったのか!気にしないで。あれがぼくの素顔だから♪」


 
 友則は、青ざめながら出陣した。

後書き

できました。
いやー、やっぱり当真くんはかわいいですね。
先生より怖いんじゃないでしょーか。


物語中に出てきた「よくわからない用語」など、コメント欄に書いていただければどれだけでもお答えいたしますよ♪

では、また次回。

この小説について

タイトル 第14話
初版 2009年5月30日
改訂 2009年5月30日
小説ID 3176
閲覧数 1181
合計★ 8
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 62
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活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (5)

★みかん 2009年5月30日 19時32分42秒
今回も楽しく読ませていただきました。

ついに出ましたね、塚原さん。

何か口調が豪快で、結城の性格と相性が良さそうな感じがしました。

これからの結城君の成長に期待です。

しかし、憑依霊と会話ができるのですね。

これからどんな風に物語が進んでくのでしょうか。

ただ、結城君と今の敵チームとの戦いにおける時間の流れを考えて、
話の展開を急ぎすぎないようにして方が良いと、個人的にそう思いました。

いささか、物語の進み方が早すぎるような気がします。

早すぎると、物語の内容が、薄くなってくるのではないでしょうか?

最後に色々述べてしまって、申し訳ありません。

では、次回作も楽しみに待っていますね。

しつれいしました。

PJ2 2009年5月30日 19時34分39秒
読ませていただきました。
まず、先日のことを謝らせてください。パソコンが一時的にフリーズしたので・・・・・・すいません。
そして物語ですが、蜂須賀が恐ろしく思いました。足をバッサリ・・・・・・
まあ、以外や以外の塚原さん登場ですし、なんとなくはやわらいだんですが。
なにがともあれ、結城が間に合うのかが一番気になります。

次回、楽しみにしてます。
★せんべい コメントのみ 2009年5月30日 20時01分27秒
みかんさん、コメントありがとうございます。

確かに、最近急ぎ気味かもしれませんね・・・。
内容を濃くですか・・・。次回から意識して書いていきたいと思います。

それに、もっといろいろ述べていただいて結構ですよ。
むしろ欲しいぐらいです。


では、次回もよろしくお願いしますね。
★せんべい コメントのみ 2009年5月30日 20時05分50秒
(このコメントは作者によって削除されました)
★せんべい コメントのみ 2009年5月30日 20時51分02秒
PJ2さん、コメントありがとうございます。

チャットの件ですが、気にしないでください。
そーゆう日もあります。また今度の機会、ということで。


塚原さん、実際どんな性格だったんでしょうかね。
そーゆうのがわかると、物語も進めやすいんですけど。
いくつか決まってれば、あとはそれをつなげるだけなんでねぇ。

ボク、ただの日本史大好き人間ですから。
剣豪とか、戦争とか、ほんと興味あります。

まぁ、趣味の世界ですけど。


では、また次回。


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