光と闇と剣と - 第15話

 (違う!!小僧の精神力はそれほどまでに小さいものか!!)
 「は、はい!すいませんっ!」
 結城はひたすら『炎刃』の稽古を続けていた。その影響で、結城の腕は火傷を負ったように赤くただれていた。
 「くうぅぅ・・・。」
 結城は痛みに耐えながら必死に剣を握る。神経を集中させ、精神力を炎に変える。
 何かが焼ける音と共に、腕の火傷の痕は、さらに広がっていった。
 しかし、顔色一つ変えずに、ただ深呼吸をして自らを極限まで集中させようとしている。
 (そうだ!あとはもう小僧の感覚のみで炎の刃を飛ばすのだ!!)
 白く輝いていた剣が、だんだんと赤く染まってゆく。そして、黒羽が『炎刃』を飛ばした時の色にまでなった。
 (よし、あとは飛ばすだけだぞ!)
 だが塚原卜伝の言葉を聞いても、結城は身動き1つせず、ただじっと立った状態で、目をつぶって深呼吸を続けている。
 その間にも腕の火傷の痕は、どんどん男子としては比較的白い皮膚を蝕んでゆく。
 剣の色は、さらに濃く、強くなっていった。
 (おい!このままだったら腕を無くしてしまうぞ!はやく飛ばすんだ!!!)
 結城は目を閉じたまま言った。
 「・・・黒羽と・・・同じ所で満足してても・・意味がないんだ・・・。俺は・・・、あいつを男として尊敬し・・、男としてブッ倒してやる・・・。そのために・・、あいつを超えなくちゃいけないんだよ!!!」
 そう言いきった瞬間、あれだけ赤かった剣の色が一瞬にしてきらびやかな銀色に戻り、結城は目を見開いた。
 「行けぇぇ!!『炎刃』!!!」
 体全体で思いっきり剣を振る。
 体中に滲んでいた汗がそれによって宙を舞い、太陽の光を反射してキラキラと光っている。
 しかし、そんな綺麗に光っていた汗が一瞬にして蒸発した。

 
 そこに現れたのは、蒼く不気味に燃える炎の刃だった。


 凄まじい轟音と共に空中に飛び出した蒼い炎の刃は、手を離した風船のように、どこまでも突き進んでいった。
 しばらくすると、澄んだ青空の中に完全に消えてしまった。
 「・・・・・ぁ・・・。」
 出した結城自身が一番驚いた顔をしていた。
 (・・・ふう、ヒヤヒヤさせおって。しかし、小僧にこれまでの潜在能力が秘めれておったとは、俺もなかなかびっくりだ。もしかしたら、すでに黒羽とやらを超えてしまったかもしれんな・・・。)
 「え?」
 (なぜ蒼い炎の刃が現れたのか、疑問ではないか?それに、赤い剣が元の色に戻った。それは黒羽にはなかった反応だろ?この2つの疑問、俺には心当たりがある。俺がまだ人間として生きていた江戸時代の話だ。もちろんお前のように、炎術剣を極めようとした者が幾多といた。それは修行すれば大抵の奴は習得することができる。しかし、一部の素質のある奴らの炎は、弓矢の形をしていたり、緑や紫の炎の者もいた。・・・俺にも信じがたいことなのだが、小僧には炎術剣の素質があるみたいだな。)
 「そうそう、その炎術剣ってなんなの?」
 (文字通り、炎と剣を駆使して戦う剣術のことだ。)
 「へぇ・・・、って俺にそんな才能があったのか!?」
 (そうみたいだな。それに、剣の色についてだが・・・。)
 と、塚原はさらに説明を入れようとしたが、
 「うそぉ!?俺スゲェ!!塚原さんに認められちゃったよ!!いやー、生きててよかったなぁ。だって生まれてこのかた先生に殴られたり、学校の通学路通るたびに犬のフン踏んだり・・・。」
 と、結城は勝手に自分自身の人生の嫌なことを語り出した。
 それを聞くと、かなり悲しくなる内容ばかりだった。
 (もういい・・・。まぁ、試合したら勝手に気づくだろ・・・。)







 友則は武道台に上がった。
 先ほどまで、当真にビビりまくって青ざめていた顔とは全く違い、完全に剣士の顔になっている。
 「へえ、次はだれかと思ったら、一番弱いってウワサの今西君かー。こりゃ俺の勝ちだな。」
 先鋒の男に続き、この男も薄い笑みを浮かべている。
 「なぁ今西君、うちのチームで毒島は圧倒的に弱いんだよー。っつーか、強い奴を先鋒に出すか?残念だねー。強い蜂須賀君を先鋒に使っちゃうなんて。まぁ、毒島の足の仮は返させてもらうからね。」
 そんな侮辱の言葉を聞いても、友則の表情は全く変わらない。
 「俺のことを弱いっつーのは全然かまわねェけど、当真のことをバカにするンなら、テメェも足ぶっ飛ばすぞ。」
 「おー怖い怖い。ま、お手柔らかにねー。」


 「次鋒、『今西友則』対『井尻耕(いじりたくみ)』、・・・試合開始!!」


 先に動きがあったのは友則だった。
 試合開始が宣告された瞬間、剣を石でできている武道台に突き刺し、ただひたすらに手のひらをすり合わせている。
 

 「先生!今西君は何をするつもりなんですか!?」
 先生は腕を組んだまま言った。
 「もう電気の生成ができるようになったのか。・・・お前らの憑依霊は大当りばかりのようだな。」
 「電気って・・・。どういうことですか?」
 黎夏はちらちらと友則の試合を気にしながら聞いた。
 「蜂須賀が風で戦ったよう、今西は電気を駆使して戦うよう、先生があのマニュアルで指示した。それはお前もわかっているだろ?鳴海。」
 「・・・まだできるかわかりませんけどね。」
 黎夏は再び友則の試合に熱い声援を送る。それは、当真も先生も、観客すら同じだ。


 当然井尻が黙ってその様子を見ている訳がなく、
 「何がしたいんだよ、このガキっ!!」
 と、猪のごとく突進してきた。しかし、友則は全く慌てない。
 剣を横に振ってきた井尻の攻撃をしゃがんで避ける。
 井尻は勢いあまって前へ転びそうになった。それでもまだ、手のひらすり合わせるのをやめない。
 「・・・なめやがって!!!」
 井尻は歯をギリギリといわせている。拳は力が入りすぎて小刻みに震えている。
 
 「できたッ!!」

 そう友則が言うと、剣を抜き、怒りに満ち溢れていて隙のできている井尻に剣先を向けた。
 「終わりだよ、オッサン。3秒時間やるから命乞いでもしろや。」
 と、冷たく言い放った。
 「おまっ・・・、ただ手ぇ擦ってただけのお前に、何が出来るんだよぉぉ!!」
 間合いは、それほどなかった。しかし、残り1秒でそれを詰めることはできなかった。
 また素直に突進した井尻は、あることに気がついた。
 (あれ?アイツ、あんなに肌白かったっけ?ってか、光ってないか?)
 そしてそれは1つの恐怖へと変化した。
 (コイツの言ってることは、ホラじゃないんじゃ・・・。)

 刹那、友則の剣先から井尻の体が閃光によって貫かれた。


 バチィ!!


 見えたのは、火花だけだった。
 それと同時に、井尻の体が大きく後ろにのけぞり、10メートル以上吹き飛ばされた。
 ドサッと、井尻の体が落ちたのは武道台の外だった。
 「奥義『雷銃』。俺もまだまだ使いこなせてねェけど、オッサン程度には勿体ねェ技だったな。」

 「勝者、『今西友則』!!」

 場内がまた大きく沸く。試合時間は3分程度。誰がこんな一方的な展開を予想しただろうか。
 そして観客達も薄々感じ始めた。

 この中学生たちは、只者ではないということを――。

 「よくやったかも、友則♪」
 「ホント、あんな技いつの間に・・・。」
 「そうだな、先生の理想通り。とはいかないものの、なかなか上出来だったな。」
 笑顔で友則を迎え入れる3人だったが、肝心の友則の様子がよろしくない。
 「・・・どうした、今西?。」
 友則はつらそうな顔をして言った。
 「いや、1回戦の傷が、今の奥義で痛んできただけです。きっと、問題ありません。」
 3人に安堵の表情が浮かぶ。
 「びっくりさせないでよ・・・。」
 「すまん。まぁ、この通り大丈夫だ。」
 友則はそう言いながら傷口をパンパンはたく。
 「さあ、王手がかかったところで、先生の出番かな!!」
 先生は、椅子に立てかけてあった剣を手に取り武道台を上がっていった。
 「えっ!?私まだ1試合もしてないのに・・・。」
 黎夏は肩を落とす。
 しかし、先生が試合をするんだから、3回戦進出は確定だな。という心が3人のどこかにはあった。もちろん、先生にも。



 「中堅、『久野川育海』対『乾柳之助(いぬいりゅうのすけ)』、試合開始!!」

 (さあて、どこから攻めようか・・・。相手の剣、結構長めだから、むやみに近づけないし・・・。なかなか面倒くさいな。でも、奥義で後ろを取れば・・・!!)
 当真や友則と違い、しっかりと戦術を最初に組み立てている。この間わずか0,1秒。
 (行くかっ!!)
 奥義『神速』を出し惜しみせずに使おうとした、その時だった。


 「えっ?」


 乾の長い剣が、先生のへその辺りから突き出ていた。
 
 「・・・うそ・・・・。」
 乾がすぐに剣を引き抜く。その痕から、鮮血が吹き出して、乾の顔に飛沫となってかかる。






 「「「せ、せんせーい!!!!」」」





 人形のように倒れ、人形のように身動きをしなくなった。

後書き

え?先生死ぬの?
先生にはまだまだ働いてもらいたかったのにー!!(鬼畜


さあ、なんか面白い展開になってきたところで、次回といきますか。

この小説について

タイトル 第15話
初版 2009年6月2日
改訂 2009年6月2日
小説ID 3187
閲覧数 1227
合計★ 10
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 62
★の数 592
活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (6)

PJ2 2009年6月2日 20時13分33秒
読ませていただきました。
先生殺してどうすんすか!? まったく先が読めないです。まあ、それはそれで面白いですけど。
ふと思ったのですが、こんなに強くて良いんですか? この中学生連中が。相手もそこそこ強くないと、飽きますよ、戦闘シーンに。たとえば片腕負傷するだけも違ってきます。
黒羽のことももちろんですが、一つ一つのキャラの話が少ない気もします。個人の意見ですが。
そしてなにより、掛け持ちを同じ投稿サイトでやるなんて、良い度胸してますね〜せんべいさん。つぶれないことを祈りますよ。
では、次回を期待しています。
★せんべい コメントのみ 2009年6月2日 21時32分04秒
PJ2さん、コメントありがとうございます。

強い、のではなく、弱いのです。相手がね。笑
前半2人はただ突進して間合いを詰める。
しかし、先生がやられた乾は一瞬で移動してくる・・・。


これです!!


この差が敵の強さを表していると言っていいでしょう。
どう考えても、どたどた進んでくるのって弱くみえるじゃないですか。


それに前、書きませんでしたっけ?
憑依霊が結城達の潜在能力を引き出している。

まあ簡単にいえば、結城 + 塚原卜伝 = 強っ!

って感じです。
お分かりいただけたでしょうか?
僕の説明不足も否めないでしょうので、ここに謝罪します。


では、次回もよろしくお願いします。
★みかん 2009年6月3日 18時58分48秒
今回も楽しく読ませていただきました。

結城君、もう黒羽くん超えてしまったのですか……

私としては、もう少し結城君に苦労をかけてほしかったです。

みんな成長が早いですね。今後の成長が楽しみです。

では、先生どうなってしまうんでしょうか?

乾という人、強いですね……誰が倒すのでしょう。

次回作、楽しみに待っていますね。

では、失礼しました。
★せんべい コメントのみ 2009年6月5日 21時49分40秒
みかんさん、コメントありがとうございます。

んー、やっぱり展開が早いですか・・・。
難しいですね、なんか・・・。

強くなる過程が思いつかなくて、
ダラダラ文章をつなぐだけじゃ面白くないだろうし・・・。

あぁ・・・。なんか自分の限界を感じてきたなぁ。
いろんな人からバッシング受けーの、嫁ぎーの。


次回作、4ヶ月くらい開くかもなぁ。
★黒い帽子 2009年6月10日 1時37分22秒
 どうも、黒い帽子です。

 一話からここまで「ドギャー」っと読ませてもらいましたm(__)m 世界観が独特なのにも関わらず違和感無くその世界観に入れるのはせんべいさんの実力が現れてる所だと思います。

 基本的に自分が突っ込む場所なんて無いと思いますが、強いて言うなら……「人物紹介が一話に欲しかったっ!」ぐらいです。

 こういう(ファンタジー?)で一番最初の難関は自分の世界観をどうやってスムーズに理解してもらうかだと思っているのでせんべいさんの文を研究してみるのも面白いかな、とか考えてますm(__)m
★せんべい コメントのみ 2009年6月12日 7時43分45秒
黒い帽子さん、コメントありがとうございます。

独特な世界観・・・。その通りですね。笑
正直意味分からない作品だったと思いますが、お褒め頂き光栄です。

人物紹介、そーいや途中で挫折してました。
もっかいちゃんとやり直しますか。


では、僕も黒い帽子さんの作品にコメントすることを約束して、
これからも『光と闇と剣と』をヨイショしてくださればなぁ、なんて。

では、また次の機会に
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