LENS - LENS8(最終)

「父について話してもよいでしょうか。」
彼女はそういった。彼女はいつになく真剣な目で、こちらを見ていた。このことについてはいつか聞きたいと、思っていた。
「うん。べつにいいよ。」
「では、遠慮なく。前に、皐月と翡翠に会ったと思います。」
「うん。妹さんたちだよね。」
「皐月と翡翠は、実の妹と弟ではありません。」
その言葉に、俺は、驚いてつかんでいたドーナツのかけらを落とした。ドーナツのかけらは、皿の上に落ちた。
「どういう意味?」
「簡単なことで、父が不倫して、皐月と翡翠は、その不倫相手の子供というだけです。どこかで聞いたことがあるでしょう。」
確かにそれらの話は、どこかで聞いたことのある内容だった。そして、その不倫相手は、
「ご推察のとおり、皐月たちの母親は、亡くなっています。」
そうそして、身寄りのなくなった双子を、本妻の家庭が引き取った。それだけの話だ。けれど、
「でも、そういう状況って普通は皐月ちゃんたちときまづかったりするものじゃないの?」
「皐月の性格を見ませんでしたか?あの子は人見知りをしません。妹、弟というより、友人みたいな関係に私達はなりました。それまでは、よかったんです」
文月ちゃんは、突然下を向いた。今までは、嘲笑を浮かべていた。
「あの人、父は、皐月や翡翠のことで懲りたと思われました。しかし、」
「まったく持って懲りてはいなかった。」
「そのとおりです」
文月ちゃんの父は、どうしようもない低堕落な人間で、そんな人の下に生まれてきた子供三人は、悲しいと憎いを織り交ぜ生きてきたことだろう。
「どうしようもないんです。あの人は、今までに5回不倫を行いました。それでも、母は離婚しようとはしないんです。」
「どうして、」
「母は、普通父に育てさせるはずの皐月と翡翠まで引き取って育てようとしているんです。それには、莫大なお金がかかります。」
確かに、三人ともまだ義務教育中だ。それに三人も高校に通わせようとすると養育費と学費は安くないはずだ。
「私達が、高校なんかは行かなくてもいいといっても、母さんは聞きません。
皐月と翡翠は、母さんのために、父に引き取られようと、努力しています。」
「文月ちゃん。」
「でも私は、父を利用するとしか考えていないんです。母を傷つける低弱な人間で、そんな人を、愛さないと思ってるのに、父からのプレゼントを何一つ捨ててない。私は、最低です。立派な矛盾人間です。」
彼女の頬に涙が伝っている。自分を守ろうとして、母と妹達を守ろうとして、結局は父を憎み嫌うことしかできないそんな小さくて、弱い彼女を俺は、好きになったんだ。
「文月ちゃん。外でよっか。」
といって、俺は外に彼女を連れ出した。そして、たどり着いたのは、学校手前の公園。
「斎賀さんどうしたんですか。こんなところまでつれてきて。」
少し、赤い目をした彼女は言った。
「文月ちゃん俺、さっきの話聞いて思ったんだ」
「私が最低だと?」
「ううん。その逆。っていうか、俺ってやっぱり文月ちゃんが好きなんだなって」
「この状況でまだからかいますか」
彼女は、あまり人の話を信じない。こういう話は、からかいだと思ってしまっている。
「いいや、俺は本気だよ。」
「それは同情では?」
「それも違う。俺は本気で、川宮文月を好きだと思ってる。同情じゃなくて、恋愛感情で。」
彼女の赤い目から。又涙が溢れ出す。
「?文月ちゃんどうし・・・」
「たの」といいかけて、とまった。
「私でいいんですか?私は最低な・・・」
そういいかける彼女を抱きしめた。
「文月だからいいんだよ。」
「先ほど、あの話をしたのは、斎賀さんに聞いてもらいたかったんです。あなたが、好きだから」
その言葉を聴いて、抱きしめていた体を離す。
「さいがさ・・・」
「名前で呼んでよ。文月」
「な、夏也さん。」

それからというもの、
学校に行くと、快人たちからの冷やかしを受けながら、文月と俺は、交際宣言をした。そして、快人と、飛鳥井さん。健一と相楽さん。が付き合い始めたことと、もうひとつ、誠が浅井さんを好きになったんだとか。あとからそのことを聞いた文月が、浅井さんと誠は両思いということを教えてくれた。

皐月ちゃんと、翡翠君は、今のところ部活動に夢中で恋人なんかを作ってる暇はなさそうということなのだが、秋也がひそかに皐月ちゃんに好意を寄せているとか。

今まで、ほんの活字しか写さなかった文月の眼鏡のレンズの奥の瞳には、今現在俺が移っている。


      fin

後書き

えー、おわった!やっと終わった。長かった。楽しかった。読んでもらえてうれしかった。万歳!
最後まで読んでくださった皆様ありがとうございます!心から感謝します!
さて、皐月ちゃんと、翡翠君のなまえについて暴露しとこうかと思います。
彼らの名前は本来、水月(みつき)と無月(なづき)で、水無月、六月生まれの予定でした。しかし、このことを友人に話すと、無月はないんじゃない?と不評だったため、五月生まれの、皐月になりました。翡翠は、皆さんご存知のとおり、五月の誕生石から。で、文月は七月です。夏也は、本来夏夜にしようかと思ってましたが、夜って感じじゃなかったため、この字になりました。さて、次の作品は、男女逆転ラブコメを予定しております。乞うご期待。する人はどうぞ。

この小説について

タイトル LENS8(最終)
初版 2009年6月26日
改訂 2009年6月26日
小説ID 3246
閲覧数 680
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音桜の写真
ぬし
作家名 ★音桜
作家ID 504
投稿数 21
★の数 20
活動度 4200
すっごい未熟ですけどがんばります。自分の小説にコメントをいただけたらうれしいです。応援よろしくお願いします。

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