1-1 - 軌跡   ■第一章 第一節:仲間

Faye
手を伸ばしても、何もつかめない。
暗い闇の中に、ふんわりと浮いているかのような感覚。

誰もいない。
何も聞こえない。
見えるのは、一筋の光と、背の高い影法師で。
走って行っても、その場所までたどり着く事は出来ない。


あぁ、そうだ。
決まって俺はこの夢を見る。


夢の中で俺は一人で。
この世界に、俺は、どうして。


…あぁ、そうだ。
そして、決まって俺はこう考える。


あの影は、きっと父親だと。





「…お兄ちゃんっ!お兄ちゃんってば!!」


聞き慣れた声が、耳に響く。呼んでいたのは他でもない大切な妹。
手を伸ばしてつかんでいるのは、妹の手。
頬をなでているのは、自分自身が倒れている草むらの緑の葉。

「…あれ…リア…」
「あれ、じゃないよぅ!お父さんに対決挑んで、倒れちゃったんだよ?
…もぅ、お父さんも無茶しちゃって…大丈夫??」
「…あぁ……ってこたぁ、また勝てず…かぁ」

今日こそ、勝てると思い挑んだ。だが、なかなか追い越す事の出来ない、父親・トウラの背中。
重い頭を左右にぶるっと振るうと、少しだけ意識がしゃんとしてくる。
隣には、心配そうにオッドアイを向ける妹。
「…もう大丈夫」
「ホントに?心配ばっかりかけるん…」
「気がついたか!」
リアの心配声を遮り、眩しいほどの笑顔で駆け寄ってくる男の名前はアイル。
2つ年上の兄の様な存在で、父親からも一目置かれている。
「聞いたぞ、また団長にやられたって♪」
「うるさい!今回はちょっと惜しかった!」
「へぇぇ、成長したモンですねぇ〜」
「もぅ、アイルってば。ホントに惜しかったんだからね!」
からかうアイルに、リアは食らいつく。適正評価か、兄思いか。

ここは「ジェクト」という、トウラを団長とした傭兵団である。
小さい傭兵団だが、個々の能力はというと、
ここアッカド王国内では王宮騎士に次ぐ強さだと言われている。

「気がついたか、クロス」
傭兵団の建物内へ戻ると、父・トウラと鉢合わせとなった。
「くっそお、次こそは!」
「フン、中途半端な覚悟で来たなら、腕の骨の一本は覚悟してもらうからな」
「望むところだよ!」
「もぉ、お父さん!お兄ちゃん!次は私、治さないからねっ」
リアはまた心配そうな声を上げている。
リアは武器こそ持たないが、ヒーリングの力に長けており、
ケガなど表面のキズを瞬時に回復する事が出来るのだ。
リアがいなければ、父も、兄もケガだらけだっただろう。

「あぁ、リア。悪いが街へ買い物へ行って来てくれ。今日はルキアが帰ってくる」
「ルキアが!?あぁ、もうそんな時期…」
「あいつも腕を上げて帰ってくる。皆でアンリのうまい食事でも食おう」
リアはアンリを誘い、買出しに街へと出かけて行った。
「次は、負けないからな!」
取り残されたクロスは、父親に向かい叫んだ。
「…まぁ、大分見れるようにはなってきたがな」


小さな、古ぼけた2階建ての建物。
自分の生活する場所。家族の、仲間の生活する場所。

「クロス、どうしたんだ?」
まだ意識が?とでも言いたげな表情でカインが声をかける。
「るっせーつの、カイン。副団長までお集まりかよ」
「ルキアが帰ってくると聞いたからね。アンリの食事の手伝いだよ」
「お、カインの料理もウマいんだよなぁ。俺、メシできるまでもうひと訓練してくるよ」
「ほどほどにね」
「そのうち手合わせ願うよ」
おっとりとした話し方に似合わず、カインは槍の使い手。
その実力を買われて、副団長を務め上げている(ちなみに食事の腕も抜群)。
カインは喜んで、と答えて台所へと消えていった。

それにしても、と。クロスは時々たまらなく不安になる。
父親、トウラは絶対にクロスを仕事へと連れて行かない。
自分の実力が認められていないのだとは分かっている。
だが、そこを自分が認めてしまうのは悔しくてたまらない。
どこを目指し、訓練を積み上げればいいのか、いつになったら合格なのか。
いい加減、皆の役に立ちたいだけ…今はその願いすらかなわない。
「ため息なんて…元気ないなぁ」
「…その声はルキア……もう帰ったのかよ」
「…ここは私のウチでもあるんだから」
唇を尖らせ、クロスの元へ近寄る背の高い、痩せた女性。
視線は鋭いが、その中に光る優しい眼差しがクロスを包む。
「…お帰り。また痩せた?」
尖った唇が緩み、微笑みへ変わる。ただいま、と笑顔はクロスに向けられた。
「あぁ、お前の帰りを待ってたよ、皆」
「…王都でおいしそうな葡萄酒を買ってきたの。夜、一緒に飲もうよ」
「断っても来るクセに」
ふふふ、と笑い、ルキアはクロスの腕に手を絡める。
そして無理やりに夕食の香りが漂う食堂へ連れて行かれた。
その香りに包まれると、クロスの先ほどまでの悩みは不思議と少し薄れていくのだった。

後書き

はじめまして。
ゆっくりですが、更新していきたいと思っています。
下手ですが…よろしくお願いいたします。

この小説について

タイトル 軌跡   ■第一章 第一節:仲間
初版 2009年7月11日
改訂 2009年7月11日
小説ID 3289
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