光と闇と剣と - 第17話

「当真行くぜ!」
「うん、勝ってよ結城君!!」
2人はハイタッチをして、当真は結城を武道台に送り出す。
その様子を見た観客はまた一段と大きな歓声を送る。結城はそれに手を上げて応える。
(か、かっこいい・・・。)
当真は素直にそう思った。当真はバカだった。
「よっしゃ、対戦相手はおまえかぁ!!」
結城は大きくほえた。それを見て、相手の眼鏡をかけた20代前半の男は小さく笑った。
「はは、威勢だけはいいようだな、ガキが。」
「威勢だけかどうか教えてやるよ、オッサン。」


「大将、『蓼科結城』対『最上冥(もがみめい)・・・試合開始!!』」


(力貸してくれよ・・・おっさん!!)
結城は心の中で念じた。すると、すぐさまに答えが返ってくる。
(塚原卜伝だ、いい加減に覚えろ!!・・・まぁ、少しぐらいは貸してやってもいいがな!!)
それを聞いた結城は、ニヤリという笑みを作った。
結城は剣を振るう。轟音と共に、恐ろしい風圧が最上を襲う。しかし最上もそれを難なくかわす。かわされた風の塊は、奥の観客席へと一直線に突き進み、大きな爆発と共に観客が10人ほど吹っ飛んだ。
(ふ、この程度か、蓼科結城!!)
そう考えていると、背後に結城が立っていることに気づいた。。
「な、何!?」
「当たり前だろ。先生がやられるチームの大将なんだから、あれぐらいの技、避けられて当然でしょ。」
最上に漠然とした隙はあった。しかし、結城は攻撃をしなかった。ただ、してやったりという顔で話しかける。最上は急いで距離をとる。
「・・・ふ、ふふ、今攻撃をしなかったことを後悔させてやろう。少しお前を甘く見ていたようだ。」
「甘く見れるほど、お前強いのかよ。」
ギリッと、最上は奥歯を噛み締める。
刹那、最上の姿が消えた。いや、結城の視界から消えた。しかし、結城は全く慌てることなく背後を向く。すると、最上が丁度空中から着地したところだった。この技は、先生に一撃を入れた技だ。
「ほう、この技まで見破るか。威勢だけでは無かったようだな。」
「そんなの、視界から敵が消えたら背後を取られる技って決まってるだろ。そんなのセオリーなんだよ。」
最上のこめかみに血管が浮かぶ。急に顔の色が赤くなる。
「どこまでも俺をコケにしやがってー!!」
雄たけびを上げる最上をよそに、結城は集中力を高めていた。
(・・・そうやって時間を作ってくれよ。おっさん)
結城は、敵を挑発しながら時間を稼いでいた。一撃必殺の大技―――『炎刃』を放つために。
(この技の弱点は何と言っても時間がかかることだよな。・・・ちくしょう。黒羽は一瞬も溜める時間なんてなかった。まだまだ奴には追い付けていないみたいだな。)
そんなことを結城は考えていたが、ここから最上の猛攻撃に会うなど、知る由もなかった。







「・・・今西君っ!! 先生は!!?」
黎夏は病室の前のベンチにうなだれて座っている友則を発見して、急いで先生の容態を訪ねた。
「おお、鳴海か。・・・先生は、なんとか一命を取り留めたんだが・・・。」
語尾で、友則の声のトーンが下がる。黎夏は一気に冷や汗が出た。そして友則にしがみつくいて言った。
「ちょ、体のどっかに障害でも残っちゃったの?それとも植物人間とか?腕が1本なくなっちゃったとか!?」
黎夏の目から涙がこぼれ落ちる。そんな黎夏をよそに、友則は何も答えずに立ち上がった。
「ねぇ、今西君。答えてよ・・・。ねぇってば!!」
「・・・答えは、自分の目で確かめろ。」
友則は、病室のドアをゆっくり開けた。暗い廊下に、部屋の中の明るい光が差し込む。明るさに慣れていなかった黎夏の目が、思わず細くなってしまう。
それと涙が重なって、ぼやけて何も見えない。
黎夏は目を急いでこする。そして、病室内に急いで駆け込む。

すると――――――ベッドの上では、病室に備え付けてあったテレビを見て爆笑している先生の姿があった。

「・・・・・・・。」
「答えは、こーゆうことなんだ。」
友則が驚きで固まってしまった黎夏をぽんと叩く。
それに反応した先生は、
「おー、鳴海か!!先生は生きてるぞー。」
病院で患者がよく着ている衣服に身をまとっている以外は、全くの久野川育海だった。
ベッドの上でテレビを見ているだけで雷に打たれたような衝撃が走ったのに、おにぎりせんべいをぼーりぼり食べながら、お尻をぼーりぼり掻いている。さすがにぼーりぼりとは笑っていなかったが。
黎夏は恐る恐る尋ねてみる。
「あのー・・・。なんでそんなに元気なんですか・・・?」
先生は唐突に振り向いて言った。
「そんなの・・・先生だからに決まってるだろが!!!」
今世紀最大の脱力感が、黎夏を襲う。
「だってあんなに血だって出てたし、担架で運ばれて行ったし・・・。入口で今西君がうなだれてたし・・・。」
「当たり前だ。こんな先生の姿見たら、あぁもなるわな。」
確かに。心の底から黎夏は共感した。
「血なんて大丈夫だよ。ほら、イケメンのお医者さん1人ぐらい頂いたらすぐに回復するわさ。」
羞恥心すらない。今の先生は、誰の手にも負えなかった。
(この人、結城以上にめんどくさい・・・。)
黎夏は拳を強く握った。






「ぐ、ぐあぁぁ・・!!」
結城の体が、武道台を10メートル以上滑る。それよりも速いスピードで、最上は追撃を入れる。
「ほら、さっきまでの威勢の良さはどこに行ったんだよ、ほら・・・ほらぁ!!!」
何度も斬られそうになるが、それをすんでのところで避ける結城、しかしその後の隙を突かれ、腹にひざ蹴りを食らわせられる。そんな展開が続いていた。
(なに?剣術の大会なのにひざ蹴りってアリなの?・・・でも審判も止めないし・・・。)
当真はそんなムズムズした時間を過ごしていた。確かに、今までの選手の中で体術を使ったものは1人もいなかった。
「・・・し、審判さんよォ・・。体使うのってありだったっけ?」
結城は審判に問うた。
「・・・確かに剣術の大会ではある。しかし、剣術によって生じた隙を狙っているため、有効とする。」
これは、『KYRT2』にとって絶望的な言葉だった。結城も思わず苦笑いしてしまう。
「ちくしょう・・・。まぁ仕方ねェ。ここまで強かったとは・・・舐めていたぜ。」
そう言いながら、口元にたまった血を拭う。
「・・・でもまぁ、俺がもし、秘密兵器を秘めたままにしてたら・・・どうする?」
辛いながらも、不敵な笑みを浮かべる結城に対して最上は、
「なに・・・?」
と言い、少し表情が強ばる。何かあるのか・・・?そう思った最上は体勢を低くして剣を構える。
「・・・まぁ、それも『秘めたままにしてたら』の話なんだけどねー。」
結城は、はぁ、と大きなため息をついた。
「ねぇのかよっ!!」
最上も思わずツッコまずにはいられない。
「でも、100%勝てる気がする。・・・200%無理だけど。」
「どっちなんだよ!!」
「ども、500%いけるかなー。・・・1000%勝てないけど。」
「もうてめぇ家帰れ!!」
(結城君、試合中ですよー。)
当真は心の中で悲痛に叫んだが、当然結城にその思いは届かず。
「・・・もうボケが無くなった。」
「じゃあ死ねぇ!!」
そうやって斬りかかろうとした時、最上は気づいた。
「て、てめぇ・・・。これは・・・・・・。」
最上が指さす先、それは―――――
「ちーと気づくのが遅かったな。今までのボケは、集中する時間を作るためだったんだよ!!」
結城の剣は、きらびやかな銀色に輝いている。そう、『炎刃』だ。


「食らえェ!『炎刃』っっ!!!」


炎が激しく燃えるような音と共に、赤い炎の刃が飛び出す。
武道館の気温が、夏だというのにさらに高まる。この大きな炎の塊が燃焼するのに必要な分の酸素が吸い込まれようとするため、館内は暴風が吹き荒れる。
「ぐおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
最上は、とっさに高くジャンプした。しかし、『炎刃』は最上を追跡する。
「無駄だ。オッサンに逃げ道はない。」
核爆弾が爆発を起こしたような爆音が、武道館内に響き渡った。





後書き

批評、コメント、なんでもござれ。

この小説について

タイトル 第17話
初版 2009年7月16日
改訂 2009年7月16日
小説ID 3310
閲覧数 1166
合計★ 9
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 62
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活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (4)

2009年7月17日 19時46分12秒
お久しぶりです。
では、感想を。
スピード感がすごくて、読まされました。内容もはちゃめちゃだけどおもしろいです。

僕の作品も暇があったら見て下さい
★みかん 2009年7月17日 23時08分11秒
こんばんは、今回も読ませていただきました。

結城君、かっこいいですね。強くなっているのは嬉しく思いました。

そして、先生……最高です。生きててよかったというよりも、
さすが先生と言うしかなかったです。

また、結城君色々吹っ飛んでいますね。
素直に面白かったです、主に先生と結城君が。

炎刃もついに出しましたね、描写からかなりの威力と思われますが、
修行の成果が出ていて何よりだと思いました。

ただですね、殺し合いの中なんだからなんでもありではないか?
と思ってしまいました。その辺は剣術が基本なんですかね?

最後に、今回も面白かったです。続き、楽しみに待っていますね。

では、失礼しました。
★せんべい コメントのみ 2009年7月18日 18時44分18秒
丘さん、コメントありがとうございます。
なんかいきなり星5つなんてすいません。
ほめていただいてうれしいです。
また次回もご覧ください。
★せんべい コメントのみ 2009年7月18日 18時48分04秒
みかんさん、コメントありがとうございます。

先生と結城のバカさについてのコメントがなかったら僕はただの恥ずかしい人になってしまうので本当によかったです。安心。
それと、基本は剣術です。宮本武蔵がパンチしてるのがどーにも想像できなかったので、そういうことにしました。ww

また次回もバカなことを書きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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