2-2 - 軌跡 ■第一章 第二節:裏切(2)

先頭を走るの王宮騎士の後ろを、ジェクト傭兵団が付いて行く。
もう少しで国境と聞かされていたが、山に入ってからかなり長い。
「クロス、この先に砦があるらしい…今日はここで休まないかと言っているが…」
カインが王宮騎士からの伝言を伝えた。
「そうだな…少し休もう。王女の具合もあるし…」
王女の意識はまだ戻っていない。
命に別状がない傷だったとはいえ、一国の王女の命を預かっているとなると、責任は重い。
王宮騎士の言った通り、すぐ目の前に砦が見えてきた。
関所の様な所に建てられており、山腹という事もあってか、景色も格段に良い。

「ここはアルピ砦。昔は要所の砦として使っていたそうですが、
ブラハとの国交が途絶えてからは使っていないのです」
「…そうですか…今日は一日ここで休養を取りましょう。
恐らく王都まではまだしばらくかかるだろうし…」
アンリは馬を降り、王女の元へと向かった。先頭を歩く王宮騎士の一人に促され中に入って行く。
「あぁ…疲れた…こんなに移動したのは初めてだよ」
アイルも馬を降り、大きく伸びをした。そして馬から降りるリアの手を取ってやる。
「クロス、大丈夫か?顔色悪いぞ…?」
「…あぁ…何か…話が急展開過ぎて」
「…そりゃオレもだけど…団長とルキアは大丈夫なのかな」
「ん…」
本当に2人だけで大丈夫なのだろうか。
あの2人の力を知っているだけに心配はしたくないが、
王宮騎士を巻き込んで戦いになってしまっていると言う事が、とにかく気がかりであった。
どうか無事で、また再会したい。それだけだ。
「クロス、アイル、ちょっと来て」
砦の入り口から、アンリの声が聞こえた。
馬の世話は名乗り出た王宮騎士の連中がやってくれるようだ。
素直に甘え2人は中に入っていく。
砦の中は長く使われていない所為か、少しかび臭い感じもしたが、
きちんと手入れもされており、今日一日体を休めるには十分過ぎる程の場所であった。
砦の一室には、傭兵団が揃っている。
とはいっても、カイン、アンリ、リアに加えアイルとクロス。
「疲れたわね…」
アンリは首をぐるりと回し、ため息を長く吐いた。
赤い髪が何本か首にからみつく。
白い肌に映えるその赤い髪が、クロスには血のようにすら見えた。
本当に、少しまいってしまっているのかもしれない。
「…なぁ、オレ達これからどうなるんだ…」
アイルは不安そうにつぶやいた。
それは誰もが感じていた不安だった。
団長であるトウラがこの場にいない事も含め、状況がよく飲み込めない事態に巻きこまれている事。
自国の王女が襲われたと言う事。それはつまり戦争につながってしまうという事。
「…私、王女様の様子見てくる…」
リアは席を立ち、部屋を出て行ってしまった。
「…アンリ、どう思ってる?」
カインは参謀へ意見を求めた。
クロスはその会話を聞きながら、カインは恐らく自分の意見を持っているな、と感じていた。
もちろん、自分もその意見はある。
アイルも喋らないだけで、自分なりの意見はあるはずだ。
「……王女を襲ったのがユングフィだとしたら…」
「待ってくれ、アンリ。オレはどうしても納得できない」
「…クロス?」
「おかしいと思わないか?ユングフィはなぜ王女を襲ったんだ」
「……」
「…オレは、あんまり知識がないけれど…ユングフィはそれほど大きくない国だ。
アッカドを攻めるようには思えない。戦争なんか、起こしたくないはずだろう?
勝ち目のない戦いを起こすとは思えないんだ」
「それはオレもそう思うよ、クロス。だからこそ納得いかないんだって」
アイルは組んでいた腕を解き、頭を掻いた。
「団長はこの依頼を誰から受けたんだ?ってな」
誰にも話されていなかった、今回の仕事。謎に包まれすぎている。誰も知らなさ過ぎている。
だからこそ、今回の件の真実が、明るみに出ないのだ。

トウラが誰にも言わなかった事、極限まで言うのを避けていたこと。

「親父が受けたこの依頼は…恐らくアッカドの人間からだ。それもかなり王女に近い…」
「…なるほど、クロスも思った以上に成長してるな」
「カイン?」
「いや、いい勘してるな、と」
カインはそう言うと、剣を手に取り、立ち上がった。
「…リアと王女が危ないかもしれない」

この小説について

タイトル 軌跡 ■第一章 第二節:裏切(2)
初版 2009年7月19日
改訂 2009年7月19日
小説ID 3321
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作家名 ★Faye
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