月明かりの下で - 第一夜:運命

月の光―――

淡くて、力強くて・・・・・・何かの道標になる光

祖母は私に教えてくれた

私がまだ小さい頃に、『おじいちゃんは月明かりに引き寄せられておばあちゃんのところへ来たのよ』と

『月の光は、かけがえのないものを運んできてくれるの』と

じゃあ、おばあさま。
私のところへも、月の光が運命という素敵なものを運んできてくれますか・・・・・・?



「お嬢様!お嬢様!?」
いつもの夕暮れ。夜が近づいているいつもの屋敷に、いつも通りの声が響く。
バタバタ走り、息が荒くなってきたところに、彼女は同じお嬢様つきの使用人が前を歩いていることに気づく。
「ナンドール!」
声をかけられたナンドールは振り向いた。
「はい?何でしょうか、シフィス・・・・・・わぁ!?」
凄い勢いで迫り、肩をガッツリ掴まれたナンドールは、そのまま身体を激しく揺さぶられる。
シフィスと呼ばれた二十歳にも満たない彼女は、やはりいつもどおり慌てふためく声で状況を叫んだ。
「レイナお嬢様がいらっしゃらないのです!」
「あー・・・・・・」
いかにも「またか」と口から滑りだしそうな声音に、シフィスは腕を止めることなく続ける。
「それも、部屋の前にいた者たちによると朝っぱらからですよ!こんな冬の日にお外へ出るなんて、お風邪を召されたら・・・・・・どうしましょう!!明日のパーティーにはお嬢様の婚約者でもある大臣様のご子息のトライ様がご出席なさるんですよ?その席でのダンスのお相手をいたす時に、正式に婚約者という事をお披露目いたしますのに、お稽古の場にいらっしゃらないなんて・・・!」
「ちょ、落ち着いてくださ・・・・・・」
最後まで言い終わらないうちに、更に揺さぶりをかけてくる。流石にきつくなってきた。
肩を掴む手を丁寧にはずし、息を整えてから口を開く。
「お嬢様は、朝からいらっしゃらないんですね?」
「はい・・・・・・」
コクコクと頷いて、救いを求める視線を彼に向けた。
「・・・・・・では、きっと『また』あそこでしょう」
「あそこ・・・?というと・・・・・・・・・あ」
「思い出しましたか?」
にこりと笑いかけると、シフィスは恥ずかしそうに身を縮めた。
「はい、すみません。私としたことが、大臣様のご子息が来るという事実に我を忘れてしまって・・・・・・」
「では、あそこにいるのならばわたしたちが近づいてはいけないので、お帰りになるのを待ちましょう。そろそろ夜ですし、お嬢様の事ですからお腹が空いたら帰ってきますよ。さあ、わたしたちは明日の準備です」
「そう、ですね」
笑いあって、二人はパーティー会場になっている広間へと向かった。


ガサ・・・・・・


「う・・・・・・ん」
 オレンジ色の空が藍色に変わる頃、すっかり落ち葉がすんだ大きな木の下で、レイナは背を伸ばす。
と、くしゅっと小さなくしゃみを出した。
「・・・・・・やっぱり外に長くいるんじゃなかったわ」
今は冬だ。いくら人間の手で温暖が進んでいるといっても、寒いものは寒い。
「でも、今戻ったらダンスの練習させられそうだしなぁ・・・。折角寒いの我慢してココに逃げてきたのに今捕まって努力無駄にしたくないし・・・・・・」
うん、もう少しココにいよう。
そういう結論に至った。
そしてダンスという言葉を思い出し、レイナは激しくげんなりする。
ダンス自体が嫌なわけじゃない。問題は、その相手だ。
幼い頃、親に、勝手に、強引に決められた婚約者。貴族の娘の大半は遅いところで十歳までには決められる。レイナももちろんその中の一人だったのだが、レイナのほかのお嬢様と根本的に違うところは、事実を受け入れず、親にも反発し、とうとう屋敷まで抜け出す始末。
つまり一言で表すと。
「世間一般のお嬢様らしくない」
普通であればその結婚が自分の意に沿わないものでも、黙って受け入れる。だがレイナの場合、「どうして好きでもない、自分が決めてない人と夫婦にならなくちゃいけないのよ!」と、決められたときから激しく拒絶してきた。しかも今のように行動力があり、使用人に全ての仕事を任せたがらない。必要があれば自分が料理するし、庭の手入れなども己がする。高級なドレスでも、泥だらけになるのはお構いなし。はっきり言って、非情にお嬢様らしくない。
これは、祖母から受け継がれてるなぁと、レイナは思っている。
―――だって・・・・・・。
「おばあさまみたく、運命を信じたいんだもの・・・」
ポツリと呟き、丘の上から見える屋敷を見下ろす。
ここは、レイナの祖父母が出会った場所だ。ここで二人は夜が明るい日、この木の下で月明かりに祝福されるように出会った。そのときも、祖母は今のレイナみたいに屋敷を抜け出し、夜までここにいた。
まるで運命のようだったと、ここで今は亡き祖母が優しく教えてくれた。それ以来この木はレイナのお気に入りに場所になり、独りになりたいときや今この状況のように、逃げ出したい時に上ってくる。
そして、憧れる。
手を組んで祈るように顔も前まで持っていき、ほんの少し頬を夕焼け色に染めた。
「いつか、私もおばあさまみたいな出会いが来るといいな・・・・・・」
ポツ、ポツ・・・と屋敷に灯りがともる中で、いよいよ空が闇色に色づいていく。だが、レイナが好きな月は雲に隠れてしまっていた。残念に思った、
そのとき。
大きな音を立てて、屋敷の窓ガラスが割れた。
「な・・・!?」
レイナは目を見開き、一歩足を前に出した。
悲鳴らしき声と、怒鳴るような声が混ざりあって聞こえてくる。
レイナは、その悲鳴やらなにやらを聞いて、急いで屋敷に戻る。
レイナは明日がパーティーだったことを思い出し、急いで広間に向かう。
バンッ
大胆に広間の扉を開けて、中の様子を伺う。
だが広間は明かりを壊されたらしく、大勢の人が走り回っているという事しか分からない。
けれどよく目を凝らすと、そこには盗賊がいた。
人数はざっと見7人ほど。
「え・・・?」
レイナはまさか盗賊に屋敷を荒らされてるとは思わず、一瞬驚く。
が、活発な少女なので、直ぐに盗賊たちにやめさせようと、近くにいた盗賊に近づく。
そして、肩をガシッと掴み
一言、
「何やってんのアンタ達!!」
レイナは盗賊だというのに、大人たちより勇敢に言って見せた。
その盗賊は怪訝な目で、肩越しにレイナを見た。
「お前も大臣の仲間か?」
「は?」
そしてその盗賊はレイナの手を荒っぽく手を振り払う。
レイナはいきなりのことだったので、体制を崩し、倒れそうになる。
そこに
「?」
倒れたと思ったレイナは、反射的に目を瞑った。
だが、全然痛くないので不思議に思い、ゆっくりと目を開けた。
そして右側を見ると、自分を支えている、陰で顔が隠れている1人の青年が映った。
「え?」
―――雲が、晴れた。
月の明かりが、広間内を照らす。
月光がレイナと支えている青年を映し出したとき、まるで切り取られた世界に二人だけがいて、永遠にでもなった錯覚を憶えた。
レイナは、そのほんの少しだけ微笑んでいる青年を見て驚く。
彼女は何が起こったか数秒認識できず、ぽか〜んとしていた。
「ヘルト!」

ヘルト・・・?

「何やってんだよ?こんな小さな女の子に」
「だってこいつがいきなり肩掴んでくるから・・・・・・」
「お前の潔癖症は相変わらずだなぁ・・・」

え?何?
何なの??
何の話をしてるのこの人達?

「ていうか小さいって何よ!?」
「え?いまさら?」
ヘルトと呼ばれた、頭にバンダナを巻いていて質素な服を綺麗に着こなしてるよく分からない青年が、レイナに即答する。
「あんた達!いきなり人の家に押し入ってきて何のんびり話してるのよ!?」
「でも、そののんびり屋を捕まえられないのは何処のどいつらだ?」
「・・・・・・!!なん・・・!」
「まぁまぁ落ち着け」
「うるさいわねっ!」
レイナが叫び、未だに支えていたヘルトから離れる。
「だいたいアンタ達はなに!?」
「盗賊だけど?」
さらっとヘルトは言った。
そのことについてもレイナは驚き、
「そんなこと見れば分かるわよ!!」
「そりゃそうだろうな〜」
「私が聞きたいのは!何が盗むのが目的?この家は別に家宝も何も無いわよ!?唯のお金もちってだけで」
よく自分の家の事を分かっていますねお嬢様。
「・・・・・・」
眉を寄せてヘルトが黙り、何か考える素振りを見せてから口を開いた。
「お前、知らないのか?」
「は?何を?」
「知らないのか・・・」
「??」
レイナはヘルトの発言に疑問を持った。
何のことだ?
知らないも何も、家宝とかそういうものが目的じゃないなら盗賊がほかに何で動くというのだ?
「本当に、知らないんだな。こいつ」
すっかり見物者になっていた盗賊が、レイナの態度を見てヘルトに呟いた。
「ああ、家ごと関与しているわけじゃないらしいな」
ヘルトも頷いて、また何事か話し始める。
それを捕まえもしないで眺めていたレイナだが、また新たに大きな悲鳴が上がったところでハッと我に帰る。
「お、お願い!やめさせて!何か持っていってもいい!いいから、皆を危険に巻き込まないで!」
レイナが訴えると同時にガラスがまた割れる。
ヘルトはレイナをちらりと見た。
「・・・・・・こんなに家のことを考えてる少女まで、巻き込んでもいいってわけか」
「え・・・」
はき捨てるように言ったヘルトに、さすがのレイナも何か言いようのない不安が募ってきた。
無意識にヘルトの腕を掴んだ。
「ねぇ、一体何の話をしているの?何か、家が悪い事でもしたの?だから貴方達はこんな事をしてるの・・・?」
「・・・・・・」
急に威勢を失った少女を、ヘルトはしばらく無言で見つめた。
「ゴート」
「なんだ?」
ここでやっと盗賊1の名前が出てきた。
「この子を、連れて行く」
「「は?」」
レイナとゴートが揃って声を発した。
「だから、連れてく」
「はああ?」
「なっ、なに!?なんのこと?連れてくってどういう意味よ?!」
「皆にも知らせてな」
レイナをキレイに無視し、ゴートに言った。
「あー、はいはい。気まぐれ頭(かしら)は今日も絶好調だなぁ〜」
などと面白がり、笑って走っていったゴートを見送って、ヘルトは満足そうに口端を吊り上げた。
「ちょ、ちょっと!無視しないで!」
「ん?なに?」
「なにじゃなぁぁい!!!」
必死の叫びも広間の喧騒にかき消される。そんな必死になっても、持ち前の美しい顔立ちは変わらない。
ヘルトはレイナに笑いかけ、なんとあろうことかいきなり横向きに抱えあげた。
「きゃ・・・!?」
これは、世に言う「お姫様抱っこ」ではないだろうか・・・?
「何するの!?おろして!」
「残念ながらそれはできません」
ぽかぽか胸を叩くレイナに笑い微動だにせず、人々の合間を慣れた様子で通り抜け、窓を開けてバルコニーに出る。コレは余談だが広間は2階だ。
「え?まさか・・・・・・」
ヘルトの首に落ちないようしがみついてるレイナは、危ない展開を予想し冷や汗を流す。
果たして。
その考えは見事的中する。
「そのまさかだな」
楽しそうに手すりに足を難なくかけ、レイナを抱えたまま。
飛び降りた。
「きゃあぁぁぁ!!?」
重力に則って下へと落下する。
正直、このときレイナは生命の危機を感じた。
だがヘルトはひらりと膝を折って着地し、立ち上がって屋敷の裏の森の中へと早足に駆け込んだ。
「やっ・・・やだ!怖い!やめて!」
「なんだよ、お前暗いのが怖いのか?勇ましいのに変なとこで女の子っぽいな」
「し、失礼ね!仕方、ないでしょ!?怖いものは怖いのよ!」
そういう少女の声には覇気がない。
よくきくと、暗い森なので顔は見えないが涙声になりかけている。
ヘルトは意外と繊細な少女にくすりと笑い、からかいの言葉とはうって変わった包み込むような声を出す。
「俺がいるから、怖くない」
「―――」
目をぎゅっと瞑っていたレイナは突然に目を見開き、大人しくなって黙ってヘルトの首にかけている手の力を少しだけ強めた。
「ヘルト、ここだ!」
前方のほうから声がかかり、ヘルトは速度を上げる。と思ったらゆっくり止まったので、レイナは恐る恐る顔を向けた。
「待たせたな」
「遅いぞ、ヘルト」
「悪い悪い」
「その子が例の女の子か?」
後の方から声がする。
だが、暗くて誰が言ったのかレイナには分からなかった。
ヘルトは声で、誰が言ったのか分かったらしく、ああ、と呟く。
「じゃ、戻るか」
ヘルトは自分の馬に近寄り、レイナを先に乗せてから、自分も飛び乗った。
「ど・・・何処に行くの・・・・・・?」
「俺達の村だ」
「村?」
ヘルトは頷いて、馬を走らせた。
「きゃ・・・!」
「しっかり掴まってろ」
レイナは言われたとおりに、ヘルトにしがみついた。
大人しく、ヘルトにしがみつきながら、レイナはこれからの事を思う。


―――私、どうしてこの人についていってるんだろう。
どうして、これからどうなるかも分からないのに、抗わなかったんだろう。


「・・・・・・どうかしたか?」
その問いかけに、レイナは小さくフルフルと首を振った。
「・・・・・・何でもない・・・・・・」
「・・・・・・」
その小さな呟きに、ヘルトは何も言わず、また馬を操る事に集中する為、前を向いた。


なんだろう この感じ。
このあったかい感じ。
安心する。
この人といると、怖くない。

―――信じられる―――

そんな気がした。

後書き

どうも、五月です。
あれ?いつもの書き方と違うと思った方。
まさにその通り。

これ、ボクだけで書いてません。
友達と2人で書きました。
色々と理由があり、PCはあるものの、インターネットを繋いでないので自分の小説を投稿することができないので(友達が)2人で書くかー。
とかになりこうなりました。

ホントぱろしょ以外に別の場所を探しましたが・・・ここより良いところなんてあらず(−−)

まぁ・・・2人で書くの禁止とかなってないのでいっか♪みたいなノリでやってしまいました。
もしNGだったらごめんなさい(><;)

ちなみに、名前は変更できないので、2人の名前で書くことは出来ませんでしたが、あとがきで載せておきましょう。
続くわけですからね、この小説。

まー僕は変わらずもちろん五月で、
もう一人が、友重(ともえ)です。

何の縁もねー名前ですが、リアルで友達ですよ?
まぁ・・・ダメじゃないのなら続けていきます!
丁度夏休みですしね。

この小説について

タイトル 第一夜:運命
初版 2009年7月19日
改訂 2009年7月19日
小説ID 3323
閲覧数 1058
合計★ 9
五月の写真
作家名 ★五月
作家ID 497
投稿数 60
★の数 165
活動度 11432
一言・・・・・・頑張ります。

http://simotukiharuka.blog.so-net.ne.jp/
自分の小説ブログです。
ここに載せた小説についていろいろ書いてます。

コメント (4)

★@だーく 2009年7月19日 14時21分23秒
初めまして、@だーくです。

お話し、読ませて頂きました。
とっても話の構成が良く、ついつい読み入ってしまいました。

続きが気になりますね。^^;
第二夜も頑張って下さい。応援しています。

では。^^
★五月 コメントのみ 2009年7月19日 15時16分07秒
ホントですか!?
有難うございます、とても嬉しいです!
私は友達にしか読んでもらった事がないので、このように言ってもらえると感激です!!

@だーくs、本当に有難うございました♪

〜友重〜


おお、早速コメント。
だいたい彼女(友重)が作ったものなので、なんと言えばいいのかわかりませんが・・・有難うございます(ペコ

by五月
露子 2009年8月20日 12時14分17秒
はじめまして。コメンテーター(?)の露子です。
とっても面白かったですよ。
語尾の「です。ます」がいつの間にか「だ」になっているところも気づかないほどうまくできていました。<拍手>
やさしい夜の物語でした。
続き、とっても気になります!
レイナⓒの性格にギャップがあって面白かったです!
ヘルトⓚもかっこいい!さらにカッコ良くしていてくださいね!<ワクワク>
では次回及びほかの作品も期待していますね〜。
友重&五月 コメントのみ 2009年8月22日 13時03分55秒
初めまして。
有難うございます、露子さん、コメントとっても嬉しいです☆
まだまだ私のほうは書き出しの新人なので、どうぞこれからも見守ってください(笑

〜友重〜


初めまして、五月です。
面白いと思っていただけて光栄です^^
続きは兎に角頑張ります(苦笑
読んでいただき有難うございましたww

by五月
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