汎球の小さな息吹 - 幸せな時刻

 アレンとヘリオスが住んでいるの名はアスンシオンという。アスンシオンの村は人口約八千五百人の村で、村にはフォボスの森からくる二つの川(一つはクナール川と湖に続いているパラナ川)が注ぎ、湖の名前はイクイプ湖という。
 村はかなり広いのだが、村の北東をフォボスの森が包むように、南側はイクイプ湖が塞ぐようにしており、そのため西側の一部分しか他の地域とつながる道が無いことになる

 森側には畑や田んぼが広がり、ここで、村人の食べる食糧の大半を生産している。湖には港のようなものがあり、森の恩恵をふんだんに受けて栄養たっぷりの湖で育った魚を寮で取ってきては商店街で売っている。

 町はA〜Zに地区分けされていて、村の入口から森に向かって順番に番号が付けられ、畑にぶつかると区番号は、南側からまたつけられていくという風に26に分けられている。

 また、区ごとに有力者がトップに立ち行事や組織を牽引し、その有力者の中から村長が選ばれる。また、これらの区から一人ずつ選ばれるのがアレンとヘリオスが選ばれた青年団ということになる。
 さて、この区分けによるとアレンの家と仕事場はK地区、ヘリオスの家はP,店はH地区となる。地区ごとに特色があり、家が少なく農地が多かったり、店が多かったりといった具合で、二人の家もそれぞれ住宅街の中にある。

 また、ヘリオスが今向かっているO地区はアレンの家から引き返して森に進む大きめの道からたどり着くことができる。

 ヘリオスの仲間の中には、商人として成功したヘリオスの父のような人の息子が多く、金持ちの道楽息子も多かった。

 村ごとにある証券や株のようなものを売り買いしていたり、他の村と交易する商人だったりする者の子供だがヘリオスがリーダーとなってからは、人として駄目な性格の人はダメとして、メンバーから辞めさせたのでかなり人数は減ってきている。

 今の仲間とはO地区にある古家屋を拠点としており、八時半頃になるとみんな集まってきた。この古い家屋はそれなりの広さはもっているのだがかなりの人数が集まったのでとても入りきらない。

 アレンとヘリオスは昔からの有名人でともに少年・少女を束ねたチームを持っているのだが、ヘリオスのチーム名は「ワヤン」というもので、ヘリオスが作ったものではないが、以前からあったものを受け継ぎ、現在は総員で60名いる。

 ヘリオスが着いたところはいまではだれも住んでいない空き家で、他の一般的な家と大して変わらない作りになっている。それがなぜ使われていないかといえば、この家に以前住んでいた者たちが首都のほうへ引っ越していったからである。

六十人もいるととても家の中には入りきらないので、ヘリオスを含めて何人かは二階にあるテラスから顔を出し、他のものはみな庭の方へと集まった。

そして、ばらばらと庭の中心に集まり出したころ合いを見計らってヘリオスが手をたたくと、他の者はすっと上を見上げた。
地上から天上界を見上げるかのようで、みんなが振り返った瞬間家の後ろにちょうど太陽が昇ってきた。きらきらと輝くヘリオスはまぶしかった。

「皆、朝早くから集まってきてくれてありがとう。」

ヘリオスが話し始めると、みな口々に返事をした

「キャー・・・大丈夫!・・・おめでとう・・・」。

「今日集まってもらったのは、二つのお知らせをするためだ。ひとつはみんな知っていると思うけれど青年団のことを発表するためだ。昨日、青年団の合格発表があって、今年の代表にはリバーブ、ミゼッタ(女)、ノエル、そして僕の四人が選ばれた。」

「ワーーー・・・キャーー・・・ヘリオス様―・・・」

などの叫び声がわきあがった。
(みんなよろこんでくれている、ありがたいことだ)

「でも、もう一つ悲しいお知らせ」

シーン・・・・

 先ほどの発表の時の喜びようとは打って変わって、海の波が収まり、平波が踊っているかのような静けさとなった。このとき、すでにヘリオスが言い出すであろうことが何かはみんな予測がついていたのだが、この予測がはずれることを願って次の言葉を待った。

(今、勇気を持っていうことが僕自身のためになるはず)

「・・・。今日・・・。この場でワヤンを解散させる。僕はただ受け継いだだけで自分の力でこのワヤンを作ったのではないけれど、やはり村のリーダーとして四人も選ばれたからには、けじめをつけなくてはいけないと思う。そういうことで決めさせてもらった。申し訳ない」

「・・・・・。」

やっぱりとその場にいたものはみな思ったが、口を開こうにも言葉が出てこない。しくしくと泣く声がありらこちらから渦巻き、2階のテラスにいるヘリオスにはそれが一つの風となり、そばを過ぎ去っていくように思え、少したじろいだ。

「でも、これからみんながばらばらになるんじゃなくて、できるだけ協力しあいたいと思う。これから、ぼくらも大人として頑張っていかなきゃいけないと思う。大人になるってどういうことかわからないけど、今までみたいにみんなで集まって人の迷惑になることじゃないと思う。」

「それじゃ、俺たちが今まで作ってきたことを否定するのか」

「いや、そうじゃない。例えば永遠の意味ってわかるか。まあ、俺にもわからないんだけどね。でも、考えることはできる。大人になるってどういうことかわかるか。俺はまだ大人ではないからわかんないけど、きっと大抵の人が大人としての自覚をもって居やしないと思う。でも、いままで十何年も生きてきたけど、楽しく生きていられればいいわけじゃないだろ。いつか思ってもみなかったような災厄に出会ったときに楽しいと思えるわけじゃない。それまでの経験をどうやって役立てられるかが人間としての強さだと思う。」

「じゃあ、どうすればいいんだよ」

「今までのことから学べばいいんだ。経験だけでは何の役にも立たない。それを知識や技術、いざという時の対応力に変えればね。わかるか、ただ生きているだけじゃダメなんだよ、そして自分たちの力をこの村のために使わないと。きっと目的があれば頑張れると思う。だからこそ、「ワヤン」を解散させた後もバラバラに生きていこうとは思わない。協力することはいくらでもあると思うから。うれしいことがあればここに集まってみんなで喜べばいい。そのためにこの場所があるんだからね。つらい時や困難があればそのときもまたみんなで協力し合えばいいのさ」

「わかった。そこまで言うなら元リーダーの最後の頼みとして聞いてやろう」

 ヘリオスがチームを解散させたからといって、メンバーバラバラになるわけではないし、これからもお互いに協力し合って、何か情報があれば交換し、祝い事があればここで集まろうということをいったので、すでにある程度、こころの準備は出来かけていたものだから、悲しい気持ちは乗り越えて、純粋にヘリオスたち四人の門出を祝うこととなった。

 屋敷の中の昼間はあるが、それほど大きなパーティーにはならなかったが、それぞれに思い出話をしたり、今まで見てきた青年団の活躍などを話し合ったりした。

 そのころアレンも同様に自分の作ったチームの仲間といた。アレンのチームの名は「ワルサー」といい、名前の通りこのアスンシオンの村の奇異扱いされている者たちが集まってできたようなチームである。しかし、それ以外にも先ほどのデュナミスのようにアレンのことを慕って集まっているものも何人かいて現在は二十四人いることになる。

 アレンは朝早くから出掛けていたが、真っ先に仲間の所に向かったわけではない。まず、昨日の夜に何かが起きていたので、それを確かめに森に行き、森の仲間に聞いて回っていた。

「なあ、昨日の夜何が起きていたか知らない?」

「いや」

「さあ」

「ああ、気になったけど、わからない」

などとみんな答えた。

「う〜ん、おかしいなあ。昨日何かがあったと思ったけどみんな知らないってことは、大したことじゃなかったのかな」

 二匹の狼たちと森を回って聞いてみたが、物音はしていたけどそれがどこで起きて何があったか分かるものはいなかった。

(う〜ん、確かに森の方が騒がしくなっていたと思ったのだけどな)
 その場にいても答えが出ないことが分かった時点でアレンは諦め、みんなに分かったときに教えてくれよと頼むと村に戻っていった。

「アレン、みんなに気付かれないようにするから一緒に行ってもいいかい」

「えっ、ああ、いいんじゃないのかな、でも、ヘリオスには気を付けなよ。お前らのこともう知ってるし、でも気づかれたら怒られるだろうからな。怒ると怖いし」

 村へと通じる入り口に戻ると、歩いて自分の仲間がいる 地区へと向かった。そこは自分の家へと変えるよりも遠いはずなのだが、人に見られることを気にしながらも、秘密の抜け道を使って、人よりも速いスピードであっというまに着いてしまった。

(このスピードは普通の人間にはわからないだろう、気持ちいい)
「なあ、せっかくそんなに早く動けるんだから、ほかの人の前でも使えばいいじゃん」
「ばかだなあ、そんなことしたら、今よりもっと変な奴だと思われるだろう。」

「ばかだなあ、おまえだって変な奴なんだからもうどうしようもないだろう」

「う、うるさいな。ほっとけよ、ほら、もう着いたから静かにしなさい」

 到着した時がおよそ、八時半くらいでアレンがつくとみんなすでにいて、最後のデュナミスがさっき到着したところだった。

「みんな、実は俺、青年団に入れちまった」

(入れちまったって、落ちる気なかったくせに)

 黙ってろとばかりに相棒の小狼2匹に睨みを利かせると、仲間たちの祝福の輪に入って行った。

アレンが報告すると、まっていましたとばかりにいつものような馬鹿騒ぎが始まった。

 アレンが合格しようと落ちていようとかまわず騒いでいたに決まっていた。近隣に住んでいる人たちは皆、迷惑そうな顔をしながらも、戸の影や木の後ろからそーっと覗いている。

 彼らは何かしら優れているものを持っているために村の者から奇異扱いされているのだが、今日も狂ったように食べて飲んで騒いでいていただの子供のように見える。もちろん本人たちは自分たちが邪険にされていることは分かっているのだが、他にどうすればいいのかが分からないのである。そうやって、今までみんなで集まっては色々なことをしてきた。そういった意味でヘリオスとの友情とは違った仲間関係が築かれていた。

「おっ、てめえ、よくもやったなこのやろ」

「売るせえ、お前に俺が追いつけるのか」

「何を、捕まえた跡を見てろよ、ひねりつぶしてやる」

「大丈夫、捕まらないから」

「なあ、アレンそいつをつかまえてくれよ。ちっちゃいくせにすばしっこくてさ」

 彼らの集まったとこには、何もない。そう、文字通り建物など立っていない只の空き地である。しかし、それは彼らにとって小さな問題でしかないのである。あちらこちらから吹き込んでくる風は、地表に積もっているほこりを吹き起こし、どこからか迷いこんできた枯葉や落ち葉の類は、24人の人影の周りをくるくると踊っている。そして、当の本人たちは、額と額を突き合わしては、投げ飛ばし、立ち上がっては肩を叩いて笑いあう。

 自由気ままに動き、自然を感じ、難しいことは時間とともに解決させる。そうやって、日々を生きてきたのである。 

 これ以上ないくらいの幸せな時間が彼らを取り巻いていた。

(こいつら本当に単純。でも、楽しそうだな、やっぱこれぐらい馬鹿なほうが生きるのって楽しいのかな)

「あっ、やべ、そろそろいかなきゃいけんかも、」

「えっ、もういくのかよ。まあ、俺らはいつでもここにいるからまた戻ってこいよ」

「あああ、じゃあな」

 アレンを除く他の人は12時の集合時間に間に合うように余裕を持って出かけて行った。

 しかし、昼食が出るわけではないので、途中で家から持ってきたまんじゅうや握り飯などの簡単な食事を取って会議所へと入っていった。

 会議所は何百年も前に建てられ以降歴代の青年団や村の会議などでたびたび使われているものだが、毎年のように補強をしているのでで、今年作られたばかりのような出来栄えである。アレンの父のホラリスもこの補強工事には何度も参加していて、アレンも見学に来たことはあった。

 中は、天井まで十メートルほどもあり、床は板張り黒光りしている。長テーブルが十台並んでいて総員で150名入ることができると言われている。かなり広い建物だが、声が響くように少しホール型になっていて、この長い机は折りたたみが可能な作りになっている。しかし、滅多に折りたたまれることなどなく、今では何のためにあるのかさえ分からない。

 前の方の列には今年から入る団員が座り、一列開けてその後ろに先輩たちが座った。五名の教官と村の村長をはじめとする各区の代表も集まっており、広い会議所もその天井だけが涼やかな快適さを保っていた。

後書き

古代小説という方向にもってけないので、異世界という分類に変えようとおもいます。

この小説について

タイトル 幸せな時刻
初版 2009年7月27日
改訂 2009年7月27日
小説ID 3361
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ぬし
作家名 ★斉 圭玉
作家ID 541
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活動度 2364
趣味は農業です。

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