汎球の小さな息吹 - 長い一日の始まり

アレンたちの青年団合宿生活二日目、朝は普段どおりに五時半に起きた。洗濯やそれぞれの日課をしていると教官がやってきて、毎日朝炊事当番表に従い手伝うことになっていることを伝え、それにしたがって何人かが炊事場へ向かった。

「まったくこんなことなら昨日の夜伝えてくれればよかったのに」

と一人愚痴をこぼしているものがいた。もちろんアレンである。

「お前が悪いんだろ一人だけ6時に起きてくるんだから。他の人はお前より早く起きてたから余裕持って炊事場に向かってるぞ」

「ええ、これでもいつもより早く起きたんだぞ」

「おい、いつも何時に起きてんだ」

「ん〜、秘密にしとく。だって怒られそうだから。じゃ」

普段からマイペースに生きているアレンだからこそこういうことになったのだ。特別な約束事でもない限りアレンが早く起きることはなく、だからこそ朝には弱い。眠たそうに眼をこすりながら少しおぼつかない足取りで他の者の後をついていく。

(今日は一体何をみしてくれんだ)

「ヘリオス、昨日は結構大変だったけど今日はどんなことするのかなあ」

「ああ、きっと全体のミーティングで今後の予定を伝えて、その後はあんまり大変なことはしないんじゃないかな」

「うーん、そうだといいんだけどね」

と食事を終えて部屋で休みながら会話を始めていると、
ドーン

((ウォ!!))

隣の八人部屋が急に騒がしくなった。何が起きたのか息をひそめていると、
ドーン!
こちらの部屋でも大きな音を立てて部屋が開けられた。そこには棍棒を持った教官がいて、黙ったまま手に持った棍棒であちらに行けと合図をしている。
 当然のことですぐには反応ができなかったが、教官の後ろを他の団員が駆け足で通って行くのを見ると、すぐに部屋を出て行った。

「アレン、僕らこんなに急いで何があったんだろうね」

「うん、何が・・・」

「うるさい、黙って急がんか」

「す、すいません」

アレンの頭を手に持った棍棒ではなく、空いた手で平手打ちをするとこれ以降は誰も口を利かなくなり急いで外に出っていった。外に出ると庭があり、そこに並ばされた。一体これから何をされるのかと思っていると

「気を付け。休め。はは、いや、驚かせてすまなかったね。今日から一週間は毎日同じことをしてもらうから、朝ごはんを食べて準備が出来たら、ここにならんどいてくれよ」

と教官がいった。

「まずは軽く体操と柔軟体操を一時間ほどしてもらおう。その後のことはまたあとで伝える。始め」

先ほどの恐ろしかった教官たちとは打って変わって、一時間もの間ゆっくり体操をしていていいというものだから驚いていた一同も、キャーキャー騒がしく柔軟体操を始めた。
それぞれに間をとり、合宿始まって間もないものだから幾人かの中のいいグループと知り合いのいないものが何人かぽつぽつと座って体操をしている。
 初め、いつもはしない体操を楽しんでいた一同も、十分も経つと早くも慣れない体操がとても退屈なものに感じはじめた。そして、三十分程経つとそれははっきり苦痛となってみんなの顔に現れた。もうすでに誰もしゃべる人はいない。

「はあ、こんなことをこれから一週間毎日続けるのか、それはちょっといやかなあ」
とアレンは思ったことがついちいさな呟きとなって飛び出てしまったが、幸いなことに誰も気付かなかったようである。が、それはみんなが思っていることなのかもしれない。
 ただもんもんと体を前に倒してみたり、横になってみたりしたが、永遠に終わらないのかと思え、みなだれてしまっている。ようやく一時間がたったのか教官が辞めの合図をした。
 柔軟体操をしてみんな体が柔らかくなっているはずなのに、教官の合図さえしっかりと聞き取れないくらいに思考は滞り、また教官の声に反応した後でさえ、体は固まっていたが、これはなれないことを長時間したためであろう。

「まあ、いきなり一時間の体操というのはきつかったと思うがすぐになれるさ。それに次のはもう少し面白いと思うぞ」

((絶対嘘だ。もう少しもなにもこれのどこが楽しいんだ))

 アレンにも分別はあるので、言っていいことといけないことくらいのは区別はつく。

「次はいったい何をすればよろしいですか」

飽き飽きしていたのはみな同じで、教官が楽しいといったことに対して必要以上に期待してしまったものがいた。すると教官はこの質問を待っていたかのように続けた

「そうだな、次は湖に行こう。これなら楽しいだろう。」

「やった、ありがとうございます。そこでみんなで遊んだりするんですよね」

 気が逸ったものが迂闊にも質問をした。しかし、教官は少しむっとした顔をして答えた。

「今度は一時間ほどひたすら流木を探してもらう。それを毎日最後に一か所の場所にまとめて積んでいってもらおう」

どこが楽しいのかはわからないが、言われたからにはするしかない。手を取り合って立ち上がると、すぐそばに見える浜辺へと歩いていった。
 やがて、団員はバラバラになってそれぞれ流木を拾いはじめた。

((つまんねえことさせんだな、青年団もよっぽど暇なのか?いや、他にもっとまともな訓練を思いつかなかったということなのかな))

「よお、ヘリオス、この流木っていうのはそんなに多くはないけど、浜辺は意外とゴミで汚れているんだな」

「うん、そうだね、僕もたまに来るけど今まではそんなに気にならなかったな。もしかしたらこれにはうらがあるかもね」

「えっ、裏ってそんな大げさな。一体何が隠されているって言うんだよ」

「うーん、例えば流木を集めているといやでもこのゴミが目にはいるだろ。でも、教官たちはこのことについては何も言わなかった。だから、もしかしたら自主的に集めろってことかもしれないよ」

「でも、そんなことして一体何になるって言うんだよ」

(そうだ、一体何に何だよ)

「そりゃ、環境美化になるじゃないか。それに言われたことだけじゃなく、自分自身で気づいて村のために何ができるかを試していたりするかもよ」

(ほお、なるほど、ヘリオスは言うことが違うな)

「じゃあ、評価も高くなるのかな。」

「まあ、それより、浜が奇麗になることの方が大事なんじゃないのか」

「どっちでもいいけど、とりあえずごみも一緒に拾っておくかな」

ということで、二人は流木だけでなくごみも次々に集めていった。
 やがて時間になって教官が一か所に集めるように言うとそれぞれの集めた量は多くはなかったが、集めると小さな山ができた。この流木は水が来ない場所へ集めて置いておくこととなった。
 しかし、この時点でまだ10時前だった。かなり長い時間がたったように感じていたのだが、柔軟体操が始まってからまだ二時間と少ししかたっていないことになる。ということはまだこれ以外にも何かやるということである。

「よし、お疲れさま。さっきの体操よりは楽しかったんじゃないかな。でも、まだまだ終わりじゃないよ。本番はここから」

今までのが全てが準備だったかのいいようであるが、

「これから昼ごはんまで筋トレだ。私が始めと合図をするから終わりの掛け声があるまでやめちゃいけない。最初は腕立てだが途中で膝をついたり、明らかに全体の進行を遅らせたとされる者には者はその回数×二十回、最後にまとめて腕立てをしてもらうからな。腕立てのあとは腹筋、背筋、スクワット、左右交互に片足立ちというローテーションを延々と繰り返してもらう。」

(ずっと、筋トレって、そんなん見てても面白くないじゃん)

 この勝手に突っ込んだり感想を言っているのはアレンの友達の小狼君である。彼は彼自身が持ってる狼らしくない魔法によって姿を消していつもアレンの周りをうろちょろしているのである。ちなみに彼らは兄弟で代りバンコに来ては、これまたアレンにしか聞こえないような低音でごちゃごちゃいってうざがられている。

この小説について

タイトル 長い一日の始まり
初版 2009年8月19日
改訂 2009年8月19日
小説ID 3437
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ぬし
作家名 ★斉 圭玉
作家ID 541
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活動度 2364
趣味は農業です。

コメント (1)

★ 2009年8月20日 16時43分24秒
どうもっす。
では、感想を。
うん。読みやすかったです。文章力が最初の頃よりも断然上がっています。

教官どSっすね。アレン達が不憫だと思いました。
でも、おもしろいです。これからも期待しています。
では。
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