「都市伝説」シリーズ - 都市伝説 第三章 〜カシマレイコ〜

都市伝説 第三章 〜カシマレイコ〜

それは、クリスマスも近づいた12月の半ばに起こった出来事だった。

街々がクリスマス一色に染まる中で、一人の女性が命を落とした。
・・・・死因は、線路への投身自殺だった。

その事件は、ニュースで大げさに取り上げられた。
「市内高等学校に在学の女子生徒(16)が先日7日、栄端福地線坂下踏切で投身自殺を図りました。学校側は「校内でのいじめは確認されていない。」と、「いじめ」の関与を否認しました。亡くなった女子生徒の部屋からは遺書のようなものは発見されておらず、警察は調査を続けています。」

そう。その事件は、俺の通う「栄端学園高等学校」で起きたのだった・・・・・・。
死んだ女子生徒の名は「斉藤あかね」
彼女は、活発で明るい、社交的な女の子だった。
・・・・・・そして、俺の所属する男子バスケットボール部の新人マネージャーだった。あかねは、スタイルもよく顔もなかなかだった。おまけに頭もある。
それが幸いして、他の部活からも「マネージャーにならないか?」との勧誘が彼女の元にひっきりなしに続いた。そんな激しい勧誘を振り切って、俺の所属するバスケ部に、
マネージャーとして籍を入れてくれた。

俺には・・・・・紗希がいるから、他の女に見惚れる訳には行かなかったのだが、それでも、そんな俺でさえ思わず見惚れてしまうほどに彼女は美しかった。

そんな彼女が「死んだ」との一報を受けた時、俺は飲んでいたコーラを思わず吹き出してしまった。・・・・・・そのくらいに驚いた。

「あかねが自殺」・・・・考えられなかった。
先輩からもウケがよく、同級生の男子からは、何度もアプローチを受けていた。
それをさわやかに受け流す彼女の笑顔が、ふと、頭をよぎった。
あの輝くような笑顔をもう二度と拝むことが出来ないのか・・・・・・。
悲しみでもない。失望でもない。
ただ・・・・身体から力が抜けた。


彼女の葬儀には、たくさんの人が訪れた。
担任、教頭、校長、彼女のクラスメート、何度もアプローチし続けた男子生徒たち・・・。多くの人が彼女の死を悼み、涙していた。
その日も、やっぱり紗希がいた。
・・・・・俺の横で焼香の列に並びながら、水色の水玉模様のハンカチを片手に握りしめている。
その目に、一瞬キラリと光るものが見えたような気がしたが、それに耐えきれなかった俺の心が紗希から顔を背けさせた。

俺は、あかねの焼香台の前に立ちながら、親友の顔を想った。
「ごめんな。俊哉。・・・・俺のせいで、死ぬことになったんだよな。」
俊哉は、俺の能力を知っていた。
・・・・そして、俺の能力を誰よりも先に信じてくれた。・・・・紗希よりも先に。
だから、あいつが死んだ「その日」も、俺には分かっていた。
分かっているなら・・・・忠告しておくべきだった。
「口裂け女が出るから気を付けろ。」・・・・・・・・・・って。
けど・・・・けど、言えなかった。
親友に向かって「お前は死ぬ。」なんて、言える訳なかった。

だから・・・・だからせめてもの償いとして、もう二度と「都市伝説」なんて言う、くだらないもので死者を出さないようにする。と心に誓った。
それなのに・・・・こうしてまた、原因不明の死者を出してしまった。
ただの偶然であって欲しい・・・・。きっと、「いじめ」か何かが原因で死んだのであって欲しい・・・・・・。そう願うしかできなかった。
もし、彼女も「都市伝説」の犠牲者なのだとしたら、俺は俊哉に、合わせる顔が無い。
約束を破ってしまったのだから・・・・・・。

俺はきっと、自分の能力を過信して、自惚れていたんだ・・・・・・。

「夢の中で時空間を行き来する能力」・・・・・そんなもの、クソくらえだ!!
その能力で、人を助けられるんじゃないのかよ?何のための能力だよ!
親友も後輩もロクに救えない能力なんて、無くなってしまえ!

俺は、自分を責めた。・・・・・・責めることしか・・・・できなかった。


俺の心が痛い時は、紗希はいつでもそばに居てくれる。
いつもは、それだけで俺の心の痛みも、自然と引いていった。

・・・・・でも、今回はむしろ、そんな紗希の気遣いが鬱陶しかった。

なんでこいつは、俺なんかのそばにいるんだ・・・。俺みたいなやつ、捨ててくれ・・・。そうとさえ、思ってしまった。

そんな俺の雰囲気に気付いたのか、紗希は、屋上に来る事もなくなったし、
帰りに「一緒に帰ろう?」と声をかけてくることもなくなった。

・・・・・俺たち、このまま別れちゃうのかな?
空をゆっくりと流れる雲をなんとなく見つめながら俺は思った。
鬱陶しいけど、別れたくはなかった。
・・・・今、紗希を失ったら、俺は本当に壊れてしまう気がした。
紗希の存在は、俺にとって「みちしるべ」だった。
何があっても失ってはいけない、大事な存在・・・・・・。
人はそれを「愛する者」と呼ぶ。
でも、まだガキと同じくらいの考え方しかできない俺には、それが理解できなかった。
紗希は・・・・俺を意識しているのかな・・・・・「恋人」として・・・?
聞きたいけど・・・・そんな勇気はない。
よくお袋は、「告白するなら、ビシッ!としなさい。」と言う。
でも・・・・誰だって、「大勝負」をする時はドキドキする。

数日が経った。紗希は、相変わらず俺に優しくしてくれる。
だが、その態度が少しぎこちなかった。
まぁ・・・・自分がそう言う状況を作ってしまったから仕方がないんだけど。

重い気持ちのまま帰宅した俺に、亜季が明るく「おかえり」と出迎えてくれた。
こういう時に、ふと、「家族」と言うものの温かさに気付く時がある。
亜季の笑顔が、俺の心に溜まった「暗いもの」を吹き飛ばした。
今日の夕食はご馳走だった。
・・・・忘れていた。今日は、亜季の14歳の誕生日だった。
俺は、席について、「ハッピーバースデイ、亜季」と声をかけた。
家族で「いただきます」をする。・・・・その後には「乾杯!!」が響いた。

・・・・・楽しい誕生日パーティーだった。
翌日、教室で紗希に声をかけられた。
「亜季ちゃん。昨日お誕生日だったね。私もパーティー行きたかったんだけど、塾と重なっちゃって・・・・・・。ごめんね。」
そう言って紗希は、通学用のバッグの中から、型崩れしたクッキーを取り出した。
「お料理本を見て頑張って焼いたんだ。みんなで、分けて食べてね。」

あの時の俺は、紗希に対して失礼な態度を取り過ぎだった。
そう思った俺は・・・・なんとなくぎこちないながらも謝ってみた。
「あのさ・・・・なんと言うか・・・ごめん。そばに居てくれたのに、鬱陶しいなんて言っちゃって。」
クッキーを受け取りながら、俺はひどく真っ赤な顔をしていたのだろう。
紗希は、くすくす笑いながら、「いいよ。気にしないで。」と言ってくれた。

・・・・・こうして、俺と紗希の関係は、なんとか修復できた。
でも、本当の「試練」はここからだった・・・・・・。

その日の放課後、日直だった俺は日直日誌を書き終え職員室へ提出しに行った。
あとは教室に戻って窓閉めと消灯をするだけだった・・・・・・が、
その日は教室に一人、「居残り」がいた。
「あの・・・直樹くんって英語得意だったよね?私、英語は苦手なんだ。ちょっと、質問したいことがあって残ったんだけど、邪魔だったかな?」

誰だったかな、この子・・・・・・・?
それが、俺の正直な印象だった。
「あの・・・・とりあえず、名前だけでも教えてもらえるかな?」
「あ・・ごめんなさい。私、「鈴木梨紗」って言います。普段は、眼鏡をかけてるから、やっぱりコンタクトだと、印象違うのかな・・・・・?」
そう言って首を傾げながら微笑んだ彼女に俺はざわめきを感じた。

・・・・・何だろう?この感じ。
ノートを見直す時に俯いた彼女の表情や、彼女の髪を掻き分ける仕草・・・・・・。
紗希とは違った魅力を、彼女に感じた。・・・・そして、紗希以上の魅力を、彼女に感じた。

そうして、数日間の個別指導の末に、彼女は俺を食事に誘った。
「あの・・・・駅前においしいパフェのお店があるんだけど、今度一緒に行こうよ?」
彼女の潤んだ瞳を見つめていると、俺は思わず頷いてしまいそうになった・・・・・。
「あっ!・・・・ごめんなさい。私ったら、何言っちゃってるんだろう?」
口に手を当て、驚いた仕草をした彼女を、俺は抱きしめたくなった。

ダメだ・・・・・。耐えろ、俺。でも・・・紗希は、ただの「幼馴染み」だし・・・・。別に付き合ってるわけじゃないから、浮気にはならないだろうし・・・・・・。

俺は、OKしてしまった。とりあえず、ケータイのアドレスを交換して、日程が決まったらメールをすると約束してしまった。

家で宿題をしていると、マナーモードにしてあったケータイが、ガタガタと揺れた。
ディスプレイには、「鈴木梨紗」と表示されていた。
俺はさっそく、内容を読んだ。

直樹くんへ
メールありがとう。日時が決まったんだね?12日かぁ・・・・。分かった。その日は、スケジュール空けとくね?・・・・でも、紗希ちゃんはいいの?私、なんか申し訳無い事をしている気がするんだ。できれば、紗希ちゃんも誘ってあげてください。それでは、また明日学校で会いましょう。おやすみなさい

俺は、なかなかはかどらない宿題をそっちのけにして、メールを返信した。

梨紗へ
紗希のことは別にいいよ。ただの幼馴染みだし・・・・。付き合ってるわけじゃないから、梨紗と食事をしても紗希は何も言わないと思う。あのさ・・・・もしよかったら、
そのパフェ、俺がおごろうか?

しばらくすると、返信メールが来た。

直樹くんへ
幼馴染みかぁ・・・。まぁ、直樹くんがそう言うのなら、直樹くんの言葉に甘えることにします。それと、パフェのことだけど、おごってもらっちゃっていいの?・・・・・でも、すっごく嬉しい。当日、楽しみに待ってます。

その日は、そのメールを境にして終わった。



警報機が鳴っている。・・・・・私は、傘をさしたまま遮断機が上がるのを待つ。

昨日・・・私の夢に「足のない女の亡霊」が出てきた。
名前は忘れた。
その人は、「右足いるか?」と私に尋ねた。私は「はい」と答えた。
次は「左足いるか?」と尋ねられた。また、私は「はい」と答えた。
「私の足は、どこにありますか?」
・・・・・それが、その人が私にした、最後の質問だった。
私は、答えられなかった。「すみませんが・・・・・分かりません。」と答えておいた。

あの夢は、一体何だったのだろう・・・・・・?

別に、その夢が私の日常を壊したわけではない。
・・・・いつも通り、目覚まし時計の大音響で目を覚まし、朝ごはんを食べて歯を磨いて、服を着替えて、髪の毛を梳かして、薄く化粧をして・・・・・・。
私は、「行ってきます!」と母親に手を振った。

・・・・そして今、ここにいる。
普段と変わらない日常のはずだった・・・・・・。

でもなぜか、今の私にはこの警報器の音が魅力的に聞こえた。
進みたい・・・・・・。この邪魔な棒をくぐってその先に行きたい・・・・・・。
私は、遮断機を虚ろに見つめながら、そんな事を思っていた。
でも・・・そんなことしたら死んでしまう。
死にたくない私と、遮断機をくぐってでもその先に進みたい私とが争った。
そして・・・後者の私が勝った。
私は、まるで操られているかのように遮断機をくぐり、迫ってくる電車を見つめた。

あぁ・・・・いい気持ち。

これが、私が最期に思ったことだった。そうして、私の16年の人生は終わった。
彼女が取り落とした「斉藤あかね」と記された生徒手帳に貼られた写真に血が飛び散った。

「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん?」
俺は、全身から冷や汗を噴き出していた。
亜季が、心配そうな顔で俺の顔を覗き込んでいた。
「別に・・・何でもないよ。」
俺はそう言って立ち上がったが、めまいと立ちくらみで床に倒れこんだ。
「お兄ちゃん!何でもない訳ないでしょ?無理しないで、今日は学校を休んだら?」
亜季はそんな俺を支えながら、やっぱり心配そうに言った。
俺はとりあえず、亜季の言葉に甘えてベッドに潜った。
その後、亜季はお袋を連れて戻ってきた。
お袋は、慣れた手つきで俺の額と自分の額に手を当てた。
「熱っぽいわねぇ・・・・。直樹、亜季の言うとおり、あなた学校休みなさい。」
そうして、お袋は薬を取りに階段を降りて行った。
「おい、亜季・・・・。お前はもう、学校に行け。遅れるぞ。」
目にほんの少し涙をためて、紗希は家を出た。
14歳にもなって、本当に泣き虫だな・・・・・あいつは。
俺は、妹の亜季に対してそう思った。

その日の午後、紗希からの留守電と梨紗からのメールが入っていた。
両方とも、俺の身体を心配する内容だった。
俺は、母が額に乗せてくれた冷たいタオルが自分の熱を吸ってくれていることを感じながら、眠りについた。


・・・・私は、もう長くない。私は、直感でそう感じた。
ただ、駅の構内に入ってくる電車を待っているだけだった。
なのになぜ、そんな気持ちになったのかは分からない。
ただ ─── 直感がそう言っていた。
・・・だけど、そう思った時にはもう手遅れだった。
誰かが、私の背中を強く押した。私の身体は線路に押し出され宙を漂った。
辺りが騒然としたのを遠くに聞いた。
ドサッ・・・・線路に身体が激突する。・・・・・息が詰まるほどの激痛。
そして、私を最後に包んだのは、凄まじい轟音と真っ暗な闇だった。

憎む暇もなかった・・・・・・。恨む暇もなかった・・・・・・。


窓の外は、夕陽に染まり紅く輝いていた。
目を閉じたまま、まぶたの内側に紅い光が差し込んでいた。
とりあえず、意識は自分の身体に戻ってきた。
ただ・・・・こんな身体の時でも「そう言う存在」は手加減してくれない。
助けてほしいのか、同じ苦しみを味わわせたいのかは分からない。
でも・・・勝手に「そう言う存在」と意識がリンクしてしまう。
目を閉じ、呼吸を落ち着けながら・・・・・そんな事を考えた。

柔らかく温かい手が、俺の手を包んだ。
そっと目を開けると・・・・・紗希がこちらを見つめていた。
紗希が、お見舞いに来てくれていた。隣には、梨紗もいてくれた。
「あっ、やっと目を覚ました。」
二人は俺に、優しく微笑みかけていた。こうしてみると、梨紗も紗希もなかなか魅力的だ。紗希は、よほど慌てていたのか制服のままだったが、梨紗は私服で来ていた。
「直樹が風邪を引くなんて珍しいね。私、びっくりしちゃった。」
紗希は、俺にそう呟いて額のタオルを交換してくれた。
そんななかで、俺は夢で見たものを紗希に伝えることにした。
「梨紗、気を悪くしないでほしいんだけど、今から、紗希と二人で話がしたいんだ。悪いけど、妹の子守りを頼めるかな。」
なるべく腰を低くして梨紗に要望を言った。
「分かったわ。何かあったら、遠慮なく呼んでね。」
梨紗はそう言うと、俺の部屋を出て、妹の亜季を探しに行った。

紗希には、もう俺の言いたいことが分かるのだろうか・・・?
「あのさ・・・」
俺が口を開こうとしたとき、
「また何か、変な夢でも見た?」と紗希が後を引き取った。
「あぁ・・・そうなんだ。「足のない女の亡霊」って、紗希は聞いたことある?俺の部活の後輩が、そいつに取りつかれて殺された。・・・・ほら、この前の飛び込み自殺の事件。その後に「足のない女の亡霊」の方の夢も見た。仮に彼女をA子と呼ぶとして、A子は、駅のホームで電車を待っている時に、誰かに線路に突き落とされたんだ。
・・・・犯人は分からないんだ。でも、A子はその犯人を探してる。だから、彼女がどの駅で突き落とされたのか、そして誰によって殺されたのかが分かれば、きっと、報われない彼女の魂も成仏できるんだと思う。・・・・そして、この事件は終わる。」
俺の話を静かに聞いてくれていた紗希は、何か考えたような仕草の後、こう言った。
「・・・確かに、それで「A子」の魂は成仏できるかもしれないけど、犯人探しとかそういう仕事は、警察に任せるべきだと思うよ。でも、とりあえずまずは、警察に「他殺」だって認めさせる必要があるわね。そうしないと、警察は動かないの。」

警察に任せる・・・・それができたら、どれだけ楽か。
でも、警察は「事件」じゃないと動いてくれない。
あの事件は、あくまで「自殺」であって「他殺」ではない・・・・・・。
それが、当時の警察側の意見だった。
そのあとに、目撃者が現れる事もなく、A子を殺した犯人は、完全犯罪をやってのけた訳だ。

なんで、A子は殺されたのだろう・・・・・・。
夢の中のイメージでは、そんなに悪い特徴は目立たなかった。
どこにでもいるような普通の女子大生だった。

紗希はあの話の後、一人で調べると言って帰ってしまった。
心配ではあったが身体が言う事を聞かず、紗希に頼むしかなかった。

・・・・・それが、いけなかった。
2日後に復帰した俺に、紗希は叔父である伊藤秀隆を紹介してくれた。
「こちらは、秀隆叔父さん。私のお母さんのお兄さんなんだ。刑事をやってるの。叔父さんに今回、この事件を捜査してもらうように頼んでみたところ、やれる限りはやってくれるって。」
そう言って紗希に紹介された伊藤は、たばこを咥えながら、ごつごつとした手を俺に差し伸べた。俺もその手を握り返し、お互い軽い自己紹介を済ませた。
「君が直樹くんか・・・。紗希から話は聞いていたけど、思ったよりハンサムだね。」
第一印象は抜群だった。
なかなか男前で、優しそうな雰囲気も出している。それに、何より冗談がうまい。
「まぁ・・・今回の事件をざっとあらってはみたが、この時点でいくつか分かったことがあるぞ。」
そう言うと伊藤は、茶色い封筒に入った書類を見せてくれた。
警察の捜査書類を一般の人間に見せて大丈夫なのだろうか・・・・・?
そこは気になったが、伊藤自身が何の気後れもなく見せてくれたのでそれに甘えることにした。
「まず・・・女の名前は「加嶋玲子」年齢は20代前半。住所は埼玉県さいたま市。そして、近隣住民の聞き込みによって、彼女が7年前に死亡していることが判明した。当時の捜査で、死因は「自殺」・・・とされていたが、今回、俺の独自の調査で、彼女が「他殺」だと言うことが判明した。まぁ、つまりは「事件」として捜査が可能になったってことだ。
俺が、この書類を上の連中に提出すれば・・・・の話だけどな。」
・・・・すごい。素直にそう思った。

紗希の親戚に刑事がいる事もそうだが、何より、この伊藤警部の捜査の腕に感心した。
たった2日で、ここまで分かるなんて。
「これで直樹くんは、分かった情報を基により深く事件の真相を掴めるわけだ。」
あまりにも当たり前の風で言われたので思わずスルーしてしまった。
・・・が、冷静に考えて初対面のこの刑事が、俺の能力を知っているのはおかしい。
「なんでそれを知ってるんですか!」思わず叫ぶ。
「いやぁ・・・なんと言うか、紗希から君の能力の事も聞いていてね・・・。なんでも、あの「口裂け女事件」を解決したそうじゃないか?あれは、俺たちでさえ原因不明と言うことで迷宮入りしかけてた事件だったのに・・・・・・。まぁ、「警察」と言う組織は、
存在の確定した犯人しか追えないんだ。確かに、不可解な殺人事件が多発しているが、犯人が「口裂け女」じゃあね・・・。なかなかみんな、捜査に手を貸してくれなかった。」伊藤は、照れた表情で頭を掻きながら言った。
その様子は、俺の能力を疑うどころか、むしろ心の底から信用している感じだった。
「どうして伊藤さんは、俺の能力を疑わないんですか?」伊藤を試してみる。

「え・・・?どうしてって・・・うちにもさ、直樹くんと同い年の息子がいてね。名前を「龍起」って言うんだ。龍起は、小さい頃から霊感が強くてね・・・・・。
当時、小学校でもバカにされて過ごしてきた。良く耐えたもんだよ・・・。
ほら・・・紗希も、当時は毎日のように君の事ばかり話していたよ。だからさ、龍起となんか似てるなぁと思って。まぁ、龍起が普通の子だったら、直樹くんを変人扱いしてたかも。」
・・・・そう言うことか。
俺は納得する。
「伊東龍起」・・・まだ見ぬその少年に、なぜだか俺は親近感を覚えた。

「今度、紹介してやるよ。」
そう言って伊藤は、腕時計を確認し、「そろそろ時間だ。」と言って帰ってしまった。
取り残された俺と紗希は、なんとなくぎこちない雰囲気のまましばらく過ごした。
その後に紗希が、「じゃあね。」と言って帰っていった。

・・・・伊藤さんの気遣いを無駄にしやがって!このバカ!
せっかく二人っきりになれたんだから、やることは決まってんだろ!!

心の中で、俺は自分にそう叫んでいた。
告白したかった・・・・・・。でも、梨紗の事も心に引っかかった。
そんな葛藤をしているうちに、紗希は行ってしまった。
まだ声をかけられる距離にいるのに、俺はなぜか、声が出せなかった。
俺にとって、紗希が本命なのか、梨紗が本命なのか、分からなくなっていた。
ただ・・・どちらも、ものすごく魅力的だった。

家ではずっと、紗希と梨紗の事を考えていた。
考えては考えては・・・・結局元に戻った。本当は、どっちが本命なのだろう・・・と。
いずれはどちらかに決めなければいけない。
そんな当たり前の選択ですら、今の俺には難しかった。

次の日は、授業が全く頭に入らなかった。
先生に何度呼ばれても、窓の外を見てボォーっとしていた。
紗希に肘で突かれ我に返った頃には、先生は呆れ半分怒り半分の表情だった。
「あのさ・・・、青春するなとは言わないけど、授業は真剣に受けてくれよ。」
先生はそう言って、別の人間を指名した。
その人が黒板に向かって行くところをなんとなく目で追いながら、また窓の外に視線が行った。
昼休みになり、いつもの“特等席”で空を見つめていると、
「直樹くん。この前はパフェをありがとうね。」
と、梨紗が声をかけてきた。そして、行ってしまった。
その後に紗希が怪訝そうな顔をしてやってきた。
「最近、梨紗ちゃんと仲がいいんだね。」
いつも優しい紗希の声が、今日は少し違っていた。
優しいには優しんだけど・・・なんとなく心に突き刺さる響きだった。
「え・・・。いやっ、べ、別に。俺は何にもしてないけど。」
そんな訳ないだろ。心の中の「もう一人の俺」が呟いた。
明らかに動揺の色を隠せない俺に、紗希はもう一撃、爆弾を放った。
「そのうち・・・梨紗ちゃんと付き合っちゃったりして・・・・。そうなるといいね?」
絶対怒ってる。
紗希が、この感じで「○○なるといいね?」と言うのは、大概が怒ってる時だ。
顔では微笑んでいても、心の中では、鬼の形相で俺を睨みつけてる。
「私・・・直樹だけはずっと私を見てくれていると思ってた。それなのに、梨紗ちゃんと知り合ってから、なんか直樹、私に対してよそよそしくなった。はじめは、私が何かしたんじゃないかってすごく心配になって、なかなか眠れなかった。放課後に二人きりの時に、なんで私に対して怒ってるのか聞こうと思った。・・・でも、直樹は梨紗ちゃんとずっと一緒だった。あんないいムードの中に入れる訳ないよ。帰る時も、一人でさっさと帰っちゃって。私、もう嫌われたんだって、ずっと心配だった。」
言いながらだんだん涙顔になっていった。

そうか・・・・紗希は、俺が梨紗と仲良くしているのを「怒ってる」と勘違いしてたんだ。確かに、一時期は紗希の事を「鬱陶しい」と感じていた。
俺は謝りはしたけれど、その後の俺の行動を見て紗希はまだ、俺が怒ってるとずっと思ってたんだ・・・。

「ごめん。そう言う訳ではないんだ。」
俺は、目に大粒の涙を溜めている紗希を見つめた。

お前が好きだ・・・・・・。

が、なかなか出てこなかった。言い渋っている俺に紗希は、
「何で言い渋るの?じゃあ、どういう訳なのか聞かせてよ?」
と、涙顔のまま言った。

「いや・・・その・・・・。」

告白しろ!「好きだ」って言え!早く!・・・・また誤解はされたくない!
心の中の俺が、必死に叫んでいた。

こんな状況で目が泳いでいれば、誰だって最悪の事態を疑う。それは紗希も例外ではなかった。
「・・・そう。やっぱり私は、直樹に嫌われちゃったんだ。・・・いいよ。梨紗ちゃんと、お幸せにね。これからは「お友達」として、何かあったら相談に乗るわ・・・・。」
紗希は両手で顔を覆い、走ってその場を去った。
「あ・・・ちょ・・・・待って!」
俺は叫んだが、紗希にはこの声は届いていないようだった。

・・・・・・バカ野郎!この、口下手!この、トーヘンボク!!
俺は、完っ全に紗希に嫌われた。何でいつも、肝心な時に弱気なのだろう。

その後、俺は家から何回も紗希に電話をかけた。
だが一向に応答はなく、帰ってくるのは
「はい。紗希です。ただいま留守にしています。御用の方は発信音の後、伝言をどうぞ。」と言う、紗希が登録した留守番電話を知らせる音声だけだった。

重い気持ちのまま、宿題を済ませ、風呂に入り、ベッドに潜った。
壁に掛けてあるアニメキャラクターの時計が、深夜0時を伝えていた。




「加嶋玲子」は、駅のホームに立っていた。
今日は、大学の仲間と行った合コンの帰りだった。
「あまり、タイプの人はいなかったなぁ・・・。」
そんな事を呟きながら、私は23時15分に入ってくる電車を待っていた。

何気なく、ケータイを開く。
すると、今日の合コンで知り合った「田中吉昭」からのメールが届いていた。
何気なく、メールに目を通す。

玲子ちゃんへ
今日は楽しかったね。玲子ちゃん、すごく明るくて優しい子なんだね。
なんか俺、また君に会いたくなっちゃった。今度さ、二人で食事に行かない?
一応、食事は俺がおごるからさ。場所は駅前の「Lu・Raeb<ル・レーブ>」でどう?
この店は、ステーキとワインが美味しい店なんだよ。ぜひ、玲子ちゃんと一緒に行きたい。日時とか詳しいことはまたメールするから、とりあえず返信よろしく!

どんな人だっけ・・・?
私は、今日の合コンの様子を思い出した。
あぁ。あの、一人で話題の曲を大熱唱してた人か。

あと5分で、電車が到着する。
今日は、とても肌寒い夜だった。

・・・・・・・伊藤さんの言う通りだった。
確かに俺は、「加嶋玲子」のより深い情報を掴んでいた。
彼女の死に際に、彼女を構内から突き落した「犯人」の顔も一瞬だが見えた。

目が覚めた時には、俺はたった今夢で見たことを頭で整理していた。
そして、そのことを当たり前のように紗希に伝えるため学校へ登校した。
当たり前のように教室に入る。
当たり前のようにホームルームが始まり、当たり前のように担任が出席を取る。
・・・・でも今日は、ただ一つだけ「当たり前」じゃないことがあった。
俺の隣の席に普段座っているはずの「幼馴染み」の姿が無かった。
「戸川。戸川。」
担任は出席簿を見つめながら二回ほど、紗希の名前を呼んだ。
いつもなら、よく通る声で「はい。」と帰ってくるはずだ。
担任は何となく顔をあげ、紗希が座っている席が空席なのを確認すると、
「戸川は休みか・・・。」
と言って、出席簿にバツ印を付けた。
「中島、戸川からお前に連絡行ってるか?欠席理由とか・・・。」
心当たりはあったのだが、とぼけてみる。
「特に聞いてませ〜ん。たぶん、風邪かなんかだと思います。」
バカ野郎。今度言ったら、ぶっ飛ばすぞ。
自分で自分をぶっ飛ばすなんて、冷静に考えてみれば愚かなことではあったが、他に自分を戒める言葉が見つからなかった。
「そうか・・・・。」そう言って担任は、出席簿に顔を戻した。


戸川紗希は、真相に迫っていた。
犯人の名前は「中岡大介」
「加嶋玲子」の通う大学の同級生だった。
おそらく、犯行動機は、くだらないことなのだろう・・・・・・。
近隣の住民に聞き込みを続け、手に入れた情報だった。
叔父からは、「危ないから、事件に手を出すな。」と言われていた。
でも・・・そんな訳にはいかなかった。
早く直樹を解放してあげたい・・・・・・。
もしこのまま、事件が解決しない状態が続けば、直樹は「加嶋玲子」の霊魂である「カシマレイコ」の夢に苦しみ続けることになる。そんなことになったら、直樹の精神は壊れてしまう。とにかく今は、「直樹を助けたい」一心で聞き込みを続けていた。

そんなことは露知らず、俺は普段通りの生活を送っていた。
ただ・・・日を追うごとに犯人の特徴が掴めてきてはいた。紗希から携帯の番号を聞いたのか、時々伊藤さんが電話をくれる事もあった。

そして、そんなある日、二つの「決定的な出来事」が起こった。
一つ目は、梨紗に彼氏ができたことだった。
その日の朝に、嬉しそうに俺に報告しに来てくれた・・・・。これで、心は決まった訳だ。
そしてもう一つの「決定的な出来事」は、「加嶋玲子」を殺した犯人が見つかったと言うことだった。

犯人の名は「中岡大介」。23歳のフリーターだ。
犯行動機は、自分の合コンの誘いを断ったから・・・と言う身勝手なものだった。

何が、紗希をそこへ導いたのかは分からないが、紗希は「加嶋玲子」の殺された駅を見つけていた。
今日は、12月24日・・・・クリスマスイブだった。
本当なら、今頃、家で明日直樹に贈るクリスマスケーキを焼いているころだった。
まぁ、誤解を解く意味も込めて。

午後8時、だいぶ人気のなくなった駅の構内を、白い息を吐きながら紗希は一人で歩いていた。
しばらく歩いたころ、後ろから足音がした。・・・・・振り返るが誰もいない。
不安になった紗希は歩く足を速める。・・・だが、その足音は付いてくる。
振り返った紗希が見たものは、鈍く光を放つ金属製の大きなものだった。
頭を激痛が走った後、紗希は気を失った。

いつの間にか眠っていた。
その手に携帯電話を握りしめたまま、気が付いたら朝を迎えていた。
頭の奥に鈍く凶器の感触が残っていた。
俺は無意識のうちに、伊藤に電話をかけていた。
「おぅ。おはよう直樹くん。どうした?」
眠そうな声だ。きっと、未解決の事件の書類を山ほど抱えているのだろう。
「あの・・・夢で見たことなんではっきりとは言えないですけど、紗希が、誰かに襲われました。鈍器のようなもので殴られて、意識を失っています。あの、もし、俺の能力を本当に信用してくださるのなら、東町駅へ向かってくれませんか。たぶん、そこに紗希がいた証拠が残ってると思います。」
俺がこのことを伝えたと同時に、若い男の声が受話口の向こうから響いた。
「伊藤さん!大変です。姪御さんが・・・に・・・・」
肝心の部分が聞こえなかった。だが、伊藤の様子を見ればわかる。
またしても、俺の夢は当たってしまったのだ。
「とりあえず、君はそこから動くな!いいね。あとで迎えに行くから、それまで大人しくしているんだよ。」
とだけ伝えると、電話を切ってしまった。


戸川紗希は、暗い部屋の中で静かに目を開いた。
身体に幾重にも巻きつけられた縄が、行動の自由を奪っていた。
口には猿ぐつわを噛まされているため、声を発することはできなかった。
部屋の隅にあった椅子に、一人の男が腰かけていた。
「中岡大介」だ。殴られて意識を失う前に、一瞬だが顔を見たのだ。
私は、出せないと分かっていながらも声を発してみた。
出てきたのは「うぅ・・・」と言ううめき声だけだったが、中岡はそれに気づいた。
中岡はパソコンで何やら作業をしていたが、その手を止め、近くに置いてあったナイフを手に取り、近寄って来た。

中岡の突き付けたナイフが、冷たく光った。
「ようやく目が覚めたみたいだねぇ・・・・。戸川紗希ちゃん。ずっと探していたよ。」
中岡は、その生温かい吐息が私の顔に触れるほどに接近していた。
「どうして、何の罪もない君がこうして監禁されているか分かるかい・・・・?」
だいぶ、目が慣れてきた私が見たものは、衝撃的なものだった。
壁一面に張られた裸の女性の写真。・・・・そして、肉片の山。
女性の腕や脚が、ホルマリンのような異臭を放つ液体の中に大切そうに保管されていた。おそらく、写真の女性たちのものなのだろう。
・・・・・あまりの恐ろしさに、悲鳴も上げられなかった。
そんな様子を、中岡は高笑いしながら見ていた。・・・・・喜んでいる。
「なに。そんなに怖がらなくってもいいよ。「加嶋玲子」を殺した本当の理由は、別に合コンの誘いを断ったからじゃないんだ。本当なら、君みたいに監禁して気の向くままに遊んだあとに殺してやりたかったんだけど、あいにく気付かれた。・・・・だから、諦めたんだ。惜しかったなぁ・・・。彼女は、きっといいコレクションになったのに。僕にはね、子どもが出来ないんだ。子孫が残せない。だから、これまで、僕のタイプの女の子を見つけては声をかけたり、襲ったりしてここに連れてきていたんだ。
そのあとは、彼女たちと思いっきり遊ぶのさ・・・・・・。そうやって彼女たちと遊んだあとに、殺してバラバラにする。その時の彼女たちの表情が堪らないんだ・・・・・・。」
この人は、自分の欲求を満たすためだけに「加嶋玲子」を殺したのだ。
そして・・・・自分もこの人の欲求のために殺される。
恐怖より、失望が大きかった。
この人のやったことは、ただの殺人よりも性質が悪い。

助けて・・・・・直樹。
心の中で、直樹に助けを求めた。
いつだったか、小さい頃、川で遊んでいて溺れた時に「もうダメだ」と思いつつも心の中で直樹に助けを求めていたら、本当に直樹が助けに来てくれた。
その時の事を思いだしていた。



中岡の生温かい吐息が首筋を舐めた。思わず、背筋がゾッとした。
「ふふふ。楽しんでるねぇ・・・・。」
中岡はそう言いながら迫ってくる。中岡の手が、私の身体に触れた。

・・・・・私は、こんな男に遊ばれて終わるんだ。
こみあげてくる絶望の中で、そんな事を思った。
もう、助からない。私は・・・・死を覚悟した。

「いい加減にしないと、本当にぶっ飛ばすぞ。」
紗希の視線の先に立っていたのは、懐中電灯を片手に握りしめた直樹だった。
中岡は、面倒くさそうに顔を直樹に向けた。
「ガキ。さっさと失せろ。」
中岡は、ナイフににじり寄りながら言った。
「うるせぇ!お前の方こそ、いい加減あきらめたらどうだ!」
直樹の怒号が飛ぶ。
中岡は、ナイフに飛びつき、直樹めがけて突進した。
次の瞬間、中岡は何かに躓きバランスを崩し、地面に倒れこむようにして転んだ。
遠くに、パトカーのサイレンが響いていた。
直樹は中岡に飛びかかり、出来るだけナイフを中岡から遠ざけるようにした。
中岡は暴れて抵抗し、直樹は三度も顔を殴られた。
・・・・でも、ここで手を放したら二人とも命はない。
その思いが、痛みに呻く直樹の身体に活力を与えていた。
中岡の四度目の拳が、直樹の鳩尾に入った。
・・・・これには耐えられなかった。
直樹は横倒れになり・・・・形勢逆転になってしまった。
中岡が直樹の首をきつく締めている。
遠のいていく意識の中で、何かおぞましいものが中岡に迫ったのを見た。


目が覚めた時には、病院のベッドの上だった。隣のベッドには紗希が寝ていた。
俺の両親は、伊藤さんから事情説明を受けていた。
「まったく・・・君って子は。本当に無理をするんだから。龍起が、「足のない女の亡霊」が東町駅北口倉庫に行けと言っている。と電話で伝えてくれた。きっと、「カシマさん」は、君の事を助けたかったんだろうな。犯人を見つけてくれたから・・・・・・。それに、駅の構内に紗希のケータイのストラップが落ちていた。」
事情説明を終えた伊藤は、俺のベッドの横にあったパイプ椅子に腰かけるなり言った。そして、そのストラップを見せてくれた。人気アニメのキャラクターのストラップだった。
「あの・・・あのあと中岡はどうなったんですか?」
気になっていることを聞いた。
「ぅん?・・・あぁ。俺たちが到着した頃には、あいつは死んでたよ。ものすごい顔してね。紗希が、「足のない女の亡霊」が中岡を殺したのを見た。それの五分前には、龍起から、「足のない女の亡霊」が、そっちに向かった。
って言う連絡があった。まぁ・・・・、後味は悪いが、これで事件は一件落着・・・って訳だ。」
伊藤は、たばこを咥えながら言った。
「叔父さん。ここは禁煙でしょ?」
よく通る優しい声・・・・・紗希の声だ。
「おぉ。そうだったな。咥えただけだ。」
そう言って伊藤は、火も点けていないたばこを、持っていた携帯灰皿で潰した。
「直樹・・・・ありがとう。来てくれるって、信じてた。」
紗希の目は、しっかりと俺を見つめていた。
俺は、顔が赤くなるのが自分でも分かるくらい真っ赤になっていた。
それでも・・・・紗希のことが愛おしかった。
「言えない一言」が、今なら言える気がした。
「紗希の居場所を、「カシマレイコ」が教えてくれた。犯人を見つけることに手を貸してくれたから・・・って。私の足が、どこにあるかを見つけてくれたから・・・・って。俺さ、なんか、すごい申し訳無いことしたな。別に、俺はお前に対して怒ってないよ。むしろ、今の俺には、お前が必要だと思う。なんと言うか・・・・・お前のことが好きだ。」
やっと言えた・・・・。
俺の心から、何か重たいものがスッと抜けた気がした。
紗希は、穏やかに微笑みながら頷いた。
「私も、直樹のこと好きだよ。」
そう呟いて・・・・・・。

紗希・・・・お前には言えなかったけど、紗希と別れた後、俺も俺なりに調査を進めてたんだ。それでね、東町駅の構内の下で、「加嶋玲子」のものとみられる二脚の足を見つけたんだ。伊藤さんにそれを調べてもらったら、それはやっぱり「加嶋玲子」のものだった。そして、その日の夜にも「カシマレイコ」の夢を見たんだけど、彼女は微笑んでた。
「やっと、天に昇れます。」ってね。そのあと「カシマレイコ」は、俺にお前の居場所を教えてくれた。そして、俺たちを中岡から救ってくれたんだ・・・・・・。
「斉藤あかね」は中岡の従兄弟で、中岡の犯行を知りながらも悠々と生活していたらしい。きっと、彼女もいつ警察にこのことがバレるかビクビクしながら生活していたんだろうな。それと・・・梨紗には、彼氏ができたんだって。これから二人が、幸せになってくれたらいいね。

それは、寒いけど温かい、雪の降るクリスマスの夜のことだった。

<おわり>

後書き

今回、ついに直樹が紗希に告白しました!本当は、告白はもう少し先延ばしにするつもりだったのですが、なんとなく展開上、告白させなきゃならない状況だったので、ここで思い切って告白させちゃいました。直樹の告白シーン、そして、紗希の緊迫シーン。それぞれ、楽しんでいただけたでしょうか?今回、この章で「伊藤刑事」と「鈴木梨紗」と言う、二人の新キャラクターが登場しました。この二人は、この後の物語にも関与してきます。これから、もっと登場人物は増えていく予定ですが、一人一人を個性的に描けるように、頑張りたいと思います!!

この小説について

タイトル 都市伝説 第三章 〜カシマレイコ〜
初版 2009年9月21日
改訂 2009年9月21日
小説ID 3502
閲覧数 1878
合計★ 4
かっぱの写真
駆け出し
作家名 ★かっぱ
作家ID 583
投稿数 3
★の数 28
活動度 301
初めまして!お目汚しとは思いますが、精一杯書きました。読んだら、感想をください。お願いします。

コメント (3)

★せんべい 2009年9月21日 13時35分30秒
始めまして、せんべいと言います。読ませていただきました。

作品は、都市伝説らしい、不気味な雰囲気がよくあらわされていてとても深く物語に入ることができました。
しかし僕自身の勝手な感想なのですが、都市伝説とはまた別に違うストーリーを作らない方が読みやすかったかなーと感じました。
他の方はどう思うかわかりませんが、都市伝説1本に絞った方が、もっと世界観がにじみ出るような、不気味な作品になったんじゃないかなーと思います。

1・2話は読ませてもらっておりませんが、きっとこの都市伝説とは別のストーリーがなければ物語は進行しないのだろうかと思いますので、ただのチープな意見だと思ってもらって結構です。


僕も現在怖い話的なものを書いておりますので、かっぱさんの作品を読んでみて、それをまた活かしてみようかと思いました。
なにか自分に足りないものが隠れている気がしましたのでw

では、失礼します。
★ぴかちそ 2009年9月21日 15時11分06秒
こんにちは。
小説家(仮)のぴかちそです。
ストーリー的な事は言わない様にしていますので(自分が下手なため)
分法的な事を言います。


文頭は開けるのが正しいのですが、皆さん空けてませんね……(汗
まあ、ここは別に良いでしょ。


気になったのは、「…」これですね。


・・・このまま使うのは小説的に良くないです。
…こっちに変換しましょう。「三点」で変換、又は「・・・」で変換すると出て来ますよ。


あと、…は偶数個繋げて使いましょう。「……」こんな風に。


それと、惜しいなと思ったのは、

「やっと、天に昇れます。」

ここ!
この分の最後にある「。」
はいらないんです。

だから書き直すと、
「やっと、天に昇れます」
これが正しい。


まあ、小説ではですので、間違っても作文では使わないように……。
なぁなぁ♪ 2013年7月30日 10時28分54秒
物語読ませて頂きました。
なんか、読むまえとってもドキドキしました。
でも、私はとてもよい物語だなぁと思います。
もっともっといろいろ書いていって下さい。
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