大塚陽一日記。 - 10月10日in10月10日(晴れ) 写生会の日

大塚陽一日記 10月5日。(晴れ)


 ピリリリ・・・・・・
 目覚まし時計が鳴り響く。
 ポチ。
 それを右手でもぞもぞ動く誰かが止めた。
「あ〜・・・・・・」
 とても、というか今にも死にそうなか細い声で少年は言う。
 だが、「いかにも死にそうだな」なんてツッコミをしてくれる誰かはいない。
 その少年1人きり。だ。
 今日は10月5日。
 体育祭が終わってあっという間に10月だ。
 騒がしかったあの頃は終わり、皆いつものペースに戻ってきている。
「陽一〜? 起きなさーい」
 下のほうから母親らしき人物の声が聞える。
 だが。
「・・・・・・」
 起きる様子は、なし。
「陽一!」
 バンッ!! と扉が開かれる。
 しばらくなっても1階に下りてこないので、上までわざわざやってきたのだ。
「起きなさいー」
「あ、ああ・・・・・・判ってるって・・・・・・」
 陽一はまだ弱弱しい声でそう返事する。
「もう」
 母親は腰に両手を当ててあきれ果てた。
「早く来るのよー?」
 そういい残した陽一の母は、パタムと、今度は優しくドアを閉めて出て行った。
「・・・・・・ああ、もう10月だ」



「おーす! 大塚」
「ああ。おはよう」
 朝学校に着くと、真っ先に新田が挨拶してきた。
 クラスは違うが仲がいい2人。
 いつも新田は元気だなぁ・・・・・・陽一は思う。
「そういやさ、今日って写生会だったよな」
 あ・・・・・・と間抜けな声を出す。
 すっかりと言っていいほど写生会のことを忘れていたのだ。
 自分の好きな場所を、ただ描けばいいだけ。
 それだけなのだが・・・・・・
「・・・・・・俺、休んでいい?」
「学校にもう着いてるのに何言ってんだよ・・・・・・」
 新田は呆れて半目で返した。
 大塚陽一。
 高校2年生。
 得意:体育全般。特に走ること。
 苦手:絵を描く事。
「ああ・・・・・・あれはもうアウトだ。始まる前から」
「お前・・・・・・まぁ描けばいいのさ、描けば!」
 新田が複雑な心境で慰める。
 が、陽一は有難うと苦笑いしてため息を付いた。
 ダメじゃこりゃ・・・・・・新田は思うのだった。
 
「えー、皆さん知ってのとおり、今日は写生会です。好きな場所を好きなように写生してください」
 2年生全員が校庭に集まって教師の話を聞いていた。
 今回写生するのは、学校の何処でも。
 自分が描きたいと思った場所を自由に描けばいいのだ。
「よーいち! 元気かぁ?」
「あ、ああ。新田・・・・・・」
「元気じゃないぽいな・・・・・・」
 2年生全員なのでクラスが関係なし。
 なので陽一は新田と描く約束をしていた。
 約束はしたものの。
 本人全然乗り気じゃない。
「まぁ頑張ろうや」
 新田の慰める姿はまさにかいがいしい・・・・・・。
「ああ・・・・・・頑張るよ」
 力なく返事た陽一を連れて、新田は校舎裏の方に向かった。
 通称北高。学校の作りは校門から見てH型。
 3階まであり、1・2・3階と中央廊下がある。
 奥のほうにはプールに体育館である。
「まさに写生日和」
 新田が呟いた。
 空は晴れ、白い雲は流れる。
「大塚、ここらで描くか?」
「・・・・・・そうだな」
 陽一は同意して地面に座り込む。
 校舎裏は特に何もない。
 駐車場があり、数本木が生えてたり。
 それ以外は特に。
 でも、新田と陽一がここを選んだのにはちゃんと訳がある。
 ここは、2人が始めて最初に出会った場所だ。
 
 今日は写生会だった。
 絵が不得意な俺からすればどんなできになるかは目に見えている。
 それでも描かなくちゃいけないけど。
 校舎裏は日が当たらない。
 その為寒い。
 冬なんか来たくない。
 10月はギリギリ・・・・・・アウトか、セーフか・・・・・・。
 それにしても、自分の絵を見るとげんなりする。
 まさに誰が見ても「下手」の一言だと思う。
 これを上手いと言ってくれたなら、俺はその人を一生忘れないだろうな。

「んで大塚君よ?描けてる・・・・・・?」
 隣で写生していた新田が尋ねて来た。
「見ての通り、微妙だ」
「あはははは。いつ見ても・・・・・・まさに天才的な絵だ」
 新田は大笑いして腹を抱えこむ。
「毎度毎度笑われるから絵は嫌なんだよな・・・・・・」
「違う違う! 良い意味でだよ、あはははは!」
 ・・・・・・。
 良い意味と言われても素直に喜べるわけあるか!!
 陽一は思った。
 絵のレベルで言うと新田は上手いレベルにも下手なレベルでもない。
 つまりは“微妙”な絵。
「お前も人のこと言えないだろ」
「いやいや、君には負けるよ陽一君」
「ムカツクなぁ・・・・・・」
 2人の会話を聞くものはいない。
 だが、この時間は2人の記憶にちゃんと刻まれている。
 傍観者などいなくても。



「皆さんお疲れ様でした。絵は来週までに提出してくださいねぇ〜」
 先生がまた校庭で話をしていた。
 写生会は無事終了。
 陽一と新田も何とか描き終えた。
「では解散」
 ぞろぞろと2年生全員が昇降口に向かう。
 その中、陽一と新田はのろのろと皆の後を歩いている。
「疲れた・・・・・・」
「お疲れさんっ」
 パンッと新田は陽一の背中を叩く。
「ははっ・・・・・・」
 陽一は少し照れくさくなって顔を隠した。
「んじゃま・・・・・・掲示されるまで普通の生活に元通りだな」
「・・・・・・そうだな」



10月10日。(晴れ)

 掲示されるまでの数日間。
 俺たちはいつもどおり過ごして、いつもどおり学校に通った。
 そしてとうとう、今日写生会で描いた絵が飾られる。
「うわー・・・・・・人多いな」
「そりゃそうだろう」
 当たり前のことを話している2人。
 陽一は辺りを見渡してみんな上手いなぁと思う。
 そして見渡すうちに自分の絵を見つけ、それにふと近づく。
 (ああ・・・・・・相変わらず下手な絵だ・・・・・・)
 自分で呆れてガクンッと落ち込む。
「貴方もこの絵が好きなの?」
「へ?」
 陽一が自分の絵の前でへたれこんでいると、隣に髪が長くてポニーテールの 青髪の少女が現れる。
「私もこの絵が好きなのよ。1年生の時の写生会のも気に入ったわ。でも、この 大塚陽一って誰だか判らないのよね」
「好きって・・・・・・この絵が??」
 陽一は本気で驚く。
「え? ええ、そうよ?」
 その質問をしたのが陽一本人とも知らず、少女は淡々と答えた。
 一方陽一は唖然。
 自分の絵の何処がいいのか聞きたいくらいだ。
「あ、私木村瑠璃。よろしく」
「あ、ああ・・・・・・よろしく・・・・・・」
 陽一はつい自分の名前を言うべきか迷ってしまった。
「それじゃ。また会えるといいわね」
 木村は別に名前を言わなかったことを気にしていないみたいで、せっせと行ってしまった。
「大塚〜!」
「あ、新田・・・・・・」
「さっきの子誰?」
「・・・・・・さぁ」
「?」
 新田は怪訝そうな顔をして、後に帰るぞ?と言った。
 大塚は頷いてその場を去った。
 あの少女にもう一度会いたい。
 そう思いながら。


「瑠璃、誰と話してたの?」
「ん? ちょっと気になる人」
「え? 何!? 恋ですかっ!!?」
 瑠璃の友達が興奮してその場で所構わず叫ぶ。
「違うわうよ。そういうのじゃないから」
「えー・・・・・・つまんない」

 今日この日が、俺と彼女の出会いだった。

後書き

お久しぶりです。
春華です。

なんかまた書いちゃいました。
お楽しみいただけたら幸い・・・です。
今回ちゃんと小説のルールにそって書いてみました。
知ってたくせにぶっとうしで無視してた五月です(笑(オイ
いやーなんかルールを守るとなると面倒で(オイ

この小説について

タイトル 10月10日in10月10日(晴れ) 写生会の日
初版 2009年9月22日
改訂 2009年9月22日
小説ID 3507
閲覧数 988
合計★ 2
五月の写真
作家名 ★五月
作家ID 497
投稿数 60
★の数 166
活動度 11432
一言・・・・・・頑張ります。

http://simotukiharuka.blog.so-net.ne.jp/
自分の小説ブログです。
ここに載せた小説についていろいろ書いてます。

コメント (2)

★ 2009年9月22日 21時37分20秒
おーーーーーーす!
久しぶりでーす。
丘でーす。
では、感想を。
ただの日常的な作品なのにとてもおもしろく感じました。
五月さんには日常的描写を書くセンスを持ってらっしゃるのではないでしょうか。
すみません、短いですか終わりにしたいと思います。
では。
★五月 コメントのみ 2009年9月23日 10時31分54秒
丘さん>またまたありがとうございます!
もう丘さんには感謝しても仕切れないぐらい僕の駄作を読んでもらって・・・(嬉泣

自分的に日常編はとても自分向いてないと思いました!
そういってもらえると新鮮な感じでありがたいです。

いえいえ、毎度毎度有難うございます^^
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