ハングリーポエマー・サトミ


居間でゴロゴロしてたら、目が輝いてる……と言うか目が光ってるアネキが居間に駆け込んで来て一言。

「愚妹! アタシの詩を聴けい!」

「あ、ねーちゃん、新作が完成したんだね!」

「うん、自信作よ!」

「じゃあダメだね」

「なんでじゃー!」

「こぶっしゅ!」

殴られた。いつもの事ながらハイだ。新作仕上がり後は大体こんな感じ。

「タイトルは……『褐色の大御所』!」

「おお、凄そう!」

「フフ、目を見開いて聴きなさいな」

目を開いても聴くのには関係ないよね、というツッコミは入れずにおいた。いやっほう私ってオトナ!

「ゴホン、……



  『大和撫子! と叫んでデイビッドが駆ける

   その速さ、通常のザクの3倍なりけり……

   旋律に乗り、言の葉は紡がれる

   人間五十年、命短し恋せよ乙女、下天のうちにくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり

   衆生問う、奴は何者ぞ

   大御所、答えて曰く

   なんとした事、あれはわしのワイフに違いない

   星あり、赤くして芒角あり、東北より西南に流れ、そして爆発!

   黒く焦げた大御所は美しい、まるで調理済みの北京ダックのように

   高樹、悲風多し』



 ……、どうだった?」

「凄いよねーちゃん! いつもの事ながらその才能が怖い(いろんな意味で)!」

「ハハハ、当然ですとも」

「流石はねーちゃん……いや! これからはアニキって呼ばせて!」

「ナオンに向かってアニキとはなんだ愚妹−ッ!」

「ぷっぺらっ!」

張り手が飛んで来た。痛い。あとナオンという言葉に底しれない何かを感じる……気がする。

「書き留めておいたよ、詩」

「別にアタシがもうノートに書いてるんだから必要ないのに」

「いやあ、ねーちゃんの輝かしいポエムを書き留めておくのは妹の責務でしょ?」

「どういたしまして愚妹! 流石気は回らないけど気が効くわ!」

どっちだ?

「でも分かってると思うけど、誰にも見せないでよ」

「分かってる分かってる。誰にも見せないから」




……と言いたいところだが、勿論嘘だ。

私はアネキの詩を小脇に抱え、所属する部へ向かう。

流石に実名を出すのはアネキが可哀想+私が可哀想なので、アネキの名は伏せて、私とコネがある新進気鋭ポエマー『サトミ』さんからの詩という事で毎回発表している。

「部長、副部長ー! 『サトミ』さんから新しい詩が来ました!」

「全員集合ー!!」

とまあ、こんな感じだ。

「『サトミ』さん……今回はどんな詩を……」

「見れば分かる! ……」

「どうだ副部長?」

「こ、これは……うおお脳に血が回る! 分かったぞーッ!!」

「何がだ副部長!」

「この詩に込められた深遠なメッセージがさ、部長!」

「どういう事だ?」

「デイビッドとは旧約聖書のダビデを指し、ザクは当然宇宙時代を指すものと考えられる」

「うむ……」

「そしてそのリズムに乗って織田信長が愛好した幸若の『敦盛』、それに織り込まれた『命短し恋せよ乙女』の語句」

「そして?」

「そして生命総てを指す仏教用語の『衆生』、前将軍を表わす『大御所』、……ここまでは総てを内包する大いなる存在の事を暗示しているに違いない」

「なるほど……」

「そしてダビデの言葉として『大和撫子』、大御所の言葉として『私のワイフ』」

「それはどういう事なんだ」

「まだ焦るな。……この『爆発』というのは『星』の爆発と考えていいだろう。それは何を意味するのか?」

「うむ?」

「『北京ダックのように』『黒く焦げた大御所』、これは肉体的な表現とは限らない。『調理済みの』北京ダックというのは当然食べられるという意味だ」

「つまり……」

「食材的な意味とも限らない。最後に添えられた『高樹、悲風多し』の一句……高い樹は兎角風当たりが強い……これから察するに!」

「ぬう!」

「さっきの『大和撫子』『私のワイフ』と絡めて、これは捨身思想を表わし……星、即ち宇宙的な意味での広汎な愛を指す!」

「なんと!」

「つまりこの詩は……全宇宙の記録にも繋がる、壮大な愛がテーマだったんだよォーっ!」

「そ、そーなのかァー!!」




「ねーちゃん!」

「ん? どした妹?」

「分かったよねーちゃん! ねーちゃんの言いたい事が! 『言葉』でなく『心』で理解できた! あの詩には凄い意味が込められていたんだね!」

「詩って……ひょっとして昨日発表した奴?」

「勿論!」

「ああ、あれ。あれは一夜明けて見直してみたら、今一つだったから捨てといたわよ。自分でも意味分かんなかったし」

「……あ、そう」



アネキはいつも大体こんな感じです。

でもそんなアネキが面白怖格好よくて大好きです!

後書き


嘘だッ!!

この小説について

タイトル ハングリーポエマー・サトミ
初版 2009年9月28日
改訂 2009年9月28日
小説ID 3519
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W.KOHICHIの写真
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