人を紡ぐ物語 - 誰よりも明日を求める少女の話






世紀末のさなかに
薄ら寒く
少女は世界の中にたたずんでいた。

きっと私は必要ない子

そう思いをはせながら
今日も少女は道を歩いていた。




「ねぇシュレストリアス、どう思う?」
「そうだねぇ。きっと仲良くしてくれると思うよ。」

シュレストリアスは笑う。
ああ、彼はやっぱり私の良き理解者だと思った。




少女はどこに行くべきか悩んでいた。
信じていた人に裏切られ、
自分の存在を見失いかけ、
でも、それでも、少女は、
また誰か人を信じようとしていた。

心の奥底で、自分では気付きたくない。
そんな浅ましい考えに、
少女は自分の首を絞めつけていた。




「よし、それじゃあシュレストリアス。行こう。」

手を差し出すが、彼は手をとろうとしなかった。
それどころかその場から動こうともしない。

「キミ一人でいくべきだよ。」
「どうして」

突然言われて驚く。
なぜ私一人だけで行くのだろうか。
口下手な私一人で、少女の目の前にでるなんて
とてもじゃないができない。

「不安でたまらないって顔だね。でも、キミじゃないと駄目なんだよ。」
「……失敗しても、怒らないかい」
「うん、怒らないよ。それが結果なら仕方が無い。」

シュレストリアスは、
やっぱり、私の良き理解者だと思う。
きみを選んで良かったと告げて微笑んだ。

「ボクもキミに選ばれて光栄だよ」

私は、少女の道の途中に降り立った。






   Episode1  誰よりも明日を求める少女の話






少女は当ても無く、
ただ続く道をとぼとぼと歩く。
ふと、道の先に誰かが立っているのが見えた。
いつものように、少女は顔を伏せて通り過ぎようとした。

「ねぇアリエストレラ。キミは何故、下を向くの」

突然、関わらないでおこうと思った誰かが声を放つ。

「え…」
「アリエストレラ、どうして」

どうやら自分のことらしいと分かる。
だってそこには、自分以外の人はいないからだ。

「私、アリエストレラって名前じゃ、ありません」
「どうして下を向いて歩くの」
「…こ、怖いから、です」

久しぶりに声を出したから、声が掠れていた。

「私も怖いかい」

意を決して、相手を見たところ、髪は長く、
けれど男か女か分からないのは、髪の毛のせいで顔がよく見えないからだろうか。
声は低すぎず高すぎず、
まるでまだ成長途中の、まさに自分と同い年ぐらいであろう。

いでたちは、灰色のフードつきのコートのようなものを羽織り、
中には真っ赤な長袖、ズボンはまるで晴れた空のような、蒼い色の長ズボンだった。

「アリエストレラ」

その奇妙ないでたちに思わずしばらくボーッとみてしまっていたようだ。
目の前の彼(一応“彼”としておこう)に呼ばれてハッとする。

「あ、あ、ご、ごめんなさい。ごめんなさい。」
「私も怖いかい」

そう問われて、そういえばそんな質問をされていたと思い出す。
今まであってきた人達はどこかよそよそしくて
自分の事を守ってくれると言い、最後には斬り捨てるような人ばかりだった。
でも目の前の彼は、その奇妙ないでたちの所為か、
不思議と警戒心はなくなっていた。

「良かった、怖くはないんだ。アリエストレラに嫌われたくないからね」
「あ、わ、私は、その…」
「私のつけた名前は嫌かな」

ほとんど表情は読み取れないが、
なんとか見える口元で、少し不安そうなのが分かる。

「アリエストレラ、───明日を欲す者。」
「え…」
「どう。私が今考えたんだ。」

微笑んだと思われる目の前の彼は、急に少女の手をとった。
いつもなら怖くて振りほどくのに、なぜか振りほどけなかった。
それは彼の手が微かに震えていたからだ。

「私の名前は、#8@13い1fh%&…」

よく聞き取れない。
まるでノイズがかかったように、彼の声はたとえるならば、
そう、文字化けしたかのようだった。
彼はあれ、と呟いた。

「ああ、ごめん、まだ教えるべきではないみたい」
「ど、ど、どういう、い、意味…」
「そんなことよりさ。私と行こうよ。この道の先に行きたいんだろう。こんな寂しい道を一人で歩くより、シュレストリアスと私と一緒に行ったほうがきっと楽だよ」

少女は突然出た新たな名前に首を傾げる。
それに気付いたか、

「シュレストリアスはね、───世界の理解って意味。…私の、大事な人だ。」

突然吹いた風が、目の前の彼の髪の毛をなびかせる。
見えない顔の下にやはり好奇心がある。
けれど、見えたのは、

「あ…」
「ん、もしかして、見たの。」

彼の目は光が宿っていなかった。
それどころか少女を写してさえいなかった。

「私には、シュレストリアスがいないと、困るんだ。ずっとずっと何年も本物に出会えなくて悲しい思いをした。けど最近、やっと、本当の彼に出会えた。ねえアリエストレラ。キミは本物だよね。私と一緒に、歩いてくれるよね」

少女は見えないと分かっていながら、こくりと頷く。
目の前の彼が、どうして分かったのか、じゃあ行こうと手を繋ぎ直した。
彼の手はまだ震えている。




私はどうして頷いてしまったのだろう。
この人のどこに信頼したのだろう。
それは、きっと、彼が私を気遣い、話しかけたセリフが
初めて仲良くなった友達にかけてもらった言葉と同じだったからかもしれない。
私はまだ信じていたいのだ。
友達を

ふとした疑問。
私はハッと顔をあげた。

「まって、お願い、聞かせて」
「どうしたの」
「最初に私が歩いてきたとき、どうして私が下を向いて歩いているって分かったの」

見えないのであるのなら、最初の私も見えないはずだった。
俯き、逃げるように歩いた自分に気付くはずなどないと思ったから聞いたのだった。

「私にはキミたちには普通に、当たり前に見える道が見えない。私は、キミ達も、空も海も太陽も月も、宇宙の彼方も、地球の生命の誕生も、何もかも見えるのに、私が歩く道だけが見えない。だから一緒に歩いてくれる人が必要なの。だからキミを探していたの。アリエストレラは明日を欲す者。きっとキミや、そのほかのまだ見つかっていないみんながいれば、…きっと、怖くて歩けない私の道を、みんなと一緒なら歩けると思ったから」

彼は私の頬に手をそえる。

「もしキミが私を信じなくても、それでもいい。私はキミを信じるから。私には、キミたちが、本物だから。」

何も言えなくて、立ったままになる。
少しの静寂、彼がまた口を開く。

「さあいこう。シュレストリアスが待っている。」

きっと彼なら、次こそは裏切らないであろうと希望を抱き、
いつの間にか着陸していた大きな船へと乗り込んだ。




 

後書き

彼女の話は後々。
よくわからない感じの話とか、詳しい話とかごちゃまぜになると思います。
苦手な人にはすっごい嫌いな意味不明系かもしれません。

この小説について

タイトル 誰よりも明日を求める少女の話
初版 2009年10月6日
改訂 2009年10月6日
小説ID 3541
閲覧数 633
合計★ 2
佐藤みつるの写真
ぬし
作家名 ★佐藤みつる
作家ID 510
投稿数 36
★の数 185
活動度 4932
だらだら社会人やってます。
本(漫画・小説)の量が半端なさすぎて本棚がぎちぎちになってます。

コメント (2)

★ 2009年10月8日 16時06分01秒
どうもです。丘です
では、感想を。

うん。何だか優しい感じのする内容ですね。

SFの作品は僕の疎い分野ですが、続きを読みたいなって気持ちになりました。

拙い感想ですがお許し下さい。

では。
★佐藤みつる コメントのみ 2009年10月9日 0時44分41秒

>丘さん
こんにちは!感想だけでなく評価もつけてくださってありがとうございます!!
その場その場で考えて書いているのでまとまりのない(つかみどころのない)文章ではありますが、優しい感じのする内容と言っていただけて嬉しいです。
ジャンル指定のとき、SFかどうか少し悩んだのですが、宇宙船などもでてくるので一応SFの区分にしてみました。
私自身もあまりSFには詳しくないのですので、そこまでSF色の強い作品にはならないと思います。
続きを気にしていただけて嬉しいです!なるべく途切れることの無いように続きを頑張って書いていこうと思います。
前作のSSでもコメントをいただき、本当に嬉しかったです。
コメントをいただけるだけで気持ちが上昇します!
本当にありがとうございました!
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