Their trip - 第系叩Ц知らぬ少女

第系叩Ц知らぬ少女


 僕が、いつものように海岸沿いを歩いてる時だった。
 1人の、白いワンピースを着た少女を見つけたのは―――。

 其処は、どこか小さな町だった。
 町の直ぐ傍には海があり、夏はそこが賑わって、まさにその町の嬉しいとこの1つ。
 今の季節は春で、海に入るにはまだ早い時期。
「ジード! ジード〜!?」
 高い女性の声が、とある少年の名を呼んだ。
「なに〜?」
「ちょっと手伝って〜!」
 少年がひょいっとイスから下りて、自分の部屋の扉を開け、階段を下りて1階に向かう。
「どうしたの?」
「パン、パン。ちょっとラオルさんに届けてくれない?」
「んー、判った」
 僕の家はパン屋で、町では結構評判だった。
 たまーにだけど、今日みたいに忙しいときはよく手伝ったりする。
 だいたい配達だからね。
「ラオルさ〜ん! お届けものです」
「ほーい。お? お前が来たってことは・・・・・・」
 扉が開くと同時に、ラオルという20歳前後の青年が出てきた。
「はい」
 少年はラオルに紙袋に入ったパンを渡した。
 青年はありがとよ、お礼を言ってと受け取って、じゃまた宜しくな〜と扉を閉めた。
 配達終わり。と少年は階段をジャンプして、自分の家へ向かおうとした。
 が、その場で足を止めた。
「・・・・・・・・・」
 いつもの、海が見えた。
 小波が聞える。
「ちょっと、言ってみようかな」
 少年はただなんとなく、気分的に海の方向へ足を走らせる。
 海はザァァといつものように波音を立てていた。
 自然というものは、唯眺めるだけで心が落ち着いたりする。
 きっと、それは気のせいじゃない。
「あれ?」
 今はまだ春。
 海に入るにはまだ少し早い季節。
 なのに、その海に入っている少女がいた。
 正確には、その白いワンピースの丈が濡れない程度のところまで足を突っ込んでいた。
 ここら辺では見かけない、ちょっと変わった雰囲気をした少女だった。
「君、何をしてるの?」
 不意に、少年は少女に尋ねた。
「・・・・・・・・・」
 やはりいきなり知らない人間に尋ねられても答えない。
 話そうともしないだろう。
 常識的に考えてそうだが・・・・・・。
「お前」
「え?」
 すると、その常識をすぐさま破って少女から少年に話しかけた。
「名前は?」
 ・・・・・・・・・いきなり尋ねてきたのは、名前だった。
 確かに人は最初に初めまして、その次に名前かもしれないが・・・・・・。
 唐突するぎる気もした。
「えと、ジー・・・・・・ド」
 ジードは馬鹿正直に見知らぬ少女に普通に自分の名前を教えた。
 まさに聞かれたら答えなきゃ、とそんな言葉が脳内を廻っていたのだろう。
 少女はそれを聞いてボーと最初に戻り、喋らなくなった。
 ジードはハテナの文字を浮かべるばかりである。
「ジード、か。なら・・・・・・お前でいい」
「え? 何か言った?」
 ジードは少女が何か言ったような気がしたのだが、やはり答えてはくれないので気のせいだろうと考えた。
 ザァァ・・・・・・・・・
 波の音が少年と少女を見守るように音をたてる。
 だが、それは気のせいかもしれない。
「この町で私に話しかけてきたのはお前が始めてだ」
 少女の、まるでルビーのように輝く赤い瞳が少年を見つめる。
「そうなの?」
 ジードは親しい間柄のように目の前の少女と会話を進める。
「あ、君の名前」
「・・・・・・私は、ネル」
 ジードは正直、答えてくれないのかと思っていたのだが、少女はかなり小さく、呟くように答えてくれた。
 ネルは最近この町に来たばかりで、あまり町の中を知らないんだと言う。
 だから、海なら迷子になる事は無いといつもここにいたらしい。
 そしたら、偶然僕と出会った。
「ネルは、旅人なの? ここらへんじゃ見ないよね」
「そうとも言うかも知れないし、言わないかも知れない」
 僕は、ネルを町の中へ案内することにした。
 やはり彼女は見た目どおり不思議な少女だった。
 町のことはある程度知っていたが、日常で使う道具。
 例えばペンとかを知らず、不思議そうに眺めていたり、果物を知らず、食べたそうに眺めていたり。
「ええと・・・・・・これ下さい?」
「おうよ」
 果物や野菜、そういうものが売っているお店で、僕は彼女に(食べたそうだったから)じっと眺めていたリンゴを買って渡した。
「ど、どう?」
 僕は何故か恐る恐る聞いた。
「うん。美味い」
「そっか」
 シャリッとまたリンゴを一齧り。
 とても美味しそうに食べていた。
「・・・・・・・・・」
 ジードは少女がリンゴを食べている間、なんとなく彼女を眺めていた。
 シャリ。
 またリンゴを一口。
「なぁ」
 数分たって、少女がリンゴの4分の1を食べ終えた頃だった。
 少女の方から口を開き、ジードにこんな質問をした。
「ジードには、あの空が何色に映る?」
「え? 空・・・・・・・・・?」
 ジードは首を傾げて空を見上げた。
 さっきまでと変わらず、相変わらずの青を空は広げていた。
「僕は、青・・・・・・に見えるけど・・・・・・・・・・」
 ジードはそう応えると、ネルはそう。と小さく呟いて小走りになった。
 そして振り返ってこう言った。
「私には、あの空は青には見えない。・・・・・・とても、暗い、赤と黒その2つが混ざったような色に見える」
「・・・・・・・・・・・・」
 やっぱり、ネルは不思議な子だった。
 普通の人なら「不思議な」じゃなくて「変」って言うかもしれないけど。
 僕は変とは思わなかった。
 彼女がそう言うのには、何か深い意味があるような気がしたからだ。
「あ、ここが僕の家だよ」
「ジード、の・・・・・・」
 店の入り口の直ぐ脇には、店の宣伝用看板。
 祝日以外やってます! の文字。
 1階がパン屋で、2階が普通の自分達のマイホーム的な2階建てである。
 店の周りの花壇には春に咲く花が咲き乱れていた。
 そよそよと風に揺れて、とても楽しそうに会話しているように見えた。
 ネルは数秒ジードの家を眺めたかと思うと、入り口へとダッシュした。
「え? ちょっネル?」
 ジードもネルを追いかけ、自分の家のパン屋へと入る。
 店に入ると、ネルの手にはリンゴの芯だけが残っており、今度は“パン”を食べたそうに見ていた。
「あはは・・・・・・なるほど」
 ジードはネルとであってほんの1時間ほどしかたってないが、彼女がどんな人なのか少し判ってきていた。
「あら? ジード。随分と遅かったじゃない」
「あ。ごめん母さん」
 すっかり自分が配達途中だったという事を忘れていた。
「ラオルさんがまた宜しく、だって」
「ご苦労さん」
 ジードの母はそれだけ言って、はい。とジードに何かを渡した。
「何? これ?」
「さっきパン屋にいつも来てくれるお客さんが置いてったの。お菓子だってさ」
「ふ〜ん・・・・・・」
 ジードが紙袋の中を覗くと、見事にお菓子がビッシリだった。
「ははは、さすがに一日じゃ食べ―――」
 ジードが何かを言おうとしたとき、誰かの視線がSORE(お菓子)に向いている事に気がついた。
 言うまでもなく、ネルである。
「ネル・・・・・・? もしかして、お菓子も食べたいの?」
 ネルは黙って頷くと、両手にはどこかで見たことあるお盆に、どこかで見たことがあるパン。
 つまりは、パンも食べたいので“買って”という事である。
「何? ジード、友達?」
「あ、うん」
 ジードは苦笑いしながら母親に返した。
 そしてネルからお盆を受け取って、お菓子の袋を渡した。
 ネルは直ぐ様不思議そうにそれを眺めて、その中の1つを取り出し、ぱくっと一口。
 やはり美味しそうに食べている。
「はははは」 
 逆に微笑ましいジードであった。
「何? あんたがパン買うわけ?」
 レジに行くとジードの母にそんなことを言われた。
 普通の反応だろう。
「うん。彼女、この町に来たばかりらしく、何もしらないんだ」
「あら? じゃ、ちゃんと見ててあげるのよ」
 ジード頷いて、自分の母親からパンが入った袋を受け取った。
 そして入り口に向かうと、ネルが階段で待っていた。
「お待たせ」
 やはりネルは何も言わず、コクンッと頷くと並んで歩き出した。
 お菓子の袋は、それほど中身も減ってはいなかったが2・3個は食べたよう。
 そんなにお菓子やパン。果物が珍しいのだろうか? 
 ジードは歩きながら、お菓子やパンを美味しそうに食べる彼女を見て思った。
 それらを見たことが無い生活というのが、ジードには想像がつかない。
 最近この町に来たにしても、あるものは何処もあんまり変わらないはずなのだが。
 生活上。
「ネルは、何処から来たの?」
「・・・・・・ずっと遠い所」
 ネルは、それしか答えてはくれなかった。
 遠い所。
 アバウトすぎる答えで、僕にはそこがまったくどこなのか判らなかったが、彼女を見ていたら、それでもいいかと思えてきた。
 はむ・・・・・・。
 ネルはお菓子から今度はパンへ口を運ぶ。
 お菓子は、5・6個は食べただろう。
 だが、さすがに袋いっぱいに詰まったお菓子を食べきることはできない。
 ジードはネルがパンを食べている間、お菓子の袋を預かっていた。
 歩くたびにガッサガッサと袋が音をたてる。
「おいしい?」
 ジードは自分の家のパンを彼女が気に入ってくれたかと、少し不安げに聞いた。
 すると、ネルは頷いて、引き続きパンを食べ始める。
「そっか。良かった」
 ジードは微笑んで、ふと斜め前を見た。
 海が映った。
「海・・・・・・」
 呟いた時だった。
「海が好きか?」
「え? あ、うん。好きだね」
 突然話しかけられて、多少驚いたジードだったが、それだけは即答した。
 2人はそれから海沿いを歩きながら、会話をしたり。
 ネルはパンを食べ終わるとお菓子を再び食べ始めたり。
「・・・・・・それじゃ、僕的には楽しかったよ」
 そして、海に夕日が沈む頃。
 ジードもそろそろ家に帰らなければならない時間になった。
 残ったお菓子は、袋ごとネルにあげた。
 どうやらお菓子が気に入ったらしい。
「・・・・・・・・・・・・」
 ネルは何も言わず、ジードがじゃあねと言い、彼女に背を向けたときだった。
「また、会えるか?」
「――――うん」
 ジードは笑顔で、表情を変えないままの、無口な少女に返した。


 あれから数日。
 僕とネルは毎日のように海岸で待ち合わせをして、町の中を歩き回った。
 相変わらずネルは食べ物に目が無いようだったけれど、そんな彼女を見るのも、今となっては嬉しさになった。
 何かを美味しそうに(表情はあまり変わってないけど)食べている彼女は、笑っているように見えた。
 でも、やっぱり表情は変わってないけど。
「ジード」
「ん?」
 また、いつものように町の中を歩いている時だった。
 突然にネルがジードを服を掴んで足を止めた。
 彼女が指を指した方に目を向けると、そこはとあるフラワーガーデンだった。
「ああ、ここは、沢山花が咲いてて綺麗なところだよ」
 ネルはじぃ〜とそこを見つめる。
 ジードはそれを見て、行きたいの? と訪ねてみた。
 と、返事はイエス。
 コクンッと彼女は首を縦に振った。
 花も好きなのかな? ジードは思い、そのガーデンに入ることにした。
 そこに入ると、入り口にはバラがまきついたアーチ。
 奥に進むと、ガラスの、鳥かごのような形をした建物。
 そこに、植木鉢に植えられた花々が並べられていた。
 その建物の周りには長い花壇が。
 さすがに桜! というわけには行かないが、春特有の花が咲いていた。
「・・・・・・・・・」
 ネルは黙ってそれらを眺める。
 暖かな風が吹く。
 その風で、花達は揺れ、抜け落ちた葉っぱは舞った。
「花は、まるで幻想のよう」
「・・・・・・・・・・・・」
 ネルが、やはり突然口を開いた。
 慣れてしまったジードは黙って彼女、ネルを見た。
 ネルが、いつもより優しく、ゆるやかに呟いた気がしたのだ。
「げん、そう?」
「・・・・・・そう。幻想」
 この時、僕は彼女が言ったことが、あまり判らなかった。
 いつか、判るときが来ると良いな。
 そう、心から思った。
 その日からだった。
 彼女が僕の前に姿を現さなくなったのは。
 あの、最後の日――――。


「またね」

 
 彼女は、言った。
 あの言葉は、何か意味があったのだろうか。
 またねと言った彼女は、次の日も、その次の日もあの海岸に、姿を現すことはなかった。

後書き

系辰任后繊

特に何も起きない3話ですが、これをやらないと頭の中にあるシナリオどうりに進めないので、つまらなくても読んでもらえると嬉しいです^^;

この小説について

タイトル 第系叩Ц知らぬ少女
初版 2009年10月7日
改訂 2009年10月9日
小説ID 3542
閲覧数 852
合計★ 7
五月の写真
作家名 ★五月
作家ID 497
投稿数 60
★の数 166
活動度 11432
一言・・・・・・頑張ります。

http://simotukiharuka.blog.so-net.ne.jp/
自分の小説ブログです。
ここに載せた小説についていろいろ書いてます。

コメント (5)

★ 2009年10月8日 16時13分57秒
ちーす。丘です。
では、感想を。
うん。やはり五月さんの描く日常は良いですね。

最後の部分、ネルは「またね」と言い残し、どこへ行ってしまったのでしょう?
この作品は一種の群像劇ですね。最後にはどんな終演をむかえるのか楽しみです。
では。
★さんたろー コメントのみ 2009年10月9日 12時45分57秒
相変わらず更新のペースが速いですね。
私も早く次回作を出したいものです。

ちょこっと辛口を書こうかと思いましたが、丘さんの「群像劇」という言葉が妙に気に入ってやめました。(笑)

以前のような「会話ばかり」から脱却してきているのは良い傾向だと思います。会話に頼りすぎると、背景描写がおろそかになってしまうので…。
ぜひとも最後まで書き上げてくださいね!

次回あたりから、これらの話が繋がってくるのでしょうか?
楽しみにしてますね!
★五月 コメントのみ 2009年10月9日 16時58分49秒
丘さん>毎回コメ&お褒めの言葉有難うございます!
ただの平凡生活の小説に☆をくれるとはなんともありがたいです。

群像激ですかっ。
確かに毎回違う主人公・話。ですからね^^;
コメント有難うございました!

さんたろーさん>暇さえあれば小説な人間ですから^^;
自作はとてもたのしみにしてますよ!!

あら?
その辛口コメントがなんだったのか気になるところです^^;
自分も無事にエンドすることを願ってます(苦笑

コメント有難うございました!
柊 宇宙 2009年10月13日 20時41分54秒
宇「いきなり来ましたwすみませんw俺幻想って言う表現が気に入りました。

すごいですね!やっぱり俺のとは全く比べ物にならないというか…。

またあとで他のも見ますね!でわ!」
★五月 コメントのみ 2009年10月13日 20時48分56秒
柊さん>コメント有難うございます!

いえいえ。
そんなことないですよ^^;

それはそれは、有難うございます!!
自分も柊さんの見させてもらいますね^^
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