Their trip - 第枯叩魔女の森

 第枯叩魔女の森


 小鳥の囀り。
 木々が揺れる風の音。
 小さく可憐に咲き誇る花々。
 そこには、何件も木で出来た家が沢山ありました。
 その森はもう隠れ里のようになっています。
 家は木造で、和風な雰囲気をしていました。
 2階建てもあれば1階建てもあり、その姿は森にある。と、言う事意外はそこらの町と何も変わりませんでした。
「んー・・・・・・」
 その中のとある家で、もう時期お昼になるというのに、今頃起きている人物がいました。
「うるさいなぁ・・・・・・ていうか、実際隠れ里なんだよ、ここは」
 その人物は言いました。
 はて、誰にでしょうね。
 空は雲ひとつ無い空でした。
 ただ青だけが広がります。
「フレッド=リンクスー! 起きてきなさ〜い!」
 起きたばかりの彼を、家の外から大声で呼ぶ女性がいました。
 かなり大声です。
 聞えてるわー! とフレッドは大雑把に家の2階の窓を開けて叫び返しました。
「ふむ。じゃ、早く下りてきて。今日が何の日か忘れてる訳じゃあるまいて?」
「・・・・・・・・・・・・」
そう。
 今日はこの隠れ里でお祭とも呼べる行事が始まろうとしています。
 それは里の皆が強制参加。
 里の住人すべてに関係性があるのです。
 フレッドは面倒くさそうに、窓を閉めて1階に下り、先ほどの女性と合流しました。
「今日こそは私も列記とした“魔女”になるわよ〜!」
「そうですか。頑張って」
「あら。私が魔女になった暁には、貴方をコテンパンにして差し上げましょうか?」
「結構です。なった直後に誰かに攻撃とは、とんだじゃじゃ馬がいたもんだ」
「何ですって!」
 いつもの調子で話す2人。
 毎日のようにこんな会話が繰り広げられています。
 そのため、周りの人達は2人を恋人のように見る人が多くなってきていました。
 ちなみに、先ほど彼女が言っていた『魔女』ですが、今日は正式に『魔女』と名乗る事が出来るようになる為の、つまりはテストなのです。
 フレッドはすでにその試験を合格しており、「リンクス」の証を貰っています。
 一方彼女は、フレッドに負けないくらいに優秀ではあるのですが、前回のテストのときに見事に体調不良。
 魔女でも風邪はひくみたいです。
「あー、フレッドに抜かれるなんて屈辱」
「失礼だな、おい」
 魔女には2種類あり、黒魔女と白魔女に分かれています。
 黒魔女は黒魔術を使い、白魔女は白魔術を使う。
 フレッド達は白魔女です。
 どうやってそれを判断するか。
 もちろん使う魔術によって判りますが、見た目は人間ともあまり変わらない魔女です。
 魔術を使っていない時に判断しようとしても困難。
 そのため、白魔女と黒魔女を見分ける決定的なモノがあります。
 それは、魔女の手の甲に現れる刻印のような印です。
 白魔女は左手に、黒魔女は右手にそれが現れます。
 森を行き来する魔女達はそれを見て敵か見方か判断するのです。
 そして、それもあってか白魔女と黒魔女は意見の近いで、別々の場所に住んでいます。
 あちらも、今日はそのテストの日。
 あまり黒魔女は生まれて欲しくないものなのですが、あちらからすれば白魔女もしかり。
 テストに合格すると、いわゆる“苗字”がもらえるのですが、合格できなかったものは、魔女と認めてもらえず、次の試験を待つしかないのが欠点。
 苗字と名前。合わせて魔女の証なのです。
 今回のテストで合格できるのはいったい何人でしょうか。
「テストが行われるのは夜! 楽しみにしてなさい!!」
 女性は誇らしげに、自信満々にフレッドを指差しながら言いました。
 そしてフレッドははいはいと呟くと、指を指すな。と言うのでした。
 女性は指を下ろし、前を向く。
「黒魔女も、今日・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
 2人は小さく空を見上げます。
 まるで、明日を眺めているように。
 まるで、空の彼方まで見透かしているように。
「シアーヌ〜!」
「あ、今行くー! じゃ、フレッド。また後で」
「おう」
 シアーヌと呼ばれた女性は、たたたーと小走りで、多分友達と思われる人物の元に走っていきました。
 フレッドはそれを見送ると、どこか森の奥深くへと足を運びます。
 森の中は、起きた時と変わらず、鳥たちが鳴いています。
「嘗て・・・・・・・・・」
 嘗て、魔女と呼ばれる存在は、2つに分かれてなどいなかった。
 魔術と呼ばれるものはただの魔術でしかなく、魔女も魔女。
 その、はずだった。
 だが、何時しかその魔女と呼ばれる存在は、「白魔術」と、それに「黒魔術」と、2つの魔術に分かれてしまった。
 それからだった。反乱が起こり、黒魔女と白魔女に分かれてしまったのは。
 俺が小さい時。それこそ幼児だった頃、それは起こった。
 そして、友達すらも・・・・・・そう、呼べなくなってしまった。
「フレッド様―」
 静かな時間の中に、彼の名を呼ぶ誰かがいます。
 10歳ぐらいの、まだ声変わりをしてない、少年のような高い声でした。
「ん。ああ、お帰り。インデット」
 ですが、それは少年ではなく、全身真っ黒な毛で覆われた小柄な猫でした。
「ただ今戻りました」
 フレッドはインデットと呼んだ黒猫の頭を撫でました。
「シアーヌ様は大丈夫ですか?」
「大丈夫だろ。あんだけ力有り余ってりゃ、使い魔なんて直ぐ償還できるさ」
「そうですね」
 魔女になるための資格を得る為の試験とは、自分の使い魔を償還すること。
 俺の場合はこの黒猫のインデット。
 陣を描いて、呪文を唱える。
 それが成功するかしないかの説明する分には簡単なテスト。
「あー、ダルイ」
「何を言いますか。・・・・・・まさかボイコットなんてしませんよね?」
 使い魔のインデットは心配そうにフレッドを見ます。
「しないしない。多分な」
「ちょ、シアーヌ様も出るんですから・・・・・・」
 インデットはとても心配そうにフレッドを見ました。
 フレッドはそんな事は気にせず、森の中を再び歩き出します。
 待ってと言わんばかりにインデットは慌ててフレッドの後を追いました。
 毎度毎度、1年毎に行われるこの行事。
 一番関係があるのは今年その試験を受ける者達。
 次に、これから仲間となる魔女を見に来る、もう魔女になっている者達。
 フレッドは後者だが、特に興味はありませんでした。
 魔女の合格者は後で見ることが出来るからです。
 その魔女がどんな風に使い魔を償還したか。
 それが気になる人だけは観に行くのです。
 フレッドは正直そんなものはいつになっても興味はありませんでした。
「シアーヌ様が怒りますよ?」
 するとインデットはそんな一言。
「帰った傍から説教は嫌だな・・・・・・仕方ない。シアーヌの時だけ観に行くか」
 フレッドはとてもつまらなさそうにそんな言葉。
「うわぁ・・・・・・それ聞かれてたらそれこそ説教です」
「大丈夫。今はいない」
 フレッドは小さく黒笑みを浮かべます。
 それを見てインデットが苦笑。
 使い魔の彼は毎日こんな調子でフレッドと話をするのでした。
 しばらく進むと、森の中に泉が見えました。
 透き通る水に、周りには動物達。
 フレッドはその泉の近くの1本の木に寄りかかり、目を瞑ります。
 インデットもそれと同じくフレッドの膝の上で丸くなりました。
「フレッド様―。いいんですかぁ? こんなことしてて」
「いいだろう。どうせ祭は夜だ」
 フレッドは目を瞑ったまま表情もかえず言いました。
 静かな時間が流れます。
 聞えるのは、鳥の囀り。
 木々が揺れる風の音。
 水が流れる気おらかな音色だけです。
 それから数時間。
 静かな時間が流れ、空の色が徐々に変わっていきます。
「フレッド様―、そろそろ」
 インデットが彼の顔を自分の肉級で軽く叩きます。
「んあ・・・・・・」
 まさにそれで目覚めたかのごとくフレッドは気の抜けた声を出しました。
 辺りは夕日に染まっています。
 夜のお祭まであと少し。
「あー、シアーヌは何番目だったかな・・・・・・」
「シアーヌ様なら照屬任垢茵
 インデットがさり気なくフレッドに言いました。
 フレッドは短くお礼を言って、里のほうに戻ろうとした時。
「ん?」
 何か人影が写った気がしたのでした。
「どうしました?」
「今、誰かいなかったか?」
「いました?」
 人間と猫では、人間よりも猫の方が聴覚なども優れておりますが、魔女と猫だとやはり使い魔の方が劣るようです。
 フレッドは辺りを見渡して、誰もいないか確認をしようとしたとき、
「!」
 またまたやはり人影が映った気がしました。
「やっぱり、誰かいるな」
「ちょっと待ってください、祭は!?」
 いきなり駆け出したフレッドを見て、慌ててインデットが叫びます。
 が、彼はそんな事はお構いなしに走っていきました。
 あきれ果てたインデットはやはり仕方なく自分のご主人の後を追うのでした。

「何処だ?」
 泉から少し離れた森の中で、1人の魔女は呟きました。
 先ほど追ってきた人影が、どうやら見当たらない様子。
「フレッド様〜」
「インデット。人を見なかったか?」
「いいえ」
「・・・・・・見失ったか」
「そんなことより早く帰らないと時間がないですよ」
 インデットは兎に角そちらが心配です。
 すべての魔女が絶対参加のそれに行かなかった場合、どうなる事やら・・・・・・な訳です。
 まるで子を心配する母のような役回りの使い魔インデット。
「判ってる。シアーヌのには間に合うようにするよ」
「って! 判ってくれたのはそこだけですか!!」
 まさに絶叫の領域に達しているインデットの叫び声は森中に響き、驚いた小鳥が何羽か飛び立つのが判りました。
 すると、インデットの声に気づいたのか・・・・・・
「誰?」
 少女の、小さな声が聞えました。
 トコトコと木の陰から姿を現した少女は、白いワンピースを着た、ルビーのように赤い眼を持った13歳くらいの子供でした。
「・・・・・・なんでこんな所に子供が? いや、それより・・・・・・お前、魔女じゃないな? どうしてこんな森の中にいる」
 フレッドは訝しげにその少女を見ました。
 少女は黙ったままの状態で、人差し指を森の奥のほうに向けます。
「そっちに行くってか? ・・・・・・っておい。そっちは黒魔女の住処だ。どうしてそんな場所に向かう?」
 少女の行き先を知って、余計怪訝そうにフレッドは彼女に言いました。
 が、やはり少女は何も答えてはくれません。
 フレッドはどうしたものかと腕組をして、少女を凝視しました。
 少女は、何も言わないフレッドを無視して、その先に進もうとします。
「まっ、待て!」
 フレッドは瞬時にその少女の事を追ってしまうのでした。


 ♪森の奥には黒魔女さんがいる。
 1人で入っても誰かと行っても黒魔女さんに消されちゃう♪
「・・・・・・え?」
「どうしたの? シアーヌ」
「えと・・・・・・歌が」
「ああ。仕方ないわよ。子供たちは歌ってしまうものだわ」
「・・・・・・そうね」


 そこは森の中でした。
 奥に行けば行くほど暗くなっていきます。
 そんな場所に、1人の13歳ほどの白いワンピースを着た少女と、1人の19歳ぐらいの青年がいました。
 青年の肩には黒猫が乗っています。
 黒猫は青年の肩に落ちないように軽く爪を立てており、まるで寛いでいるようにも見えました。
 2人と1匹はどんどんドンドン森の奥へと進みます。
 ただ沈黙したままの状態で、足音と草を踏みつける音だけが響き、動物達は逃げてゆきました。
「1つ聞きたい。黒魔女に用があるのか?」
 フレッドはダメ元で少女に質問をしてみました。
 すると、どうせ何も答えないのだろうなと思っていたのですが
「そう」
 少女は短く答えてくれました。
「・・・・・・なら、何が目的だ。同じ魔女でもなければ黒魔女を怒らせたりしたとき死ぬぞ?」
 フレッドは少し厳しい口調で少女に言ってやります。
 これぐらい言わないと子供というのは無防備に近づくものです。
 前に白魔女にもそんな子供が何人かいました。
 これで少女が諦めるかとフレッドは踏んでいたのですが――――。
「それなら心配ない。私は、魔女にも負けない」
 返ってきた返事は遥に予想外の言葉でした。
 少女は表情も、相変わらずの棒読みさえ何も変わらずそんなことを言ってきます。
 フレッドは一瞬驚き、少女にまた話しかけました。
「何だ、それ? お前が魔女に勝てるというのか?」
「そう」
 少女はフレッドの問に即答しました。
「なっ・・・・・・ただの人間が勝てるわけ・・・・・・!」
 フレッドが「勝てるわけ無い」。そういう前に、少女は言葉を発します。
「“ただの人間”? 少し勘違いをしているよう。私は、“人間じゃない”」
「・・・・・・・・・?」
 少女の表情はさっきと何も変わりません。
 でも、その言葉が嘘のようにも聞えませんでした。
「何を・・・・・・言って」
 フレッドがそう言った時でした。
 目に光が差し込みました。
 どうやら、森を抜けたようです。
「・・・・・・・・・・・・」
 暗かった森を抜けると、一面に光が見え、直ぐそこは、フレッドの・・・・・・白魔女達の敵とされる黒魔女の里でした。
 少女は何も言わずにその里に足を踏み入れ、つかつかとフレッドがぼーっとしている内にどんどん奥へ進みます。
「まっ待て! インデット。先に言ってくれ」
「判りました」
 フレッドの方に乗っていた黒猫、インデットは、フレッド、つまりは自分の主人の命令に従い、自分のその速い足で少女を追いかけました。
「・・・・・・・・・」
 インデットに後は任せて、フレッドは足を止めました。
(よく思えば、マズイな。外見人間の少女(自身曰く)は大丈夫かもしれないが・・・・・・俺は白魔女だ。少なくとも誰かは気づくはず。早くあいつ見つけてここを逃げないと―――)
 フレッドが、再び走り出そうとした時。
 ジャリ・・・・・・
「フレッド?」
 砂の音と共に、若い男性の声が聞えました。
「?」
 フレッドが驚いて振り向くと・・・・・・
「!!」
「やっぱり、君か」
 そこには、フレッドがよく知っている・・・・・・。
 他人と呼ぶには呼べない存在の人物が立っていました。
「久しぶりだね」
「ヨゲル・・・・・・!」



「待ってください! 貴方は黒魔女に何用があるのですか?」
 その頃、
 フレッドの命令どおりワンピースの少女を追っていたインデットは、少女に話しかけならが追いつこうと頑張っていました。
 少女は小幅で歩いているはずのに、こっちが走っても、走っても不思議な事に追いつけません。
 すると、
「?」
 少女はピタッと足を止め、自分の傍まで来たインデットを抱き上げました。
「わっ」
 いきなりすぎたため、驚いてインデットは声を上げます。
「あ、あの?」
「私は黒魔女に会わなければならない。それだけだ」
 少女は言って、再び歩き出しました。
 やはり少女は表情1つ変わっていませんが、何故かインデットは、あの時少女は決意があるような真剣な眼差しを向けていた。
 そんな気がしました。
 少女はとことこと可愛らしいその小さな足で、黒魔女の里の、奥の奥へ到着しました。
 そこには、古惚けているが、キレイに掃除されている和風の家がありました。
 その家はとても大きく、周りの家の2・3倍はある気がしました。
「・・・・・・・・・・・・」
 少女はそこをしばらく眺めると、再び足を動かし、その家に近づきました。
 その時。
「誰だお前は!!」
 少女に後から刃を向ける人物がいました。
 もしかして、いえもしかしなくてもこの里に住む黒魔女です。
 1人は男性、1人は女性でした。
「あら? 猫を連れていますが、貴方は魔女じゃありませんね?」
 女性は丁寧な口調でその少女に言います。
「私は、魔女じゃない」
「なら、人間がここに何のようだ?」
 男性は少女を睨みつけて強い口調でそう言いました。
「それも違う」
「何の話だ?」
 黒魔女の男は少女が何を否定したのか分からず、首を傾げました。
「私は、人間ではない」
 少女はすぐさま返し、少女がそこ言葉を返したと同時に――――
 いつの間にやら男は数十メートル後に吹っ飛ばされていました。


 少女が言葉を返したのと、男が吹っ飛んだのが黒魔女の女性には同時に見えました。
 それは実際間違いではなく、少女は発言と同時に男を吹っ飛ばしたのです。
 誰の目にも止まらぬ速さで。
(なっ・・・・・・今この少女は何を? 私のことは落とさず抱えていたというのに・・・・・・)
 インデットを少女は抱えていたに関わらず、自分よりも遥に大きいあの男を飛ばしたのか? とインデットは眉を顰めました。
 これでは、少女は人間ではないと認めざるおえませんでした。
 今のは確かに紛れもなく人間技ではなかったはずです。
「貴方・・・・・・何を・・・・・・・・・」
 驚きの顔を見せながら女性は少女に言いました。
「聞いていなかったのか? 私は、人間ではない」
 それを聞いて、少女はさっきと同じ事を、さっきと変わらぬ表情で言いました。
 黒魔女の女性は、それを聞いただけで、ガクンッと膝から力が抜け、地面に膝をつきました。
「なん、なの・・・・・・・・・」
 困惑している女性を少女は無視し、直ぐ傍のほかの家より幾分大きいその家に、足を踏み入れました。
「あのっ、勝手に入っていいんですか? 恐らくあの黒魔女2人はこの家に住む、つまりは長を守ろうと貴方に近づいたと思われ――――」
 インデットが言い終わる前に、少女は目的の部屋へとたどり着いてしまいました。
「おや。先ほどの騒ぎはお主の仕業かね?」
 その広い茶の間のような部屋に、1人の80歳ほどの老人がいました。
 その老人は床まで白い髭を伸ばし、右手にはステッキのようなものを握り締めていました。
「おや・・・・・・インデット、お前がどうしてここにいるのかね?」
 その瞬間
「っ・・・・・・」
 インデットはその老人から殺気を感じたのでした。
 少女はインデットを守るように、何かをする素振りを見せました。
 それと同時・・・・・・
 バコンッ!! と轟音を立てて、家に切れ目が走りました。
 それは、男を吹っ飛ばした時と似ていました。
 老人は自分の直ぐ近くに切れ目が入ったというのに、怖気づくどころか、顔色一つ変えません。
「こいつを、いじめるな」
「これは失敬。貴方は我々の仲間ではないようですな」
 老人は笑ってそう言い、次の瞬間には少女にも殺気を向けているのでした。
「さて、わしに刃を向けた事、後悔しますぞ?」
 そんな轟音が響いた中。
 里の隅の隅で会話をしている青年達がいます。
「何だ、今の・・・・・・・・・」
「ふー、どうやら侵入者。長の怒りを買ったね」
 あの轟音は、どうやら里中に轟いたようです。
「侵入者・・・・・・・・・」
 フレッドには思い当たる節がりました。
 もちろん、自分と一緒にここまで来た少女が犯人なのは一目瞭然でした。
「ま、君も侵入者だけどね♪」
 黒魔女の男、ヨゲルは笑顔でそう言いました。
 フレッドはマズイ・・・・・・と後ずさりします。
「お前は何が目的だ?」
 そして、その青年を睨みつけ、言いました。
 ヨゲルは不思議そうな顔を一瞬フレッドに向け、同時にこういいました。
「そんなこと、判ってるだろう? 僕は君を――――」
「!」
「殺しに来たのさ」
 フレッドとヨゲルは数メートル離れていましたが、男は風のごとくフレッドの傍まで来ていました。
 フレッドは驚くことなく、ヨゲルに話しかけます。
「なるほど。つまりはあいつをそのまま行かせたのはその為か」
「そういうこと。騒ぎで僕と君には誰の目も無い」
 ヨゲルはくすくすと不気味に笑い、フレッドの首にナイフを廻しました。
「どうする? 君の使い魔を置いて逃げるかい? それとも、今ここで僕を倒すか」
「・・・・・・・・・だから、来たくなかったんだけどな」
 フレッドはそう力なく呟いて、瞳をそっと閉じました。
 それから、彼の瞳に映ったものは・・・・・・。



「わわっ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「はははは! お主は魔女ではないが、特別な力を持っておるな!!」
 黒魔術の老人は楽しそうに吠え、少女とインデットに向けて黒魔術を連続発動していました。
 普通の人間なら避ける隙もなく、まともに全部喰らっていたことでしょう。
 ですが、少女はうろたえることもなく、インデットをギュとか抱えてそれをすべて交わしきりました。
 家の中はすでにボロボロ。
 天井がいつ落ちてきてもおかしくありません。
 そんな状態の中、まだ戦闘を少女と老人は続けようとします。
「・・・・・・家が、ボロボロ」
「貴方がやってしまったんですよ・・・・・・あと、あの魔術師様と」
 インデットは苦笑して小声で、それこそ少女にか聞えないような声で言いました。
「何を話している? 天井が落ちてくるのが怖いか?」
 老人はクククッと悪趣味に笑い、少女に話しかけます。
 少女はそれは清清しいほどに無視し、老人の次の攻撃を待ちました。
 清清しいほどに無視された老人は、更に機嫌を損ねたようで、ステッキをまたも豪快に振り回し、黒魔術を発動してやりました。
 少女は呆れたような表情になり、それをサッと交わします。
(ああ・・・・・・フレッド様は大丈夫かな。これだけこっちが騒げばフレッド様への視線は減ると思うんだけど・・・・・・・・・)
 インデットはありえない対決が繰り広げられているにもかかわらず、自分のご主人様の事を気にしていました。
 実際、自分も結構危うい位置にはいますよ。
(それにしても・・・・・・この少女は何者でしょう? 黒魔女の長を手こずらせるなんて・・・・・・やはり人ではないのですね)
 インデットは1人確信を得ました。
 今自分を抱えながら戦っているこの少女は、明らかに人間ではない。と。
 そして同時にこうも考えました。
 少女が人間でないことは判ったとして。なら、どうして少女はこの長を狙うのでしょうか。
 その理由が分かりません。
 黒魔女の長を倒したら賞金100万円! とかどこかの町に張ってあったわけでもないでしょうし。
「あの、こんな時に不謹慎かもしれませんが・・・・・・どうして貴方はあの長を狙うのですか?」
 インデットはダメ元で少女に尋ねてみます。
 数秒経って、やはり答えてくれないかと諦めかけた時、少女は静かに
「・・・・・・・・・私には、目的がある。どうしても、やらなければならないことが」
 ただそれだけ言うのでした。
「・・・・・・・・・」
「また無駄話か! わしを見くびってもらっちゃこまるの」
 老人は時間がたってテンションが上がってきたのか、高笑いしながら楽しそうに少女に言いました。
 少女は特にそんなことは気にせず、今度はこっちから・・・・・・と呟くと、さっきと同じように空気を切ったかのように、手がまるで刃その者のように、老人に向けて振るいました。
 次の瞬間には、見えない風が起こり、ほかの家より幾分大きい老人の建物が、真っ二つになって崩壊しているのでした。
 崩壊した家はグシャンとこれ異常ないほど轟音を立て、ガラガラと崩れ落ち、最終的には無残な姿になって音も止みました。
「い、家が・・・・・・・・・」
 それに驚いたというよりも絶句したのはただ1人。
 ではなくただ1匹。
 自分の目の前で建物が崩れ落ちるなど、よほどのことがないかぎり目の当たりにする人はいないでしょう。
 もし自分達が外に出ず、家の中で闘っていたらペシャンコでした。
「1つ聞いておこう。お主は何故此処に来た? どうして黒魔女に喧嘩を売るような事をする? 我々の存在を知らずに来たわけじゃなかろう?」
 老人は今の轟音で我に帰ったのか、高笑いをやめて冷静な口調で目の前にいる少女に尋ねました。
「・・・・・・・・・私は、彼を殺すわけにはいかない・・・・・・だから、女神様の言うとおりにするかしか、ないんだ」
 いつも表情を変えない少女が、初めて悲しそうな顔になり、よく聞くと声も震えていました。
 それこそ、まさに人間のように。
「女神?」
 老人はしかめっ面になりました。
 そして
「女神とは、何ですか?」
 老人よりも先に、インデットが直ぐ傍の少女に尋ねます。
 ですが、少女は、何も言いませんでした。
 言えなかった。言いたくなかった。口に、したくなかった。
「ほう? つまりお主はその人物の殺したくないが為にその女神の命令に従い、わしを殺しに来たと?」
「・・・・・・そうなる」
 少女は否定をしませんでした。
「ははははは! なんとも滑稽な! 愛するものの為に誰かを犠牲にするか。なんとも人間らしい!」
 老人は冗舌をふるいました。
 それが少女の耳に、五月蝿いほどに響きます。
 老人の姿はまるで、そう病にでも罹っているのではないかと思わせるぐらいに、狂って見えました。
「私は、人間じゃない」
 その少女の言葉は、フレッドや黒魔女の2人に言った時のものとは、また違って聞えました。
 とても悲しく、自分のやっている事を知っているからこそ、そんな風に言った。
 そんな感じがしました。
「それしか、方法はなかったのですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
 インデットの言葉に、少女は驚いたように目を見開きました。
 ですが、それが窺えたのは数秒で、直ぐに少女はそれを言って欲しくはなかったように握り締めた手に力を入れます。
「だが、お主の願いは叶わない。わしは死なぬからな。どうだ? その思い人と天国に行くのは」
 老人は微笑んでそんな提案を言い捨てました。



 黒い森を、光り輝く太陽が照らしていました。
 風は静かに緩やかに吹き、白い大きな雲がその太陽を隠し、大地に影を招きます。
 それから・・・・・・
「・・・・・・やっぱり、簡単に死んではくれないのか」
「当たり前だ。お前の“それ”は逆恨みだからな」
 彼の瞳に映ったものは、殺気を隠さず、どうどうと自分に攻撃を仕掛けてくる友の姿でした。
「逆恨み?」
 ヨゲルは不思議そうな顔をして嘗ての友人の顔を眺めました。
 一方フレッドはその友を睨みつけながら、言いました。
「そうだ。魔女が別れてしまったのは、仕方が無いことなんだ。どれも、1つのもので留まりはしない。・・・・・・そういうことなんだよ」
 フレッドは俯いて、手にぎゅと力を入れました。
 それは、悔しそうで、悲しそうで。
 虚しそうで。
「僕は同意できないな。1つになるのが必然だったんじゃない。白魔女は黒魔女を裏切ったのさ」
「違う。一緒に歩んでいけないもの達もいる。俺達はそんななかで生きていかなければならない! だから、黒魔女が悪いとか、白魔女が憎いとか・・・・・・悪いものも憎いものもないんだよ・・・・・・」
 最後はとても弱弱しく呟いたように聞えました。
 フレッドの言葉を聞いても、ヨゲルはきょとんとした顔付きで、やはりその言葉を不思議そうに否定しました。
「どうして? 裏切りは裏切りさ。魔女が魔女を否定したんだ。それは罪だと思わないかい?」
 嘗て、魔女は種類なんてなかった。
 だが、時がたつにすれ、魔術は進化を遂げ、黒魔術と白魔術という、まさに光と闇のように2つに分かれてしまった。
 そのことから、必然的に魔女も2種類になり、我々白魔術を使うものを白魔女。
 彼等黒魔術を使うものを皆は黒魔女と呼ぶようになった。
 黒魔女は、黒魔術に犯されたように、魔術を悪用に使い、俺達白魔女に里を追及された。
 そして、今現在も2つの里は分かれたまま、この黒い森を破産で存在している。
 そんな事件が起こる前。
 自分達がまた子供の時。
 俺とシアーヌ。ヨゲルは“ただの魔女として”仲が良かった。
 その時は子供だったから、魔女のテスト資格もなかった。
 普通の、里の子供として生きてきた。
 そんな時、事件は起こった。
 俺達がテスト資格を貰う1年前、魔術は2つの存在を表した。
 まだ資格がなかった俺達は、どちらの魔術を使う魔女なのかと、大人達に”黒魔女・白魔女判断テスト”。そんなモノをやらされた。
 俺とシアーヌは白魔女。ヨゲルは黒魔女と判断された。
 黒魔術はただの魔女だったものに自然に発生したもの。
 白魔術はそれに反して生まれたのだ。
 でも、魔女じゃない俺達まで判断が完璧にされた。
 それは、まさに必然のように。
 こうなる事が判っていたから。だから、大人達は最初から研究などをしてたのではないか。当時の俺は、そう思っていた。
 良くも悪くも、生物であるかぎり、それらはいつか覚醒する。
 ずっとそこに留まり続けるものなど、この世の何処にもありはしないのだ。
 その所為で、里での戦争が起きそうになった。
 だから、分かり合うことを放棄して、今の白魔女の長、サナティカは黒魔女、彼等を追放したのだ。
「サナティカは僕らを追放した。それを、罪と呼ばずなんていうのさ」
「確かに・・・・・・サナティカは分かり合うことを、分かち合うことを、放棄した。もうダメだと判断した。それは諦めてしまったという事だ。・・・・・・でも、あの時の彼女を決断は、笑うものじゃない」
 フレッドは顔を上げて、目の前の人物から目を離すことなく、見つめ続けた。
 すると、ヨゲルは、数秒考えるような素振りを見せました。
 だが、思ったとおりに行かないのが人生というもの。
 フレッドの考えは、やはり彼には理解できなかったよう。
「僕には理解できないな。最初にやってきたのは、白魔女。君達だよ? 僕らは追い出され、里も一から作り直した。すべて悪いのはそっちじゃないか」
「・・・・・・判んねぇよ・・・・・・俺だって判らない。何が悪かったのか、何を、間違ったのか・・・・・・・・・」
 確かに白魔女の長、サナティカが黒魔女を危険物のように扱い、里を追放したのは事実だ。でも、もし彼女があの時黒魔女と白魔女の住処を分けていなかったら、果たして反乱は起きていなかったのか? そう、判断できたか?
「誰も、悪くなんてないんだよ。白魔女だって、黒魔女だって・・・・・・。今の俺には、そうとしか言えない・・・・・・・・・」
「何も変わってないね。白魔女には判らないのさ。嘗ての同胞に里を追い出された悲しみはね」
 ヨゲルはそう言った瞬間に、手に握っていたナイフをフレッド目掛けて投げました。
 ナイフは昼間の太陽の光を浴びて、先端を輝かせ、そしてそれは、一瞬にしてフレッドの帆を掠めました。
 フレッドは自分の頬をナイフが掠ったことを、数秒理解できませんでした。
 ナイフが掠った傷口から、鮮血が流れ出て、ぽちゃん・・・・・・と水面に落ちた水のような音を出して地面に滴り落ちました。
 同時に、ピリピリした痛みの感覚を覚えます。
「っ・・・・・・・・・」
「痛いだろう? 僕らが感じた痛みもそれと一緒さ」
 白魔女は、加害者なのか。
 黒魔女は、被害者なのか。
 白魔女は、被害者なのか。
 黒魔女は、加害者なのか。
 痛みと共に、そんな言葉がフレッドの頭の中をぐるぐると廻り始めました。
「次は、頬なんて言わずに、心臓を突かせてもらうよ」
 何も、判らない・・・・・・。
 いつの間にか、フレッドはふと、そう思っているのでした。

 
 風が吹く。
 太陽が歌う。
 花は踊る。
 動物は祭る。
 世界は廻る。
 喜びは消える。
 悲しみは増える。
 魔女は、嘆く。

「シアーヌ!」
「え? あ・・・・・・ごめん」
「もう。大丈夫なの? 夜になったら祭りは始まって、貴方は照屬茵 私より早いんだから」
「判ってる。いや、ね・・・・・・フレッドが来てない・・・・・・から」
「おやおや。またまた彼氏の心配ですか。だいじょーぶよ! 来てくれるって☆」
「かっ・・・・・・彼氏じゃないってば!!」
「照れるな照れるなっ。かわいいなーもう」
「照れてないって!! かわいくも無いっ! ・・・・・・・・・」
(フレッド、来るかな・・・・・・)
「あ、シアーヌ! サナティカ様が呼んでるってさ」
「あ、うん! 今行く・・・・・・・・・!」


 やはり、私は間違っているか・・・・・・?
 なぁ、貴方なら、どうする?
 私は、どうすれば良かった?
 私の判断は、罪だろうか・・・・・・・・・。
「さて、お主の選択志は2つ。機Г錣靴砲海里泙淹Δ気譴襪。供諦めて立ち去るか。まぁ逃げた所で逃がしはしないがな」
「・・・・・・・・・・・・」
 少女は何も答えず、ただ立ち尽くす。それだけでした。
 闘おうとする素振りさえ見せません。
「どうした? 選択志気鯀ぶか?」
 老人はそんな少女を見て、おどける様に言いました。
「どうしたんです? 早く攻撃しないとこっちがやられてしまいます!」
 何もしない少女を見て、もしかして諦めてしまったのかとインデットが叫んだ。
「私、は・・・・・・・・・」
 少女は今までにない表情で震えだし、地面にぺたんと足をつきました。
少女の震えは、インデットにすぐさま伝わってきました。
 老人は実につまらなさそうな顔で、少女に言います。
「何だ? お主の決意はその程度かの。―――まぁいい。そろそろ終わりだ。どうせ夜には祭りの容易もあるでの」
 老人が、ステッキを真っ直ぐに少女に向け、何かを称えるのが判りました。
(マズイ!! 長のあんな魔術を喰らったら・・・・・・いくら人間じゃないと言ってもこの子は――――) 
 インデットはそう思い、少女の細い腕から抜け出し、地面に着地しました。
「さて、懺悔の時間も終わりだ」
 老人の言葉は、あの時の少女の心には、酷く、悲しく、響いたのでした。


「立ちなよ。もう留めなんて詰まらない」
「・・・・・・・・・・・・」
 その光景は、ヨゲルがフレッドに刃を向け、フレッドはその刃の先で、地面に尻餅をついている状態でした。
 彼の顔は前髪で隠れ、表情は窺えない。
 ヨゲルはより詰まらなそうにフレッドの周りを一周し、さきほどと同じ事を言った。
「立ちなよ」
「お前は、俺を恨んでるんだろう?」
 突然、フレッドは口を開いた。
 だが、その声は今までに無いほど弱弱しく、生気を感じさせなかった。
「何が言いたいの? 確かに白魔女全員だし、もちろん君もシアーヌも入ってるよ」
 ヨゲルはその質問に首を傾げて、はき捨てるように答えた。
「そうか・・・・・・なら、俺が白魔女代表としてお前に殺される。それで、シアーヌも・・・・・・もちろんサナティカも、白魔女の皆を・・・・・・許して、くれ」
「はぁ? 僕にこのまま殺されるっていうの?」
 ヨゲルは眉を顰め、激怒したように言いました。
 すると、返ってきた返事は、
「そうだ」
 イエスだった。
 フレッドははっきりと、しっかりとそう一字一句を力よく凛とした声で決意を示しました。
「っ!!」
 ヨゲルの表情が険しくなり、彼はフレッドを押し倒しました。
「どういうことだ? 変わりに死ぬって事?」
「・・・・・・そうだ」
 彼は、それしか言いませんでした。
 それ以外に、言葉が見つかりませんでした。
「何だよ、何だよ、何だよ・・・・・・・!!」
 ヨゲルは狂ったように叫びだし、フレッドの顔を一発殴りました。
 フレッドの口から、血が流れ出ます。
「ふざけるな! ふざけるな、ふざけるな!!」
 ヨゲルの言葉は限界を知らぬように続き、その絶叫はその場にこだまします。
「ふざけてない。俺1人で済むのなら、そのほうがいいんだ。これで、勘弁してやってほしい・・・・・・別に、悪気はきっとなかったんだ・・・・・・」
「・・・・・・っ! っつ・・・・・・・・・」
 声を出そうとして、ヨゲルはそれが出せませんでした。
 フレッドの表情は、心底悲しそうで、今にも涙がでそうに思えます。
 ですが、―――涙を流したのは彼ではありませんでした。
「な、んで・・・・・・?」
 フレッドは目を見開いて、自分の目に映っている光景を不思議がりました。
 自分の頬に、何か冷たいものが零れたのが判ったのです。
「どうして、お前が泣くんだ?」
「知らないよ! 君のせいだ」
 ヨゲルは八つ当たりのように言い捨てて、ゆっくり立ち上がりました。
 フレッドも立ち上がり、
「・・・・・・・・・・・・あの・・・・・・」
 ヨゲルに何かを言おうとしたとき、突然彼の左手が光出しました。
「なっ!?」
「何だ・・・・・・?」
 その光は何どことなくとても穏やかで、暖かで。
 見るものの心を癒すようでした。
「どうなってるんだ・・・・・・? この光は、いったい―――――」
「彼は、気づいてくれたのです」
 すると、彼らの後から優しそうな声をした女性が現れました。
 随分とふけていて、黒魔女の長と同じぐらいの歳でした。
 白髪の髪は地面まで伸び、まるで女神のような格好をしたその女性は、片手に杖のようなステッキを持っています。
「サナティカ!?」
 2人は驚きました。
 どうしてこんなところにこの人がいるのかと。
 もう夕方です。
 そろそろ祭りの準備をするころだと言いますのに。
「知ってのとおり、嘗て・・・・・・嘗て魔女は2種類ありませんでした。分かれてしまった理由は、使う魔術が異なったから。黒魔術と白魔術は魔術は魔術でも根本的に違います。その所為か、魔女は里を2つに分けました。・・・・・・私も、悪かったでしょう。皆には言うべきだったのです」
「?」「?」
 2人は首を傾げました。
 何を、言うべきだったと言っているのかと。
「これは、私達2人が決めたことでした。“一緒にはやっていけない”。そう、思ったのです。その考えは見事に一致し、里を2つに分ける事にしました。それはもちろん黒魔女のあの長も、知っています」
「なっ・・・・・・」
「どういうことです?」
 フレッドが聞きました。
「黒魔術と白魔術が生まれてしまったときに、私とあの人は一緒に話し合っていたのです。どうするべきか、と」
 サナティカと呼ばれた白魔女の長は、淡々とそう語りました。
「本当に、我々は協力して生きていけなかったのですか?」
「そうですね・・・・・・それが一番望ましいことでした。でも、白魔術と黒魔術の共鳴は無理なのです・・・・・・魔女どうしに敵意がなくても、使う魔術が違うだけで、相手を傷つける恐れがあったのです・・・・・・」
「では、長と貴方は・・・・・・わざと? 我々を、見捨てたわけじゃなかったのですか・・・・・・?」
 ヨゲルは自分の右手を見ながらいいました。
 そこには、黒魔女の証の刻印が現れています。
「そうです。別に、魔術が分かれてしまったから相手を嫌いになって追い出したとか、そんなわけではなかったのです。ただそれらが分かれてしまったことで共用はできない。つまり一緒には過ごせない。そう判断した上で、里を分ける事を決断しました」
「なら、どうしてそれを俺達に言ってくれなかったのです!?」
 フレッドの問に、サナティカは最もな意見ですね・・・・・・から言葉を続けました。
「そうですね・・・・・・言うべきだったのです。でも、言ってしまっては別れが悲しくなるのではないかと。会ってしまう者がでてきてしまうのではないかと・・・・・・そう思ってしまったのです。―――でも、それは間違いでした。何故なら、相手を憎みたくもないのに憎んでしまう。その心のほうが、とても悲しかったのです。別れが悲しくても、我々は立ち向かうべきでした。会えなくても、手紙などは書けたのです。・・・・・・私の判断は、違っていました。申し訳ありません」
 サナティカは2人に頭を下げ、謝罪をしました。
 彼女も、また被害者だったのかもしれない。
 長であったが為に、そんな判断を求められた。
 彼女も、俺達と同じく、心は痛めていたはずだったんだ。
 なのに、気づいてやれなかったのは、紛れもなく俺達で・・・・・・。
「頭を上げてください」
 そう凛とした声で言ったのは、ヨゲルでした。
 ヨゲルは真っ直ぐにサナティカを見つめ、今度は自分が頭を下げるのでした。
「何も、知らずにすみませんでした・・・・・・僕も、本当はフレッド殺したくなんて・・・・・・なかったんだ。でも、それに気づけなかった・・・・・・体は、嘘をつかなかったみたいですけど・・・・・・」
 サナティカは頭を上げ、彼を見ました。
 そして一言、
「ありがとう」
 それだけを言いました。



「・・・・・・・・・」
「ほう。さすがは使い魔だけはある」
 あの時、老人の攻撃をまともに喰らいそうになった少女をインデットは彼女の服を口で引っ張り、数センチその攻撃から少女という的を移動する事に成功しました。
「なんで・・・・・・」
 少女は呟きます。
「フレッド様の命令もあります。それに―――私も守っていただきましたし」
「はははは。使い魔が主人の為意外に動くというのは珍しい」
 老人は笑い、インデットは老人を鋭い目つきで見ました。
「さて、次は外さないようにしないとな」
 老人はステッキをパシンッと地面の手のひらに軽く叩きつけながら言いました。
「次は何も出来まい。自分より大きなものを動かたインデットは、もう力もなかろう」
 老人は少女に再びステッキを向けました。
 少女は思いました。
 ああ・・・・・・やっぱり、私は間違っていたのだろうか。
 彼を殺したくないが為に、他人を犠牲にするなんて。
 どうして、そんな考えしか浮かばなかったのだろう。
 彼なら、こんなことはしなかった。
 と。
「それでは。なかなか楽しめた。礼を言うぞ」
 そして、老人が魔術を発動しようとしたその瞬間。
「待ちなさい!」
 凛とした美しい女性声が響きました。
 老人は誰かと首をかしげ、こちらに向かってくる何人かと人物を見ました。
 そして、その中の1人。
 サナティカを見て目を丸くして驚きました。
「何故お主がここにいる? 里の皆にばれたら」
「その心配はご無用。貴方の家と里の皆の家は結構はなれていますからね。来るのに時間がかかるでしょう。それに、黒魔女も今日はお祭でしょう? 皆はその準備で里を離れているんじゃないかしら。今まで気づかなかったのですか? これだけ騒いで誰も来なかったらそう考えるのが妥当でしょう」
 老人はそういえばと周りを見渡し、やはり誰もいませんでした。
「それに何をやっているのですか! 少女と使い魔をいじめるなんて」
「いやーわしを狙う敵に買収された猫なのかと・・・・・・」
「そんなわけ無いでしょう! 使い魔は現れた時点で主人と契約を交わしているのです。長になってさらに頭が悪くなりましたか貴方は!」
 老人はサナティカに説教をくらいました。
 それはますます続き、狙ってきたからといって直ぐに暴力を少女に向けるなどと云々。
 使い魔を狙った事に端を知りなさい云々。
 止めまでさそうとするなんて最低だわ・・・・・・! 云々。
「あの少女は人ではない! やらなかったらこっちがやられていた!」
「それにしても手加減というものがあるでしょう? 家もボロボロ大地も割れて! 自分の都合だけて暴走するんじゃありません!!」
 あれだけ言ってもサナティカの説教はまだまだ続きます。
「おい大丈夫か?」
 そんな2人が話している間に、フレッドは少女の所に駆け寄っていました。
 ヨゲルもそれに続く。
「フレッド様!」
「インデット! 遅くなって悪かった」
「それが君の使い魔?」
 フレッドに懐いているその猫を見て、ヨゲルは親しげに彼に聞きました。
「そ」
「フレッド様、その方は?」
「ああ・・・・・・そういえばお前は知らなかったな」
 フレッドはそう聞かれて、躊躇いなくこう答えます。
「友人、さ」
 そう・・・・・・・・・。
「もう、誤解は解けたんだよ」
「へ?」
 インデットは気の抜けた声で首を傾げます。
「そういや・・・・・・おい、お前大丈夫なのか?」
 そういえばとフレッドはその小柄な少女を見つめました。
「大丈夫だ。言ったろう、私は人間じゃない」
「・・・・・・そうだったな」
 フレッドは立ち上がって微笑んで返しました。
 すると少女も立ち上がり、その瞬間に一瞬にして少女の傷が消えました。
 そんなものを目の当たりにしたフレッドとヨゲルは声を出さずに驚きました。
「さぁ、話はつきました。帰りましょう」
 サナティカは皆に微笑みかけ、黒い森へと歩いていきます。
「じゃあな。ヨゲル」
「ああ。・・・・・・また、会える?」
 フレッドはその時にきょんとして、小さく呟きました。
「――――――」
 彼のその時の笑顔は、まるで太陽のようだった。
 ヨゲルは、そう思いました。
 そして、そこでおヨゲルと、フレッドは別れたのでした。



「それで、お前は何がしたかったんだ?」
 帰り道、ふと忘れていた質問をフレッドは少女に何気なくして見ます。
「・・・・・・私は、間違ってた。だから・・・・・・次は、間違えない」
「はい?」
 フレッドは首を傾げ、彼の肩に乗っている小柄な黒猫は、小さく微笑みました。
「見えましたよ」
 先頭を歩くサナティカが言いました。
 そして、再び光と共に、今度は自分の里が姿を現すのでした。
 フレッドは微笑んで、その里を眺めました。
 準備はほぼ出来ており、あとは夜になるだけです。
 現在5時45分過ぎですから、あと15分も待てば祭りが訪れるでしょう。
「なんか・・・・・・メチャクチャ長かった気がする・・・・・・1日ぐらいの時間を感じた。俺は」
 それを見て微笑ましいと同時に、そんなことも思いました。
「では、私は先に行ってますね」
 サナティカもそれだけ言い残し、すたすたと祭の里に入っていきました。
「お前・・・・・・あ。そういえば、お前の名前。聞いてなかったよな?」
 サナティカが去ったあとで、少女に話しかけようとしてその事にフレッドが気づきました。
「名前? ああ。そうだな」
 少女も同意そして、
「私はネル。ネルだ」
 少女は答えてくれました。
「じゃ、ネル。改めて宜しく」





「フレッド〜! 良かった。ちゃんと来たのね!」
 満面の笑顔でフレッドに声をかけてきたのは、その人意外の誰でもない。
 シアーヌだった。
「あー、はいはい。祭だからってテンション高いんだよ・・・・・・」
「あら? いいじゃない。祭ってそういうものよ」
「ごめん」
「え?」
「伝言」
「誰から?」
「秘密」
「えー? 何それ〜」
 
 風が吹く。
 月が歌う。
 花は踊る。
 動物は祭る。
 世界は廻る。
 喜びは叶う。
 悲しみは願う。
 魔女は、笑う。

後書き

お久しぶりです。
五月です。

なんかこの頃話しが進まず、毎日のように進行していた僕ですが、今回長くなりました。
話自体も、長くなりました。
海賊に続いて魔女。
出したいと思っていたものは出せました♪
男性魔女って1度出して見たかったんですよ〜(笑

さて、5話はすこーしばかり文章書いてあります。
まぁ中身は主にこれからなんですけどね。

それにしても、『月下』を抜くと、僕あれから20日以上進行してないんですね。
驚きだ。
まさに新記録だ。
進行遅くても、見捨てず見てくれるとありがたいです。
では、また次の話で会いましょう!

この小説について

タイトル 第枯叩魔女の森
初版 2009年10月19日
改訂 2009年10月19日
小説ID 3568
閲覧数 873
合計★ 1
五月の写真
作家名 ★五月
作家ID 497
投稿数 60
★の数 171
活動度 11432
一言・・・・・・頑張ります。

http://simotukiharuka.blog.so-net.ne.jp/
自分の小説ブログです。
ここに載せた小説についていろいろ書いてます。

コメント (2)

★さんたろー 2009年10月22日 12時36分06秒
読みました!
感想ですが、第枯鍛餌里箸靴討鰐滅鬚ったと思います。
それぞれのキャラも個性があってよかったです。

ただし、それは「単体として」。
「Their tripシリーズ」として意識して読むと、この話は浮いてます。
前の2話は「異世界らの来訪者」が前提に置かれていたので理解しやすかったのですが、今回はそれらとの接点が全くわかりません。ここまで書き込むのであれば、別の物語として投稿した方がすっきりしたのでは?
もったいないなぁと思います。

以上、久しぶりの辛口でした。
次回からの展開、楽しみにしてます!
★五月 コメントのみ 2009年10月24日 16時32分34秒
さんたろーさん>コメント有難うございます!

確かに、目立ってはしまいましたね^^;
今回は5話に続けるための話だったので、誰かが飛んでくる、飛ばされるパターンというよりも、ネルを引き鉄に魔女達が巻き込まれた。そんな感じになりましたからね。
1〜3話までとは異なってしまったのは事実ですね。
うーん、僕は前からこのシリーズで魔女を出したいと思っていたので^^;

むむむ、そういわれると少しショックな五月でした^^;

読んでくださり有難うございました!
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