スカウターを拾った

 皆さんはこんなアニメを知っているだろうか。
『オレンジ色の、中央に星が1つから7つまで浮いている手のひらサイズの玉を7つ集めると神の使いである龍が出てきて、願い事を叶えてくれるアニメ』
 そうですね、ドラゴンボールですね。

 じゃあ皆さんは、そのアニメの中に出てくるこんな機械をご存じだろうか。
『とある戦闘種族の王子様が身につけていた、敵の居場所や、強さを具体的な数値としてあらわしてくれる道具』
 そうですね、スカウターですね。

 じゃあ今、僕の目の前に落ちているこれは何なのでしょうか?
『とある戦闘種族の王子様が身につけていた、敵の居場所や、強さを具体的な数値としてあらわしてくれる道具』
 そうですね、スカウターですね。




 信じられない。おもちゃだろうか。なんでこんな住宅街の一角にスカウターが落ちているんだ。このスカウターさん、まったく場違い出会って空気を読んでいない。しかしなんだか妙な重みがある。おもちゃなら、塩化ビニルで出来ているだろうから、こんな重量感はない。なら本物なのか?
 ちょっとつけてみよう。

かちゃ

 ………反応がない。やはりおもちゃなのだろうか。あ、そうか、スイッチを押して電源を入れなくちゃならないのか。えっと、どこだろう。とりあえず適当に押してみようか。

ぷうぅん

 あ、電源が入ったみたいだな。ってすごいよこれ!!
 なんて言うのだろう、あれがこうなって、なるほど、直線距離で100メートル先に人がいるのか、これは便利だ。
 明日学校に持って行って友達に自慢するしかないね。でもそんなことしたら、みんな珍しがってもみくちゃにして、壊れちゃうのが目に見えるようだから止めておこう。
 あ、どんな光景なのか知りたいですか? でもダメー。これは僕のものだから独り占めしちゃうもんねー。べー。
 ん、この画面の右下に出ている『profile』という文字はなんだろう。ここを押せって言うことなのかな。

ぶーん

 おお、なるほど。自分のステータスが出てくるようになってるんだね。なるほど、僕の戦闘力は58………ま、まぁまぁ! そこの数値じゃないか。うん、高い方だって。
 というか、自分のステータスを見るたびに画面を触るようじゃ、指紋が付いて大変だなぁ。ポテトチップス食べてる時に触るのはやめておこうっと。
 よし、この際だからいろんな人の戦闘力というのを見てみようか。




 さっきからいろんな人に横目で見られて横を通り過ぎられる。無理もないだろう、こんなものをつけている人なんか、よほどのマニアだろうから。無論、誰もこれが本物のスカウターだなんて思いもしてないだろうけどね。
 ふーん、僕より数値が下の人って結構いるんだね。ほら、あんな筋肉質でいかつい人でも僕より1だけ小さいもん。人は見かけによらないんだね。
 この際誰か、か弱い女の子がその辺で悪ガキにいじめられてないかなぁ。スカウターの示す戦闘力次第では、戦って助けてあげたい。そうすれば、そこからなんかオイシイ展開になったりしたら僕、死んでもいい!

「ってめぇ、どこ見て歩いてんだよ! 肩ぶつけるんじゃねー!!」
「す、すいません!」
「あーボス、大丈夫ですかっ?」
「あー痛いわ。これ肩の骨折れたかもな。ちょっと病院代よこせや」

 な、なんだ。こんなベターなシチュエーションがあっていいのだろうか。ってお前ら、同じ中学校の不良共じゃないか! ………ここではこの2人をデブとイヤミと呼ぶ事にしよう。制服を着ているところと、大人びた雰囲気から推測すると、女子高生であろうけど、そんな人から病院代を請求するなんてなんて図々しい!! それにお前らの方が背が高いんだから、肩と肩がぶつかるわけがないっつーの!
 で、でもいつもあいつらには学校でいじめられてるし………。ごめんだけど、そこの女子高生さん。僕助けてあげられそうにありません。
 見て見ぬふりをしようとして、振り向いたそのときだった。



ぴぴぴぴっ



 何の音だ?
 あたりを見回してみても何もない。そこで僕は気づいた。スカウターの音だったのだ。
 画面に先ほど見られなかった数字が3つほど見える。方向は………後ろ!?
 僕は再びあの騒動の現場に目を向ける。相変わらずあの悪ガキ共は、女子高生さんに金を要求しているようだ。
 スカウターの表示に焦点を合わせる。なるほど、この数字なら。

ボス・・・82
子分・・・60
女子高生・28

 確かに悪ガキ共の戦闘力は僕よりも上を示している。
 しかし、ここで逃げていいのだろうか? ここで逃げて男をこれからも名乗れるのだろうか?


ここで逃げなかったら僕はスーパーサイヤ人になれるんじゃないのか?


「待てい!!!」
 僕は思いっきり大きな声でその3人の前に颯爽と登場した。しかも仁王立ちで。
「あぁ?」
 なんて悪い目つきなんだ。しかし僕はいつもの僕じゃない。スーパーサイヤ人になろうとしている地球人なのだ!
「その女の人から離れろ!………さもないと」
「さもないと? いつも学校で俺にいじめられてるやつが吐くセリフか、それ?」
「今日の僕は、僕ではないのさ」
「ボスー、きっとこいつ殴られ過ぎてついに頭がおかしくなったんじゃないですか?」
「なるほどな、はははははっ!」
 ふ、今のうちにそうやってほえ面かいてやがれ。しかし、今の僕には自信しかない。うん、失うものなんて―――。

 僕はデブに向って思いっきり駆ける。50メートル走は9秒台なのだが、今日はなぜか足が軽い。体感的には7秒台で走っているかのようだ。
 デブはさすがに喧嘩慣れしているようで、僕の顔面に的確に拳を合わせてくる。しかし、そんなことは計算済みさ。予測してればそんなもの全然怖くなんかない

「………なっ!」

 デブはパンチをかわされて、まさか、と言わんばかりのうめき声をあげる。この勝負、僕の勝ちだね。
 かがんだ体勢から足のばねを最大限に使い、そのエネルギーをすべて自分の右拳に乗せる。

ごぉん

 鈍い音が、自分にもはっきり聞いて取れた。デブの巨体が衝撃で宙を舞う。そのまま力なくアスファルトにあおむけで倒れこむ。

僕、勝ったんだね。

 女子高生さんが壁にもたれながら口を開けて僕を見つめている。惚れたかい? いや、あともう1人ごみが残っているから、惚れるのはそれからにしてくれ。

「うう、うわぁー!!」

 イヤミは青ざめている。まさかデブがこのいじめられっ子の僕に一撃で倒されるなんてことは、想像していなかったのだろう。
 スカウターが再び鳴る。イヤミの戦闘力にどうやら変化があったようだ。




「ふ、戦闘力たったの5か。………ゴミめ。」




 決まった。一度言ってみたかったんだよね。
 無論、今の僕は誰にも止められない。そのままイヤミも一蹴。









「大丈夫ですか?」
 僕は笑顔で女子高生さんに話しかける。しかし、女子高生さんはゆっくりと立ち上がるとため息をついてこう言った。
「………どうしてこんなひどいことをしたのですか」
 僕は驚いた。だって、あなたこの悪ガキ2人に絡まれていたんですよ? このスーパーサイヤ人である僕が、撃退してあげたんじゃないですか。
「ぶつかったのは私です! この人たちは悪くない………骨折したって言ってたのに、ここまでの暴力を加えるなんてあなたは鬼です!!」
 なんて素直すぎるいい子なんだ………。あの程度で骨折なんてする訳ないのに、それをそのまま信じてしまうこの女子高生さんのウブさに僕は惚れました。
 って、なんで僕が悪役になってるの?


「あなたのような人には、鉄拳制裁を加えるしかありませんね」


 え。
 そう思った瞬間に、周りの空気が何か変な効果音を立てながら動いていることに気がついた。それと同時に、スカウターが今まで見せなかった異常な反応をしている。
 これはヤバい。直感でそう思った。

ぼんっ

 スカウターが爆発した。つまりそれは、戦闘力があまりに強大だと言うことを示している。




し…………ヌ・・・、、、、、。

 刹那、眼の前が真っ暗になった。



 目が覚めると、僕は病院のベッドの上に寝かされていた。あたりを見回すと、デブとイヤミがそろって寝ているところを見ると、どうやらスカウターを拾った事は夢ではないらしい。
 ベッドのそばの机に、置手紙があった。僕はそれを手に取る。



「ごめんなさい。ついカッとなって………。医療費など、請求される場合はここに連絡ください。           中野雪美」

 退院してから調べたのだが、中野雪美さんは若干高校1年で空手の全日本選手権で優勝を成し遂げたという記事があった。そりゃあ勝てないよね。
 たぶんあの時の中野さんは、戦闘力がフリーザを軽く超えていたような気がする。
(フリーザは戦闘力530000だったっけか)

後書き

アホみたいな作品で申し訳ないwww

この小説について

タイトル スカウターを拾った
初版 2009年11月1日
改訂 2009年11月1日
小説ID 3587
閲覧数 1306
合計★ 5
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作家名 ★せんべい
作家ID 397
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活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (3)

★W.KOHICHI 2009年11月1日 22時04分03秒
面白かったです。ただ、幾つかツッコミを入れるところが。
多分このスカウターは地球版にローカライズされているに違いありません。
本家本元では、一般地球人の戦闘力は、銃を持った農夫が「5」だったからです。それと比べると58というのは破格ですから。
中野さんの戦闘力がフリーザ以上というのは、撫でられただけで死ぬレベルです。思いっきり手加減すれば或いは入院で済むかもしれない……というのは多少無理がある気が。
あと、表現的に、「フリーザ様」と呼んだ方が威圧感が出た気がします。
って、こんな真面目にコメントするなんて久し振り。なかなか楽しませてもらいました。
最後に、これって二次じゃなくて一次創作にも思えます。自信もっていいと思いますよ。
★五月 2009年11月3日 9時36分35秒
毎回せんべいさんの小説は発送が面白いですね(笑

読ませていただきました。
オチが凄かったですね。
いろいろな意味で。

★せんべい コメントのみ 2009年11月6日 17時43分27秒
お二方、コメントありがとうございます。

これからもこれらを糧として頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。
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