柴原桂輔と森小路瑞香(仮題)

 その日は、雨が降っていた。
 慌ただしく、過ぎていく年月だな。
 彼は、雨を見ながら、そんなことを思っていた。

 思えば、4年前の春、緊張の中、大学に進学した。
 狂気、とも言える行動をしていただろうな、と冷静に振り返ることもできた。
 色んなコトがあったな、と過ぎ去った日々を懐かしく思っていた。
「でも、まだ君の人生は、まだ始まったとも言えるんだが?」
 どこからか、声がした。
「君の後ろだ」
 そう言われ、振り向くと顔見知りな女性がそこにいた。
「森小路さんじゃないか、どうしたんだい?」
「ああ、桂輔くんが見えていたからさ。挨拶でもしようかと思ってね」
 驚かさないでくれ、と桂輔は言う。
 それに森小路瑞香は、笑って応えた。
「いいじゃないか、僕と君の仲じゃないか」
「……全く。貴女という人は……」
 ため息混じりに答える彼。
 彼−柴原桂輔が、瑞香と知り合ったのは、2年前に遡る。

 2年前。
 桂輔は、永倉という一歳年上の男と友人関係にあり、同じゼミとなり、そのゼミの一回目の授業。
 彼が、友人の永倉と話していると、加わってきたのが、瑞香だったのだ。
 瑞香は、永倉を無視し、桂輔ばかりに話をふっていた。
 桂輔に気でもあるんじゃないか、と無視された永倉は茶化すが、そういうことに鈍感な桂輔は、別にいいけどな、と言った。
 桂輔と瑞香の二人は、よく話す仲になっていた。
 授業でも、同じになることが多く、よく顔を合わせていたからである。

「森小路さん、これから帰るんで?」
「いや、君を待とうかなと。明日、予定はないだろう?」
「ま、まあ、ないけど。明日は土曜だし」
「なら、問題はない。僕の家に泊まっていって欲しい」
 それに桂輔は、絶句した。
「いや、女の子がそれを言うのは、おかしいと思うのですがっ!」
「何故だ? やましい気持ちは、何一つない。友達付き合いの範疇じゃないか。
 酒を飲み交わしながら、何かを話すっていうだけだ」
 なるほど、やましいのは俺の方か、と桂輔は思った。
「分かった。じゃ、8時に10号館の入り口で」
「――そんなことをしなくても、自習室でおち合おう」
 この積極的な瑞香の言動に、桂輔はただ黙るしかなかった。


 8時となった。
 桂輔は、瑞香と共に歩き始めた。
「それにしても、なんでそんな事を?」
「ああ。学生としては、残り少ない。ならば……、と思ってね」
 彼には、瑞香のその言葉を、学生時代の思い出作りのように思えた。
「そうか……。森小路さんが何を考えてるか分からないけど」
「フフフ、そのうちに分かることさ」と瑞香は、ニヤリとしながら言った。
 そして、瑞香の家に着いた。


「それにしても、桂輔、君はどうして僕以外の女には好かれないんだい?」
「余計な言葉だ、瑞香。なんで、お前は俺にしか話をふらなかったんだ、あの時〜!」
 酔っぱらいながら、桂輔は言う。
「それはだな、桂輔。単純に君としか話したくなかったんだよ」
「あ〜、マジかよ。永倉カワイソス」
「はは、そういう言い方は、実に君らしいよ」
 瑞香も酔っているが、笑いながら言う。
「……ところで、だ」
 彼女は、改まった態度で言い始めた。
「もし、僕が最初から桂輔が、好きだったら、どうする?」
 彼は、すわった目で瑞香を見た。
「あぁ? あにいってやがるんだ?
 ……んー、あまり今と変わらなかったんじゃないかな」
 その言葉に、瑞香はため息をついた。
「………。全く」
 瑞香の腕が、桂輔に伸びる。
「僕は、前から桂輔、君が好きだったんだよ」
「え……?」
 彼女の唇が彼のに触れる。
「――お、おい、瑞香、落ち着け。酔ってるんじゃないのか、俺よりも、だ」
「酔っていようがいまいが、君が好きなことには変わりはないんだぞ?」
「……で、俺にどうしろと」
「なに、簡単な話さ――」
 彼女はそう言って、桂輔を押し倒し――。


 ――翌朝。
「……んむぅ」
「――すまなかったな、桂輔……。僕が暴走してしまって」
 起き上がった桂輔にいう瑞香。
 お互いに全裸であったが、桂輔は不思議と悪い気がしなかった。
 聖母の様な穏やかな顔。程よく均等の取れた胸の大きさ。
 こんな子が俺を好いている――。おまけに抱き合った仲になってしまった。
「いや、別に構わないさ。――結局、俺が考えていたやましいことになってしまったがな」
「ふふふ、君の思惑通りなのが癪に障るが……。ま、仕方ないね」
「仕方ない……か。――瑞香」
「なんだい、桂輔」
「責任取って……じゃないけど、付き合おうっか」
 その言葉に瑞香は笑った。
 ――しかし、桂輔はこれが瑞香の策略だったことには気がつかなかった。

後書き

蒼井幹也です。
この続きはありません。
ただ、ハルヒの佐々木の様な僕っ娘が書きたかったというわがままにも程がある話ですが。

この小説について

タイトル 柴原桂輔と森小路瑞香(仮題)
初版 2009年11月24日
改訂 2009年11月24日
小説ID 3631
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