むりやり解釈百人一首 - 2.持統天皇

2.持統天皇

春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
Harusugite Natsukinikerashi Sirotaeno Koromohosutyou Amenokaguyama



「きれーい!」
 私は窓を勢いよく開け放った。するとそこには、すぐ近くに香具山が見える。
 しかし、ただ山を見ただけで『きれい』という感嘆の言葉が出てくるはずもない。今は紅葉の季節でもないし。
 なぜかって、この季節の香具山には一面白い布を干す習慣があるのだと言う。さっきばあやから聞いた知識なの。つまり受け売り。
 白い布………あれはいったい何なのでしょうか? ここから見る限り、具体的にあれが何なのか全く見当はつかないのだけど、白い布を連想すれば答えは見つかるかもしれないね。
「白い布………」
 私が小さい時にしてもらっていたおむつ。あれって確か白い布だったような気がするなぁ。なかなか寝小便が治らなくて、10歳ぐらいまでおむつをしていたのはここだけの秘密だよ。
 女の子なのに、寝小便の話をするのはかなり恥ずかしいんだけど、今思いだすと懐かしいなぁ。あの頃はよく泣くし、よく怒るし、よくに笑う、喜怒哀楽の激しい子だったとばあやから耳にたこができるほど聞かされた事をよく覚えてる。もちろん、今もたまに言われるんだけどね。
 って、話がそれちゃった。何やってるんだ私、バカ!
 でも、春から夏にかけてのこの季節におむつをなんで干す必要があるのだろう。冬場は寒くて小便が近くなるって言うのは分からないでもないけど、別にあったかいこの時期に寝小便が急増するとは私には思えない。
 というよりもよく考えてみたらわざわざ香具山を登っておむつを干すんだろうか? 別に家の庭で干す方が手間もかからないしどう考えても手軽だよね。つまり、あれはおむつではない。
 やっぱりあれは着物なんだろうね。
 つまらない、普通すぎやしないだろうか。
 山におむつが一面に干してある。………考えてみてよ、面白くない? こういうふと湧き出てくる笑い、これ大事だと思うんだよね。
 たまに大内裏に重役さんが来られて、私に会話の途中で洒落たような事を言ってくるんだけども、ちっとも面白くない。むしろ気持ち悪い。愛想笑いばかりする日々だから、こうして自然とわき出てくる笑い、って言うのは久しぶりに味わえたんだ。ある意味快感だね。あ、卑猥な意味じゃないよ。
 私、そういう感情久しぶりに感じたなぁ。喜怒哀楽、長らくこの言葉から離れてたもんです。
 笑うことはもちろん、泣くことも起こることもすっかり無くなってしまった。人間から感情を抜いてしまった、ただの抜け殻のような存在だったのかもしれない。
 さっきだってそういえば、一面白い布が干されている香具山を見て「きれい」と感嘆の言葉をつい漏らしてしまった。
 日々がつまらなかった。いつも同じようなことばかりして日々を過ごす。これのどこに面白みがあるのかな? 少なくとも私にはこの面白みは見いだせないみたい。
 って、また大きく話がそれちゃったね。何の話だっけ…………………そうそう、あの白い布の話だったね。
 白い布………だめだ、もうおむつっていう概念が私の頭に焼きついちゃったよ。
 あ、分かった、死装束だったりして。この季節は五月病とかなんとかで憂鬱になって、自害する人が増えたりするのかなぁ。
 ………縁起でもないこと言うもんじゃないね。
 でも、梅雨のせいでずっと部屋にこもりっぱなしでつまらないことばっかりだったけど、それまで曇っていた私の心もこの爽快な緑と白の景色に洗われるようだ。
 さっきも言ったけど、ずっと感情を表に出す機会に恵まれず、私自身も殻に閉じこもることが多くなってしまった。これを機に、もっと自分を積極的に表に出そう! 私はそう決心した。
 その時、廊下の方から音がした。私は反射的に振り向く。
「ばあや、どうしたの?」
「夕御飯の準備ができましたよ」
「うん、ありがとう。ところでばあや、香具山に干してあるあの白い布の正体はなんなの? おむつ?」
 そう言うとばあやはクスッと笑った。
「おむつって、そんなわけないでしょう。あれは、袴ですよ」
 なるほど、袴か。確かに今は衣替えの時期だもんね。納得。
「毎年この景色を私は楽しみにしてるんです。これを見ると、春は終わって夏が来たんだとやっとわかるんですね。これはもはやこの辺りの初夏の風物詩です」
「へぇ………」
 これを季節の移り変わりの目印にしているんだね。なんだかまた一つ賢くなった気分だよ。
「それにしても、おむつだなんて、寝小便常習犯のあなたらしい発想ですね」
 私の動きは固まった。ばあやはにこにこしながら背中を向けて去って行った。
「敷布団に大きな黄色いしみが出来ていましたよ」
 隠した場所がどうやら甘かったようだ。



後書き

持統天皇が何歳の設定とか、そういうことは気にしないでください・・・;;
調べてると大変だし(調べろよ


この小説について

タイトル 2.持統天皇
初版 2009年12月23日
改訂 2009年12月23日
小説ID 3699
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合計★ 8
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
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卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (4)

荒野のアゲハ 2009年12月23日 17時04分06秒
はじめましてのコメントになります。カラスアゲハです。

百人一首を一人づつ書いていくというその気の長さ、尊敬します。ネタも面白かったです。果てしない数ですが、頑張ってください。

持統天皇が何歳かについては、たぶん十歳から十五歳のあいだかなと想像しつつ読ませていただきました。
なにげにばあやの存在が大きい作品という、(オチがばあやでしめられているので)天皇ワンマンかと思えばそうではない、造りが良かったと感じました。
僕もこんな良い流れで僕も書いてみたいですorz

では、新人が口出してすいませんでした(汗
★けめこ 2009年12月23日 20時35分18秒
これはおもしろいですねw
歴女(自称)の私ですが、これは歴史的事実とか抜きにしておもしろい。
もう史実がどうでも良くなってきました。

持統天皇がすごく子供っぽいのに、やっぱりどこかでは堅苦しさを感じているのが、すごく人間味があるなあと思いました。
って前も同じようなこと書いたような気がしますが、ほんとうにせんべいさんの書くキャラはリアリティがある。見習っていきたいものです。

たった31文字の世界ですから、いかようにも解釈できるんですね。
天皇のイメージをぶちこわしにしたその勇気にも敬服です。

次も楽しみにしてますw
★せんべい コメントのみ 2009年12月24日 10時25分13秒
>アゲハさん

コメントありがとうございます。
気が長いというか、挫折する気満々ですから大丈夫です、安心してください(何を
うーん、おねしょをする年代は5、6歳くらいですから、まぁアゲハさんが解釈している年齢くらいでいいと思います。
持統天皇にばあやがいたのかも知りませんけども、まぁオチをつけようと思ったらこうなってしまいました。
新人だとか、そんなことはどうでもいいです。これからもバシバシ弱点やら良いとこやら指摘して下さるとうれしいです。



>けめこさん
わぁ、前回に続きコメントくださりありがとうございます。
史実はどうでもいいです。本気で批評して下さる人がいれば、ボロクソ言われるこの作品でしょうが、だって僕Wikipediaすら見てないですもんw
天皇って人前ではニコニコ手を振っていますが、きっと裏では一般人らしい一面だって見せるはずです。そうでなければ僕は人格崩壊してしまう自信があります。
一応、学校でもらった国語便覧のみ参考にしています。
では、またお願いしますねー。
弓射り コメントのみ 2009年12月26日 1時22分40秒
前作は読んでませんし、いまさら読む気もあまりないのですが(読めよ)こういうシリーズを100個やるんですか。あんたは五木寛之かw

小説なんでしょうけど、エッセイ風味ですね。短歌のさりげないわびさびには、こういう薄口の小説が合っていると思います。
ただ、心にクるか、記憶に残るかという基準に関しては頑張っても3点が上限かなぁ。感情的にコないなら、表現にもっと凝って欲しいかもしれないです。
あと、短歌から想像が飛んでも良いんですけど、オチの部分でもう一度短歌の強烈なイメージに戻ってきてほしいんですよ。物語が飛びっぱなしというか。それでもいいんだけど、このままだとちょっと物足りないです。

オチが浮かべば話は作れるそうですが、おっしゃる通りオチは綺麗でかっこいいですね。

なんか癪だし、もう十分人から☆はいただいてるでしょうから(←せこい)コメントのみで。☆3つに値するとは思います。
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