大海原へ

 広大な海が目の前に広がっている。大海原を旅する海賊たちに、それを捕まえようと必死になる海軍たち。
 まるでいたちごっこ。
 捕まるそぶりを全く見せずに逃亡する海賊たち。彼らの船のほうが早いんだ。海軍もそれなりの技術を持っているはずなのに、増えるのは死人ばかり。

 人が死ぬのは至極当然のことだ。何も恨めしく思う必要も、罪悪感を感じる必要もないと思う。
 それが例え異端な考えだとしても、オレはそれを貫き通したい。

 「ファギー、お薬の時間よ」

 体の弱いオレからしてみれば、外ではしゃぐガキどもの騒がしさを静めたくて仕方がな

い。
 何故オレは一日中ベッドの上にいなくてはいけないのか、何故このオレが眺めるだけなのか、何故オレは外に出られないのか…。
 その全てをぶつけたい。
 だけどできない。

 苦い粉薬を無理やり喉の奥に押し込んで、オレはまた外を眺め続けた。いつの日か、海に出られることを祈りながら。


 ある日のこと。
 港に一隻の船が停船した。ガキどもの声から察するに、どうやら海賊船らしい。町中を徘徊しているとか。

 オレは願った。
 海賊たちがオレを外へと連れ出してくれないかな…と。

 そう思ったとき、扉が開いた。

 「食いもんもらうぜ〜、婆さん」

 大柄の男が数人、家中へと上がってきた。ベッドに座るオレを視界には入れていないのか、誰もがオレを見ることなくキッチンへと向かい、酒瓶とパンをあるだけ抱えていった。
 嗚呼、オレはなんてちっぽけな存在なんだろう…

 「……おぃ、坊主」

 「え…?」

 存在を無視されていたと思っていた矢先、明らかに周りのヤツとは存在感の違う奴がオレに話かけてきた。
 血に染まったかのような赤いマントを羽織り、左目には眼帯を。グレーの髪は腰辺りまで伸びていて、さらさらとうらやましいほどにキレイだ。

 「ずいぶんとしけた面ぁしてんなぁ?」

 「…っ、あんたには関係ない」

 はっ…と笑い出した男は、ずいっとオレの顔にそのキレイな顔を近づけてこう言った。
 “夢は自分で掴むんだぜぇ?”と。

 オレは咄嗟にヤツのマントを掴み、「連れて行け!!」と叫んでいた。


 数年後。

 「ファギー……本当に行くのね?」

 「あぁ、止めたって無駄だぞ…」

 そういい捨てて住み慣れた家を後にした。


 町へと行くと、昔の煩かったガキどもがこぞってオレの周りに集まってきて、こう言うんだ。「お土産忘れないでね」と。
 はっ…冗談じゃない。
 そう言ってガキどもと別れた。向かう先は港に止まる海軍の船。今日は出航日だ。

 「……お前がファギーか?」

 「はい」

 軍服に身を包んだおっさんが、オレを船内へと導いた。

 数年前現れた海賊たちは、オレを連れては行かなかった。あいつはオレに、“オレ様を捕まえてみろ”そう言って去った。
 だからオレは海軍となり、あいつを捕まえてやる。

 海賊だろうが海軍だろうか、オレの夢は海に出ること。第一の夢は達成できた。
 不治の病にかかっていたこの体も、気力で治してみせた。医者は驚きオレの体をくまなく調べたが、何がオレをこうまでさせたのかが鍵だったらしい。

 オレは密かに感謝もしているんだ、あいつに。
 だって、あいつのあの言葉でオレは諦めかけていた夢を捨てずにすんだのだから。だからオレは、あいつに会いたい。

 「海軍本部に着くまで、ゆっくりしているといい」

 おっさんはそう言って部屋を閉め出て行った。


 船に揺られること数日間。
 未だに本部に着くこともなく、途中海賊が現れることもなく過ぎていった。
 オレは一体何をしているんだとか、何故ただ船にのっているだけなのかとか、色々な疑問が浮かび、それに丁寧に答える毎日を送っている。

 トモダチができた。
 オレより数個年上のヤツで、オレと同じく昔は体が弱かったらしい。だからか意気投合してしまい、退屈はせずにすんでいる。

 「あぁ、それはキャプテン・レオナだな」

 「レオナ…? 女みてーな名だな」

 「だが、ヤツはカイブツだ。強すぎて海軍大将ですら歯がたたないんだよ…。」

 トーイの顔を見ていてわかる。本当に強いんだということが。
 そういえば、あの時もあいつだけ何かが違っていた。雰囲気というか、オーラが違っていた。

 「何、レオナ捕まえたいの!?」

 驚くトーイにニッコリと微笑んで、オレは大海を見つめた。
 強かろうが弱かろうが関係ない。オレの夢は、キャプテン・レオナに会って―――……


 「ブラッディ・ストーン号発見ー!! 繰り返す、3時の方角に―――!!」

 船内に警報が鳴り響き、海賊船を見つけたとの放送が流れた。トーイは慌ててオレを引っ張り部屋へと押し込んで、どこかへといった。
 部屋に残されたオレは、ただ外で起きている事態を予想するしかできなかった。

 海軍の中でもこの船は小さい船で、そこらの雑魚海賊船よりも小さいらしい。だから海賊船が現れたらすぐさま本部に連絡を取り、そして逃げろと言われているようだ。
 船は間逆の方向へと転換し、逃げの体制に入ったようだ。

 ところが、大きな振動が走った。

 「…っなんだ!?」

 オレは思わず部屋を飛び出て、外を確認しようと甲板へと出た。黙々と上がる黒い煙と、悠然と立つ……

 「……お前…っ」

 キャプテン・レオナ――!!

 「見つけた…っ!!」

 オレは咄嗟の出来事にもかかわらずレオナに突進し、隠し持っていたナイフを操った。あいつからはナイフは見えなかったはず、大人しく刺されろ…!
 そう思ったのもつかの間で、オレの両手はレオナによって上に纏め上げられていた。

 「っくそ、放しやがれ海賊!!」

 「……お前、あん時の坊主だな」

 憶えていたのか…?

 オレはあまりにも嬉しすぎて、つい油断してしまった。手で握っていたナイフは落ちて、会って言いたかったことが素直に出てきた。

 「…っ今度こそオレを連れて行きやがれ!! キャプテン・レオナぁ!!」

 精一杯の、魂からの叫びだった。


(その後オレはブラッディ・ストーン号で下っ端兼レオナの女として居座り続けている)

後書き

思うままに…。
ただ荒っぽい人たちと少年を書きたかったんです。

荒っぽい=海賊ではないけれど、そんな気分だったので海賊にして。
近頃はトラに襲われてるばかりで何も手につかず、四苦八苦です。

きっとこれは息抜きで生まれた作品ね(色々と不足部分があるなぁ…)

に、しても。
“女は船に乗れない”とはよく言ったもので、そーゆーことも無きにしも非ず?
ちなみに、私は同性愛OK。何だかんだで…(略

この小説について

タイトル 大海原へ
初版 2009年12月26日
改訂 2009年12月26日
小説ID 3707
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コメント (2)

★鷹崎篤実 コメントのみ 2009年12月26日 15時31分02秒
え?
結局、ファギーは男なの?女なの?
あとがきで荒っぽい人たちと少年を書きたかったと書かれているので、どっちなのか判断に困ります。
内容については、ワンピースを思い出させられました。海賊に海軍。それに海軍大将と海軍本部とか。
それだけに、大冒険を期待してたら、なんかよく分からないまま終わってしまったので残念です。
それと、船の名前がブラッディ・ストーンでとあるものを思い出してしまい、ひとり受けてしまいました。
んまあ、初恋物語と考えてみれば、あら不思議、なんだか初恋の人を追いかけて海に出るなんて、ものすごく素敵じゃないうふふふふとかなんとか思ってしまい、なるほどこういうのもありだなーとかコメント書きながら、唐突に思い出しました。
ただ、海賊だと恋愛というより、もっと肉欲的な印象を受けてしまうので、純愛マニアな僕としては、やはり受け入れるのは難しい感じです。
意味不明なことを書きまくりましたが、僕のような凡人の戯言は真に受けずにさらりと受け流してもらって、書きたいことを書くのが一番だと思いますよ。
ではでは

追伸 劇場版ワンピースのニコ・ロビンはスカートをはいているのか?
★只野 紅覇 コメントのみ 2009年12月26日 23時41分41秒
>>鷹崎篤実さん

ファギーは男です。立派な少年です。
最後の“女となった”というセリフが混乱させてしまったのでしょうかね??
“女役”ってことです。腐女子連中の間で言うならば、“受け”の立場ってことになりますね。

ワンピース、海賊ものでは一番といっていいほどですよね〜
あぁ…っ、大冒険でなくてごめんなさい。大冒険を書くには、まだまだ覚悟が足りないというか、ちょっと自信がなくて…。

船の名前に大した意味はないんですけど……一体何を思い出したのでしょうか??(気になる
ブラッディ・ストーンはですね、自分の爪が赤かったのと、何故か部屋に石ころが落ちていたからなんですよ。適当すぎます…本当に。

純愛マニアですか…。それは……おそらく私にはムリかもしれませんね。純愛よりドロドロが好みなんです。
そうですね〜、多分私自身が純愛のようなものを経験していないからなのかもしれませんね。本当に、鷹崎さんの言うように肉欲的な恋愛ばっかりだったなぁ……と、思い返しちゃいました。

そんな凡人などと言わず。
それを言うならば、皆凡人若しくは皆天才なんですよ。(そーゆー思考です、私は。コメントありがとう御座いました。何だかとっても率直な感想もらえて嬉しいです^^

追伸
 劇場版ワンピースは見ていないのでわかりませんが、ロビンはスカートであってほしい。美脚を拝みたいです。笑
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