風 -

風が、吹いた。
 彼女は何とも言えない表情で、ただそこに立っていた。


「転校生の宮野 白湯(きたしま さゆ)さんです。」
先生が黒板に名前を書いた。
「さ、挨拶して。」
先生は白湯に促す。
「宮野です。」
……。
よろしくも言わない彼女に、先生は苦い顔をした。
「宮野さんは小さいころにイタリアへ行って、その後フランスに行き、そして日本に来ました。
 日本には慣れていないようですので、みんな優しくしてあげてくださいね。」
「……話だし。」
白湯が何かをつぶやいた。
「え?」
「余計な御世話だって言ったんです。先生。そんなことはしていただかなくて結構ですから。」
「でも…」
白湯は先生をキッと睨んでいう。
「先生にはお分かりにならないかもしれませんが、あたし、そういう偽善は嫌いだし、一切受け付けないようにしてますので。」
そのままスタスタと空いた席に座り、フランス語で書かれたであろう本を読み始めた。
「宮野さん!」
先生が甲高い声で言う。
「自分勝手なことはやめてください。今から授業ですよ?!」
「あたし、学ぶべきことは全部学びました。ここには親の言いつけで来ているだけです。」
白湯が冷静に返し、嫌な目つきで見てきたものをにらんだ。
「そういう事じゃないでしょう。社交性とか、そういうものも…」
「こんなところで社交性なんて学べませんよ。
もうあたしはフランスやイギリスで社交性は学びました。
そうそう、あたしが行ったのイタリアじゃなくてイギリスですから。
中学校にあるのなんて偽善の塊だけですよ。」
白湯は先生を真正面から見つめる。
「でも、貴女はまだ高二でしょう。恋とかそういうものにも興味は…」
「ありませんよ。くだらない。」
女子全員が敵にまわった。
先生はため息をつくと諦めたように出席を取り始めた。
「片村要さん。」
「はい。」
「宮…」
先生は白湯の名前を呼ぼうとしたが、諦め、次の子の名前を呼んでいった。



休み時間。
クラスメートはだれも翌に話しかけようとはしなかった。
ただ一人を除いて―――。
「おい、宮野、だっけ。お前変わってるな。」
白湯は呼んでいた本から顔をあげ、相手を見据えた。
「俺もアイツ嫌いなんだよな。ふざけてるだろ?」
「微妙にニュアンスが違う。あの人自身は真剣だろうけど、あたしみたいな人には空回りしてるってことだ。」
白湯は本に目を戻す。
「お前やっぱ日本語慣れてねーのな。男言葉っぽいぜ。」
「わざとだ。」
「ほら。」
………。
「無視かよ。俺の名前、梶野 令歩(かじの りょう)。
りょうは『れふ』書いて『りょう』って読む。変わってるだろう。」
「時に、梶野 令歩。なんで話しかけてきた?」
「全然聞いてねえな。まあいいけどさ。」
令歩はニヤッと笑って言った。
「面白そうだったからさ。
この教室にいるのなんて『偽善』の塊だけだろ?吐き気がする。
だからさ、でっかい空気穴をあけてやろうと思ってさ。」
白湯が令歩を見た。
「お前を使ってさ。」
「勝手にしろ。」
白湯が席を立った。
「風を吹かせるにはお前が必要だ。」
令歩が白湯の肩を持つ。
「放課後俺のうちに来いよ。」
「なんで行かなきゃいけない。」
「作戦だよ。」
白湯はそれを無視し、ロッカーの方へと行った。
「お前、このままでいいわけ?」
令歩が白湯の背中に言葉をかけた。














「ここだ。俺のうち。」
白湯は勝手に上がっていく。
「で、作戦って、何なわけ?」
「ん〜。言いにくいな。」
白湯は荷物を置き、令歩の部屋を見回す。
結局、白湯は令歩に乗った。
そして今、令歩の部屋にいる。
机の上や床の隅はごちゃごちゃだが、ベッドとソファの上は何もない。
「ってか、お前、犠牲になるかもなんだよね。」
「勝手にしろ。」


「じゃあ、服脱いで。」


令歩が唐突に言った。
「帰る。」
白湯は怒ったような顔をし、荷物を持った。
「作戦だっつの。」
「それはただの言い訳だ。」
「じゃあいいさ。」
令歩が白湯から荷物を取り上げ、ベッドに押し倒した。
「何…する気だ?」
「決まってんじゃん。」
令歩が服の上から胸をつかんだ。
白湯の顔がまっかになる。
「やっ」
白湯はとっさに足をバタバタとさせた。
「お前さ、俺のものになれよ。」
「誰が…」
令歩は白湯を抱きしめた。
「金もやるし、幸せにしてやる。」
より一層力が強くなる。
「来年まで待っててくれよ。」
「なんでそんなことする?」
「秘密の事情だ。知りたいんだったら…」
「お前のものになれと。」
令歩が白湯の首にキスをする。
「あと一年だからさ。」
「そういう問題じゃない。」

それから、白湯は令歩を殴った。
「おい、待てって!」
殺気を出す白湯に令歩はド下座をし、事は終わった。
「もうかえるから」
といい、白湯は令歩の家の前に立った。
「俺さ、外国行くんだ。」
「へえ。」
「お前に一目ぼれした。」
「うそだろ。」
「心にきめた人がいるっていっておけば、帰れるんだ。
親父の言いつけでさ。本気にしてくれていいから。」
「意味が分からない。」
日はもう暮れていて、白湯の白い顔が闇によく映えている。
「頼むから。契約書でも書く。」
「嫌だ。」
「お前は、ほかの男と付き合っててもいいし自由にしててもいい。
一年後に一緒にいたい。」
「じゃあ…」
「いいのか?いいんだろ。」
令歩の顔が輝く。
「じゃ」
令歩は家の中へとはいって行った。


三日後、令歩はいなくなっていた。




































一年後。
白湯は家にいた。
――ピーンポーン
「誰だろ?」
すっかり、女性らしくなった白湯。
漆黒の長い髪は、ポニーテールにされている。
白い肌は相変わらずだ。
「宅配便かな?」
白湯はドアへと向かう。
「まさか―――まさか、あいつ?」
一年前の約束。
嘘みたいなわけのわからない約束。
結局契約書なんてもらわなかったし、連絡もない。
でも、白湯は一年誰とも付き合わなかった。
令歩と出会ったあの高校は退学し、ほかの高校へ行った。
そこではだいぶ落ち着いて、先生に反抗するようなこともなかった。
何人かには告白された。断った。
心のどこかで、令歩の約束を信じていた…様な気がする。
あの夜に見た、深い瞳が忘れられなかった。
白湯はドアを開けた。
「すいません、宅配便です。」
ドアの前にキャップを眼深くかぶった、男性がいた。
(当たり前……か。)
宅配便は小さな箱だ。
「はい、どーも。」
男性はいい、
「ありがとうございます。」
と白湯は返した。
「受け取ったな。」
男性は言った。
「はっ?」
男性はキャップを脱ぎ捨て、白湯を抱きしめた。
「ようやく戻ってこれた。宮野。」
男性は、白湯に顔を見せた。
「梶野……。」
「すっかり、女らしくなったな。」
令歩はにやにやと笑う。
「まさか、これ…」
白湯は箱をみる。
「指輪と婚姻届が中に入ってる。」
令歩は言った。
「結婚しよう。」
令歩はその唇を白湯の唇に押し付けた。



              つづく

後書き

う〜ん。
微妙。
一応シリーズです。
ってか、官能小説に入って、削除されないよね?!

この小説について

タイトル
初版 2010年1月1日
改訂 2010年1月1日
小説ID 3723
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作家名 ★冥王
作家ID 626
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