短編 - 透明雨と独り言

僕の好きな人は
とても綺麗で
透明な血の色をしている。


 

                   透明雨 と独り言






雨は三日にわたってずぅっと降り続けていて、
春雨(はるみ)は僕の部屋にもう3日もいた。
ずっと動かないで僕のベットの脇に居て、とても疲れているようだった。

「もう三日も経ったよ」

僕が言うと、春雨は笑ってから首をかしげた。
解っているんだか解っていないんだか、春雨は僕がなにをいってもこれを繰り返す。
窓の外は雨がざかざかと音を立てて降っていて、時折窓ががたがたとゆれるのを、僕はいちいち吃驚して眺めた。
透き通っていて、きりなく流れる其の雨は、春雨の血にとても似ている、と思う。
一度だけ春雨にそれを言ってみたら彼女は凄く怒って、其の日も雨だったのだが傘も差さずに窓から飛び出していってしまったのを未だに覚えている。
春雨の透明な血を見たときはとても驚いたけれど、今ではそれが僕の中で当たり前になっていた。


春雨は、ある日突然僕の部屋に現れたのだ。
其の日もやっぱり雨。

「誰?」
特に驚きもしないで、其のとき彼女にたずねたのだ。
雨でびしょぬれになって中学校から帰ってきた僕を、突然しらない女の人が出迎えて、それは驚くべきだっただろうに僕は不思議とまったく驚かなかった。
むしろ、当たり前のような、穏やかな気持ちで彼女にそう聞いた。
理由はわからないのだけれど。

「私、?私は春雨。」

はるみ。
口の中で繰り返すと、春雨はそうだよ、とでも言うように、にっこりとして頷いた。
風は弱かったから、雨はまっすぐに下に落ちていた。
春雨はそれを眺めたり、僕の部屋の隅にじっと座ったりして、其の日一日を過ごした。
おふろはいる?とか
ごはんたべる?とか
何を聞いても春雨は、笑って首をふるばかりで、だからって春雨のことをお父さんやお母さんにいうのはなんだかいけないような気がして、僕は春雨をずうっとほうっておいた。
偶に読んでいる本から目をあげて眺めたり、なにかする?と声をかけたりはしたけれど。

夜になって、春雨は「ありがとう、ありがとう」と壊れた人形みたいにありがとうを繰り返して窓から外に出て行った。
コレもおかしな話で、僕の部屋は二階にあるのだけれど、
春雨はまるで普通のドアから出るように、すうっとあるいて出て行った。
そして、窓のそとに出た瞬間に雨にまぎれるみたいにして消えた。


春雨は、それからも度々僕の部屋に現れた。
いつくるのかは解らない。いつもいつも僕が学校で外に出ている間にやってくる。
きまって、雨の日に。
それが毎回毎回くるものだから、僕はいつだったか雨の日、一度だけずるして学校を休んで春雨が来る様子を見ようと思ったのだけれども、其の日彼女は来なかった。
僕がずっと家に居たからこなかったのか、はたまたほかに理由があったのかはわからないが、とにかく彼女は来なかった。


そうしてある日、春雨が僕の部屋にいるのが普通になってきたころに、彼女は血まみれで僕の部屋にきた。
最初はびしょぬれになっているのかと思って驚いた。
いつも春雨は、外はあめなのに少しも濡れずにやってくるのに
どうしたことだと思いつつも彼女にタオルを投げてやると、彼女は笑って(そういえば彼女は笑っている表情か窓の外を眺めているときの憂うような表情いがいは僕に見せてくれたことがない)

「それじゃぁこれはふけないの」
と言った。
「これは血だから、私の血だから。」

へぇ、そう。
僕はそっけなくそう言ってのけながらも、驚いて驚いて自分の体が諤々と震えるのを抑えられずに居たのだ。
でも春雨はいつもと変わらないみたいに窓のそとを眺めて、いつもみたいに暗くなるとひっそりと出て行った。

そんなふうに血まみれになってくることも、やっぱり何度もあって、僕はそれにすら慣れてしまったのだった。









「ねぇ」
「私ね、そろそろ死んでしまうの。」

ざぁざぁと、あいかわずの土砂降りだのに、春雨はいつもと違うことをした。
三日続いた長い長い雨の日の
其の三日目に
いつもと同じ血まみれで、いつもとちがうことをした。

僕のてをきゅ、と握った。
僕は初めて春雨に触れた。



とても冷たくて、いきていないみたいだった。




「・・・・・・春雨?」
震える声で名前を呼ぶと、春雨は目を閉じた。
息を吸って、吐いた。
目の前で行われて居る筈の呼吸は、でも僕になんの風も感じさせなかったのだけど。

「私は病気なのよ」
「だんだんと透明になって」
「終いには、無いことになってしまう病気」
「私がいなかったことになってしまう病気」
「でもね、今あなたが私を殺してくれれば、私は人間として、しねるから」




口元の笑みと虚ろな目が対照的で、僕は思わずみとれた。
雨の音はもう耳には届いてこなくて、ただただ春雨の声だけが僕の鼓膜を震わせていた。
網膜も彼女に支配されていた。

彼女は涙を流していた
やっぱりそれは、透明だった。





「だからね、私を殺して欲しいの」
「おねがい、私を殺して
殺して」
「殺して   ころして ころして」




彼女の手には研ぎ澄まされた銀のナイフがたからものみたいに握られていて
僕は彼女からそれを受け取った。



「ころしておねがい! ころして!  殺してっッ


              あ                  」






















ぼくのだいすきだったひとは
とてもきれいで
とうめいなちのいろをしてい    た。




彼女の喉元に突き刺さったナイフからは
真っ赤で暖かい血が溢れていた。
彼女は喋れない喉からひゅうひゅうと息を吐いて
僕を見て
いつもみたいに、わらった。



『ありがとう』
『にんげんとしてしねてうれしい』

彼女はそういってるみたいに口を動かして









そのあとは、ぼくもよく、わからない。

後書き

・・・・・・・・・・・くらい・・・・・なあ・・・・・・。


話の矛盾点とか
繰り返し同じ表現を使ってしまったりとか
読んでて違和感を感じるところも多いかもしれません。
すいません、修行不足だなぁと自分で感じました・・・短編完結させるのが一番苦手です・・・


息抜きとは言えど一応手は抜かずに書いたつもりです
ごちゃごちゃしてしまったのは否めません・・・



アドバイス感想等ありましたら是非お願いします!

この小説について

タイトル 透明雨と独り言
初版 2010年1月8日
改訂 2010年1月8日
小説ID 3737
閲覧数 855
合計★ 5
名倉の写真
常連
作家名 ★名倉
作家ID 574
投稿数 5
★の数 16
活動度 641
初心者で未熟者で小心者で横着者です、すいません
仲良くしてくださると死ぬほど喜びます^^*

コメント (4)

★けめこ 2010年1月9日 13時17分51秒
読ませていただきました、けめこです。

なんだろう、小説としてどうのこうのじゃなくて、『にんげんとしてしねてうれしい』という一言に、名倉さんの伝えたいメッセージが詰まっているのではないですか。
いなかったことになってしまうより、人間として死にたい。別に死ぬことが人間らしいこと、というわけではなくて、消えてしまう事への恐怖が春雨を駆り立てていたのでしょうね。主人公の元に現れたのも、誰かの記憶に残りたかったから?

そういうメッセージ性が見えていて、さらに春雨の帰り方など非現実要素があったので、突然病気のことに話が飛んでもさほど違和感を感じませんでした。
伝えたいことだけがすっきりと並んでいる文章で、読みやすいと思います。ただ、名倉さんがこれ以上の深さを書きたいなら、心情に合わせた周りの様子の描写を増やしてみてもいいと思います。

長々と失礼しました、次も読ませていただきますね。
★名倉 コメントのみ 2010年1月9日 18時05分27秒
>けめこ様!


「にんげんとしてしねてうれしい」
は、確かにこの物語の軸であったのかなぁ・・・と
鬱だったのかなんなのか、よくわからない話であったかなと思います(苦笑

春雨の焦りとか、心情とか、こんなからっぽでどうしようもない物語から読み込んでいただけたことが、凄く嬉しいです。
けめこさんのコメントがこの物語を深くしてくれたのかなと。
もっと深みと中身のある話がかきたいんですけれどね・・・


実はこの話は、春雨は幽霊であるという設定で書いていたのでした。
というかこの話の私の解釈(自分の話を自分で解釈するというのもおかしな話なのですが)では春雨は幽霊です。

病気というのは、彼女のうそ。妄言。
自分が死んでいることを認められなかったこれが彼女なりの逃げだったのかもしれませんね
血が赤かったのは、「ぼく」の精神状態がおかしくなっていたからそう見えただけ。と思うとあれ、救いのない話ですね・・・・だめか(笑
考えてかかなくちゃなぁ・・・。

全部僕の幻覚っていうのもありな解釈だとおもいますけれどね

けめこさまの思い通りに考えてくださるとそれが一番いいのかなぁと思います。多面性をもった物語を書くのが私の最終的な目標でありますので^^


コメントありがとうございました!!^^
これからも仲良くしてくださいませ
★佐藤みつる 2010年1月12日 2時27分52秒
おなかが空きますね。こんばんは、初めまして佐藤と申します。
短編だったのでこっそりのぞきにやってまいりました。

面白かったです。なんというか、読んでいて本当に春雨の存在が薄く感じられました。
強い言葉で叫んでいるのに透けていて、そして、最後の言葉を言ったあと、消えたように感じました。
不思議な感じで、なんだか、胸にきました。

感想を書くのが下手なので短くてすみません。
でも本当に結構好きな感じだったのでコメントしにきました。
どうも突然すみませんでした。
★名倉 コメントのみ 2010年1月13日 19時14分02秒
>佐藤みつる様っ!

おなかですか!?(笑
まぁごゆるりなにか食しながらでも。

ありがとうございます!!
面白かった・・・だと・・・!!!やっちゃった感しか感じられない話ですがそう言っていただけるとかなり嬉しいです!
春雨の叫びとか、苦心とか、少しでも伝わっているのであれば成功です!わーい!!
きれいでうすくて、さらさらしている。そんなお話をかけるようになりたいなぁっと思っています^^


実は私も、佐藤さんのお話読ませていただいたのですが、これからコメントしにいくと何かこれのお返しに読みに行った、みたいなかんじになっちゃうので(なんだか書き手としてそれじゃぁ寂しいものがありますもんね(苦笑)
次のお話のときにでも、コメント書きに行かせて頂きまっす!
みつるさんのお話はさらさらしていて、きれいで、私の理想とするものです!尊敬していますし目標です!

コメントありがとうございましたー!
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。