むりやり解釈百人一首 - 3.柿本人麻呂

3.柿本人麻呂

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
Ashibikino Yamadorinoono Shidariono Naganagashiyowo Hitorikamonen



 僕は山鳥を飼っている。
 別に山鳥を好きで飼っているわけではない。先月、山に山菜を採りに行っているところ、猟師の罠にかかっている所を発見したのだ。
 このまま罠にかかったまま放っておくのはあまりにもこの山鳥が不憫な気がしてならなかったので、罠による怪我の治療も兼ねてしばらくうちで飼うことにしたという次第である。
 恋人には「そんなあなたの優しい所が好きなのよ」って言われてしまった。もうこの山鳥のお陰で余計に愛が深まったっ! って実感してたりしてなかったり。
 そんなことはどうでもいい。そんな愛しき恋人も、夜になると里に帰ってしまう。会えるのは昼間だけなのだ。なぜって、それは僕にも分からない。ただ、彼女にも両親や兄弟がいることは事実だから、決して彼女が異心を持っているとは思っていない。というよりは、思いたくないと言うのが正しい表現だろうか。


 外はちょうど満月が出ている。月は秋がきれいとよく言うものであるが、やはりいつ見ても綺麗なものである。今の澄んだ冬の空気でなおさら清らかに、美しく見える。
 そういやまだ山鳥に夕飯をやっていなかったな。ちょっと遅めだけど、持って行ってやるか。
 山鳥で思い出したけど、山鳥は、昼は雌雄が一緒に過ごして、夜は別々に寝るんだそうだね。まるで僕達のように。
 なんで別々に寝るんだろうか。雄と雌の間に愛があるならば、夜は一緒に寝たいと僕は思うんだけども。
 というよりも、動物に『愛』という感情があるのだろうか。少なくとも人間という動物は人を愛することを何よりも大切に思っているはずである。
 同じ動物なのだから、山鳥にだってそういう感情があってもおかしくはないかもしれない。たまたま人間は大昔に『言葉』という表現方法をかち取ったから、感情も高度に進化したのかもしれないけど………。
 山鳥が昼間一緒にいるところに愛はないのだろうか。もし愛がないのだとしたら、なぜその雌雄は一緒にいるのであろうか、僕にはまったく理由が分からない。
 僕は当然彼女と一緒にいたい。なぜならその間には愛があるから。
 一人でこうして寝る夜は、本当に長いんだ。しかも彼女に恋い焦がれているから、余計に長く感じるのかもしれない。
 そういえば、山鳥のしっぽもとても長い。見た感じ9尺くらいある気がする。
 昨日山鳥の小屋を作ってやったのだが、しっぽが長すぎてなかなか大きさの合う小屋を作ることができなかった。完成予想よりも倍ぐらい大きな小屋になってしまったのだが、その原因の筆頭がその尻尾である。
 どうやら山鳥はあの長いしっぽを地面に垂らして過ごすのが好きみたいなので、9尺とまではいかなくても、7尺程度の高さの場所に足場を造ってやらなくてはならない。そんな場所に足場を作ろうと思うと、明らかに身長が足りない。残念。
 なんとか近くの切り株を切りだして足場にすることで完成したのであるけども、総制作時間は12時間。朝飯を食べてから夕飯までまるまる一日を使ったのである。………無駄な気がするけど、無駄じゃない気がする。
 というか、なんか僕と山鳥はすごく共通点が多い気がするぞ。
 山鳥は昼間雌雄が一緒にいるし、僕も恋人と一緒にいることが多い。
 山鳥のしっぽはとっても長いし、僕も一人寝する夜はとても長く感じる。
 山鳥一つでここまで恋愛観を深めることができるなんて思っていなかった。
 うん、なんかこれで一句出来そうな気がする。この感動を忘れないうちにさっさと仕上げてしまおう。


 ………よし、できた。最近稀に見る最高の出来だ、うん満足。
 さぁ、もう夜も遅いし寝ようかな。明日は恋人がやって来る日だから、しっかり片づけやらおめかしをしないと幻滅されてしまうかもしれない。その時に、この句を見せてやろう。
 ………えっと、なにか大事なことを忘れてる気がするんだけど………まぁ忘れるくらいだからそんなに大事なことじゃないよな。おやすみなさい。








 次の日、庭を散歩しているとぐったりして弱っている山鳥を見つけた。

後書き

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この小説について

タイトル 3.柿本人麻呂
初版 2010年1月8日
改訂 2010年1月9日
小説ID 3739
閲覧数 1649
合計★ 7
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作家名 ★せんべい
作家ID 397
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卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (2)

★けめこ 2010年1月9日 21時44分05秒
また登場いたしました、自称歴女のけめこです。
なんだかもう、全体的に軽い感じになっていますね。これを「キャラに親近感がある」と見るか、「古典をこんな風に扱うなんてけしからん」と見るかは人それぞれだろうと思いますが、私は前者です。
今までいたって真面目に意味を解釈し、競技用に覚えてきたので、こんな斬新な切り口があるとは!と感心させられっぱなしです。
そしてしっかりギャグ落ちで締めるという、持って行き方。私も身につけたいものです。

では次回もおもしろいのお願いしますねw
★丘 圭介 2010年1月10日 16時53分52秒
どうも、古典がまったく出来ない丘です。
では、感想を。
素直におもしろいですね。古典って風流や趣があるといいますが、けめこさんも言っているとおり、キャラを際立てるコメディ感覚で僕好みの作品です。
せんべいさんの感性おそるべし!

では。
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