Skyblue Future - 3.紅の騎士


 アーベルド騎士団。
 私が所属する騎士団の名だ。
 フェスティア王国にて、天空族が住む町にある、城に住む王族たちの護衛をするのが私の役目だ。
 このフェスティアで、王族の護衛をするのは、5つの種族の1つ。
 火炎族である。
 火炎族は5つの種族の中でもっとも戦闘力に優れている。
 その為、種族戦争の後、我々の種族は子供の頃から騎士になるために鍛え上げられ、もちろん私も騎士団の所属だ。
 種族戦争とは、かつてあった大きな戦争のことである。
 その名の通り、5つの種族が戦争を起こし、それを勝ち取ったのが、天空族。
 今の王族はその子孫である。
 我らはその王族を守るべく、毎日鍛錬を怠らず、日々その為だけに過ごしている。
 そんな私には。
「ナフリー」
「アルド」
 そんな私には、その天空族の幼馴染がいる。
「ナフリー。また城内を歩き回っていたのか?」
 歳は2つ下で、昔からずっと一緒に過ごしてきた。
「違うわ。弟が……ジャックがかくれんぼをしたいって言うから、ちょっと捜していたのよ」
「ジャック様が? どういうことだ、ジャック様の面倒を見るのは王子付きの女官の役目だろう。何故お前が面倒を見ている?」
 彼女は王族だ。
 本当は敬語で話さなければならないが、彼女はそれを嫌がる。
 だから、私は昔どおりに接している。
 「それが、女官たちがちょっと今度の成人式で色々忙しいから、面倒を見られなくなってしまったのよ。かといって放っておくわけにもいかないし、じゃあ私がって」
「そういうことか……」
 彼女は苦笑して話し、私は理解はしたが、困った彼女を放って置くわけにもいかない。
「私もともに捜すか?」
 私がそういうと、彼女は顔を輝かせ、
「ええ。ありがとう、アルド」
 その笑顔を見て、気づけば自分も微笑んでいた。
「じゃあ私はこっちの客間を捜すわね。貴方は厨房や王座の間を捜して頂戴。お父様やお母様がいるときに入っていってしまっては大変だわ」
「了解だ」
 彼女がその場から駆けてゆき、私も反対方向を捜し始めた。
 本当は城の中を巡回中だったのだが、城の中に隠れているのなら、問題はないだろう。
 巡回を再び開始し、それもかねてジャック様の影はないかと城内を捜す。
 赤い絨毯が先の先まで続くなか、
「よぉ、アルド。どうだ?」
 同じく騎士団に所属し、城内を巡回している仲間に出くわす。
「異常なし、だ」
 私は短く答え、仲間は、そうか。と言い残し去っていく。
 騎士は長々お喋りするためにいるのではない。必要以上の事は言葉にせず、最低限の状況がわかればそれでいい。
 しばらく城内を回っていたが、ジャック様らしい人物も見当たらず、侵入者らしき人物もいなかった。
 私はナフリーに1度報告しようと、彼女が捜しにいった方向に回れ右をして向かった。
 ここに来るまでに通った赤い絨毯を再び通り、やがて、ナフリーが捜しに行った範囲に入った後、彼女の姿を捜した。
 カツンカツンと自分の足音が誰もいない廊下に響き、次の角が見えた時。
 自分のとは違う、慌しい足音が近づいて来るのが分かった。
 このまま進めばそれとぶつかると思い、私は足を止めた。
 その角から飛び出して来たのが、
「! ジャック様」
「あ。アルド〜」
 私が探していた彼女の弟、ジャック様だった。
「ジャック様。ナフリー様を見ましたか?」
 私は彼女にジャック様を見つけたことを報告しよう、もし捜している最中だったりしたらと考え、彼に尋ねた。
「姉さまならあっちのお部屋にいるよ〜?」
 あっさりと返事は返ってくる。
 私はまた逃げられないよう、念のためジャック様と手を繋ぎ、ナフリーがいるであろう部屋へと向かう。
 そこに、焦りながら部屋を飛び出していくナフリーが見えた。
「あ。姉さま」
 彼女は私にも、声を出したジャック様にさえ気づかないまま、廊下を去っていく。
 だが、いつもと感じが少し違うように思え、まるで――。
「そうだ、知ってる? アルド。あそこにね、お客様のお兄ちゃんがいるんだよ」
「・・・・・・・・・・・・」
 まさか、な。

「おお〜い。アルド」
 そこに、先ほど会った同じ騎士の仲間が再び現れる。
「またお前か。アルフォード」
 アルフォード。
 騎士の仲間であると共に、私の友人だ。
 彼はいつもふざけたような軽いノリのような口調で話すが、騎士としての腕は素晴らしいものだ。
「またとはなんだい。巡回交代の時間だって・・・・・・って、ジャック様?」
 視線を下ろして、アルフォードは私のすぐ隣にいたジャック様に気づき、驚いたのか、不思議そうな顔になった。
「アルド。騎士のお仕事?」
 アルフォードの話でわかったのか、彼は自分の視線よりかなり上にある私の顔に目線を向けた。
「ええ。すみません。お1人では危険ですので、お部屋まで付いていきます」
 私はアルフォードに、直ぐに行く。と言い残し、ジャック様を送った。


「お疲れ〜」
「疲れるのは、これからさ」
 ジャック様を送り届け、私は騎士たちが修練をする場所、つまりは訓練場に来た。
 そこには、私と同じ、騎士の火炎族たちがそれぞれ己にあった武器を使い、訓練をしている。
 アルフォードもまた然りだ。
 武器は武器庫に置いてあるものと、いつも身につけているものを使っている。
 だが、今使っている武器が壊れない限りは、武器庫の物が使われる事は稀にしかない。
 もちろん私も、今腰に下げている剣が折れるなりするまでは変えることはないだろう。
 使い慣れたものが一番良い。
「アルド。お相手願えるかな?」
「アルフォード・・・・・・。お前は相変わらずだな」
 私は良い意味で彼に言い、それが伝わったのか、彼は笑って言った。
「お前みたいにいつでもどこでもキビキビしとらんさ」
「・・・・・・それは、褒めてないな?」
 私が念のため問うと、
「いや。褒めてるよ」
 おどけた表情でアルフォードは言った。
 彼は、そういう人間だ。
 私はそれ以上何も言わず、アルフォードとの稽古に専念する事にした。
 お互い剣を使い、それが今音を立てて相まみえている。
 キィィと、剣と剣が擦りあう音がどうも心地よく聞え、いつのまにか思考は止まり、ただ何も考えずそれに専念するだけだった。
 やがて、何も言わない私を気にかけたのか、
「お前さ・・・・・・ナフリー様と幼馴染なんだって?」
「ああ。・・・・・・言っていなかったか?」
「聞いてないね」
 即答され、私は少しの時間答えを考えた。
 そして質問で返す。
「・・・・・・お前は、何故騎士になろうと思った?」
「はぁ? オレやお前の家は、火炎族のなかでもトップの騎士の家系だ。騎士になるのは当たり前だろう?」
 アルフォードの答えは、最もだろう。
 火炎族は天空族、つまり王族を守るために存在する。
 火炎族のすべてがそうではないが、アルフォードが言ったように、両親が立派な騎士であったりする家系は、ほぼ子供は両親の後を継ぎ騎士になる。
 私もアルフォードもその1人だ。
「なら、お前は何のために剣を振るう? 騎士だから、務めだからか?」
「・・・・・・そんなところだな」
 アルフォードは考える素振りを見せて、次にそう答えた。
 その答えも、間違いではないだろう。
 火炎族の中でも騎士の家系は、騎士になるためだけに、子供の頃から鍛えられ、今もさらに訓練を重ねるのだ。
 すべては、王族を守る誇り高き“騎士”になる為に。
 だが、それなら・・・・・・力とは誰がために振るうのか。
「私は、もちろんそれもある。だが、もう1つ理由がある」
「もう一つ?」
 私は頷いて、言葉を発した。
「大切な人を、守るためだ」
 そう。
 私は、その為にさらに上を目指す。
「・・・・・・それが、ナフリー様だとでも言いたいのか?」
「――ああ」
 しかめっ面で聞いてきた彼に、私は堂々と頷いた。
 私は、あの日・・・・・・彼女をずっと守ると誓った。

「また騎士の練習か」
 あの日、私は訓練を抜け出し、そこから近い城の中をうろついていた。
 ナフリーたちも見当たらず、探している途中だった。
 毎日毎日「立派な騎士になるのだ!」の連発な人生だった。
 火炎族の騎士家系に生まれたからには、皆誇り高き「騎士」にならねばならない。
 火炎族がすべて王族に使える騎士になるわけではない。
 ただ、優秀な騎士の父からしては、今思うと私にも後を継いで、立派な騎士になってほしかったのだろう。
 だが、あの時の私はそんな運命を好んではいなかった。
「オレは、普通に暮らしたいんだよ」
 そんな悪態をついていた時だった。
「きゃぁぁ!!」
「! ナフリー!?」
 彼女の、悲鳴が聞こえたのは。
 私はすぐに声がした方に走り出し、そこに着くと、そこにはナフリーと、もう1人・・・・・・マントで顔まで隠れた人間がそこにいた。
「くそっ、見つかった!」
 声から男だと判り、私は誰かを呼ぼうとした。
 だが、
「動くな。動けば、こいつを殺す」
 ナフリーが人質にとられた。
 今の自分には、何もできないのか。
 声を出せば、確実にナフリーが殺される。
 なら。
 あの時の私には、そんなことしか頭に浮かばなかった。
 腰に下げていた稽古用の剣を片手に、私は男に向かって走った。
「はっ!」
 剣はナフリーを掴んでいた手を仕留め、男の手から血が滴り落ちた。
 同時にナフリーはそれから逃れ、私の元に走ってきた。
「くそ!! 調子にのるなよ! ガキ!!」
 男はマントで隠れていたが、自分と同じく腰に剣を付けており、剣の構え方から、今の自分より遥かに強いと分かった。
 練習をサボってばかりの自分とは、比べものにはならない。
「はぁぁぁ!!」
 ――オレは、こんなところで――
 男の叫び声と共に、ふとその時のオレの頭を、そんな言葉が横切った時だった。
 キィィ!!
 男の剣が半回転し、くるくると宙を廻って、地面にぐさりと刺さった。
「そこのお前。オレの息子とナフリー様に何か用か?」
 その時ほど、父親の背中が逞しく見えたことは無い。

「そのあと犯人は捕まって、一件落着だ」
「ふ〜ん・・・・・・」
 アルフォードは納得したのか、しなかったのか、分かりづらい返事を残し、剣を止めて去っていく。
「そろそろ、終わるか」
 そして振り返り、私にそう言った。
「・・・・・・ああ」
 答えは、聞かないことにした。
 彼ならば、「間違ってる」なんて言うわけが無い。
 むしろ、「そうだな」と、言ってくれると思っている。
 この思いは、騎士としてではなく・・・・・・“アルド”としてあるのかもしれないが。
 それでも、その気持ちは今もなお、変わってなどいない。

後書き

『Skyblue Future』3話目です。
今回の担当は五月です。

いろいろとけめcに修正してもらった所があったりするのですが^^;(特に誤字脱字を;;
何度見直してもそれが消えない五月です(苦笑

楽しんでもらえれば幸いです。

この小説について

タイトル 3.紅の騎士
初版 2010年1月22日
改訂 2010年1月22日
小説ID 3764
閲覧数 973
合計★ 3
五月の写真
作家名 ★五月
作家ID 497
投稿数 60
★の数 165
活動度 11432
一言・・・・・・頑張ります。

http://simotukiharuka.blog.so-net.ne.jp/
自分の小説ブログです。
ここに載せた小説についていろいろ書いてます。

コメント (2)

★丘 圭介 2010年1月24日 18時36分37秒
どうも(^-^)/

ファンタジーは僕はあまり好きではありませんが、五月さんのファンタジー小説を見てから少しずつ読んでいこうと思いました。

三人で書いているということでなかなか難しいことではありますが、しかしそれぞれの世界観や個性があって面白いです。

では。
★五月 コメントのみ 2010年1月26日 18時44分03秒
丘さん>コメントいつも有難うございます。

そうだったのですか!?
それは光栄です。

有難うございます^^

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