私だって、あんたにずうっとあこがれてたんだからね、夢。

くらり


―片思い?そんな風に自分の思い、自分の中に押し込めちゃうの?


そういう風に、あんたは言った。

そんな風に言えるの、あんたが美人だからじゃん?

私みたいに、

普通に学校行って、

普通に授業うけて、

普通に・・・

窓から見えるあの人を、目で追いかけてる・・・

そんな思い、したことないでしょ?

あんたはいつも

普通に学校行って、

普通に授業うけて、

普通に周りに女の子集まってきて、

普通に男の中でうわさの的になって、

普通に・・・

窓から見えるあの人を、私の目の前から横取りしてしまった

目の前で何が起こったか、

私は分からなかった・・・

ううん・・・、理解したくなかった。

あの人の唇を、奪った。

奪ったなんて表現、厚かましいのかもしれない。

でも、それくらいあの人は私にとって

大切で、

汚されたくなくって、

私だけのものにしたかった。

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「え?」
希が・・・
「死んだ・・・?」
え?
[真人君と一緒に・・・]

嘘だっ。

私は走った。
家を飛び出したとき、携帯電話から微かに聞こえた、友達の声を頼りに。
―踏み切り・・・
踏み切り・・・踏み切り・・・
頭の中で不吉な映像が流れる。
そんな場面、実際に見たことないはずなのに、
すっごく現実味があって、リアルで。
何度も頭から振り払おうと思った。
けど、いったん頭の中に住み着いた虫はなかなか飛んでいかない。
「・・・っ」
涙がにじむ。
真冬の冷たい空気が、鼻を刺す。
ぐしゃぐしゃの顔だったはず。
涙で目を潤ませ、寒さで顔が赤く火照り、何度も頭を振って、一生懸命走っている姿。

・・・人だかり・・・。

赤いランプがあちこちでちろちろ光っている。
不規則にりろりろするその赤い光のせいか、画面がゆがんで見える。
「真人・・・」
つぶやいた自分の声に、心臓がどっくんとはねた。
人ごみの中に突っ込んでいった。
「失礼します」「すみません」「通してください」「どいて」「通して」「どけっ」
もう、最後のほうは言葉になってなかったかもしれない。
人の波の中を泳ぎながら、前に進んだ。
最終的には、人の足元を這いつくばった。
足の森を進む。
視界が開けてきそう・・・。
真人君・・・。
その一心で私はここまできたけど、

踏み切りの事故にあったってことは・・・相当な・・・

「まっ・・・っこ・・・」

顔を上げたら、そこは、赤い世界だった。

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「・・・ぇ・・・夢?」
「何よ」
夢は心底、希が許せなかった。
真人の唇を奪い、命まで・・・。

「ごめんね」

希が、ぽつんと言った。
「はぁ?」
夢は、のどから声を絞った。
「いまさら、謝られても・・・」
「・・・」
「・・・こっ・・・困るし」
涙が、髪を伝い、病院の白い床に透明の花を咲かせた。
これ以上ないくらいの憎しみの色に染まっているように、希には見えた。
希は、包帯でぐるぐるに巻かれた手をベッドから出す。
くっと顔をゆがめた希に対して、夢の怒りは最骨頂に達した。
「いい加減にしてよ。何なの今の!!ねえっ!あんた、人の命奪ってんだよ?分かってんの?そんな人の痛みに比べたら、今手ぇ動かしたくらいで傷が痛んだなんて、笑い事にもならんわっ!」
自分の言ってることが、明らかにおかしいだろうってことなんか、夢は十分理解していた。
でも、そう言わないと、希のやった行為を認めてしまったみたいで嫌だった。
希の行為すべてにケチをつけたかった。
「あんたの自殺を・・・自殺しようとしてるところを、真人君が見てて、それを助けようとした。・・・それが、あんたは望んでないのに、真人君が勝手に助けたって言って、言い逃れようとするなら、私はあんたを今すぐにでも殺せる」
本当に出来るかなんて、分からない。
けど、大きなことを言わなくては、という気持ちからか、そんな言葉が出てきてしまった。

「・・・殺せるもんなら殺してよ・・・」

は?

「私は死にたかった。何にも楽しくないんだもん。みんな私の言うことは素直に聞いてくれて、私が困ってたら、誰でも助けてくれて。欲しいものはいつでも頼めば誰かがくれる。家でもそう。召使に言えば、学校から帰ってきたら、どんなものでも私の部屋においてあった。つまんないわよ、こんな生活。だから、生まれ変わって、普通の子になるんだって・・・」

はあぁ?!

「ばっかじゃないの?」
夢は、病室にほかの人が居るにもかかわらず、大声を出した。
「あんた、ホント馬鹿だよ。知ってたけど。馬鹿馬鹿馬鹿。私はいつでもあんたみたいな生活したいって思ってたよ。思いどおり生活。あこがれるじゃないっ。魔法使いのようなものよね、望めば何でも出来るんだからっ」
すらすらと言葉がのどを滑る。
「いいじゃない。何で死ぬのよ。命無駄にすんのよ。そんなに普通の生活したいんなら、召使を無しにしたら?どうしてそんなことも出来ないのよ。ほっんとに馬鹿」

「・・・あんたのほうが、馬鹿じゃん?」
「は?」
「なんで、そんなににくいやつの病室に、私が目ぇさめるまで居てくれんの?」
「・・・」
「ねぇ?」
「・・・・・・あんたに怒りぶつけるためでしょう?そんなことも分からないの?」
夢の頬が見る見る赤くなっていくのが、希はみていて面白かった。
「馬鹿?」
「もういいっ。せっかく居てあげたのに、何その言い草」
「ふふ・・・」
「はぁ?あんた、ホントむかつく」
「いいよ、むかつけば?私も、あんた本当にむかつくから」
「お互い様っ。もう帰んね、あんたのこと一生許さないから」
そういって、夢は病室から出て行った。
「ばーか・・・」
希は呟いた。。


私だって、あんたにずうっとあこがれてたんだからね、夢。

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手術室のランプが消えた。
「あぁっ」
私は、手術室から出てくる先生を待った。
かつかつ・・・
「あぁ、先生」
先生はにっこり笑った。
「真人君の手術は無事成功しましたよ。お母さん」

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新たな3人の三角関係が、この先どんな風に描かれていくかは、誰も知らない、未来の話である。

この小説について

タイトル 私だって、あんたにずうっとあこがれてたんだからね、夢。
初版 2010年1月28日
改訂 2010年1月28日
小説ID 3771
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