夏は俺の敵

一歩外に出れば何が待ち受けているだろうか。
俺は、考えたくもないし出たくもないね。
何せ俺の憎き夏の太陽があるのだから。
それはもう猛暑なんてものじゃない。
まるでマグマの中にいるようだ。
俺の身体は、どろどろに溶けていく。
そして、大噴火を起こすのだ。

「そんなところに出れるかよ」

それに俺はクーラーが嫌いだ。
だから、扇風機一台でいつも乗り越えている。

今日は、幸い会社が夏休みだ。
同僚はハワイに行くなどと言っていたが、俺は信じられないと思った。
日本ですら暑いのにわざわざ海外に行ってまで暑さを体験するなんて・・・。
考えただけで死にそうだ。
俺は、ハワイなんかより北極に行きたいくらいだ。
金があったらの話だが・・・。
別に俺は、寒い地方の出身じゃない。
普通の人より少し暑いのが苦手なだけだ。

窓を全開にしているせいか蝉の声がうるさい。
その傍ら涼しげな風鈴の音が聞こえた。
外では子供たちが蝉取りでもしているのだろうか。
それとも川や海、プールにでも泳ぎに行っているのだろうか。
まぁ、俺には到底無理な話だがな。
何せマンションの一階まで行けないのだから。
扉を開けただけでもうアウトだ。
凄まじい熱風が俺の身体を襲う。
考えただけでも恐ろしい。
身の毛がよだってしまう。

「だが、出ないわけにもいかない時がある・・・」

食料だ。
丸三日間家に引きこもり、毎日三食食べ続ければ誰だって食料が尽きてくるだろう。
まさに今の俺のように―――。

さて、どうするか。
このまま家に引きこもって残りの夏休みを過ごすか。
それとも、外に出てスーパーまで歩いて行くか。
・・・どっちの選択もしたくない。
引きこもったままでいたら俺は新聞やニュースに出るだろうな。

『一人暮らしの会社員、夏休み中部屋で餓死』

堪ったもんじゃない。
こんなことで有名にはなりたくない。

ならば部屋から出るといい。
この俺に一階まで辿りつけるだろうか・・・。
自信がない。
玄関も開けられるかわからないのに。
俺にはもう一つ問題がある。

それは―――。
今朝で食料が底をついたのだ。
何たる不覚!
休暇に入る前に買い物に行くべきだった。
あの日は最高気温35℃を越したために直ぐに帰宅したのだ。

「残りの休暇を快適に過ごすために買い物に行くしかないな」

俺は、人生最大の決心を今ここに示した。
俺も成長したってわけだ。

部屋の遮光カーテンを引いてみる。
眩しすぎるほどの光が部屋一杯に注ぎ込まれていく。
外では道路がじりじりと焼かれていた。
あの上でステーキでも焼けそうだ。

照りつける太陽。
雲ひとつない青青しい空。
暖かい風。
皮膚癌の素の紫外線。

さて、どんな格好をして出るかが問題だ。
俺的には、日傘を差して手袋をして日焼け止めを塗って―――。
対策を挙げたら限がない。
とりあえず、玄関までは行ってみよう。
カーテンを元に戻して俺は玄関に向かった。
そこで日傘が目にとまる。
日傘と日焼け止めで何とかしてみるか・・・。
その前に玄関の外を確認しよう。
俺は、恐る恐るドアノブを握る。
ゆっくりと回して少しの隙間を開けた。
むわっと外の熱気が俺の顔をくすぐる。
バンッ!と勢いよく閉めてしまった。
しかたがない。
すごい熱気なのだから。

背中に冷たい滝が流れている。
この中を歩かなくちゃだめなのか。
ぶつぶつ言いながら日焼け止めを探す俺。
数分後に路上で死んでなけりゃいいんだが。

全身に塗りたくってやった。
これで皮膚癌になる確率は、だいぶ低くなたっだろう。
さすがの俺も長袖を着るのはいやだから、パーカーを着ることにした。
あとは日傘だな。

スニーカーを履く。
パーカーのファスナーを上まで閉める。
日傘を手に持ち、いざ出陣!

廊下はまだ涼しい方だろう。
エレベーターも大丈夫だ。
やはり、ロビーの外が問題だ。
俺は、意を決してロビーの自動ドアを潜った。


・・・すぐに戻ってきてしまった。
最大の敵は、やはり熱気か。
温度も敵だが熱気がラスボス。
俺は、ラスボスに挑む勇者といったところか。
だが、武器がない。
こういう時は、どうするもんなんだ勇者って。

武器がなければ回避するまで。
俺の頭に浮かんできた案はこれだった。
つまり、走れと?
俺を殺す気か。


ハッ!日傘を盾にすればラスボスの攻撃を受けずに済む。
もう、この手しかない。


時刻は6時を丁度まわったところ。
俺は、今晩のアイテム(おかず)を手に入れるためにラスボスの中を突っ切るのだった。



どうか生きて還れますように―――。

後書き

ようやく完成しました!
長かった・・・。

このシリーズは、あと2つ書きます。
楽しみにしていてくださいw

感想などを書いてくれると嬉しいです。

この小説について

タイトル 夏は俺の敵
初版 2010年2月17日
改訂 2010年2月17日
小説ID 3801
閲覧数 822
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幸村響の写真
熟練
作家名 ★幸村響
作家ID 614
投稿数 9
★の数 22
活動度 1561
活字中毒な為、読書が欠かせません。

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