TWINS - 第一章の四 狂桜2

「狂桜(くるいざくら)、恐らく狂桜で間違いないでしょう。」
テレビ電話の画面に映った化座沼先輩は、言った。それに椛が首を傾げる。
「狂桜、狂わせる桜という意味です。桜が咲く頃に姿を見せ、自分を見たものを狂わせる。そういう怪魔です。」
「でも、それだったら普通、裏庭の狂い咲きの桜じゃなくて、普通の桜のそばにいればもっと多くの人を狂わせられるんじゃない?」
何気に怖いことを椛が言った。確かにそうだ。この学校の裏庭にある狂い咲きの桜なんて見る人はあまりいないし、まず存在を知っている人が少ない。そんな狂い咲きの桜をわざわざ見るようなロマンチストは現代には少ない、普通の桜に宿っていたほうがたくさんの人を自分の手で狂わせられるというのに。
「よい質問ですね椛さん。確かにそうなんですが、10年まえの事です、10年まえのオカルト部の人に狂桜はあの桜の木の下に封印されたんです。能力とは別のところでそういう力を持っている人だったそうです。」
「何でそんなこと知ってるんですか、敬己兄さん。」
「前原先生に教えていただきました。」
前原長(まえはらひさし)、日本史の教師。還暦間近のおじいさん。別名おじいちゃん先生。それと同時にオカルト部の顧問をやってくれる寛容で、奇特な先生だ。そんなまえからオカルト部の顧問やってたのか。

「成程。で、どういう風に狂わすんだ。その狂桜って奴は。」
淡々と、しかし若干機嫌よく聖夜が言った。一年間の付き合いでよく分かるもんだと自分で思う。まぁ機嫌がいい理由は、いわなくていいよな。俺も言いたくない。
「そうですね、現代の言葉を借りて言うなら、あった人間をノイローゼにします。すぐに、ではなく一週間後に。」
「ってことは、その陸原佑子っていう子危ないんじゃないかな。」
聖が言った。ここには日付が書かれていないが。だいたいもう一週間がたっている頃だろう。                
「陸原佑子って椛と聖のクラスの奴じゃないのか?」     
俺が言った。確かそうだったはずだ。一年のときに俺と聖夜と同じクラスで、クラス替えのときに「次は妹さんたちと同じクラスだよー」と、言っていた気がする。             
「そう言えばそうだね、明日にでも聞いてみるよ。まだ一週間たっていなければ、だけど。」                
「だな。そっちは椛と聖に任せよう。」           
そうして、翌日の放課後に事は起きた。           
                             
「大変だよっ!陸原さん今日休みだって!」         
ドアがバンッと開いて、椛が入ってくるなり叫んだ。いつかドアが壊れるんじゃないかと思うが、そんなことは今はどうだってよかった。椛が言った言葉に、俺と聖夜と忍は、注目する。   
「何だって?」                      
「今日、陸原さんに聞こうと思った。でも先生に言わせると何か、陸原さんのお母さんが「娘の様子が変だ」って言ってたんだって!」                         
一気に大声でしゃべったからか、ぜぇぜぇと椛が肩で息をする。
「つまり」                        
「最悪の事態ってことだな。」               
「ですね。」                       
俺、聖夜、忍の順に言った。                 
「ところで椛、聖は?」                  
俺は聞いた。いつも椛と一緒に来るのに今日は、椛1人だった。
「え?聖ちゃんなら、トイレに行くって教室で別れたの。待ってるよって言ったんだけど、先に行ってって。いわれて。」   
椛がいい終えると、聖夜が立ち上がった。          
「あの馬鹿が!」                     
そう叫んで、椛を押しのけて部室から出て行った。
「え!?なに?」                     
椛がいったが、俺は何も返さなかった。違うことで頭がいっぱいだった。                         
                             
 まさか。                        
そう思いたかった。しかし、聖夜のあの行動。ごまかすことはできない。                         
「まさか、聖先輩。1人で狂桜に向かったなんて事はないですよね?」                          
忍も同じことを考えていたらしい。             
「俺もまさかと思ったけどな、でも可能性は高い。」     
普段、何をするのも椛と一緒のあいつが、1人でトイレに行くなんてことは皆無に近い。それなのに1人で行動なんてあいつは何を考えているんだ!                                                 
「急ごう紅葉、忍くん。」
見解は一致した。早く、裏庭へ行かなければ。

後書き

 あれ?何か結構シリアスな展開になってる?

おかしいなぁ、何でこうなったんだろう。まぁ、これはこれで、ファンタジーの醍醐味ということで。

この小説について

タイトル 第一章の四 狂桜2
初版 2010年3月25日
改訂 2010年3月25日
小説ID 3872
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海月奏香の写真
熟練
作家名 ★海月奏香
作家ID 648
投稿数 16
★の数 16
活動度 1736
えーと、海月奏香です。くらげじゃないですよ、うみづきですよ。間違ってくらげなんて言われたら泣きますよ!

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