墓護り - 序章

楼音



 音がしない。聴覚だけに神経を集中させ、幾ら研ぎ澄ませようとも、何も。無音。
 何も見えない。目は確かに開いているのに。無窮の闇。
 感じない。この世界の熱を、風を、空気を。自分の存在を。
 自分の呼吸が聞こえない。自分の体躯が見えない。自分の気配が感じられない。

 そうか。

 俺は死んだのか。
 死んだから「ここ」にいるのか。

 何故わかるのだろう。自分が感じられないのに、「ここ」にいるとわかるのは。
 それよりも、死んでもこういう「意識」ってモノはあるんだ?これは初めて聞いた、いや、感じたなぁ……。あぁ、それとも。
 「ここ」は地獄ってやつかもしれないな。

 そうだ。これは地獄だ。

 ここには何もない。
 あるのは、罰を受けるための、罪を忘れぬための、孤独に艱苦させるための、この僅かに残った自己だけ。
 そうだよな。こんな場所に永に存在していたら、気がどうかしてしまう。

「魂への判決が下った」

 …女の声?待てよ。なんでいきなり?まるで空間に反響してるみたいだ。早くも俺の精神は狂ったのか?案外、俺って弱かったんだな。魂の判決とか…。幻聴が起きるなんてな。

「幻聴?何を呆けたことを。これは、私の発する、私の声だ。」

うわぁ……、もう駄目だな、俺。幻聴と話が通じている。これはきっと末期だろう。自分の精神の脆さに感動すら覚えるな。

「その現在の自己分析の仕様から見て、狂ってはいない。が、弱ってきていることも確かだ」

はは、何なんだかな。幻聴に状況を判断され……




「幻聴でないと言ったが聞こえなかったか貴様!!!!」




 っ!!?
 痛てぇ…。何だよ今の…。圧迫された?いや、違う。もっと、一瞬。掻き消されるような……。

「今のは私の力だ。貴様にそのような能力はなかろう」

 その通りだ。そんな力があって、自分に使うか。何より、俺は自分から痛みを感じたいなんて、自虐的な嗜好は持ち合わせていない。

「ふん…。無駄話をしてしまった。まだ私を幻聴の存在というか?」

 言わないっての。もう、何でもいい。

「お前には魂の転生を許さぬ」

 転生?……本当なんだな。死後の魂は、また生まれ変わってくるって。で、俺はそれが許されない、と。
 なら、俺は永遠にこの地獄に存在し続けるのか?

「貴様、根本から間違えているようだな」
 
 は?

 「ここは貴様ら人間が描いた地獄などという下劣な場ではない。そもそも、死語の世などないのだ」

 ……へぇ?じゃ、今俺が在る此処は何処だろうね?

「転生を許すか許さぬか。それを決める裁判の地だ」
 
 へぇ?色々と常識が覆されたなぁ。面白いじゃないか。じゃあ、許されなかった魂は、俺は、いったいどうなるわけ?この意識だけが永久に在り続けるってのも、十分に苦しいと思うんだけどな?

「転生為さぬ魂に、存在意義など無いに等しい」

 結構酷なこと吐くね。目の前に、その魂があるっていうのにさ。

「黙れ。貴様にはさして関係のないことだ」

 いや、大いにある。それとも、存在意義無しの俺には、どんな事も無関係だと言いたいのか?……ま、それでも構いやしないさ。で、どうなるんだ?その無価値な魂は。

「神の力により、霧散する」

 あっけなく言ってくれるね。……霧散、か。一瞬で散るのか?それなら多少は潔いものだよな。本来俺のありたかった生き様だ。ま、もう死んでるから生き様どころか、死に様通り越して消え様だけどさ。

「だが、貴様には特別措置が下された」

 …は?

「このような事例は未だかつて聞いたことがないが、オリシス様御本人の御所望だ。光栄に思え」

 オリシス…?……誰?

「貴様、生前神々の話を多少なりとは聞かなかったのか。オリシス様は偉大な神であられる。普通の者なら知識として備えている筈であろう」

 生憎名前を覚えるのは苦手な性分でね。そもそも神とかそこまで興味なかったし。まず、俺の家系は無神論者が揃いに揃ってた。万一話されても一度きり。それに俺のこの無意識な能力。覚えてるはずが無い。

「…何故オリシス様はこんな者を…。オリシス様は冥界を統べる王であり、神。肉体を離れた魂の存在は、このお方が掌握されている」

つまり、そのオリシスって神が俺を消すわけだな。

「敬称をつけぬか愚弄者!!消える筈だったその魂に、オリシス様は救いの手を差し伸べられた。その寛大なる御心に敬意をはらえ」

……そんな低い声で脅すように言われたくないな。で?その特別措置ってのは何なわけ。

「ふぅ……。やっと本題に入れるではないか。貴様の無知にはほとほと呆れる」

…うるさいな…なんて、言える立場じゃあないか。睨まれてる気がするのは気のせいか?

「…おまえには、オリシス神の名の下に、新しい名と任を与える」

 新しい名?任…。まさか、冥界の?

 
「新しい名として『エイジ』、

任として『墓護り』を与える」




       この時からだったのだろうか?
        全てが回り始めたのは。

後書き

本文が規定ギリギリという短さ…(汗)
自分の語彙の無さに泣きを見ている毎日です。
感想、ご意見お待ちしております。

追記:微妙に修正しました。

この小説について

タイトル 序章
初版 2010年4月1日
改訂 2010年4月2日
小説ID 3889
閲覧数 701
合計★ 7
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コメント (6)

海月奏香 2010年4月1日 22時31分21秒
はじめまして、海月奏香(うみづきそうか)といいます。
読ませていただきました。

すごいですね!こんな話が思いつくなんて一瞬デスノートを思い出しました!

ただ、主人公とかの紹介文は要らなかったと思います。
ここから、どんなキャラクターがでてくるんだろうって考える楽しみが減ってしまいますから

そうですよね。ここの規定の文字は最初は苦しいですよね。
私も最初は苦しかったです!ああ、届かない。まだ届かないって何回打ち直したことか。

がんばってください!応援してます!

海月奏香様へ コメントのみ 2010年4月1日 23時02分37秒
早くも感想•ご意見ありがとうございます。

私は大場つぐみ様の作品は大好きなので、ちょっとでも連想していただけて光栄です。ついでにいうと、[少年陰陽師]という作品がマイブームです。

キャラクター紹介のご意見、ありがたく頂戴いたします。確かにそうですよね。私も「この先どうなっていくんだろう?」というのが薄れるのは寂しいです。

最初の最初に投稿しようとしたときはいくら付け足しても届かないものでしたから、レポート用紙を引っ張り出して「これ(400字)4枚分か…!!」とか呻きながら書いていました。しばらくはノート→レポート用紙→パソコンの日々が続きそうです…。

応援の言葉ありがとうございます!
春休みの期間が終わると亀更新になると思いますが、精一杯頑張らせていただきます!
★せんべい コメントのみ 2010年4月2日 0時25分41秒
初めましてせんべいです。


長編にはコメントしないので、(読むのがめんどくさいからw)早いうちにコメントをつけておきたいと思います。

長編になるはずの展開なのに、本文規定の文字数に届かないという意味がちょっと理解できません。
今回投稿されたのは、あくまでも初めの骨組みだけであって、肉付けが明らかに足りないように思えました。
会話だけで今回は展開しているから、明らかに描写が足りないです。
もちろんそれだけでも十分話は読めるんですけども、やっぱり主人公の気持ちやら周りの風景やら(今回は、周りが真っ暗だったっぽいので仕方ない)を組み込めれば、読者もその世界をもっと想像しやすくなると思います。




墓守の話って、古代エジプトにありましたっけ。
その神様の一人に「オシリス」っていたから、それを文字って「オリシス」にしたんでしょーか。どうでもいいですがw


では、失礼します。
★佐藤みつる 2010年4月2日 2時57分02秒
まだ序章ということで感想は特につけません。
このあとどうなっていくのが楽しみなのでぜひ頑張ってください!
小説というよりはどちらかというとマンガのような印象を受けました。
けれど面白いな、続き気になるな、と感じたので期待を含めて評価つけました。
★水原ぶよよ コメントのみ 2010年4月2日 9時57分19秒
主人公の日常を書いて、そこで突然死ぬ羽目になる経緯を書けば、余裕で規定いくのではないかと思います。
物語の展開上、切れ目の関係上、長編になるはずの展開なのに、本文規定の文字数に届かないという、のはあるかと思います。
ただ主人公の日常が判らないだけに、いきなり、
「お前には魂の転生を許さぬ」
「神の力により、霧散する」
「だが、貴様には特別措置が下された」
というのは強引な気がします。
読者は主人公目線で見るのがほとんどのはずですので、

……霧散、か。一瞬で散るのか?それなら多少は潔いものだよな。本来俺のありたかった生き様だ。ま、もう死んでるから生き様どころか、死に様通り越して消え様だけどさ。

と主人公が納得する経緯、まあ冒頭にあった主人公の日常を書いてほしかったと思います。ちなみに私はデスノートではなく、幽遊白書を思い出したんですけどね。知らなかったらぜひ読んでください。
楼音 コメントのみ 2010年4月17日 14時03分31秒
コメント返しがずいぶん遅れました・・・。

せんべい様
最初は敢えて会話のみもいいかな?・・・という考えはもっと文章構成能力がある人のものですね(汗)ご指摘感謝いたします。この話は提出用の絵を描いている最中(イラスト部なので)に思い浮かびました。それでインターネットで調べたら古代に本当にあって驚きました。(今まで本の中の架空の役だと思っていた人)
未熟ながらに努力させていただきます。コメントありがとうございました。

佐藤みつる様
楽しみと書いてくださり本当に嬉しかったです!
確かに家にある本棚をみると漫画の率の方が高いです。(しかも圧倒的。)
もっと小説の研究もさせていただきます。
コメントありがとうございました。

水原ぶよよ様
確かに何の前提もなしには無理やりだったかもしれません。だんだん過去を明かしていこう!・・・という考えにしても日常くらいはよかったかもしれません。
幽遊白書は興味はずっと前からあるのですが、読んだことはないです。HUNTER×HNTERは現在進行中でよんでいるのですが・・・。機会さえあればぜひ読んでみたい作品です。
コメントありがとうございました。
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