TWINS - 第二分の三章 恋華伍

「てめぇらこいつに何しやがった!」

 俺は壁に拳をたたきつけた。壁を殴った反動は、痛いなんてものじゃなかったけれどそんなことはどうだってよかった。
 椛の髪が切られていた、左は長いのに右は短い、椛に一番近い女の手にはターコイスブルーの髪が握られていた。それを見て俺は、激怒した。

「せ、聖夜くん。これは、私が自分で切ったの!」
「それでもこいつらが切ったようなもんだろうが!!」
椛が言ったことは本当だろう、こんな奴らを庇うような奴じゃない。しかし、こいつらが椛に乱暴をしたことは紛れもない事実だ。それが許せなかった。
 俺は重力を手の中で丸めて、重力の塊を作る
「女だからって容赦しねぇぞ。」
 塊の大きさをサッカーボールくらいにして、放つ準備をする。
「ま、まって聖夜くん。そんなことやっちゃだめ!先生がきちゃうよ」
そんなこと別にかまわなかったが、椛のその言葉を聴いて女どもが逃げていってしまった。
「待てこら、逃げんな!!」
「聖夜くん。もういい、もういいよ。来てくれてありがと。」
椛は涙を流しながら言った。女達を追おうとした俺の服のすそを掴んで、俯きながらいった。俺はそんな彼女のターコイスブルーの髪を持って、一言つぶやいた。
「ゴメン。」
ただそれだけしか浮かばなかった。彼女の髪が短くなったのも、彼女のローファーがなくなっていたのもすべて俺のせいなのだ。俺が彼女のそばにいなければこんなことにはならなかったのだ。
「いい、大丈夫。ちょうど切ろうか迷ってたし、かえって良かったかも」
なんて、彼女は涙を浮かべて綺麗に笑って見せた。
 そして翌日、彼女は長かった髪をバッサリ切って登校してきた。聖には「えへへー、切ってみたよにあう?」なんていっていた。彼女の短くなった髪を見て、俺は誓った。

 






 彼女を必ず守ると、絶対に泣かせはしないと――――。








あれから、もうすぐ一年がたとうとしている。今見てみると彼女の髪はセミロングと呼べるか呼べないかの境目辺りまで伸びていた。
 ターコイスブルーの髪は夕日に透けて、きらきらと輝く。その輝きをゆらゆら揺らしながら彼女は赤い鉢巻をもって刺繍をやっている。そして、布の裏側から針を引っ張って玉結びをし、あまった糸を糸切バサミで切って、針を針山にさし、鉢巻を机の上にたたきつけて両手を上げて彼女は叫んだ。
「終わったー!やぁっと終わったよー、聖夜君ありがとー。」
俺の手を掴んで、彼女は笑った。
「そんなに喜ぶことか?鉢巻の刺繍が終わったことが。」
「共同作業って気持ちよくない?」
確かにそれは気持ちいいものかもしれないけれど、俺はお前か紅葉か聖、つまりは身内意外とはやりたくない。
「そう、かもな。」
「そういえば、去年の事ちょっと思い出しちゃったな。」
「あれか?」
「うん。」
考えてることは、2人とも同じならしい。少し嬉しい。
「吃驚だよ。あの人たち1ヵ月たったら退学になってたんだもん。」
「当然だろ。」
まぁ、あいつらはばれない様やっていたんだけれど、俺が椛に乱暴した腹いせに、あいつらの喫煙だとか売春だとか薬物乱用を徹底的に調べ上げて、学校に匿名で校長の机の上においといた。停学位にはなるかなと思っていたが、退学だったことには俺も吃驚した。

「そうだよ。あ、メール着てた。聖ちゃんだ。紅葉と聖ちゃんまとまったんだって!」
「そうか。」
あいつらまとまったのか。あいつらが、聖が言ったなら、俺も言わなきゃならないよな。
「椛。」
 少し震えた声が自分の口からでた。彼女は振り返る。
「あのさ……………。」
告白って言うのは、案外難しいもんなんだな、小説や漫画じゃすごく簡単に言ってるように見えるけど、言葉が出てこない。
「なに?」
「か、」
「か?」
「髪、伸びたな。」
………、ちょっと自分で自分を殺したくなった。
「あ、うん。そうだね。別に伸ばしてるわけじゃないんだけど。」
「そうなのか、てっきり伸ばしてるんだと思った。」
「うん、どうしようかな。切ろうかな、伸ばそうかな。」
「伸ばせよ。」
つい、口が動いた。ついでに体も動く、俺の右手は椛の髪を掴み、唇は椛の髪の先端に、触れる。
「っ!!???」
椛は顔を真っ赤にして、俺から遠ざかった。
「なんだ?」
さっきと同様、少し傷ついた。
「せ、せいやくん」
「何でひらがな発音なんだよ。」
「セイヤくん。」
「カタカナ発音にしろとはいってない。」
「せ、せせせせ、聖夜君。」
「落ち着け。」

「お、落ち着いてられますかー!!!!!」

そんな、たかが髪にキスしたくらいでそこまで動揺されるのか、俺ってそこまで嫌われるようなことを椛にしただろうか。
「だ、って、自分、何したか分かってる?」
「髪にキス。」
「淡々と言わないで!?」
「浮かれていえばいいのか?」
「もっと嫌だよ!   じゃなくて!好きでもない女の子にこういうことするのはどうかと思うの!」
はい?
「何か勘違いしてないか椛。俺はお前を好きだし、好きだからこういう行動をする。」
「!?」
何かさらに動揺された。俺は何かへんなことを…………言っていた。思いきり、さらりと告白してしまっているじゃないか。
「あの、それはホント?」
「本当だな。好きでもない女にこんなことするほど俺は軽い男じゃない。」
「えっと。その、あのね。この際だから言っちゃうけど、私も前から、あの時、私の髪を見て怒ってくれたときから、ずっと好きだったの。」
……つまり、俺たちって、
「両思いって奴なのか?」
「そ、そうだよ!?この状況でそれ疑問形にする?」
「させてくれ。ちょっと混乱してる。」
「分からなくはないけど。えっと。」
椛はゆっくりと俺に近づいて、ある一定の距離まで来ると背伸びをして、俺に唇を合わせる。俺は一瞬驚くものの、彼女が唇を離そうとした瞬間、抱きしめてキスをした。

「これで、信じてもらえた?」
「おう。」
「部活行こっか。」
「ん。」
俺と椛は2人そろって、歩き始めた。手を、合わせたまま。

後書き

あまっ、うわー、男の子視点でもこんなに甘く出来るもんですね。バカップルが!と思いたい人はどうぞ。咎めません。

あ、そういえば、女の子からキスをさせたのは初めてです。

この小説について

タイトル 第二分の三章 恋華伍
初版 2010年4月9日
改訂 2010年4月10日
小説ID 3896
閲覧数 770
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海月奏香の写真
熟練
作家名 ★海月奏香
作家ID 648
投稿数 16
★の数 16
活動度 1736
えーと、海月奏香です。くらげじゃないですよ、うみづきですよ。間違ってくらげなんて言われたら泣きますよ!

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